5 / 22
カラバート
しおりを挟む
「寒い…」
エルヒムの頬に冷たい感触。雨が降っていた。いつの間にか寝ていたようだ。どちらかと言うと気絶に近い。
寒さに耐えかね火を起こした。水筒に昨日の水が残っている。カップに入れ火にかけた。豆を潰したり薬草を取りに行く気力もなく、湯気の立つ白湯を抱えながら飲んだ。夏と言えど服を乾かさないと風邪をひく。冬でなくて良かったと心から思った。
ある程度暖まったところで現実に戻る。何をすべきか。
あの戦況からしてこちらが有利だろう。助けに行くという選択肢はなくても良い。そして…今更戻れるはずもない。
ここからだとカラバートが一番近い。行ってみるか。
焚き火のおかげでずいぶん暖まった。
カラバートは意外と遠かった。一度行っただけだが記憶の中ではもう着いてもいい頃だ。
道すがら所々の木に張り紙がしてあった。
「なんだ?これ?」
近寄ってみる。『カラバート武術大会のお知らせ』
「エルフなのに魔法じゃないのか…」
街にたどり着き。はてどうしようか。
とりあえず「いたずら妖精の森」がどうなったか知りたい。情報と言えば、酒場だろう。
あった、BARホメイと書いてある。
BARの中は広く伝染病が嘘のように流行っていた。カウンターで淡々と飲む者。ポーカーに興じる者。はたまたテーブルに乗って歌い出す者見てるだけで楽しくなる。いや、そうじゃなくて情報だ。
隅の空いているテーブル座る。
「すいませーん、ミルクをお願いします」
ウエイターはクスッと笑い、かしこまりました、お気をつけて、と裏に入っていった。
『お気をつけて?』なんだそれ。奥からズカズカこっちに向かってくる一人の金髪の女性。
「てぇめぇこのやろう!BARに来てミルクたーどういう根性してやがるんだ!酒呑みやがれ!酒!」
すっごいお酒臭い。
「す、すいません!まだ未成年で…その…」
「なんだお前、未成年か!ほう、てこたーなんか話があんだろ。俺は店主のホメイだ」
圧倒されながらもこの人は大丈夫かもしれないという漠然とした思いがあった。
「僕はエルヒム。いたずら妖精の森から来ました。森が兵士に襲われたんですけど何か知りませんか?」
ホメイは考え込む。「うーん、ちょっと裏に来な」
とスタスタと歩き出す。
「裏って、しばかれたりしない?」
「うるっせー!つべこべ言わず着いてこい!」
「はいいいい」
荷物を乱暴に掴んで着いていった。
エルヒムの頬に冷たい感触。雨が降っていた。いつの間にか寝ていたようだ。どちらかと言うと気絶に近い。
寒さに耐えかね火を起こした。水筒に昨日の水が残っている。カップに入れ火にかけた。豆を潰したり薬草を取りに行く気力もなく、湯気の立つ白湯を抱えながら飲んだ。夏と言えど服を乾かさないと風邪をひく。冬でなくて良かったと心から思った。
ある程度暖まったところで現実に戻る。何をすべきか。
あの戦況からしてこちらが有利だろう。助けに行くという選択肢はなくても良い。そして…今更戻れるはずもない。
ここからだとカラバートが一番近い。行ってみるか。
焚き火のおかげでずいぶん暖まった。
カラバートは意外と遠かった。一度行っただけだが記憶の中ではもう着いてもいい頃だ。
道すがら所々の木に張り紙がしてあった。
「なんだ?これ?」
近寄ってみる。『カラバート武術大会のお知らせ』
「エルフなのに魔法じゃないのか…」
街にたどり着き。はてどうしようか。
とりあえず「いたずら妖精の森」がどうなったか知りたい。情報と言えば、酒場だろう。
あった、BARホメイと書いてある。
BARの中は広く伝染病が嘘のように流行っていた。カウンターで淡々と飲む者。ポーカーに興じる者。はたまたテーブルに乗って歌い出す者見てるだけで楽しくなる。いや、そうじゃなくて情報だ。
隅の空いているテーブル座る。
「すいませーん、ミルクをお願いします」
ウエイターはクスッと笑い、かしこまりました、お気をつけて、と裏に入っていった。
『お気をつけて?』なんだそれ。奥からズカズカこっちに向かってくる一人の金髪の女性。
「てぇめぇこのやろう!BARに来てミルクたーどういう根性してやがるんだ!酒呑みやがれ!酒!」
すっごいお酒臭い。
「す、すいません!まだ未成年で…その…」
「なんだお前、未成年か!ほう、てこたーなんか話があんだろ。俺は店主のホメイだ」
圧倒されながらもこの人は大丈夫かもしれないという漠然とした思いがあった。
「僕はエルヒム。いたずら妖精の森から来ました。森が兵士に襲われたんですけど何か知りませんか?」
ホメイは考え込む。「うーん、ちょっと裏に来な」
とスタスタと歩き出す。
「裏って、しばかれたりしない?」
「うるっせー!つべこべ言わず着いてこい!」
「はいいいい」
荷物を乱暴に掴んで着いていった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す
RINFAM
ファンタジー
なんの罰ゲームだ、これ!!!!
あああああ!!!
本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!
そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!
一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!
かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。
年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。
4コマ漫画版もあります。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜
侑子
恋愛
小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。
父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。
まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。
クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。
その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……?
※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる