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少年は戦う(中)
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戦場とは悲惨なものだ。
昨日まで一緒に戦っていた仲間が次の日には死んでいたりする。
塹壕の中で一緒に寝ていたやつが目覚めると隣で死んでいたりする。
平時は普通の人間なのに、戦場に行くと精神に異常をきたして戦えなくなる奴もいる。
俺は今そんな世界にいる。
敵は九州の佐世保地区を攻撃目標として進行してきている。
俺は佐世保地区を防衛するために第4師団の第41普通科連隊に属する混成第5大隊の第3小隊に配属されることになった。
配属された部隊は元々あった部隊ではなく急遽できた部隊だ。
名簿を見たが、みんなそれぞれ全く違う職種で銃なんてほとんど持ったことないような職種の人もいた。
まあ、寄せ集め部隊ということだ。
先の諸島防衛作戦で多くの隊員を島で亡くしたため、後方勤務の人ですらこうして銃を持って普通科と同じことをしている。
正直、こんな部隊で大丈夫なのだろうかと不安になる。
まあ、俺は俺なりに仕事をするだけなので、とりあえず死なないようにするだけだ。
幸い、俺たちが防御する地区については、佐世保よりも少し奥の地域だ。
防御は縦深を意識したものになっていて、俺たちみたいな即席部隊は連携とか全くできないのでとりあえず数合わせに配置されているだけだろう。
でも、真後ろには特科部隊がいるから、特科部隊の場所を衛星から確認されて集中砲火でも食らったら巻き込まれで死ぬかもしれない。
そう思うと、陣地構築にも精が出ると言うものだ。
福岡県の基地にて一度集合するように命令が下された。
そこで部隊を一度集合させて防衛地区に向かうらしい。
俺たちは基地のグラウンドに集合した。
そこにいる面子は本当に色々で、顔を見ただけで戦いができるのかどうかがわかる。
小隊長が俺たちの前に立った。
小隊長の第一印象は暑苦しい人だった。
目が爛々としていて、使命感に燃えていて、正直、温度差を感じる。
「おはよう諸君!俺は野本3尉だ!さあ、国家存亡の危機だ。自衛隊の本領を発揮する時が来たようだ。国のために頑張って穴を掘ろう!」
俺だって使命感(愛する由紀を守ること!ああ、由紀とやりたい!)はある。
でも、野本3尉みたいに国のためには働けませんよ。
だって、愛国心の教育受けてないし、政治家は勝てない戦いをするようなアホだし。
さて、俺たちの自己紹介の時間がやってきた。
俺たちの小隊は3個分隊編成となっている。
第1分隊の面子から自己紹介していく。
「1分隊長の倉田1曹です。普通科でやってきたので一通りのことはわかります。わからないことがあったら聞いてほしい。よろしくお願いします。」
倉田1曹に続くように一分隊の面子が自己紹介をしていく。
施設科、野戦特科、会計科、音楽科などなど。
なんか動物園みたいな感じだ。
次は2分隊だ。
「2分隊長の奥1曹だ。倉田1曹と同じで普通科だが、狙撃手をしてきたので少し毛色が違う。うちの分隊は狙撃を主とした分隊になる。よろしく頼む。」
2分隊も同じように分隊員が自己紹介をしていく。
その中に髪を金髪に染めた奴がいた。
「2等陸士・・・米津謙信・・・武器科・・・よろしく。」
うわー寡黙というかなんというか絶対にやりにくい奴だ。
正直、関わりたくはない。
2分隊も結構な種類の職種がいたが、1分隊と比べるとマシな職種が多かった。
そして、最後に俺が所属する3分隊だ。
1人の長身でガタイが良く、短髪の男が前に出る。
「3分隊長鬼塚栄治。1等陸曹だ。普通科で小銃分隊をしていた。よろしく。」
少し無愛想だが、普通科で訓練の経験がある上司はありがたい。
俺が所属する分隊のメンバーも面白い面子が揃った。
「1等陸士の吉田亮です。通信科です。一発芸やります!」「2等陸士武藤大吾。需品科。」「ヤッホー!荒木琢磨です!施設科だよ!」・・・。
それぞれいろんな自己紹介をしていく。
俺もそれに続くように自己紹介をする。
「初めまして。2等陸士の東雲勇治です。普通科です。よろしくお願いします。」
まあ、無難な自己紹介だな・・・うん、いいんじゃないかな。
最後まで自己紹介が終わったので、小隊長が俺たちの前に立つ。
「じゃあ、自己紹介も終わったし、分隊長は俺の元まで来てくれ!早速命令を下達する!」
俺たちは小隊長に敬礼をする。
「じゃあ・・・村井2曹、後の指揮は頼む。出発する準備をしておけ。」
「わかりました。」
指揮権が村井克己2曹に委託される。
身長はそんなに高くなくて俺と同じくらいだ。
でも肩幅が広くて筋肉マッチョ。
しかも顔つきが怖いからヤクザかなと思ってしまう。
正直、近寄り難い。
「・・・ほんじゃ、やりますか。戦場にいく準備できとる?」
なんか訛ってない?
