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第1章 努力は一瞬の苦しみ、後悔は一生の苦しみ
執事のクロード
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ウェルロッド家に仕えるようになってもう400年ほど経っただろうか。
執事のクロードは今日も嘆くのだった。
屋敷の中を歩くだけでどっと疲れるような内装。
それは控えめに言って独創的ーー遠慮なくいえば悪趣味だ。
5代目当主はとても聡明で素晴らしいお人でしたが、アレクのお祖父様ーー6代目当主の時からウェルロッド領は変わった。
意味のない増税を繰り返し、贅沢のかぎりを尽くして多額の借金まで作った。
そうすると、徐々に領地は疲弊していった。
アレクのお父様ーー7代目当主からはこの状況を打開できるだろうと思ったが、6代目の時よりもさらに割る状況になった。
7代目の時にこの屋敷を改築したのだが、これがまたひどい。
私ですら油断していると道に迷ってしまう。
お客様がお越しになっても、見て見ぬふりをするか、頑張ってお世辞をおっしゃって、こちらとしては恥ずかしいかぎりです。
目の前からヒラっヒラのメイド服とだらしない着方をした執事服の男女が歩いてきた。
わきゃわきゃお喋りをして私の前を堂々と通り過ぎていく。
「ねえねえ、この後、桜町に行かない?」
「いいな! もう仕事も終わったし、今から行っちゃうか」
そして、仕事を全て機械に任せて遊びにいってしまう。
なんと質の悪い使用人なのでしょう。
仕事なんてたくさんあるのに、それをほったらかしにして遊びにいくのですか。
「嘆かわしい」
怒りと悲しみの感情を胸にアレクの部屋の前に立った。
新しい当主は5歳という若さでありながら頑張っている様子。
しかし、それでもまだ5歳だ。
うまくやれるのでしょうか。
不安になりながらも、しっかりと身だしなみは正す。
「アレク様、クロードでございます」
ドアから機械の音声でアレクの声が聞こえてきた。
「ーー入れ」
幼子には似つかわしくないひどく落ち着いた声。
ドアが自動で開くと中に入る。
書斎には1人の幼い少年とその横に丸い小型機がいた。
幼い少年ーーアレクは椅子の肘置きに肘をついて手で顎を触って何か思案している。
小型機ーーAIはアレク様の横でサポートをしているようだ。
「アレク様、どのようなご用件でしょうか」
アレクは出していたホログラムを消して部屋の中央に置いてあるソファーに足を組んで座る。
その姿はまだ5歳の幼子とは到底思えない姿。
アレクは首を軽く振ってクロードに座るように指示を出す。
クロードは対面するように立ってソファーには座らない。
「ーーまあ、座れ」
アレクは偉そうに言った。
クロードは「かしこまりました」と言ってソファーに座る。
「【アイ】お茶」
「かしこまりました」
【アイ】ーーAIは空中を飛んで隣の部屋にある調理室に行ってお茶の用意をする。
もうすでに用意していたのか、他の小型機を2機使ってお茶を出した。
「あの、申し訳ございませんが・・・あれはなんなのでしょうか」
クロードは少し訝しんだ口調でアレクに聞いた。
アレクはなんでもなさそうに説明してくる。
「あれはここのAIに機体を与えた結果だ。声だけ聞こえるのはきみが悪いから、アイ自身に作らした。ああ、【アイ】はこいつの名前ね」」
「そうなのですか」
クロードは納得してお茶を一口飲む。
ーー私と同じくらいの技量ですか、私も鍛えないといいけませんね。
クロードは密かに悔しがった。
アレクはティーカップを置いた。
「俺は数ヶ月間、教育プログラムを受けたり、受けた後のリハビリやアウトプットで忙しくて外の世界を見ていなかったんだよ」
「はい、それはそうですね」
アレクは徐々に震え出す。
瞳は怒りに染まっていた。
「でさ、ふと外を歩いたんだよ、気分転換にさ・・・そしたらなんだよこの屋敷。お化け屋敷でもやるのか?」
クロードは気づいてしまったのかと思った。
まあ、今まで気づかなかったのはほとんど屋敷から出たことがなかったのと、一般常識を教えられてこなかったからだ。
今回の教育で感性も磨かれた結果、この状況に気がついたのだろう。
クロードはウェルロッド家の執事だ。
現当主のご家族が作ったこの屋敷を悪くいうわけにはいかない。
どうやって表現したものかと悩んで、言葉にした。
