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第1章 努力は一瞬の苦しみ、後悔は一生の苦しみ
ウェルロッド家の1日(使用人たちの午後)
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昼食をとった後、リリーは仕事に戻った。
午後からのアレク様はお客様との面会があるため、面会室にて仕事を行う。
私はその間にアレク様の部屋の掃除をやってしまう。
朝のうちにやっていなかったところを昼にやってしまうのだ。
「そろそろ、おやつのご用意をしなければいけませんね」
私はアレク様専用の調理場でお菓子と紅茶の準備をする。
アイ様が取り寄せた黒田屋のカステラと領内で採れた紅茶を手に取る。
カステラを均等に切って小皿に乗せる。
紅茶はアレク様がのおいしく飲む様子を勝手に想像して丁寧に淹れる。
「アレク様、今日も大変お忙しいのですね。昼のこの時間くらいはいいやして差し上げなければ」
リリーはそう想像してニヤけている。
ちょうど紅茶を入れ終わるタイミングでアイ様がやってくる。
「ちょうど入れ終わったところです。どうぞ」
『申し訳ございません。いつもいつもお忙しいのに』
「いえいえ、私がやりたくてやっていることなので」
AIだと思っていないと人間と本当に間違えてしまうのではないのかと思ってしまうほど感性の豊かな人だ。
私はそう思って、部屋を後にした。
しかし、そこで思わぬハプニングがあった。
バコーーーンッ!!!
面会室のの扉が目の前で吹っ飛んだのだ。
「バッカやろーー!」
「ご、ごめんなさぁーーい!!!」
男の人の声と女の人の声が廊下に響き渡った。
私は唖然として立ち尽くしてしまった。
「どうしていつもいつも持ってくるカタログの商品がこんな不細工なものばかりなんだ!?」
若い少年の声は少し怒気を孕んでおり、赤髪の女性は半泣き状態である。
「ちょ、ちょちょちょっと待ってください! どこかおかしなところがありましたか!? 真面目に外装も考えましたよ!」
すぐに立ち直った女の人は相手の男に食い下がった。
男の方は残念な人を見るように見ていた。
「あのな~、何回目かどうかわからないけどもう一度言うぞ。まともな外装と内装をしてから俺のところに商品をもってこいって言ったんだ」
「では、これのどこがダメだというのですか!?」
男の人は目頭を押さえて言った。
「色を塗っただけだろーーーーー!」
「いいではないですかーーーーー!」
なんか、子供の喧嘩のように聞こえてきました。
私は、やっと動き出して吹っ飛んできた扉をみた。
どうもお客様のタブレット端末を投げて扉を壊したらしい。
どうやったらこんなふうに壊れるのか不思議だ。
私は壊れたタブレット端末を手に取ったところで声がかかった。
「あッ! ちょうどいいところにメイドさんが! 少し来てもらってもいいですか?」
赤髪の女の人が私に声をかけたのだ。
私は驚いてしまい、何も考えずその部屋に入ってしまった。
「失礼しま・・・」
私はその時やっと気づいたのだ。
私は今、面会室の前にいて、面会室にはアレク様がいることを。
「どうした早く入れ」
アレク様の一言で固まっていた体をなんとか動かして部屋に入った。
顔を見ずになんとかお辞儀をする。
「・・・」
そのまま何もいうことができずお辞儀をしたまま固まっていた。
ーーや、やってしまった。人が苦手なアレク様の前に出てしまった。
まさかの失敗で頭がいっぱいだった。
「ささッ! こっちにきてください。これを見てどう思いますか?」
赤髪の女の人に引っ張られて予備のタブレットと思われるものの前に立った。
「アンジュ、俺のメイドに迷惑かけるなよ。仕事中なんだぞ」
私は緊張のあまり声の方向をみてしまった。
そこには綺麗な黒髪に全てのものを見通すかのような黄金の瞳、少し幼さを残した端正な顔立ちの男の子がそこにいた。
それは絵や映像でしか見たことのなかった姿がそこにあった。
「どうしたリリー、そんな呆然として」
「い、いえ、失礼します」
私はそう言ってカタログの商品に目を向けた。
そこには無骨でなんの飾り気のない、なぜか色だけが虹色の戦艦がそこにあった。
ーーああ~、これは確かに怒りますよね~。
でも、どう言ったらこの場は穏やかに切り抜けることができるのだろうか?