「俺はできてます。」「はい。できてます。」「・・・はい」
それぞれがそれぞれの返事をする。
「あ・・・あの・・・できてないです」
1人、弱々しそうに返事をする。
黒い髪を首元までぱっつんと切ってあって、前髪もぱっつんにしている女の子。
この部隊の唯一の女の子で音楽科の東條絵里。
村井2曹は東條絵里の方を向く。
「んーオケ。それじゃあ、30分やるから準備しろ。」
「は、はいっ。」
東條絵里は急いで営内に戻っていく。
女の子には色々あるのだろう。
俺は彼女がすごくかわいそうに感じた。
だって、男だらけのところに女の子1人だけ放り込まれたんだ。
俺が女なら発狂してしまうところだ。
「・・・問題起きたらどうするつもりなんだ?」
俺は自分にしか聞こえないくらいの声で喋る。
俺は出発する時を待った。
「それでは行こうか!」
野本3尉が大きな声で俺たちに行ってくる。
皆、それぞれの車に乗り込んだ。
車の中は誰も話すことなく静かな時が流れていた。
1時間ごとにどこかのコンビニによってはトイレ休憩をした。
数時間が経過した頃には佐世保地区に着いた。
俺たちは下車して荷物を下ろす。
佐世保はリアス式海岸の海があって、山も多いため、山の頂上から見る景色はとてもいい。
俺たちが守るところはちょうど谷になっているところに主要な道路があるため、そこの守備を命令された。
2個小隊を持って左右から火力を浴びせるように陣地を構築する予定だ。
俺たちは、ぎりぎりの装備で戦うために地面に穴を掘っていく。
道路上には鉄条網や地雷を埋設し、戦車を落とすための穴を掘る。
俺はショベルカーでどんどん掘り進めていく。
「こんなことやっても・・・はあー・・・」
正直嫌になる。
だってそうだろ。
最新式の装備は、離島防衛の段階で全て使用してしまっているから、俺たちが使用できるのは古臭い旧式の装備だけ。
銃ですら20式小銃じゃなくて89式小銃を使わないといけない。
つくづくお金をかけて装備品を揃えておいてよかったと思う。
「・・・さて、次はどこ掘れわんわん。」
俺は、黙々と穴を掘り続けた。
何日か過ぎた頃。
空が唸り出した。
昼過ぎの空は晴れていて、雲がところどころゆっくりと泳いでいる。
空では魚のように戦闘機がドッグファイトしている。
地上からは、ありとあらゆるミサイルが花火のように打ち上がる。
空からは、まるで隕石でも降ってきたかのようにミサイルが落ちてくる。
1時間は持ち堪えていただろうが、数時間が経つにつれて徐々に地上から打ち上げられる花火は弱くなっていく。
空は、黒い鉄の塊が覆い尽くしていく。
ブーンと蜂のようにドローンの群れが空を覆い尽くしていく。
「クソッ!」
俺は、個人用の穴に入っていた。
「対空警戒!」
小隊長が大声で俺たちに命令する。
そんなことはわかっているというように皆我先にと穴の中に入っていく。
敵の戦闘機、爆撃機やドローンが俺たちに向かって爆弾を落としていく。
特にドローンは赤外線やサーモグラフィーなどいろんな探知機能で俺たちを見つけたら特攻してくる。
俺はそんな機能を持ったドローンを特に警戒した。
だからか、穴に入っても落ち着かないから、穴に入っても穴を掘った。
「・・・やるしかねえ。」
小さい穴を掘っても俺1人ぎりぎり入れるようじゃ、銃を構えることができない。
一生懸命穴を掘った。
爆弾の爆発で地面が揺れる。
地面の揺れが治まると今度は銃声が四方八方から聞こえてくる。
俺は、深く掘った自分の穴の入り口に大きな丸太をおいて銃口だけ出せるようにする。
俺はじっと敵方を監視する。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
呼吸が徐々に速くなっていく。
「・・・はぁー・・・ふぅー・・・」
それに気づいて、ゆっくりと深く呼吸する。
俺は集中する。
緊張するが、緊張しすぎないように呼吸をする。
焦って行動すれば死んでしまう。
俺は、焦らず急がず慎重に敵を待った。
俺のところからは道路がはっきりと見える。
敵が前方から戦車と装甲車に乗って走ってきた。
その数およそ40両。
「・・・無理じゃね?」
敵戦車の1両目がキルポイントに差し掛かる。
すると、真横から対戦車榴弾が発射された。
ドガアアァァン!!!
車両が爆破し、あらゆる隙間から火柱が噴き出す。
後方からの戦車と装甲車が急停止する。
戦車は戦闘体形に展開する。
その後方では装甲車から敵歩兵がゾロゾロと出てくる。
俺は、出てきた敵を1発1発単発で確実に撃ち殺していく。
「・・・エロイムエッサイム、エロイムエッサイム、我は求め訴えたり・・・」
自分に言い聞かせるように呟きながら引き金を引く。
戦車からの砲撃が激しくなってくる。
敵歩兵が人海戦術で味方を殺していく。
俺たちは、相互に敵を殺し合いながらなんとか敵を止めることができた。
それが何日か続くと流石に精神がすり減るというもので、三日目にしてとうとうその時がきた。
俺はもう何人殺しただろうか。
味方方向からは銃声が徐々に聞こえなくなっていた。
それでも俺は引き金を引いた。
敵が俺の攻撃に気がつきた。
バリバリバリバリ
戦車についている重機関銃が俺の方に向いて撃ってきた。
俺は地面がボコボコになると同時に脱出のために掘っておいた別の出口から抜け出す。
「やっやばい・・・やばいやばいやばい!」
俺は一瞬で頭の中が真っ白になった。
体を生存本能に任せて、地面に体を押し付けて這ってその場から逃げ出す。
敵が見えない谷の方に行く。
「・・・どこだ・・・どこに向かえば・・・」
俺は、必死になって当たりを見渡す。
当たり前だが、そこには何もない。
俺は、砲撃、迫撃、銃声の聞こえない方向に必死に走った。
「ハッハッハッ!!」
これまでで一番はやく走れている気がする。
何十分ほど走っただろうか。
絶壁の壁のように聳え立つ崖が目の前に現れる。
「・・・ふー・・・参ったな・・・これ。」