「とても個性的で人の記憶に残りやすい屋敷だと思います」
アレクは机の上を拳で叩く。
「そんな世辞はいらん。俺はこんな屋敷が気に入らんと言ったんだ」
アレクの横で浮いていたアイが机の上にホログラムを映し出す。
そこには、いろんな趣味の悪い家が並んでいた。
「後、なんだこれは!こんな悪趣味な家ばかり持ってて、何に使っていたんだ!国家予算の一部をこいつらの費用に使っているんだぞ。ふざけているのか」
アレクの怒りはもっともだ。
これらの屋敷は6代目、7代目当主の時代に建てられたものばかりだ。
外観んもさることながら、内装も住みにくくて仕方がない仕様になっている。
しかも立地まで悪いときたので擁護のしようもない。
この2代の間に財政状況は悪化していき、借金がどうしようもないくらい膨れ上がっていった。
こうなるとウェルロッド家の親族や分家は本星を捨てて首都星に移住していった。
しかも、これまで支えてきた騎士、使用人も他家に仕官したり故郷に帰ったりしている。
今のウェルロッド家を管理しているのはお金に困窮していた領民だけ。
ウェルロッド家が所持している軍を管理しているのも少ない領民だった。
そのため、アレクが頼れる人などここには誰もいないのだ。
ーーなんと、かわいそうなアレク様でしょうか。どうにかして、私が力になってあげないといけませんね。
「・・・ごもっともかと思います。して、どのようにいたしますか」
「これらはいらんーー破棄だ」
アレクは堂々と宣言した。
クロードは少し眉を寄せた。
「そ、それではそこで仕事をしてきた使用人たちはどうするのですか」
「うん。クビ」
クロードは驚きを表情に出していた。
「いけません! これまで支えてきた人をクビにしては民から信用が失われてしまいます!」
アレクは苛立った様子でクロードに話した。
「その程度で失われる信用などいらん。クビは決定事項だ。それと、この屋敷を立て直したい。あまりにも勝手が悪すぎる」
反論は許さないと言わんばかりに次の話に進む。
ーーああ、また借金をしてしまうのでしょうか。でも、これも投資と思えば大丈夫でしょうか。
クロードは顎に手を置いて考え出す。
これまで黙っていたアイが話し出した。
『各屋敷の解体処分は賛成いたします。しかし、新しいお屋敷の建設はもう少し待つべきと提案いたします』
「なぜ」
アイは丸いレンズをアレクに向けて空中に資料を映し出す。
『はい。現在のウェルロッド領の予算で無理に建設すると大きな負担となってしまいます』
アレクは資料を眺めた。
「じゃあ、どうする」
『とりあえず、旦那様にふさわしいお屋敷を建てるまでの間、最低限の機能を持った家を仮設してそちらに住まわれるというのはどうでしょう』
「それでいい。金は大丈夫なのか」
アイはすぐに今後の予定について話す。
『それにつきましては、現在稼働していない施設の完全停止と軍の再編で補うことで可能です』
「ほう、軍か」
領主は軍を保有することが可能である。
それは、宇宙にはさまざまな犯罪者がうろうろしているため、それの撃退に使用。
また、領地を獲得したい貴族たちが戦争を仕掛けてきたり、こちらから仕掛けたりすることもあることから軍の保有を王国が認めているのだ。
『現在、我が領地で保有している軍の保有数とその稼働率です』
そう言ってアイはアレクに資料を見せる。
「ふーん1万も保有しているのか、結構な数じゃないか。それでそれで、・・・なんじゃこの稼働率!」
その資料には稼働率が1.5%と記載してあった。
アレクの表情が鬼のようになっていた。
「クロード、どうしたらこんな数字になるんだよ」
クロードはアレクの視線から逃げるように顔を背ける。
アレクはイライラして机の上を指でトントン叩いた。
「アイ、再編しろ。お前に任せる」
『かしこまりました』
そこにクロードが待ったをかける。
「お待ちください、アレク様。軍は必要にございます」
「なぜ」
「軍とは我がウェルロッド家の力を表すもの。その数を保有しているからこそ今まで他の勢力から目をつけられなかったのです。ここで、軍を縮小してしまうと、宇宙海賊や侵略戦争してきた貴族から我らを守ることができません」
クロードは必死になってアレクを説得し始めた。
アレクはつまらなさそうにそれを聞いた。
「あのな。ハリボテの時点で戦力外だ。これまで攻められなかったのは、こんな辺鄙な星を誰も欲しがらなかったからだ。欲しかったらとっくの昔に終わっている」