リリー、人生で最大のピンチがここにあった。
「そ、そうですね。大変独創的な艦艇でありますね」
アンジュはどこでドヤっとした表情になった。
「ほら~アレク様、メイドさんもいいと言っていますよ」
「い、いえ、決してそういうことではなくてですね」
私はてんやわんやになった。
そこでアレク様が呆れたように言った。
「あのなーアンジュ、リリーが困ってるだろ? 独創的って言葉が出てきた時点でお前らの作ってきたものは商品としてダメなの」
「そ、そんな~」
「これで3回目なんだから、そろそろ学習しろ。俺のところで買ってほしいならそれなりの商品を持ってこい。ほら、今日はもう帰れ」
アレクがそう言うと、アレクにしがみついて泣き出した。
「お願いしまずぅ! 買ってくださいー!」
「お前は毎回それだな。いいかげんその芸に飽きてきたぞ俺は」
アンジュはそろそろと身を引いて席に戻る。
ゴホンッと一つ咳をして、アレク様の前で前屈みになって迫る。
左手を襟元にかけて胸元がチラリと見えるように誘惑するポーズをとった。
「アンジュ~、戦艦を買って欲しい~なぁ~」
私はあんぐりとした。
アレク様はじーっとアンジュ様のことを見る。
そしてフッと鼻で笑うと。
「乳なし」
「ブッコロ!!!!!!」
アンジュ様がアレク様に襲い掛かろうとしたので私は慌ててアンジュ様を抱きしめるように止める。
「わわわわ! アンジュ様ダメです!」
「私のおっぱいを見て乳なしですってぇ!? CカップはありますよCわ!」
リリーに捕まえられてバタバタするアンジュをみてアレクは笑っていた。
「はっはっは! これは滑稽だなアンジュちゃーん」
「くっそ! この童貞伯爵のくせに!」
「おい、童貞伯爵はやめなさい」
「はい、すみません」
なんか漫才でもしている気分になってきた。
アンジュ様は落ち着いたのか椅子に座ってアレク様を恨めしそうにみている。
アレク様はそれを面白そうに見ている。
空中に映し出されたホログラムを操作して、何かの資料を見ている。
「まあ、200隻くらいなら買ってやる」
アレク様がそういうと、アンジュ様は表情を太陽のように輝かした。
「300隻で!!」
「マジで強かすぎるだろ・・・アイ来てくれ」
アレク様がいうとフワーっと空中を滑るようにやってきた。
『戦艦の購入についてでしょうか』
「そうそう。200隻なら購入できそうか?」
『200隻なら購入できます。300隻はこちらでは管理できなくなります』
「なるほどな~、そういうことだアンジュ。200で我慢しろ」
アレク様がそういうと、残念そうにするアンジュ様。
「それでは、200隻でお願いいたしますーーそれと、別件なのですが、機動騎士の整備については順調ですね。こちらが現在の状況です」
そう言ってタブレットからホログラムを出す。
私はその間に新しい紅茶を用意して、アレク様とアンジュ様の分をご用意した。
「ありがとう、リリー」
アレク様がそう言った。
アレク様が私のようなメイドに礼を言った。
ーーいま、私はとんでもないことをしてもらったのでは!?
