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第一部 第三章 動き出す歯車
第二十六話 彼女の待つ戦場へ
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ルーカス率いる特務部隊は、魔獣掃討のため居住区内を駆けた。
王都は混乱を見せている。
地震の被害に加えて侵入した魔獣に住民が襲われる事態と重なり、騎士団が避難誘導、救助活動に当たっているが深刻な状況だった。
王都オレオールは円状に五層の区画からなる都市だ。
王城、行政区、教育機関・研究機関特区から先は塀が立てられ区切られているため、魔獣が侵入する事はなかったが——問題はその外側の区画。
生活の基盤、富裕層の居住区、一般市民の居住区と商店街のある二つの区画、そこへ魔獣が入り込み住人を襲っていると言うのだ。
街中を見れば地震の影響が色濃く出ており、崩れた建物や地割れが見受けられる。
さらに魔獣の仕業と思われる惨たらしい光景や、血痕が飛び散っている。
負傷した人、泣き叫ぶ者、事切れた人影——。
住民は戸惑いと恐怖の表情に支配されており、王都はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図を作り出していた。
(酷い有様だ……)
ルーカスは惨状を目の当たりにして、口を真一文字に引き結んだ。
多くの戦場を経験してきたが、悲劇に慣れる事はない。
悲嘆とやるせなさに胸が痛んで仕方なかった。
(天災とは言え……歯痒いな)
悔しさを噛み締め駆けていると——行く手に、狼型の魔獣、魔狼が建物の合間から襲い掛かってきた。
ルーカスは剣帯の鞘に納めた刀の柄へ手を添えると、牙を剥いて飛び掛かる魔狼を刀の抜きざまに一刀両断。
——居合・一閃!
抜刀術により二つに裂かれた躯体は血飛沫を撒き地に落ちた。
続いて、同じように建物の合間から飛び出して来た魔狼と犬型の黒い魔獣——魔犬は素早く太刀を振って、寸分の隙も与えず双方を斬り伏せた。
後方で同様に魔獣が現れるが、殿を守るロベルトが難なく対処している。
隊列はルーカスを先頭にハーシェル、アーネスト、アイシャ、ロベルトの並びで、アイシャが探知魔術を使い、魔獣のおおよその地点へと移動し素早く討伐。
居住区に出てからこの流れを繰り替えし行っていた。
地道な方法だが、街中で大規模な攻撃魔術は使えないので他に手段がない。
「この付近はもう魔獣の反応はありません」
「了解だ。次の地点は?」
「はい。次は——」
ルーカスはアイシャの返答を聞きながら、刃に滴る血を振り払い、刀を鞘へと納めた。
すると「リリリン」とルーカスのピアス型のリンクベルが鳴り、それに応答する。
「特務部隊一班ルーカスだ」
『ルーカス団長、第一魔術師団クロウです。先の件についてご報告です』
第一魔術師団の師団長からの連絡だった。
「先の件」——調査を依頼した件で、どうやら情報が掴めたらしい。
しかし報告を聞くためとはいえ、足を止める訳には行かない。
ルーカスは後ろへ続くハーシェルに先頭を任せようと、目配せで合図を送り首を縦に振って見せた。
そうすれば意図に気付いたハーシェルが「了解ッ!」と返し前へ出て場所を交代。
一班はアイシャが示した次の地点へと移動を開始し、ルーカスは走りながら報告に耳を傾けた。
『団長の懸念通り、門の存在が確認されました。それも二カ所。王都の外、北西と南東の城門近くの街道に』
やはり、と思う。
嫌な予感が当たってしまった。
「例の術式の準備は?」
『問題ありません。実践投入可能です』
例の術式とは、門対策として開発が急がれていた術式だ。
門の存在は世界会議でも話題となり、各国協力の元、異例の早さで開発が行われたのだとか。
なんでもホドのマナ機関技師の技術提供があったらしく、マナ機関を補助として用いる事で完成形に至ったと聞いている。
ルーカスの力と門凍結術式と名付けられた術式があるため、二カ所へ同時対処する事は可能だ。
(そうなると問題はどちらへ向かうか……だな)
北西と南東では全く正反対の方向だ。
『どうされますか?』
「各方面の詳しい情報は?」
『騎士団は元帥閣下の采配の元、既に両方面へ向かっております。北西はどうやら強力な魔術師が応戦しているらしく、魔獣の増加を抑えられているとの事。しかし南東の方は被害が大きく……』
(であれば、距離的には北西が近いが、根本的な脅威の排除と言う意味で、被害の大きい南東へ向かうのが最善か?)