アレクは机の上で足を組んでクロードに言った。
「アレク様、お行儀が悪いですよ」
クロードは困ったような顔をした。
「問題ないーーそれで、軍縮はいいが、実際問題。ウェルロッド家が所有している星は本星だけじゃないだろ? 減らしても大丈夫なのか?」
銀河ダレーシア王国では一貴族が複数の惑星を所有することは認められている。
アレクはウェルロッド家が複数星を持っていると思っているようだ。
「はい。確かに持っておりますが、現在、王国への税を払えていないため、ほぼ全て王国の管理下になっております」
「えぇ~マジかーーそれで、今はいくつ惑星があるの?」
「はい。現在保有しているのはこの本星と資源惑星の2つとなっております」
「・・・軍縮一択」
支配している領地は多くても、結局のところ管理しているのは2つだけ。
それなら一時的に軍縮しても問題ないだろう。
アレクは軍縮を決断した。
「軍は減らすが、いずれ増やすよな?」
『はい。軍縮中に再教育、訓練を施し、旦那様にふさわしい精鋭を用意する予定です。その後、財政状況次第で軍の規模を拡大していく予定です』
アレクはその解答に頷いていた。
クロードはそんなアレクを見て驚いていた。
5歳というあまりにも幼い主人が堂々と決断している。
それはとても偉そうで生意気に見えるがーーとても頼りに思えた。
ーーなんとういう決断力。これはもしや金の卵かもしれません。
クロードは年甲斐にも興奮していた。
「後、他の施設を停止させて破棄する話だが、そっちはどういったことなんだ?」
『下水処理場や発電施設などはあるにはあるのですが、あるというだけ使用可能年数を超えており、能力がおおよそ7割低下した状態で稼働しております』
「・・・ほんと、マジでゴミだな」
アレクは頭に手を置いて呆れていた。
そうやっていろんなことが決まっていき、ちょっとした話し合いのつもりが大きな会議みたいになってしまっていた。
もう日が落ちて暗くなり始めた頃に終わった。
クロードは部屋をでた。
「これは、私も頑張らないといけませんね」
これからウェルロッド家は忙しくなるだろう。
新しい人手とか集めないといけない。
教育も必要だろう。
ーーああ、忙しい!
そう思う割にその表情はとても朗らかに微笑んでいた。
執事のクロードは今日も嘆くのだった。
屋敷の中を歩くだけでどっと疲れるような内装。
それは控えめに言って独創的ーー遠慮なくいえば悪趣味だ。
5代目当主はとても聡明で素晴らしいお人でしたが、アレクのお祖父様ーー6代目当主の時からウェルロッド領は変わった。
意味のない増税を繰り返し、贅沢のかぎりを尽くして多額の借金まで作った。
そうすると、徐々に領地は疲弊していった。
アレクのお父様ーー7代目当主からはこの状況を打開できるだろうと思ったが、6代目の時よりもさらに割る状況になった。
7代目の時にこの屋敷を改築したのだが、これがまたひどい。
私ですら油断していると道に迷ってしまう。
お客様がお越しになっても、見て見ぬふりをするか、頑張ってお世辞をおっしゃって、こちらとしては恥ずかしいかぎりです。
目の前からヒラっヒラのメイド服とだらしない着方をした執事服の男女が歩いてきた。
わきゃわきゃお喋りをして私の前を堂々と通り過ぎていく。
「ねえねえ、この後、桜町に行かない?」
「いいな! もう仕事も終わったし、今から行っちゃうか」
そして、仕事を全て機械に任せて遊びにいってしまう。
なんと質の悪い使用人なのでしょう。
仕事なんてたくさんあるのに、それをほったらかしにして遊びにいくのですか。
「嘆かわしい」
怒りと悲しみの感情を胸にアレクの部屋の前に立った。
新しい当主は5歳という若さでありながら頑張っている様子。
しかし、それでもまだ5歳だ。
うまくやれるのでしょうか。
不安になりながらも、しっかりと身だしなみは正す。
「アレク様、クロードでございます」
ドアから機械の音声でアレクの声が聞こえてきた。
「ーー入れ」
幼子には似つかわしくないひどく落ち着いた声。
ドアが自動で開くと中に入る。
書斎には1人の幼い少年とその横に丸い小型機がいた。
幼い少年ーーアレクは椅子の肘置きに肘をついて手で顎を触って何か思案している。
小型機ーーAIはアレク様の横でサポートをしているようだ。
「アレク様、どのようなご用件でしょうか」