その瞬間、私はどうにかなりそうな気持ちをなんんとか押さえてその場は耐えた。
「いえ、これもメイドの仕事でありますから」
私はそう言ってのなんとか平静を装う。
そんなやりとりいをしている中アンジュ様は1人でずっと喋っている。
それを聞いているのか聞いていいないのかわからない態度でアレク様は聞いている。
ーーああ、こんなアレク様も素敵ですぅ~。
アレク様は何かに気が付いたかのように私の方を向いた。
「これはいつも飲んでいる紅茶と同じだな。俺はアイが入れてくれたものだと思っていたが、まさか、リリーがいつも入れていてくれたのか?」
リリーはその言葉を聞いた途端、やらかしたと思った。
ーーま、まさか、紅茶一つで私が淹れたものだとわかってくれるとは!・・・嬉しいような、でも、アレク様は人間不信であり、人が嫌いであります。私のような人間が入れていた紅茶を飲んでいたとわかって、不快にしてしまったとしたらどうすれば宜しいのでしょうか。
紅茶一つで大したことはないはずなのだが、リリーの中では嵐の中で立っているような心境だった。
アレク様の前で適当な嘘をつくわけにもいかないので、どうにか心を落ち着かせて本当のことをいう覚悟をした。
「は、はい。私がいつも淹れておりま・・・煮るなり焼くなり、私は覚悟ができております」
「うん? まあ、いいけど。あれだ・・・いつもありがとう。美味しくいただいている」
アレク様は少し笑顔でそう言った。
私は、その笑みを見てしまった。
「・・・・ファぁぁ・・・」
どういうことだろうか。
アレク様は人嫌いではなかっただろうか。
それは本当は適当なデマだったのかもしれない。
ーーいや、そんなことより。
アレク様の笑顔が見れて・・・もう・・・だめ♡
「失礼します、アレク様。こちらに1人メイドが来ておりっておあああ!」
突然クロード執事長がやってきた。
きたと同人に声を上げるものだから、アレク様が鬱陶しそうな目でクロードを見る。
「ここで、大きな声を出すなって。で、そこに1人たってるだろ」
「おお、これは失礼しましたーーアレク様、人と話しても大丈夫なのですか?」
クロード執事長は驚いたような顔をしてアレク様の方を見た。
アレク様は眉を顰めて『こいつ何言っているんだ』と言いたいような顔をした。
そんなお顔も素敵です。
「し、失礼しました。私は彼女が戻ってこないと連絡を受けましたので探しにきた次第であります」
「と、クロードはいいっているそうだが、大丈夫なのかリリー?」
アレク様に心配されるなんて!
いやいやそうではなくて、と私は腕時計を見る。
予定の時間よりも30分ほど経っていた。
私は顔を青くして、アレク様の方を向いてお辞儀をする。
「も、申し訳ございません! 仕事を忘れておりました! 失礼します!!」
私は恥ずかしくなって、ピューと効果音でも出そうな勢いで走って逃げた。
後ろからはまた大きな声が聞こえる。
「アレク様! 聞いていますか! いま、とーーーっても大事な話をしていたのですが!」
「わかったから、大きな声を出すなって! いつも言っているだろ!」
アレク様とアンジュ様の声が廊下に響き渡った。
そんな声が私は嬉しかった。
◆
それからは、残りの仕事を速やかに終わらせた。
有能で有名な私は、仕事が推していようが必ず時間内に仕事を終わらせられる。
そうやって最後のお仕事を終わらせて、同僚のアンナと一緒に使用人専用の大浴場に入った。
「ねえ、今日はどうしたの? 珍しく忙しそうにしてたわよね」
「うーん。まあ、色々あったんだけど~。知りたい?」
「変に勿体ぶるわね、教えなさいよ」
お風呂のお温度おは適温でとても気持ちいい。
おかげさまで、いい感じにリラックスして、口が饒舌になる。
「そうね~、今日はね~」
私は今日の出来事を話した。
それはそれはとても驚きの多い一日だったこと。
幸せな1日だったこと。
アンナはとても羨ましそうに聞いていた。
私がその話をした翌日にはアレク様がそこまで人嫌いではないのではないのかという話が屋敷中に広がった。