思案したルーカスは、その旨伝えようと口を開きかけたが——「リンリリン」とリンクベルのリングトーンが後方から鳴り、そちらへ気が逸れてしまった。
鳴っていたのはロベルトのイヤリング型のリンクベル。
ちょうど次の地点へ辿り着き、ハーシェルが双剣を振るい、アーネストが地属性魔術で魔獣を排除したところだった。
皆の視線が集まる中、ロベルトが「はい」と応答する。
「……シャノンちゃん?」
ロベルトの口から飛び出た妹の名前に、ルーカスは目を見開く。
一言、二言、短くやりとりする様子が見られ、ロベルトの青翠玉色の瞳がルーカスへ向いた。
「団長。シャノンちゃんが、どうしても急ぎで話したいと」
大事な通信の最中、私情を挟むわけにはいかない。
だが、妹とイリア達の安否は気が掛かりだ。
葛藤からルーカスが言葉に詰まっていると、ピアス型のリンクベルから『あの』とクロウの声が聞こえて来た。
『こちらは団員の招集に時間がかかっており、準備が整うまでまだ少しの猶予があります。ですので、お話されては如何でしょう?』
どうやら話声が聞こえていたようだ。
「……心遣いに感謝する。すぐ折り返そう」
ルーカスは若干戸惑いつつもその提案を有難く受け、通話を切った。
ロベルトへ視線を向けると、その瞳と同じ色の魔輝石が輝くイヤリング型のリンクベルが手渡された。
他のメンバーは引き続き周囲の魔獣討伐に当たっている。
彼らに申し訳ないと思いつつ、ルーカスは手に持ったリンクベルで通話先のシャノンへ語りかけた。
「シャノン」
『お兄様!』
「良かった、無事だったんだな」
『うん。でも、シェリルはちょっと怪我しちゃった。それでリンクベルが壊れて——』
「大丈夫なのか!?」
シャノンの言葉を遮り、思わず声を荒げていた。
あの時、通信が切れたのはそういう事だったのか、と。
胸がざわついた。
『心配しないで。リシアがすぐに治癒術をかけてくれたから、大丈夫よ』
「そうか……それなら良かった」
シェリルが無事に安堵した。
しかし、それも束の間。
『そんな事よりイリアさんよ!』と今度はシャノンが声を荒げた。
彼女の身に何があったのか——ルーカスが問い掛けるより早く、シャノンは答えた。
『イリアさん、城門の向こうで戦ってるの! 一人で魔獣を抑えてる!』
「魔獣を……一人で?」
『そうよ! あんな戦い方……いくらイリアさんが使徒でも、無茶よ!』
ドクリと心臓が跳ねた。
彼女は女神の使徒、太陽のレーシュ。
【太陽】の神秘を宿した、旋律の戦姫と呼ばれる使徒。
その実力はルーカスも知っている。
戦う術を思い出した事も、わかっている。
(だが……いくらイリアが強くても)
一人で戦場に立っていると聞かされて、その上「無茶」だと言うシャノンの口ぶりに心穏やかではいられなかった。
城門の向こう。
彼女が居るのは、恐らく門がある場所——。
「場所は!?」
『北西の城門!』
クロウの言葉が思い出される。
「強力な魔術師」それはイリアの事だったのだ。
——北西の被害が少ないのは、彼女が戦っているから。
ルーカスはその事実を知って、居てもたってもいられなかった。
魔獣を片付けて団員たちがルーカスの元へと戻って来る姿が見えた。
ルーカスは「ロベルト!」と叫ぶ。
そしてこちらを見た彼へとリンクベルを投げ渡すと、踵を返し走り出した。
目指すは彼女の居る北西の城門——。
「団長! どちらへ!?」
背後からロベルトの声が響く。
一瞬振り向くと、走り出したルーカスの背を団員たちが追って来ていた。
「北西だ! 第一魔術師団の師団長と、他の班には南東へ向かうよう伝えろ!」
「承知しました!」
折り返すと言っておきながら他人任せになってしまうが、今のルーカスは余裕がなかった。
(彼女は強い。それは理解している。
——だが)
『ルーカス、大切なものは失ってから気付いても遅いのよ』
あの日、母に言われた言葉が思い出された。
(……わかってる。
わかっている!)