アレクは出していたホログラムを消して部屋の中央に置いてあるソファーに足を組んで座る。
その姿はまだ5歳の幼子とは到底思えない姿。
アレクは首を軽く振ってクロードに座るように指示を出す。
クロードは対面するように立ってソファーには座らない。
「ーーまあ、座れ」
アレクは偉そうに言った。
クロードは「かしこまりました」と言ってソファーに座る。
「【アイ】お茶」
「かしこまりました」
【アイ】ーーAIは空中を飛んで隣の部屋にある調理室に行ってお茶の用意をする。
もうすでに用意していたのか、他の小型機を2機使ってお茶を出した。
「あの、申し訳ございませんが・・・あれはなんなのでしょうか」
クロードは少し訝しんだ口調でアレクに聞いた。
アレクはなんでもなさそうに説明してくる。
「あれはここのAIに機体を与えた結果だ。声だけ聞こえるのはきみが悪いから、アイ自身に作らした。ああ、【アイ】はこいつの名前ね」」
「そうなのですか」
クロードは納得してお茶を一口飲む。
ーー私と同じくらいの技量ですか、私も鍛えないといいけませんね。
クロードは密かに悔しがった。
アレクはティーカップを置いた。
「俺は数ヶ月間、教育プログラムを受けたり、受けた後のリハビリやアウトプットで忙しくて外の世界を見ていなかったんだよ」
「はい、それはそうですね」
アレクは徐々に震え出す。
瞳は怒りに染まっていた。
「でさ、ふと外を歩いたんだよ、気分転換にさ・・・そしたらなんだよこの屋敷。お化け屋敷でもやるのか?」
クロードは気づいてしまったのかと思った。
まあ、今まで気づかなかったのはほとんど屋敷から出たことがなかったのと、一般常識を教えられてこなかったからだ。
今回の教育で感性も磨かれた結果、この状況に気がついたのだろう。
クロードはウェルロッド家の執事だ。
現当主のご家族が作ったこの屋敷を悪くいうわけにはいかない。
どうやって表現したものかと悩んで、言葉にした。
「とても個性的で人の記憶に残りやすい屋敷だと思います」
アレクは机の上を拳で叩く。
「そんな世辞はいらん。俺はこんな屋敷が気に入らんと言ったんだ」
アレクの横で浮いていたアイが机の上にホログラムを映し出す。
そこには、いろんな趣味の悪い家が並んでいた。
「後、なんだこれは!こんな悪趣味な家ばかり持ってて、何に使っていたんだ!国家予算の一部をこいつらの費用に使っているんだぞ。ふざけているのか」
アレクの怒りはもっともだ。
これらの屋敷は6代目、7代目当主の時代に建てられたものばかりだ。
外観んもさることながら、内装も住みにくくて仕方がない仕様になっている。
しかも立地まで悪いときたので擁護のしようもない。
この2代の間に財政状況は悪化していき、借金がどうしようもないくらい膨れ上がっていった。
こうなるとウェルロッド家の親族や分家は本星を捨てて首都星に移住していった。
しかも、これまで支えてきた騎士、使用人も他家に仕官したり故郷に帰ったりしている。
今のウェルロッド家を管理しているのはお金に困窮していた領民だけ。
ウェルロッド家が所持している軍を管理しているのも少ない領民だった。
そのため、アレクが頼れる人などここには誰もいないのだ。
ーーなんと、かわいそうなアレク様でしょうか。どうにかして、私が力になってあげないといけませんね。
「・・・ごもっともかと思います。して、どのようにいたしますか」
「これらはいらんーー破棄だ」
アレクは堂々と宣言した。
クロードは少し眉を寄せた。
「そ、それではそこで仕事をしてきた使用人たちはどうするのですか」
「うん。クビ」
クロードは驚きを表情に出していた。
「いけません! これまで支えてきた人をクビにしては民から信用が失われてしまいます!」
アレクは苛立った様子でクロードに話した。
「その程度で失われる信用などいらん。クビは決定事項だ。それと、この屋敷を立て直したい。あまりにも勝手が悪すぎる」
反論は許さないと言わんばかりに次の話に進む。
ーーああ、また借金をしてしまうのでしょうか。でも、これも投資と思えば大丈夫でしょうか。
クロードは顎に手を置いて考え出す。
これまで黙っていたアイが話し出した。
『各屋敷の解体処分は賛成いたします。しかし、新しいお屋敷の建設はもう少し待つべきと提案いたします』
「なぜ」
アイは丸いレンズをアレクに向けて空中に資料を映し出す。