クロード執事長も困惑しておられるようだった。
そうやって、アレク様と使用人たちの壁は一つ壊れようとしていた。
午後からのアレク様はお客様との面会があるため、面会室にて仕事を行う。
私はその間にアレク様の部屋の掃除をやってしまう。
朝のうちにやっていなかったところを昼にやってしまうのだ。
「そろそろ、おやつのご用意をしなければいけませんね」
私はアレク様専用の調理場でお菓子と紅茶の準備をする。
アイ様が取り寄せた黒田屋のカステラと領内で採れた紅茶を手に取る。
カステラを均等に切って小皿に乗せる。
紅茶はアレク様がのおいしく飲む様子を勝手に想像して丁寧に淹れる。
「アレク様、今日も大変お忙しいのですね。昼のこの時間くらいはいいやして差し上げなければ」
リリーはそう想像してニヤけている。
ちょうど紅茶を入れ終わるタイミングでアイ様がやってくる。
「ちょうど入れ終わったところです。どうぞ」
『申し訳ございません。いつもいつもお忙しいのに』
「いえいえ、私がやりたくてやっていることなので」
AIだと思っていないと人間と本当に間違えてしまうのではないのかと思ってしまうほど感性の豊かな人だ。
私はそう思って、部屋を後にした。
しかし、そこで思わぬハプニングがあった。
バコーーーンッ!!!
面会室のの扉が目の前で吹っ飛んだのだ。
「バッカやろーー!」
「ご、ごめんなさぁーーい!!!」
男の人の声と女の人の声が廊下に響き渡った。
私は唖然として立ち尽くしてしまった。
「どうしていつもいつも持ってくるカタログの商品がこんな不細工なものばかりなんだ!?」
若い少年の声は少し怒気を孕んでおり、赤髪の女性は半泣き状態である。
「ちょ、ちょちょちょっと待ってください! どこかおかしなところがありましたか!? 真面目に外装も考えましたよ!」
すぐに立ち直った女の人は相手の男に食い下がった。
男の方は残念な人を見るように見ていた。
「あのな~、何回目かどうかわからないけどもう一度言うぞ。まともな外装と内装をしてから俺のところに商品をもってこいって言ったんだ」
「では、これのどこがダメだというのですか!?」
男の人は目頭を押さえて言った。
「色を塗っただけだろーーーーー!」
「いいではないですかーーーーー!」
なんか、子供の喧嘩のように聞こえてきました。
私は、やっと動き出して吹っ飛んできた扉をみた。
どうもお客様のタブレット端末を投げて扉を壊したらしい。
どうやったらこんなふうに壊れるのか不思議だ。
私は壊れたタブレット端末を手に取ったところで声がかかった。
「あッ! ちょうどいいところにメイドさんが! 少し来てもらってもいいですか?」
赤髪の女の人が私に声をかけたのだ。
私は驚いてしまい、何も考えずその部屋に入ってしまった。
「失礼しま・・・」
私はその時やっと気づいたのだ。
私は今、面会室の前にいて、面会室にはアレク様がいることを。
「どうした早く入れ」
アレク様の一言で固まっていた体をなんとか動かして部屋に入った。
顔を見ずになんとかお辞儀をする。
「・・・」
そのまま何もいうことができずお辞儀をしたまま固まっていた。
ーーや、やってしまった。人が苦手なアレク様の前に出てしまった。
まさかの失敗で頭がいっぱいだった。
「ささッ! こっちにきてください。これを見てどう思いますか?」
赤髪の女の人に引っ張られて予備のタブレットと思われるものの前に立った。
「アンジュ、俺のメイドに迷惑かけるなよ。仕事中なんだぞ」
私は緊張のあまり声の方向をみてしまった。
そこには綺麗な黒髪に全てのものを見通すかのような黄金の瞳、少し幼さを残した端正な顔立ちの男の子がそこにいた。
それは絵や映像でしか見たことのなかった姿がそこにあった。
「どうしたリリー、そんな呆然として」
「い、いえ、失礼します」
私はそう言ってカタログの商品に目を向けた。
そこには無骨でなんの飾り気のない、なぜか色だけが虹色の戦艦がそこにあった。
ーーああ~、これは確かに怒りますよね~。
でも、どう言ったらこの場は穏やかに切り抜けることができるのだろうか?