だから、名を懸け、剣を捧げて、誓った。
イリアを助け、イリアの力になる。
騎士として彼女を守る——と。
強いからこそ弱さを見せず、全てを一人で抱え込もうとするイリア。
ずっと、そんな彼女を守りたいと心のどこかで思っていた。
再会して記憶を失ったと知った時——その想いが溢れた。
始めはただ、イリアを守れればいいと思っていた。
それ以上は望んでいなかった。
——けれど。
彼女に向けるこの気持ちは、胸を焦がす様な想いは、確かにここにある。
(イリアは俺にとって大切な——かけがえのない、愛しい存在。
二度とあんな……失ってたまるものか!)
カレンの時の様に、手の届く場所にいたのに何も出来ずに終わるなど、同じ過ちを繰り返してはいけない。
ルーカスは全速力で駆けた。
途中、向かって来る獣は容赦なく斬り捨て、脇目も振らず一心に。
彼女が戦っていると言う場所へ——。
王都は混乱を見せている。
地震の被害に加えて侵入した魔獣に住民が襲われる事態と重なり、騎士団が避難誘導、救助活動に当たっているが深刻な状況だった。
王都オレオールは円状に五層の区画からなる都市だ。
王城、行政区、教育機関・研究機関特区から先は塀が立てられ区切られているため、魔獣が侵入する事はなかったが——問題はその外側の区画。
生活の基盤、富裕層の居住区、一般市民の居住区と商店街のある二つの区画、そこへ魔獣が入り込み住人を襲っていると言うのだ。
街中を見れば地震の影響が色濃く出ており、崩れた建物や地割れが見受けられる。
さらに魔獣の仕業と思われる惨たらしい光景や、血痕が飛び散っている。
負傷した人、泣き叫ぶ者、事切れた人影——。
住民は戸惑いと恐怖の表情に支配されており、王都はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図を作り出していた。
(酷い有様だ……)
ルーカスは惨状を目の当たりにして、口を真一文字に引き結んだ。
多くの戦場を経験してきたが、悲劇に慣れる事はない。
悲嘆とやるせなさに胸が痛んで仕方なかった。
(天災とは言え……歯痒いな)
悔しさを噛み締め駆けていると——行く手に、狼型の魔獣、魔狼が建物の合間から襲い掛かってきた。
ルーカスは剣帯の鞘に納めた刀の柄へ手を添えると、牙を剥いて飛び掛かる魔狼を刀の抜きざまに一刀両断。
——居合・一閃!