俺は、必死に周りを見渡す。
近くに大きな岩がゴロゴロしており、隠れる場所が多くあった。
俺はひとまずそこの奥にひっそりと隠れる。
「ここなら、空からも大丈夫だろうな。」
俺は、とりあえず休むことにした。
日は落ち始め、空は赤く染まっていた。
昼間から大変だった。
多分、仲間だったやつはほとんど死んだだろう。
「・・・運が良かった。か・・・うっ・・・ウエェ・・・」
俺は吐いた。
思い返してみると、俺は初めて人を殺したのだ。
そうなると途端に気持ち悪くなって、急に涙が出てきた。
仲間のことを思い出すと、むせ始める。
「うっ・・・ううっ・・・クソッ・・・」
その日は気を失うように眠りについた。
「・・・・うっ・・・ハッ!」
一気に目が覚める。
空はまだ薄暗く、日は登っていなかった。
時間を確認すると朝の3時だった。
「・・・動くなら、今か。」
俺はゆっくりと立ち上がると銃を手にして装弾数とマガジン数を確認する。
無駄遣いしなかったおかげでまだまだ弾はあった。
俺はブロック状のレーションを一つ取り出して口にする。
「・・・」
味なんて感じない。
口の中がパッサパサになる。
水筒の水を軽く口に含む。
水棺とかが手元にないので無駄遣いはできない。
「・・・水が一番うまいな。」
俺は銃を構えて周囲を見渡す。
銃声、人の声、足音、物音、気配なんかも感じない。
ゆっくりと岩陰から顔だけ外に出す。
「とりあえず状況がわからない。とりあえず探索かな・・・でも、1日で防御陣地が壊滅したからな・・・多分この周辺はs全て敵に占領されているかもしれないな・・・。さて、どうしたものか。」
俺は、その場合で考え込む。
買っておいた高いGPS端末で現在地を確認する。
「・・・結構走ったんだな。結構な山奥じゃないか。」
俺は決めた。
「よし、師団の陣地に向けて前進しよう。ついでに、この山の頂上付近で観測もしておこう。」
俺は薄暗い中行動を開始した。
崖沿いを縫うようにして歩く。
開けたところは避けるようにして林の中の獣の道を歩く。
「・・・人が歩いた形跡はないな」
林の中は真っ暗で前がほとんど見えない。
だから暗視装置を使って周囲を警戒する。
1時間ほど歩くと出っぱるようにして岩が一つ出ている崖を発見した。
「今なら暗くて、行けるかも。」
俺は少し距離があるが、近くの崖を登って岩に向かう。
そこまで急なものでもないので、ゆっくりではあるが着実に崖を上る。
「・・・少し遠回りしないと敵に見つかるか・・・」
崖を登り切ると、森の中に身を隠しながら岩に向けて前進する。
岩の近くまできた。
ここまでくるのに1時間と数十分かかった。
日が徐々に昇り出した。
辺りの様子が徐々に視覚でわかるようになってきた。
俺は、森から抜けると這って岩の先端まで向かう。
空にはドローンはなくて、哨戒用の飛行機が数機確認できるくらいだった。
俺は双眼鏡を取り出す。
「さっさと確認しないと、無人機が来ちまう。」
俺は焦りを感じながらも、丁寧にこなす。
双眼鏡で街の様子や周囲の様子を確認する。
「・・・まじか・・・やっばいな・・・」
俺が目にしたのは火の海だった。
佐世保地区はほぼ壊滅状態。
俺が今いる場所は敵の占領した場所の中だということがわかった。
俺は一瞬絶望した。
これは誰が見ても最悪な状況だろう。
「・・・・ふふっ・・・」
でも、そんな最悪な状況を笑ってしまった。
「・・・そうだ。俺は、もう何もなくすものはない!」
本州には家族がいる。
嫁がいる。
でも、別れは済ませてきた。
つまり・・・。
「俺は何もない!なら!・・・やるしかないっしょ!」
俺は吹っ切れていた。
これは、ただ頭がおかしくなっただけだった。
平和な世界で生活してきた戦争を知らない子供だった俺が、今では戦場のど真ん中で生きている。
この極度のストレスが俺をおかしくした。
「生きて帰れる見込みがないなら・・・敵の本部をぶっ潰してから死んでやる。」
俺は、その場で速やかに決心して敵方向に向かって歩き出す。
まず、敵の基地を探さなくてはいけない。
なら高台に行くのが一番いいだろう。
今時、高性能な衛星や偵察機から情報を得られるため、高台を求める部隊はいない。
「多分・・・安全かな」
俺は、佐世保地区一帯を見渡せる山に向けて歩き出した。
それは、朝日がちょど山から顔をどした頃だった。
かれこれ何時間歩き続けただろうか。
足場の悪い山の中を獣道を見つけてはそこを歩いた。
こんな状況でも運のいいことに自前のGPSはバリバリ元気だ。
たまにひょっこりと顔を出すように空を見上げると北東に向けてドローンや戦闘機、哨戒機が飛んで行く。
多分、九州の大分県当たりを攻略中か、本州上陸の準備中なのだろう。
俺は、おおむねの観測点となるところに目星をつけて、そこに向けてまた歩き出す。
今のところ敵兵の影は見えない。
多分、山の方には攻めていないのだろう。
「まあ、山をとっても今時必要ないからなー。」
俺は、なんとか山の頂上まで辿り着く。
「さてさて、敵さんはどこにいらっしゃるのかしらねー。」
俺は、気の影に隠れるようにして佐世保の港の方を見る。
「・・・・やっぱりいたか。」
俺は佐世保の米軍基地の方を見ていた。
そこには中国旗が掲げてある大きな建物が見えた。
多分、あそこが司令部だと思われる。
まあ、今のところ俺の勘なんだけどね。
「はてさて・・・どうやって攻略したものか・・・やべ、ドローンだ!」
俺は咄嗟に窪地に隠れてその場をやり過ごす。
ドローンが数機、福岡方面に向かって飛んでいく。
「・・・ここからドローンが出てるってことは・・・そんなに遠くまで占領できていないか・・・。」
ドローンと言っても、数十キロも飛べるわけではない。
なら、意外と近くまでしか占領できていないということだろう。
「・・・・・・・・なおさら帰ることはできねえな。成果の一つや二つは出さないとな・・・。」
俺は再度決意した。