リリー、人生で最大のピンチがここにあった。
「そ、そうですね。大変独創的な艦艇でありますね」
アンジュはどこでドヤっとした表情になった。
「ほら~アレク様、メイドさんもいいと言っていますよ」
「い、いえ、決してそういうことではなくてですね」
私はてんやわんやになった。
そこでアレク様が呆れたように言った。
「あのなーアンジュ、リリーが困ってるだろ? 独創的って言葉が出てきた時点でお前らの作ってきたものは商品としてダメなの」
「そ、そんな~」
「これで3回目なんだから、そろそろ学習しろ。俺のところで買ってほしいならそれなりの商品を持ってこい。ほら、今日はもう帰れ」
アレクがそう言うと、アレクにしがみついて泣き出した。
「お願いしまずぅ! 買ってくださいー!」
「お前は毎回それだな。いいかげんその芸に飽きてきたぞ俺は」
アンジュはそろそろと身を引いて席に戻る。
ゴホンッと一つ咳をして、アレク様の前で前屈みになって迫る。
左手を襟元にかけて胸元がチラリと見えるように誘惑するポーズをとった。
「アンジュ~、戦艦を買って欲しい~なぁ~」
私はあんぐりとした。
アレク様はじーっとアンジュ様のことを見る。
そしてフッと鼻で笑うと。
「乳なし」
「ブッコロ!!!!!!」
アンジュ様がアレク様に襲い掛かろうとしたので私は慌ててアンジュ様を抱きしめるように止める。
「わわわわ! アンジュ様ダメです!」
「私のおっぱいを見て乳なしですってぇ!? CカップはありますよCわ!」
リリーに捕まえられてバタバタするアンジュをみてアレクは笑っていた。
「はっはっは! これは滑稽だなアンジュちゃーん」
「くっそ! この童貞伯爵のくせに!」
「おい、童貞伯爵はやめなさい」
「はい、すみません」
なんか漫才でもしている気分になってきた。
アンジュ様は落ち着いたのか椅子に座ってアレク様を恨めしそうにみている。
アレク様はそれを面白そうに見ている。
空中に映し出されたホログラムを操作して、何かの資料を見ている。
「まあ、200隻くらいなら買ってやる」
アレク様がそういうと、アンジュ様は表情を太陽のように輝かした。
「300隻で!!」
「マジで強かすぎるだろ・・・アイ来てくれ」
アレク様がいうとフワーっと空中を滑るようにやってきた。
『戦艦の購入についてでしょうか』
「そうそう。200隻なら購入できそうか?」
『200隻なら購入できます。300隻はこちらでは管理できなくなります』
「なるほどな~、そういうことだアンジュ。200で我慢しろ」
アレク様がそういうと、残念そうにするアンジュ様。
「それでは、200隻でお願いいたしますーーそれと、別件なのですが、機動騎士の整備については順調ですね。こちらが現在の状況です」
そう言ってタブレットからホログラムを出す。
私はその間に新しい紅茶を用意して、アレク様とアンジュ様の分をご用意した。
「ありがとう、リリー」
アレク様がそう言った。
アレク様が私のようなメイドに礼を言った。
ーーいま、私はとんでもないことをしてもらったのでは!?
