第四図書室でもお静かに。

カーキー

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後継者選びは慎重に 二

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 あの後、しばらくその場でどうしようか考えたが、結局式典の後に兄を探す事にした。

  4日前に家で「闘技場で待ってれば見つけるからあんまウロウロすんなよ」と兄に言われたが闘技場が何処にあるのかすら俺は知らない。
 とにかく新入生達の流れについていけば式典の場所には着けるだろう。

ちらほら見えるローブを着ている人たちは誘導係らしい。「式典はあっちですよー」と声を上げている。

 しばらく歩いているとやっと学園の門が見えてきた。街の外壁の門をくぐってから20分以上歩いた気がする。それにしてもでかいモンだ

……今のは誰にも言わないようにしよう。

 門とは言うが扉はついておらず、外壁に、いや、城壁にトンネルがあるような感じだ。こういった大きな壁はだいたい魔法で作られている。うちの町の外壁もそうだった。たまに町の魔法使いが点検しているのを何度か見たことがある。小さい頃に一緒に遊んでいた連中と後をついて回ったのはいい思い出だ。
 門を通ると敷地内には大きな建物が4つ見えた。人の流れは一際大きな城のような建物には向かってはおらず、見た感じ3番目に大きな筒状の建物に向かっていた。

 誘導係の人たちが「式典はあっちでーす!」「向こうの闘技場です!」と声を上げている。どうやらあの建物は闘技場らしい。闘技場で待ってろってそういうことか。

 いくつか入口があるようで回り込んで別の入口から入る人たちもいる。
俺は正面から入ることにした。人は多いけどあんまり長く歩くのは辛い。
闘技場に入ってすぐに階段があり、それを登るように誘導されている。入口も階段も広く作られているが、1人だれかが倒れるだけで2、3人怪我をしそうなくらい密集して進んでいる。 
 階段を登り終えしばらく薄暗い通路を歩いていると通路に光が差し込んできた。それはまるで闇に包まれた夜に希望の光を差し伸べる朝日のよう……いや、なんでもない。無理をした(作者が)。要するに外に繋がってるのが見えてきた。


 まばゆい白に包まれながら光の中に身を…これはもういいか…。
 闘技場は結構広い舞台を楕円状に小高い壁が囲みその上に階段状に席が作られていた。
 誘導係が適当に座って時間まで待てと言っているから適当に空いてる場所を探すか。

 やっぱりどこから学園に来るにしても1人というのは珍しいのか1人で座っている人はあんまり見かけない気がする。

「あんま空いてねえなぁ」

そう口に出してしまうくらいには席が空いていない。空いていたとしても人と人の間に少し遠慮がちに開けられた間だったりして少し座りづらい感じがする。

詰めろよ!詰めて俺が人と少しスペース空けて座れるくらいのスペースを開けろよ!

そうこうしている間にその隙間すら埋まってきている。

兄はどこにいる、ん…だ……ろ……。

いた。

階段状になった一番上の座席に座り込んで頬杖をついている黒髪は多分そうだろう。黒い髪はここではあまり見ていないし。

グローリー家の長男坊のアレン・グローリーだ。

入り口から出てくる新入生を眺めているように見えるが、こっちに気づかないあたり虚空を見つめているのかもしれない。

近づいて声をかけようとしたところ、声をかけるまえに気づいたようで声をかけてきた。

「おぉ、バップ、遅かったじゃねえか。探たんだけどどこいたんだ?」

「今ココに入ってきたところだよ。って言うか、探してなかったじゃん」

「いやいや、探してたんだよ。5分くらい前はな、お前が遅いからまだ来てないんじゃねえかと思ってここで入口見てたんだよ。みつけはしなかったけど見つかったんだから結果オーライだろ。」

「へえ、メグさんは?いっしょにきてないの?」

メグさんってのは、兄の彼女だ。
家が近くで昔はよく遊んで貰ってた。ちなみにウチは宿屋でメグさんところは定食屋だ。卒業後すぐに結婚して宿屋を二人が継ぐことは決まってるらしい。
今は確か一緒に住んでるって言ってたきがする。

「朝起きなかったから置いてきた。まだ寝てんじゃねえかな。昨日は遅くまで起きてたからな」

「なに?昨夜はお楽しみだったの?」

「課題が終わってなかったんだよ」
「兄ちゃんの?」
「あ・い・つ・の!」

メグさんはしっかりした優しいお姉さんってイメージしかないから意外だった。

「…やっぱり昨夜はおたのし
「ちげぇよ!」

そう食い気味に否定されると余計に怪しく感じる。実際のところはどうでもいいし、兄夫婦の営み事情なんて想像するのは正直気分が悪くなる。早く姪の顔見せろこの野郎。

「だいたいお前なぁ、自分の兄弟の性事情なんか…なんだその本?」

そうだった、兄にあったら聞こうと思っていたのをすっかり忘れていた。気づいてくれなければ可愛い女の子と出会ってキラキラ学園ライフを送っていたところだった。

「これさあ、ここに来る途中で女の人に渡されたんだよ。なんか理事長に渡せだとさ。俺が直接」

そう言った途端兄は「うえっ」変な声をあげてと顔を顰めた。

「それ多分呪物だぜ。校長の専門呪術系なんだよ。うわーそれ近づかんなよ」

そんな物渡されたのか!なんか渡される時急いでたみたいだし本当に呪物に見えてきた…。

「うぇええ、これ代わりに持ってってよ」

「いやに決まってんだろ!それにお前が渡せって言われたんだろ!お前が持ってけよ!」

「えぇえ、理事長に会いに行って会えるのかも知らないし…」

そうだ、俺が会いに行って会えるような相手でもないだろう!

「いや、会えるぞ」

え?
「え?」

「多分な…」
 
「じゃ、じゃあ今すぐにでも持って行きたいんだけど…」

「今は無理だろ、どこにいるのかわからねぇしもうすぐ式典も始まるしな。まあ終わったら一緒に探してやるよ」

早く手放したい…。

《5分後に式典が始まります。》

闘技場内に落ち着いた女性の声が響き渡り、闘技場内がさっきまでに増してザワザワとしだした。

「お、もうすぐか。そろそろ口を閉じとけよ?大変なことになるからな」

そう言ったきり兄は黙ってステージの方を向いた。
いったいどういうことなんだ?とりあえず黙っておこう。

《1分前となりました。お静かにお願いします。》

もう間もなく始まるらしい。少しだけザワつきが収まったみたいだ。

少し時間を置いてステージの中央に女性が現れた。多分いったいたっんだろう。

女性がぐるっと客席に座る生徒たちを見回した。


《『お静かに』》


その言葉の後に言葉を発する人はいなくなった。

《ようこそ新入生のみなさん。初めまして、私がここの校長、キティ・エント・オスマンサスです。》


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