anything ~elf’s life~

むひ

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カラバート

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「寒い…」
エルヒムの頬に冷たい感触。雨が降っていた。いつの間にか寝ていたようだ。どちらかと言うと気絶に近い。
寒さに耐えかね火を起こした。水筒に昨日の水が残っている。カップに入れ火にかけた。豆を潰したり薬草を取りに行く気力もなく、湯気の立つ白湯を抱えながら飲んだ。夏と言えど服を乾かさないと風邪をひく。冬でなくて良かったと心から思った。
ある程度暖まったところで現実に戻る。何をすべきか。
あの戦況からしてこちらが有利だろう。助けに行くという選択肢はなくても良い。そして…今更戻れるはずもない。
ここからだとカラバートが一番近い。行ってみるか。
焚き火のおかげでずいぶん暖まった。

カラバートは意外と遠かった。一度行っただけだが記憶の中ではもう着いてもいい頃だ。
道すがら所々の木に張り紙がしてあった。
「なんだ?これ?」
近寄ってみる。『カラバート武術大会のお知らせ』
「エルフなのに魔法じゃないのか…」

街にたどり着き。はてどうしようか。
とりあえず「いたずら妖精の森」がどうなったか知りたい。情報と言えば、酒場だろう。
あった、BARホメイと書いてある。
BARの中は広く伝染病が嘘のように流行っていた。カウンターで淡々と飲む者。ポーカーに興じる者。はたまたテーブルに乗って歌い出す者見てるだけで楽しくなる。いや、そうじゃなくて情報だ。
隅の空いているテーブル座る。
「すいませーん、ミルクをお願いします」
ウエイターはクスッと笑い、かしこまりました、お気をつけて、と裏に入っていった。
『お気をつけて?』なんだそれ。奥からズカズカこっちに向かってくる一人の金髪の女性。
「てぇめぇこのやろう!BARに来てミルクたーどういう根性してやがるんだ!酒呑みやがれ!酒!」
すっごいお酒臭い。
「す、すいません!まだ未成年で…その…」
「なんだお前、未成年か!ほう、てこたーなんか話があんだろ。俺は店主のホメイだ」
圧倒されながらもこの人は大丈夫かもしれないという漠然とした思いがあった。
「僕はエルヒム。いたずら妖精の森から来ました。森が兵士に襲われたんですけど何か知りませんか?」
ホメイは考え込む。「うーん、ちょっと裏に来な」
とスタスタと歩き出す。
「裏って、しばかれたりしない?」
「うるっせー!つべこべ言わず着いてこい!」
「はいいいい」
荷物を乱暴に掴んで着いていった。
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