流石にずっと歩き続けていただけあって、結構ヘトヘトだ。
「・・・寝るか。」
3キロほど後方まで歩いて、山の深いところの窪地に倒れ込むように寝た。
寝て頭をすっきりさせてからは綿密な作戦を練った。
最初に上空から見えず、敵地を観測できる場所を探した。
ちょうど山が多いことから深い岩陰が多くある。
俺はそこに隠れるようにして数日間生活することに決めた。
都合のいいことに、数百メートル先に都合のいい沢があったので水の調達は容易にできた。
あとは、食料の問題だが、山の中ということもあって食べようと思えばなんでも食べられるので、そこは我慢して食べることにする。
「・・・でだ。どうやってあそこにある基地を破壊するかだ。」
俺はここにきて迷っていた。
1人では何もできないのだ。
銃はある。
弾もある。
手榴弾もある。
でも仲間がいない。
ここにきて大きな壁にぶつかってしまった。
俺は、敵基地を見つめたまま考えに耽っていた。
そして三日の時が流れた。
体に力は入らず、徐々にやる気も失せてきていた。
でも、ここでやらないと俺の後ろにいる家族を守れないと思うと、まだやれた。
今日は水筒の水が切れかかっていた。
俺は朝日が昇り始める30分前から動き始めて沢のところに行った。
「・・・そろそろ動き始めないとやばいな・・・。」
最近では独り言も多くなってきた。
夜な夜な由紀を思う気持ちが強くなってきて、『由紀ー、由紀ー』と呼んでしまう。
ちょっとやばい人だね。
母が作ってくれた手料理の味をふと思い出す時があってお腹がグーーーーーっと鳴る時はきつい。
昼間なんて、俺はなんでこんなところで銃を抱いて戦っているのかと冷静になってしまう時がある。
こんな状況下で1人で生活している俺は精神異常者なのかもしれない。
だって、普通なら絶対に戦うなんでできないだろう。
でも、考えないように心がけた。
考えないようにすることを考えないようにもした。
つまり、今、結構極限状態なのだ。
俺は、その場で水浴びもしていると、ふと、山の稜線上に人影が見えた。
俺はすぐに服を茂みに隠して、銃を手にして沢の深いところで且つ、草が覆いかぶさっているところに身を潜める。
「・・・・はっ・・・・はっ・・・・」
呼吸が早くなっていくのを感じながら、なんとか息を潜める。
影から人影を確認すると、5名で行動しているのがわかる。
前方に2名、後方2名、中央に1名の配置。
1名の方がこのチームのリーダーだとわかる。
俺は静かにそちらの方に銃口を向ける。
敵か味方かはまだ判断できない。
こんなところに味方がいるとも思えない。
まして、敵がこんなところで少数の部隊を行動させるとは思えない。
俺は撃つべきか、撃たざるべきか迷った。
敵か味方かわからない人影が徐々に沢の方に近づいてくる。
すると、徐々に人の声が聞こえ出した。
「隊長!水がありました!」
「うるさい。声が大きい。敵に見つかったらどうするんだ。」
「す、すみまん。」
「隊長。とりあえず休憩にしませんか?俺が見張っとくんで。」
「じゃあ、頼む。ほら、お前ら休憩しろ。」
男と女の声が聞こえた。
しかも日本語だ。
俺は、少し緊張を解いた。
そして、俺は驚いた。
そこにいた5人は俺が最後に一緒に戦っていた部隊の隊員だったからだ。
俺は、ゆっくりと影から顔を出して、声をかけた。
「・・・村井2曹」
村井2曹はビクッと肩を硬らせると同時に銃口を俺の方に向ける。
俺は両手を頭と同じ高さに上げた状態で草の影から出ていく。
5名全員が俺の方向に銃口を向けていたが、皆驚いた顔をしていた。
「お、お前は確か・・・3分隊の奴やったよな?」
「はい。東雲1等陸士です。」
俺は、ゆっくりと近づいて顔を見せる。
他のやつは安心したのか銃口を下に向けている。
村井2曹は嬉しそうにしながら小声で俺に話しかけてくる。
「良かった!生きていたんやな!」
村井2曹は右手を差し出す。
「はい。なんとかここまで生きてきました。」
俺はその右手を握り返す。
そして握手をした。
「久しぶりで再会の喜びを分かち合いたいところやけど、流石に敵地で悠々と歩いているわけにもいかんから、どこか隠れれう場所で話そっか。」
「ちょうど、俺が今まで隠れ家として使っている場所が近くにあります。そこで一度休憩してはどうですか。」
「OK!そうしよか。おい、お前らいくぞ。」
そして、俺と5人は俺の今の拠点に向かった。
向かっている途中は、村井2曹とこれまでのことを話した。
「なかなか立派な拠点やないか。」
俺たちは拠点に帰ってきた。
5人はやっと休めると思ったのか、一気に脱力してその場に座り込んだ。
俺は敵から見えないようにするためにしっかりと入口を偽装する。
「・・・まあ、ゆっくりしてください。今のところここがバレた感じはないので安全だと思いますから。」
「おお、すまんな。」
俺は偽装し終わると、溜め込んでいた食糧を中央に広げて皆で囲めるようにした。
「じゃあ、情報共有と致しましょうか。」
5人は食糧を囲むようにして座る。
「こんなに食糧をどこで手に入れたんや?」
「これは、その辺に落ちている木のみを茹でただけのものです。一応俺が全て毒味してあるので大丈夫なはずです。」
そういうと、村井2曹以外の4名はすぐにその木の実に手をつける。
皆、黙ったままずっとどこか上の空だったが、ここにきて正気を取り戻したようだった。
「では、まずこの隙間から双眼鏡で覗くと米海軍基地が見えると思います。」
そう言って皆に双眼鏡を渡す。
「そこが今の中国軍の基地です。」
皆、そこを見た。
それからは皆、俺の話を食い入るように聞いた。
「なるほどな~。ようわかった。」
俺は、今まで手に入れてきた情報を全て言った。
「で、お前はこれからどうするつもりなんや。」
「俺は、敵の本部を叩くつもりです。」
「どうやって?」
「・・・まだ・・・わかりません。だた、私1人ではどうすることもできないので、司令部だけを叩こうかなと思います。」
