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快勝と甲斐性
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とりあえず泊まるところがないのでホメイさんの事務所を貸してもらった。明日エントリーの発表で明後日が大会らしい。眠れず少し汗を流したくて外に出た。
夜も深くなり虫の音がいいBGMになる。魔法が使えない分、体術を重点的にやっていたので少しは覚えがあった。型の練習をしているとホメイさんが出てきた。
「よう、頑張っとるかね若者よ」
「ちょっとやる気になってきました」
ホメイはニヤッと笑う。「それはどうしてだ?」
「ほんとに何かあるような気がして…というか伝染病なのに街の人は警戒してないですよね?」
「そんなもんねぇよ」
「無い?無いんですか?」
「なんの噂だか知らないが無いのは確かだ」
「一体…」
「お前の村がダッタン国に襲われたと言ったな。なんか関係ありそうだが」
「なんでまたそんな嘘を」
「俺に聞かれてもな」
「ですよね」
ホメイはだし抜けに「村は無事だ」と言った。
「知ってたんですか?なんでもっと早く教えてくれなかったんですか!」
「さっき知ったんだよ!ダッタン国の指揮官が捕まったんだが、流石だな、人質…エルフ質か、を使って抜け出して退却したそうだ」
「誰か捕まえられたんですか?無事じゃないじゃないですか!」
「だから村は無事だと言っただろ」
「で、誰なんです?」
「そんなことまで分かんねえよ!調べてる最中だからまってろ!」
気にはなったが調べてくれているなら待つしかなかった。
大会当日競技場観客席は満席になっていた。
「凄い人気だな」
プタリはフンと鼻を鳴らし「そりゃこの街の名物だからね、各国から客が集まってくるんだよ」と自慢げに言った。
エルヒムを呼ぶアナウンスが流れ、控え室に戻る。
「いよいよか」
興奮と冷静がごちゃ混ぜで変な気分だ。プタリの励ましで会場に出た。
相手は体格も良く興奮しているのか鼻息が見えた。
ゴングが鳴らされ、相手が向かってくる。エルヒムは突進を半身でかわし、相手の突進する力を利用して投げ飛ばす。「おおおお」という客席から歓声が上がった。強そうに見えてやっぱり魔法を得意とするエルフ。
「行けるかも」
倒れた相手の腕関節をそのまま決める。相手はたまらずギブアップ。
レフリーの「勝者!エルヒム!」の叫びで会場は大いに沸いた。
帰り際会場通路でファノとすれ違った。「おめでとう、やるわね」とファノは少し微笑んだ。
エルヒムは息を整えながら。
「あなたと対戦できるのを楽しみにしてます。その時まで負けないでくださいね」
ファノの何も言わずフッと笑って立ち去った。
大会も中盤に近づき順調に順位を伸ばした。もちろんあの三人も一緒だ。
と、ここで控え室の奥が騒がしい。ファノの声だ。何やら興奮している。
「今から行く!」
バンッという扉の音と同時に外に出ていった。一体何があったというのだ。
マビルが追いかける。「私も同行するわ」
「あ、ちょっと待ってよ。ねえ、大会は?」とピッツオ。
すれ違いざまエルヒムはマビルに事情を聞く。
「ダッタン国にファノの親友が捕まったらしいのよ。それで」
「大会はどうするんですか?」
「まあ、棄権だろうね」
ダッタン国に捕虜となったのはファノの友達だったのか。それにしても棄権って…
エルヒムは少し考える。「運営と掛け合ってみます」
ピッツオはマントを羽織りながら。
「どう掛け合うのさ。運営は頭が硬いからねぇ。まあ頑張ってくれたまえ」
夜も深くなり虫の音がいいBGMになる。魔法が使えない分、体術を重点的にやっていたので少しは覚えがあった。型の練習をしているとホメイさんが出てきた。
「よう、頑張っとるかね若者よ」
「ちょっとやる気になってきました」
ホメイはニヤッと笑う。「それはどうしてだ?」
「ほんとに何かあるような気がして…というか伝染病なのに街の人は警戒してないですよね?」
「そんなもんねぇよ」
「無い?無いんですか?」
「なんの噂だか知らないが無いのは確かだ」
「一体…」
「お前の村がダッタン国に襲われたと言ったな。なんか関係ありそうだが」
「なんでまたそんな嘘を」
「俺に聞かれてもな」
「ですよね」
ホメイはだし抜けに「村は無事だ」と言った。
「知ってたんですか?なんでもっと早く教えてくれなかったんですか!」
「さっき知ったんだよ!ダッタン国の指揮官が捕まったんだが、流石だな、人質…エルフ質か、を使って抜け出して退却したそうだ」
「誰か捕まえられたんですか?無事じゃないじゃないですか!」
「だから村は無事だと言っただろ」
「で、誰なんです?」
「そんなことまで分かんねえよ!調べてる最中だからまってろ!」
気にはなったが調べてくれているなら待つしかなかった。
大会当日競技場観客席は満席になっていた。
「凄い人気だな」
プタリはフンと鼻を鳴らし「そりゃこの街の名物だからね、各国から客が集まってくるんだよ」と自慢げに言った。
エルヒムを呼ぶアナウンスが流れ、控え室に戻る。
「いよいよか」
興奮と冷静がごちゃ混ぜで変な気分だ。プタリの励ましで会場に出た。
相手は体格も良く興奮しているのか鼻息が見えた。
ゴングが鳴らされ、相手が向かってくる。エルヒムは突進を半身でかわし、相手の突進する力を利用して投げ飛ばす。「おおおお」という客席から歓声が上がった。強そうに見えてやっぱり魔法を得意とするエルフ。
「行けるかも」
倒れた相手の腕関節をそのまま決める。相手はたまらずギブアップ。
レフリーの「勝者!エルヒム!」の叫びで会場は大いに沸いた。
帰り際会場通路でファノとすれ違った。「おめでとう、やるわね」とファノは少し微笑んだ。
エルヒムは息を整えながら。
「あなたと対戦できるのを楽しみにしてます。その時まで負けないでくださいね」
ファノの何も言わずフッと笑って立ち去った。
大会も中盤に近づき順調に順位を伸ばした。もちろんあの三人も一緒だ。
と、ここで控え室の奥が騒がしい。ファノの声だ。何やら興奮している。
「今から行く!」
バンッという扉の音と同時に外に出ていった。一体何があったというのだ。
マビルが追いかける。「私も同行するわ」
「あ、ちょっと待ってよ。ねえ、大会は?」とピッツオ。
すれ違いざまエルヒムはマビルに事情を聞く。
「ダッタン国にファノの親友が捕まったらしいのよ。それで」
「大会はどうするんですか?」
「まあ、棄権だろうね」
ダッタン国に捕虜となったのはファノの友達だったのか。それにしても棄権って…
エルヒムは少し考える。「運営と掛け合ってみます」
ピッツオはマントを羽織りながら。
「どう掛け合うのさ。運営は頭が硬いからねぇ。まあ頑張ってくれたまえ」
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