抜刀術により二つに裂かれた躯体は血飛沫を撒き地に落ちた。
続いて、同じように建物の合間から飛び出して来た魔狼と犬型の黒い魔獣——魔犬は素早く太刀を振って、寸分の隙も与えず双方を斬り伏せた。
後方で同様に魔獣が現れるが、殿を守るロベルトが難なく対処している。
隊列はルーカスを先頭にハーシェル、アーネスト、アイシャ、ロベルトの並びで、アイシャが探知魔術を使い、魔獣のおおよその地点へと移動し素早く討伐。
居住区に出てからこの流れを繰り替えし行っていた。
地道な方法だが、街中で大規模な攻撃魔術は使えないので他に手段がない。
「この付近はもう魔獣の反応はありません」
「了解だ。次の地点は?」
「はい。次は——」
ルーカスはアイシャの返答を聞きながら、刃に滴る血を振り払い、刀を鞘へと納めた。
すると「リリリン」とルーカスのピアス型のリンクベルが鳴り、それに応答する。
「特務部隊一班ルーカスだ」
『ルーカス団長、第一魔術師団クロウです。先の件についてご報告です』
第一魔術師団の師団長からの連絡だった。
「先の件」——調査を依頼した件で、どうやら情報が掴めたらしい。
しかし報告を聞くためとはいえ、足を止める訳には行かない。
ルーカスは後ろへ続くハーシェルに先頭を任せようと、目配せで合図を送り首を縦に振って見せた。
そうすれば意図に気付いたハーシェルが「了解ッ!」と返し前へ出て場所を交代。
一班はアイシャが示した次の地点へと移動を開始し、ルーカスは走りながら報告に耳を傾けた。
『団長の懸念通り、門の存在が確認されました。それも二カ所。王都の外、北西と南東の城門近くの街道に』
やはり、と思う。
嫌な予感が当たってしまった。
「例の術式の準備は?」
『問題ありません。実践投入可能です』
例の術式とは、門対策として開発が急がれていた術式だ。
門の存在は世界会議でも話題となり、各国協力の元、異例の早さで開発が行われたのだとか。
なんでもホドのマナ機関技師の技術提供があったらしく、マナ機関を補助として用いる事で完成形に至ったと聞いている。
ルーカスの力と門凍結術式と名付けられた術式があるため、二カ所へ同時対処する事は可能だ。
(そうなると問題はどちらへ向かうか……だな)
北西と南東では全く正反対の方向だ。
『どうされますか?』
「各方面の詳しい情報は?」
『騎士団は元帥閣下の采配の元、既に両方面へ向かっております。北西はどうやら強力な魔術師が応戦しているらしく、魔獣の増加を抑えられているとの事。しかし南東の方は被害が大きく……』
(であれば、距離的には北西が近いが、根本的な脅威の排除と言う意味で、被害の大きい南東へ向かうのが最善か?)
思案したルーカスは、その旨伝えようと口を開きかけたが——「リンリリン」とリンクベルのリングトーンが後方から鳴り、そちらへ気が逸れてしまった。
鳴っていたのはロベルトのイヤリング型のリンクベル。
ちょうど次の地点へ辿り着き、ハーシェルが双剣を振るい、アーネストが地属性魔術で魔獣を排除したところだった。
皆の視線が集まる中、ロベルトが「はい」と応答する。
「……シャノンちゃん?」
ロベルトの口から飛び出た妹の名前に、ルーカスは目を見開く。
一言、二言、短くやりとりする様子が見られ、ロベルトの青翠玉色の瞳がルーカスへ向いた。
「団長。シャノンちゃんが、どうしても急ぎで話したいと」
大事な通信の最中、私情を挟むわけにはいかない。
だが、妹とイリア達の安否は気が掛かりだ。
葛藤からルーカスが言葉に詰まっていると、ピアス型のリンクベルから『あの』とクロウの声が聞こえて来た。
『こちらは団員の招集に時間がかかっており、準備が整うまでまだ少しの猶予があります。ですので、お話されては如何でしょう?』
どうやら話声が聞こえていたようだ。