『はい。現在のウェルロッド領の予算で無理に建設すると大きな負担となってしまいます』
アレクは資料を眺めた。
「じゃあ、どうする」
『とりあえず、旦那様にふさわしいお屋敷を建てるまでの間、最低限の機能を持った家を仮設してそちらに住まわれるというのはどうでしょう』
「それでいい。金は大丈夫なのか」
アイはすぐに今後の予定について話す。
『それにつきましては、現在稼働していない施設の完全停止と軍の再編で補うことで可能です』
「ほう、軍か」
領主は軍を保有することが可能である。
それは、宇宙にはさまざまな犯罪者がうろうろしているため、それの撃退に使用。
また、領地を獲得したい貴族たちが戦争を仕掛けてきたり、こちらから仕掛けたりすることもあることから軍の保有を王国が認めているのだ。
『現在、我が領地で保有している軍の保有数とその稼働率です』
そう言ってアイはアレクに資料を見せる。
「ふーん1万も保有しているのか、結構な数じゃないか。それでそれで、・・・なんじゃこの稼働率!」
その資料には稼働率が1.5%と記載してあった。
アレクの表情が鬼のようになっていた。
「クロード、どうしたらこんな数字になるんだよ」
クロードはアレクの視線から逃げるように顔を背ける。
アレクはイライラして机の上を指でトントン叩いた。
「アイ、再編しろ。お前に任せる」
『かしこまりました』
そこにクロードが待ったをかける。
「お待ちください、アレク様。軍は必要にございます」
「なぜ」
「軍とは我がウェルロッド家の力を表すもの。その数を保有しているからこそ今まで他の勢力から目をつけられなかったのです。ここで、軍を縮小してしまうと、宇宙海賊や侵略戦争してきた貴族から我らを守ることができません」
クロードは必死になってアレクを説得し始めた。
アレクはつまらなさそうにそれを聞いた。
「あのな。ハリボテの時点で戦力外だ。これまで攻められなかったのは、こんな辺鄙な星を誰も欲しがらなかったからだ。欲しかったらとっくの昔に終わっている」
アレクは机の上で足を組んでクロードに言った。
「アレク様、お行儀が悪いですよ」
クロードは困ったような顔をした。
「問題ないーーそれで、軍縮はいいが、実際問題。ウェルロッド家が所有している星は本星だけじゃないだろ? 減らしても大丈夫なのか?」
銀河ダレーシア王国では一貴族が複数の惑星を所有することは認められている。
アレクはウェルロッド家が複数星を持っていると思っているようだ。
「はい。確かに持っておりますが、現在、王国への税を払えていないため、ほぼ全て王国の管理下になっております」
「えぇ~マジかーーそれで、今はいくつ惑星があるの?」
「はい。現在保有しているのはこの本星と資源惑星の2つとなっております」
「・・・軍縮一択」
支配している領地は多くても、結局のところ管理しているのは2つだけ。
それなら一時的に軍縮しても問題ないだろう。
アレクは軍縮を決断した。
「軍は減らすが、いずれ増やすよな?」
『はい。軍縮中に再教育、訓練を施し、旦那様にふさわしい精鋭を用意する予定です。その後、財政状況次第で軍の規模を拡大していく予定です』
アレクはその解答に頷いていた。
クロードはそんなアレクを見て驚いていた。
5歳というあまりにも幼い主人が堂々と決断している。
それはとても偉そうで生意気に見えるがーーとても頼りに思えた。
ーーなんとういう決断力。これはもしや金の卵かもしれません。
クロードは年甲斐にも興奮していた。
「後、他の施設を停止させて破棄する話だが、そっちはどういったことなんだ?」
『下水処理場や発電施設などはあるにはあるのですが、あるというだけ使用可能年数を超えており、能力がおおよそ7割低下した状態で稼働しております』
「・・・ほんと、マジでゴミだな」
アレクは頭に手を置いて呆れていた。
そうやっていろんなことが決まっていき、ちょっとした話し合いのつもりが大きな会議みたいになってしまっていた。
もう日が落ちて暗くなり始めた頃に終わった。
クロードは部屋をでた。
「これは、私も頑張らないといけませんね」
これからウェルロッド家は忙しくなるだろう。
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ーーああ、忙しい!
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