村井2曹と他の4人に俺の考えを言った。
「・・・そんなの無茶だ!」
武藤2士がいきなり少しお大きな声で俺に言ってきた。
「そんなことをしても・・・成果をかげられず無駄死するだけだ。」
「しかし、ここから帰れる保証もない。・・・やるか、やらないかの問題だ。」
「・・・あ、あの・・・私も無謀だと思います。」
さらに東條1士も反論してきた。
「じゃあ・・・お前らはどうするの?」
俺は終わりの見えない話し合いをする前に反論してきた2人に聞いた。
2人は一瞬押し黙る。
口をゴモゴモさせるが言葉は出てこない。
「何もないだろ?俺はする。お前らがするかどうかは好きにしたらいい。」
俺はその場に立ち上がり、皆に言った。
「さあ、どうする。このまま隠れるもよし。俺と一緒に戦って、運が良ければ生きて帰れて、悪ければ戦死。」
俺はゆっくりと1人1人の目を見た。
5名のうち4名は目を背けた。
しかし、1名だけ俺の目を見たままのやつがいた。
「まあ、しょうがないわな。俺もその考えに賛成や。」
村井2曹だった。
「おい、武藤。お前が今後、こいつらの面倒を見ろ。俺は東雲といく。」
村井2曹はその場に立ち上がり俺と握手をする。
「よろしくな。」
「はい。よろしくお願いします。」
そうして、俺は新しいステージにいくことができた。
昨日まで一緒に戦っていた仲間が次の日には死んでいたりする。
塹壕の中で一緒に寝ていたやつが目覚めると隣で死んでいたりする。
平時は普通の人間なのに、戦場に行くと精神に異常をきたして戦えなくなる奴もいる。
俺は今そんな世界にいる。
敵は九州の佐世保地区を攻撃目標として進行してきている。
俺は佐世保地区を防衛するために第4師団の第41普通科連隊に属する混成第5大隊の第3小隊に配属されることになった。
配属された部隊は元々あった部隊ではなく急遽できた部隊だ。
名簿を見たが、みんなそれぞれ全く違う職種で銃なんてほとんど持ったことないような職種の人もいた。
まあ、寄せ集め部隊ということだ。
先の諸島防衛作戦で多くの隊員を島で亡くしたため、後方勤務の人ですらこうして銃を持って普通科と同じことをしている。
正直、こんな部隊で大丈夫なのだろうかと不安になる。
まあ、俺は俺なりに仕事をするだけなので、とりあえず死なないようにするだけだ。
幸い、俺たちが防御する地区については、佐世保よりも少し奥の地域だ。
防御は縦深を意識したものになっていて、俺たちみたいな即席部隊は連携とか全くできないのでとりあえず数合わせに配置されているだけだろう。
でも、真後ろには特科部隊がいるから、特科部隊の場所を衛星から確認されて集中砲火でも食らったら巻き込まれで死ぬかもしれない。
そう思うと、陣地構築にも精が出ると言うものだ。
福岡県の基地にて一度集合するように命令が下された。
そこで部隊を一度集合させて防衛地区に向かうらしい。
俺たちは基地のグラウンドに集合した。
そこにいる面子は本当に色々で、顔を見ただけで戦いができるのかどうかがわかる。
小隊長が俺たちの前に立った。
小隊長の第一印象は暑苦しい人だった。
目が爛々としていて、使命感に燃えていて、正直、温度差を感じる。
「おはよう諸君!俺は野本3尉だ!さあ、国家存亡の危機だ。自衛隊の本領を発揮する時が来たようだ。国のために頑張って穴を掘ろう!」
俺だって使命感(愛する由紀を守ること!ああ、由紀とやりたい!)はある。
でも、野本3尉みたいに国のためには働けませんよ。
だって、愛国心の教育受けてないし、政治家は勝てない戦いをするようなアホだし。
さて、俺たちの自己紹介の時間がやってきた。
俺たちの小隊は3個分隊編成となっている。
第1分隊の面子から自己紹介していく。
「1分隊長の倉田1曹です。普通科でやってきたので一通りのことはわかります。わからないことがあったら聞いてほしい。よろしくお願いします。」
倉田1曹に続くように一分隊の面子が自己紹介をしていく。
施設科、野戦特科、会計科、音楽科などなど。
なんか動物園みたいな感じだ。
次は2分隊だ。
「2分隊長の奥1曹だ。倉田1曹と同じで普通科だが、狙撃手をしてきたので少し毛色が違う。うちの分隊は狙撃を主とした分隊になる。よろしく頼む。」
2分隊も同じように分隊員が自己紹介をしていく。
その中に髪を金髪に染めた奴がいた。
「2等陸士・・・米津謙信・・・武器科・・・よろしく。」
うわー寡黙というかなんというか絶対にやりにくい奴だ。
正直、関わりたくはない。
2分隊も結構な種類の職種がいたが、1分隊と比べるとマシな職種が多かった。
そして、最後に俺が所属する3分隊だ。
1人の長身でガタイが良く、短髪の男が前に出る。
「3分隊長鬼塚栄治。1等陸曹だ。普通科で小銃分隊をしていた。よろしく。」
少し無愛想だが、普通科で訓練の経験がある上司はありがたい。
俺が所属する分隊のメンバーも面白い面子が揃った。
「1等陸士の吉田亮です。通信科です。一発芸やります!」「2等陸士武藤大吾。需品科。」「ヤッホー!荒木琢磨です!施設科だよ!」・・・。
それぞれいろんな自己紹介をしていく。
俺もそれに続くように自己紹介をする。
「初めまして。2等陸士の東雲勇治です。普通科です。よろしくお願いします。」
まあ、無難な自己紹介だな・・・うん、いいんじゃないかな。
最後まで自己紹介が終わったので、小隊長が俺たちの前に立つ。
「じゃあ、自己紹介も終わったし、分隊長は俺の元まで来てくれ!早速命令を下達する!」
俺たちは小隊長に敬礼をする。
「じゃあ・・・村井2曹、後の指揮は頼む。出発する準備をしておけ。」
「わかりました。」
指揮権が村井克己2曹に委託される。
身長はそんなに高くなくて俺と同じくらいだ。
でも肩幅が広くて筋肉マッチョ。
しかも顔つきが怖いからヤクザかなと思ってしまう。
正直、近寄り難い。
「・・・ほんじゃ、やりますか。戦場にいく準備できとる?」
なんか訛ってない?