「……心遣いに感謝する。すぐ折り返そう」
ルーカスは若干戸惑いつつもその提案を有難く受け、通話を切った。
ロベルトへ視線を向けると、その瞳と同じ色の魔輝石が輝くイヤリング型のリンクベルが手渡された。
他のメンバーは引き続き周囲の魔獣討伐に当たっている。
彼らに申し訳ないと思いつつ、ルーカスは手に持ったリンクベルで通話先のシャノンへ語りかけた。
「シャノン」
『お兄様!』
「良かった、無事だったんだな」
『うん。でも、シェリルはちょっと怪我しちゃった。それでリンクベルが壊れて——』
「大丈夫なのか!?」
シャノンの言葉を遮り、思わず声を荒げていた。
あの時、通信が切れたのはそういう事だったのか、と。
胸がざわついた。
『心配しないで。リシアがすぐに治癒術をかけてくれたから、大丈夫よ』
「そうか……それなら良かった」
シェリルが無事に安堵した。
しかし、それも束の間。
『そんな事よりイリアさんよ!』と今度はシャノンが声を荒げた。
彼女の身に何があったのか——ルーカスが問い掛けるより早く、シャノンは答えた。
『イリアさん、城門の向こうで戦ってるの! 一人で魔獣を抑えてる!』
「魔獣を……一人で?」
『そうよ! あんな戦い方……いくらイリアさんが使徒でも、無茶よ!』
ドクリと心臓が跳ねた。
彼女は女神の使徒、太陽のレーシュ。
【太陽】の神秘を宿した、旋律の戦姫と呼ばれる使徒。
その実力はルーカスも知っている。
戦う術を思い出した事も、わかっている。
(だが……いくらイリアが強くても)
一人で戦場に立っていると聞かされて、その上「無茶」だと言うシャノンの口ぶりに心穏やかではいられなかった。
城門の向こう。
彼女が居るのは、恐らく門がある場所——。
「場所は!?」
『北西の城門!』
クロウの言葉が思い出される。
「強力な魔術師」それはイリアの事だったのだ。
——北西の被害が少ないのは、彼女が戦っているから。
ルーカスはその事実を知って、居てもたってもいられなかった。
魔獣を片付けて団員たちがルーカスの元へと戻って来る姿が見えた。
ルーカスは「ロベルト!」と叫ぶ。
そしてこちらを見た彼へとリンクベルを投げ渡すと、踵を返し走り出した。
目指すは彼女の居る北西の城門——。
「団長! どちらへ!?」
背後からロベルトの声が響く。
一瞬振り向くと、走り出したルーカスの背を団員たちが追って来ていた。
「北西だ! 第一魔術師団の師団長と、他の班には南東へ向かうよう伝えろ!」
「承知しました!」
折り返すと言っておきながら他人任せになってしまうが、今のルーカスは余裕がなかった。
(彼女は強い。それは理解している。
——だが)
『ルーカス、大切なものは失ってから気付いても遅いのよ』
あの日、母に言われた言葉が思い出された。
(……わかってる。
わかっている!)
だから、名を懸け、剣を捧げて、誓った。
イリアを助け、イリアの力になる。
騎士として彼女を守る——と。
強いからこそ弱さを見せず、全てを一人で抱え込もうとするイリア。
ずっと、そんな彼女を守りたいと心のどこかで思っていた。
再会して記憶を失ったと知った時——その想いが溢れた。
始めはただ、イリアを守れればいいと思っていた。
それ以上は望んでいなかった。
——けれど。
彼女に向けるこの気持ちは、胸を焦がす様な想いは、確かにここにある。
(イリアは俺にとって大切な——かけがえのない、愛しい存在。
二度とあんな……失ってたまるものか!)
カレンの時の様に、手の届く場所にいたのに何も出来ずに終わるなど、同じ過ちを繰り返してはいけない。
ルーカスは全速力で駆けた。
途中、向かって来る獣は容赦なく斬り捨て、脇目も振らず一心に。
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