その瞬間、私はどうにかなりそうな気持ちをなんんとか押さえてその場は耐えた。
「いえ、これもメイドの仕事でありますから」
私はそう言ってのなんとか平静を装う。
そんなやりとりいをしている中アンジュ様は1人でずっと喋っている。
それを聞いているのか聞いていいないのかわからない態度でアレク様は聞いている。
ーーああ、こんなアレク様も素敵ですぅ~。
アレク様は何かに気が付いたかのように私の方を向いた。
「これはいつも飲んでいる紅茶と同じだな。俺はアイが入れてくれたものだと思っていたが、まさか、リリーがいつも入れていてくれたのか?」
リリーはその言葉を聞いた途端、やらかしたと思った。
ーーま、まさか、紅茶一つで私が淹れたものだとわかってくれるとは!・・・嬉しいような、でも、アレク様は人間不信であり、人が嫌いであります。私のような人間が入れていた紅茶を飲んでいたとわかって、不快にしてしまったとしたらどうすれば宜しいのでしょうか。
紅茶一つで大したことはないはずなのだが、リリーの中では嵐の中で立っているような心境だった。
アレク様の前で適当な嘘をつくわけにもいかないので、どうにか心を落ち着かせて本当のことをいう覚悟をした。
「は、はい。私がいつも淹れておりま・・・煮るなり焼くなり、私は覚悟ができております」
「うん? まあ、いいけど。あれだ・・・いつもありがとう。美味しくいただいている」
アレク様は少し笑顔でそう言った。
私は、その笑みを見てしまった。
「・・・・ファぁぁ・・・」
どういうことだろうか。
アレク様は人嫌いではなかっただろうか。
それは本当は適当なデマだったのかもしれない。
ーーいや、そんなことより。
アレク様の笑顔が見れて・・・もう・・・だめ♡
「失礼します、アレク様。こちらに1人メイドが来ておりっておあああ!」
突然クロード執事長がやってきた。
きたと同人に声を上げるものだから、アレク様が鬱陶しそうな目でクロードを見る。
「ここで、大きな声を出すなって。で、そこに1人たってるだろ」
「おお、これは失礼しましたーーアレク様、人と話しても大丈夫なのですか?」
クロード執事長は驚いたような顔をしてアレク様の方を見た。
アレク様は眉を顰めて『こいつ何言っているんだ』と言いたいような顔をした。
そんなお顔も素敵です。
「し、失礼しました。私は彼女が戻ってこないと連絡を受けましたので探しにきた次第であります」
「と、クロードはいいっているそうだが、大丈夫なのかリリー?」
アレク様に心配されるなんて!
いやいやそうではなくて、と私は腕時計を見る。
予定の時間よりも30分ほど経っていた。
私は顔を青くして、アレク様の方を向いてお辞儀をする。
「も、申し訳ございません! 仕事を忘れておりました! 失礼します!!」
私は恥ずかしくなって、ピューと効果音でも出そうな勢いで走って逃げた。
後ろからはまた大きな声が聞こえる。
「アレク様! 聞いていますか! いま、とーーーっても大事な話をしていたのですが!」
「わかったから、大きな声を出すなって! いつも言っているだろ!」
アレク様とアンジュ様の声が廊下に響き渡った。
そんな声が私は嬉しかった。
◆
それからは、残りの仕事を速やかに終わらせた。
有能で有名な私は、仕事が推していようが必ず時間内に仕事を終わらせられる。
そうやって最後のお仕事を終わらせて、同僚のアンナと一緒に使用人専用の大浴場に入った。
「ねえ、今日はどうしたの? 珍しく忙しそうにしてたわよね」
「うーん。まあ、色々あったんだけど~。知りたい?」
「変に勿体ぶるわね、教えなさいよ」
お風呂のお温度おは適温でとても気持ちいい。
おかげさまで、いい感じにリラックスして、口が饒舌になる。
「そうね~、今日はね~」
私は今日の出来事を話した。
それはそれはとても驚きの多い一日だったこと。
幸せな1日だったこと。
アンナはとても羨ましそうに聞いていた。
私がその話をした翌日にはアレク様がそこまで人嫌いではないのではないのかという話が屋敷中に広がった。
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