「俺はできてます。」「はい。できてます。」「・・・はい」
それぞれがそれぞれの返事をする。
「あ・・・あの・・・できてないです」
1人、弱々しそうに返事をする。
黒い髪を首元までぱっつんと切ってあって、前髪もぱっつんにしている女の子。
この部隊の唯一の女の子で音楽科の東條絵里。
村井2曹は東條絵里の方を向く。
「んーオケ。それじゃあ、30分やるから準備しろ。」
「は、はいっ。」
東條絵里は急いで営内に戻っていく。
女の子には色々あるのだろう。
俺は彼女がすごくかわいそうに感じた。
だって、男だらけのところに女の子1人だけ放り込まれたんだ。
俺が女なら発狂してしまうところだ。
「・・・問題起きたらどうするつもりなんだ?」
俺は自分にしか聞こえないくらいの声で喋る。
俺は出発する時を待った。
「それでは行こうか!」
野本3尉が大きな声で俺たちに行ってくる。
皆、それぞれの車に乗り込んだ。
車の中は誰も話すことなく静かな時が流れていた。
1時間ごとにどこかのコンビニによってはトイレ休憩をした。
数時間が経過した頃には佐世保地区に着いた。
俺たちは下車して荷物を下ろす。
佐世保はリアス式海岸の海があって、山も多いため、山の頂上から見る景色はとてもいい。
俺たちが守るところはちょうど谷になっているところに主要な道路があるため、そこの守備を命令された。
2個小隊を持って左右から火力を浴びせるように陣地を構築する予定だ。
俺たちは、ぎりぎりの装備で戦うために地面に穴を掘っていく。
道路上には鉄条網や地雷を埋設し、戦車を落とすための穴を掘る。
俺はショベルカーでどんどん掘り進めていく。
「こんなことやっても・・・はあー・・・」
正直嫌になる。
だってそうだろ。
最新式の装備は、離島防衛の段階で全て使用してしまっているから、俺たちが使用できるのは古臭い旧式の装備だけ。
銃ですら20式小銃じゃなくて89式小銃を使わないといけない。
つくづくお金をかけて装備品を揃えておいてよかったと思う。
「・・・さて、次はどこ掘れわんわん。」
俺は、黙々と穴を掘り続けた。
何日か過ぎた頃。
空が唸り出した。
昼過ぎの空は晴れていて、雲がところどころゆっくりと泳いでいる。
空では魚のように戦闘機がドッグファイトしている。
地上からは、ありとあらゆるミサイルが花火のように打ち上がる。
空からは、まるで隕石でも降ってきたかのようにミサイルが落ちてくる。
1時間は持ち堪えていただろうが、数時間が経つにつれて徐々に地上から打ち上げられる花火は弱くなっていく。
空は、黒い鉄の塊が覆い尽くしていく。
ブーンと蜂のようにドローンの群れが空を覆い尽くしていく。
「クソッ!」
俺は、個人用の穴に入っていた。
「対空警戒!」
小隊長が大声で俺たちに命令する。
そんなことはわかっているというように皆我先にと穴の中に入っていく。
敵の戦闘機、爆撃機やドローンが俺たちに向かって爆弾を落としていく。
特にドローンは赤外線やサーモグラフィーなどいろんな探知機能で俺たちを見つけたら特攻してくる。
俺はそんな機能を持ったドローンを特に警戒した。
だからか、穴に入っても落ち着かないから、穴に入っても穴を掘った。
「・・・やるしかねえ。」
小さい穴を掘っても俺1人ぎりぎり入れるようじゃ、銃を構えることができない。
一生懸命穴を掘った。
爆弾の爆発で地面が揺れる。
地面の揺れが治まると今度は銃声が四方八方から聞こえてくる。
俺は、深く掘った自分の穴の入り口に大きな丸太をおいて銃口だけ出せるようにする。
俺はじっと敵方を監視する。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
呼吸が徐々に速くなっていく。
「・・・はぁー・・・ふぅー・・・」
それに気づいて、ゆっくりと深く呼吸する。
俺は集中する。
緊張するが、緊張しすぎないように呼吸をする。
焦って行動すれば死んでしまう。
俺は、焦らず急がず慎重に敵を待った。
俺のところからは道路がはっきりと見える。
敵が前方から戦車と装甲車に乗って走ってきた。
その数およそ40両。
「・・・無理じゃね?」
敵戦車の1両目がキルポイントに差し掛かる。
すると、真横から対戦車榴弾が発射された。
ドガアアァァン!!!
車両が爆破し、あらゆる隙間から火柱が噴き出す。
後方からの戦車と装甲車が急停止する。
戦車は戦闘体形に展開する。
その後方では装甲車から敵歩兵がゾロゾロと出てくる。
俺は、出てきた敵を1発1発単発で確実に撃ち殺していく。
「・・・エロイムエッサイム、エロイムエッサイム、我は求め訴えたり・・・」
自分に言い聞かせるように呟きながら引き金を引く。
戦車からの砲撃が激しくなってくる。
敵歩兵が人海戦術で味方を殺していく。
俺たちは、相互に敵を殺し合いながらなんとか敵を止めることができた。
それが何日か続くと流石に精神がすり減るというもので、三日目にしてとうとうその時がきた。
俺はもう何人殺しただろうか。
味方方向からは銃声が徐々に聞こえなくなっていた。
それでも俺は引き金を引いた。
敵が俺の攻撃に気がつきた。
バリバリバリバリ
戦車についている重機関銃が俺の方に向いて撃ってきた。
俺は地面がボコボコになると同時に脱出のために掘っておいた別の出口から抜け出す。
「やっやばい・・・やばいやばいやばい!」
俺は一瞬で頭の中が真っ白になった。
体を生存本能に任せて、地面に体を押し付けて這ってその場から逃げ出す。
敵が見えない谷の方に行く。
「・・・どこだ・・・どこに向かえば・・・」
俺は、必死になって当たりを見渡す。
当たり前だが、そこには何もない。
俺は、砲撃、迫撃、銃声の聞こえない方向に必死に走った。
「ハッハッハッ!!」
これまでで一番はやく走れている気がする。
何十分ほど走っただろうか。
絶壁の壁のように聳え立つ崖が目の前に現れる。
「・・・ふー・・・参ったな・・・これ。」
俺は、必死に周りを見渡す。
近くに大きな岩がゴロゴロしており、隠れる場所が多くあった。
俺はひとまずそこの奥にひっそりと隠れる。
「ここなら、空からも大丈夫だろうな。」
俺は、とりあえず休むことにした。
日は落ち始め、空は赤く染まっていた。
昼間から大変だった。
多分、仲間だったやつはほとんど死んだだろう。
「・・・運が良かった。か・・・うっ・・・ウエェ・・・」
俺は吐いた。
思い返してみると、俺は初めて人を殺したのだ。
