私、片思いします

春子の章

遠い花火

｢春子ー。直樹ー。こんな所に居たの？｣
　里美が駆け寄ってきた。
｢こいつがどっか行っちまうし、足が痛いって言うから｣
　里美のニヤニヤが再び
｢あなた達、遠くから見たら恋人どうしだったわよ。二人で何してたのよー。このこのー｣
　直樹は顔を真っ赤にして反論した。
｢そんなんじゃねーよ。こいつが迷子になって足ケガしてたからここで座ってただけだろ！それに、こんなドジな奴に気があるわけねーだろ！｣

え？……

　そうよね、私なんかに……そうよね、……一人で舞い上がって一人で勘違いして…本当バカみたい…

　春子は痛む足も気にせずに走った。誰かが私の名前を呼んだ気がしたけど、そんなの関係なかった。涙が見えないように下を向いて必死に走ったからいっぱい人にぶつかった。

　空に舞い散る花火がなんだか私に見えて。花火なんてキライ……
私は耳を塞ぐ…
次第に花火の音は遠くなった…