そうなると途端に気持ち悪くなって、急に涙が出てきた。
仲間のことを思い出すと、むせ始める。
「うっ・・・ううっ・・・クソッ・・・」
その日は気を失うように眠りについた。
「・・・・うっ・・・ハッ!」
一気に目が覚める。
空はまだ薄暗く、日は登っていなかった。
時間を確認すると朝の3時だった。
「・・・動くなら、今か。」
俺はゆっくりと立ち上がると銃を手にして装弾数とマガジン数を確認する。
無駄遣いしなかったおかげでまだまだ弾はあった。
俺はブロック状のレーションを一つ取り出して口にする。
「・・・」
味なんて感じない。
口の中がパッサパサになる。
水筒の水を軽く口に含む。
水棺とかが手元にないので無駄遣いはできない。
「・・・水が一番うまいな。」
俺は銃を構えて周囲を見渡す。
銃声、人の声、足音、物音、気配なんかも感じない。
ゆっくりと岩陰から顔だけ外に出す。
「とりあえず状況がわからない。とりあえず探索かな・・・でも、1日で防御陣地が壊滅したからな・・・多分この周辺はs全て敵に占領されているかもしれないな・・・。さて、どうしたものか。」
俺は、その場合で考え込む。
買っておいた高いGPS端末で現在地を確認する。
「・・・結構走ったんだな。結構な山奥じゃないか。」
俺は決めた。
「よし、師団の陣地に向けて前進しよう。ついでに、この山の頂上付近で観測もしておこう。」
俺は薄暗い中行動を開始した。
崖沿いを縫うようにして歩く。
開けたところは避けるようにして林の中の獣の道を歩く。
「・・・人が歩いた形跡はないな」
林の中は真っ暗で前がほとんど見えない。
だから暗視装置を使って周囲を警戒する。
1時間ほど歩くと出っぱるようにして岩が一つ出ている崖を発見した。
「今なら暗くて、行けるかも。」
俺は少し距離があるが、近くの崖を登って岩に向かう。
そこまで急なものでもないので、ゆっくりではあるが着実に崖を上る。
「・・・少し遠回りしないと敵に見つかるか・・・」
崖を登り切ると、森の中に身を隠しながら岩に向けて前進する。
岩の近くまできた。
ここまでくるのに1時間と数十分かかった。
日が徐々に昇り出した。
辺りの様子が徐々に視覚でわかるようになってきた。
俺は、森から抜けると這って岩の先端まで向かう。
空にはドローンはなくて、哨戒用の飛行機が数機確認できるくらいだった。
俺は双眼鏡を取り出す。
「さっさと確認しないと、無人機が来ちまう。」
俺は焦りを感じながらも、丁寧にこなす。
双眼鏡で街の様子や周囲の様子を確認する。
「・・・まじか・・・やっばいな・・・」
俺が目にしたのは火の海だった。
佐世保地区はほぼ壊滅状態。
俺が今いる場所は敵の占領した場所の中だということがわかった。
俺は一瞬絶望した。
これは誰が見ても最悪な状況だろう。
「・・・・ふふっ・・・」
でも、そんな最悪な状況を笑ってしまった。
「・・・そうだ。俺は、もう何もなくすものはない!」
本州には家族がいる。
嫁がいる。
でも、別れは済ませてきた。
つまり・・・。
「俺は何もない!なら!・・・やるしかないっしょ!」
俺は吹っ切れていた。
これは、ただ頭がおかしくなっただけだった。
平和な世界で生活してきた戦争を知らない子供だった俺が、今では戦場のど真ん中で生きている。
この極度のストレスが俺をおかしくした。
「生きて帰れる見込みがないなら・・・敵の本部をぶっ潰してから死んでやる。」
俺は、その場で速やかに決心して敵方向に向かって歩き出す。
まず、敵の基地を探さなくてはいけない。
なら高台に行くのが一番いいだろう。
今時、高性能な衛星や偵察機から情報を得られるため、高台を求める部隊はいない。
「多分・・・安全かな」
俺は、佐世保地区一帯を見渡せる山に向けて歩き出した。
それは、朝日がちょど山から顔をどした頃だった。
かれこれ何時間歩き続けただろうか。
足場の悪い山の中を獣道を見つけてはそこを歩いた。
こんな状況でも運のいいことに自前のGPSはバリバリ元気だ。
たまにひょっこりと顔を出すように空を見上げると北東に向けてドローンや戦闘機、哨戒機が飛んで行く。
多分、九州の大分県当たりを攻略中か、本州上陸の準備中なのだろう。
俺は、おおむねの観測点となるところに目星をつけて、そこに向けてまた歩き出す。
今のところ敵兵の影は見えない。
多分、山の方には攻めていないのだろう。
「まあ、山をとっても今時必要ないからなー。」
俺は、なんとか山の頂上まで辿り着く。
「さてさて、敵さんはどこにいらっしゃるのかしらねー。」
俺は、気の影に隠れるようにして佐世保の港の方を見る。
「・・・・やっぱりいたか。」
俺は佐世保の米軍基地の方を見ていた。
そこには中国旗が掲げてある大きな建物が見えた。
多分、あそこが司令部だと思われる。
まあ、今のところ俺の勘なんだけどね。
「はてさて・・・どうやって攻略したものか・・・やべ、ドローンだ!」
俺は咄嗟に窪地に隠れてその場をやり過ごす。
ドローンが数機、福岡方面に向かって飛んでいく。
「・・・ここからドローンが出てるってことは・・・そんなに遠くまで占領できていないか・・・。」
ドローンと言っても、数十キロも飛べるわけではない。
なら、意外と近くまでしか占領できていないということだろう。
「・・・・・・・・なおさら帰ることはできねえな。成果の一つや二つは出さないとな・・・。」
俺は再度決意した。
流石にずっと歩き続けていただけあって、結構ヘトヘトだ。
「・・・寝るか。」
3キロほど後方まで歩いて、山の深いところの窪地に倒れ込むように寝た。
寝て頭をすっきりさせてからは綿密な作戦を練った。
最初に上空から見えず、敵地を観測できる場所を探した。
ちょうど山が多いことから深い岩陰が多くある。
俺はそこに隠れるようにして数日間生活することに決めた。
都合のいいことに、数百メートル先に都合のいい沢があったので水の調達は容易にできた。
あとは、食料の問題だが、山の中ということもあって食べようと思えばなんでも食べられるので、そこは我慢して食べることにする。
「・・・でだ。どうやってあそこにある基地を破壊するかだ。」
俺はここにきて迷っていた。
1人では何もできないのだ。
銃はある。
弾もある。
手榴弾もある。
でも仲間がいない。
ここにきて大きな壁にぶつかってしまった。
俺は、敵基地を見つめたまま考えに耽っていた。
そして三日の時が流れた。
体に力は入らず、徐々にやる気も失せてきていた。
でも、ここでやらないと俺の後ろにいる家族を守れないと思うと、まだやれた。
今日は水筒の水が切れかかっていた。
俺は朝日が昇り始める30分前から動き始めて沢のところに行った。
「・・・そろそろ動き始めないとやばいな・・・。」
最近では独り言も多くなってきた。
夜な夜な由紀を思う気持ちが強くなってきて、『由紀ー、由紀ー』と呼んでしまう。
ちょっとやばい人だね。
母が作ってくれた手料理の味をふと思い出す時があってお腹がグーーーーーっと鳴る時はきつい。
昼間なんて、俺はなんでこんなところで銃を抱いて戦っているのかと冷静になってしまう時がある。
こんな状況下で1人で生活している俺は精神異常者なのかもしれない。
だって、普通なら絶対に戦うなんでできないだろう。
でも、考えないように心がけた。
考えないようにすることを考えないようにもした。
つまり、今、結構極限状態なのだ。
俺は、その場で水浴びもしていると、ふと、山の稜線上に人影が見えた。
俺はすぐに服を茂みに隠して、銃を手にして沢の深いところで且つ、草が覆いかぶさっているところに身を潜める。
「・・・・はっ・・・・はっ・・・・」
呼吸が早くなっていくのを感じながら、なんとか息を潜める。
影から人影を確認すると、5名で行動しているのがわかる。
前方に2名、後方2名、中央に1名の配置。
1名の方がこのチームのリーダーだとわかる。
俺は静かにそちらの方に銃口を向ける。
敵か味方かはまだ判断できない。
こんなところに味方がいるとも思えない。
まして、敵がこんなところで少数の部隊を行動させるとは思えない。
俺は撃つべきか、撃たざるべきか迷った。
敵か味方かわからない人影が徐々に沢の方に近づいてくる。
すると、徐々に人の声が聞こえ出した。
「隊長!水がありました!」
「うるさい。声が大きい。敵に見つかったらどうするんだ。」
「す、すみまん。」
「隊長。とりあえず休憩にしませんか?俺が見張っとくんで。」
「じゃあ、頼む。ほら、お前ら休憩しろ。」
男と女の声が聞こえた。
しかも日本語だ。
俺は、少し緊張を解いた。
そして、俺は驚いた。
そこにいた5人は俺が最後に一緒に戦っていた部隊の隊員だったからだ。
俺は、ゆっくりと影から顔を出して、声をかけた。
「・・・村井2曹」
村井2曹はビクッと肩を硬らせると同時に銃口を俺の方に向ける。
俺は両手を頭と同じ高さに上げた状態で草の影から出ていく。
5名全員が俺の方向に銃口を向けていたが、皆驚いた顔をしていた。
「お、お前は確か・・・3分隊の奴やったよな?」
「はい。東雲1等陸士です。」
俺は、ゆっくりと近づいて顔を見せる。
他のやつは安心したのか銃口を下に向けている。
村井2曹は嬉しそうにしながら小声で俺に話しかけてくる。
「良かった!生きていたんやな!」
村井2曹は右手を差し出す。
「はい。なんとかここまで生きてきました。」
俺はその右手を握り返す。
そして握手をした。
「久しぶりで再会の喜びを分かち合いたいところやけど、流石に敵地で悠々と歩いているわけにもいかんから、どこか隠れれう場所で話そっか。」
「ちょうど、俺が今まで隠れ家として使っている場所が近くにあります。そこで一度休憩してはどうですか。」
「OK!そうしよか。おい、お前らいくぞ。」
そして、俺と5人は俺の今の拠点に向かった。
向かっている途中は、村井2曹とこれまでのことを話した。
「なかなか立派な拠点やないか。」
俺たちは拠点に帰ってきた。
5人はやっと休めると思ったのか、一気に脱力してその場に座り込んだ。
俺は敵から見えないようにするためにしっかりと入口を偽装する。
「・・・まあ、ゆっくりしてください。今のところここがバレた感じはないので安全だと思いますから。」
「おお、すまんな。」
俺は偽装し終わると、溜め込んでいた食糧を中央に広げて皆で囲めるようにした。
「じゃあ、情報共有と致しましょうか。」
5人は食糧を囲むようにして座る。
「こんなに食糧をどこで手に入れたんや?」
「これは、その辺に落ちている木のみを茹でただけのものです。一応俺が全て毒味してあるので大丈夫なはずです。」
そういうと、村井2曹以外の4名はすぐにその木の実に手をつける。
皆、黙ったままずっとどこか上の空だったが、ここにきて正気を取り戻したようだった。
「では、まずこの隙間から双眼鏡で覗くと米海軍基地が見えると思います。」
そう言って皆に双眼鏡を渡す。
「そこが今の中国軍の基地です。」
皆、そこを見た。
それからは皆、俺の話を食い入るように聞いた。
「なるほどな~。ようわかった。」
俺は、今まで手に入れてきた情報を全て言った。
「で、お前はこれからどうするつもりなんや。」
「俺は、敵の本部を叩くつもりです。」
「どうやって?」
「・・・まだ・・・わかりません。だた、私1人ではどうすることもできないので、司令部だけを叩こうかなと思います。」
村井2曹と他の4人に俺の考えを言った。
「・・・そんなの無茶だ!」
武藤2士がいきなり少しお大きな声で俺に言ってきた。
「そんなことをしても・・・成果をかげられず無駄死するだけだ。」
「しかし、ここから帰れる保証もない。・・・やるか、やらないかの問題だ。」
「・・・あ、あの・・・私も無謀だと思います。」
さらに東條1士も反論してきた。
「じゃあ・・・お前らはどうするの?」
俺は終わりの見えない話し合いをする前に反論してきた2人に聞いた。
2人は一瞬押し黙る。
口をゴモゴモさせるが言葉は出てこない。
「何もないだろ?俺はする。お前らがするかどうかは好きにしたらいい。」
俺はその場に立ち上がり、皆に言った。
「さあ、どうする。このまま隠れるもよし。俺と一緒に戦って、運が良ければ生きて帰れて、悪ければ戦死。」
俺はゆっくりと1人1人の目を見た。
5名のうち4名は目を背けた。
しかし、1名だけ俺の目を見たままのやつがいた。
「まあ、しょうがないわな。俺もその考えに賛成や。」
村井2曹だった。
「おい、武藤。お前が今後、こいつらの面倒を見ろ。俺は東雲といく。」
村井2曹はその場に立ち上がり俺と握手をする。
「よろしくな。」
「はい。よろしくお願いします。」
そうして、俺は新しいステージにいくことができた。
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