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始まり
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さあさあと雨が降る日のことだった。
雨が屋根を叩く音に混じって、草が揺れる音がしたような気がしたのだ。
家の裏では自家製のハーブを育てている。地面が見えないくらいに生い茂ってしまっているけれど、ハーブは薬にも料理にも使える万能素材だ。
さっきの音は、おそらくハーブが揺れたのだろう。
いつもだったらネズミなどの小動物が庭に忍び込んだのだと思って気にも留めなかった。
なのに私は、その音が気になって庭の様子を見ることにしたのだ。
裏口のドアを開けるとまず目に入ったのは、雨に混ざってハーブの爽やかな香りが鼻をついた。
私はもう慣れたけれど、うちの使い魔にはキツいらしい。
ハーブが生い茂った庭の奥に一本の木がある。
降りしきる雨の中、ハーブの隙間から銀色の輝きが見えたような気がした。
傘を差して庭に一歩踏み出す。
近づくとその銀色の正体が見えた。
それは人だった。
大きく葉を広げている木は雨宿りをするのにちょうどよかったのか、その根元に座って本を読んでいる。
見えた銀色はその人の髪色だったようだ。その髪は伸ばしっぱなしで手入れもしていないのか、少しボサボサと髪が跳ねている上に前髪が厚く目が見えない。
綺麗な髪色をしているというのにもったいないと不意に思ったものの、私は言葉には出さなかった。
なぜなら、彼は不法侵入者だからだ。人の家の敷地に勝手に入り込んだ上に座り込んでいる。
おまけに、騎士だ。世間ではエリート職だと言われる騎士様が不法侵入をしている。
髪のことを言う前に、違う言葉をかけるべきであった。
「そこで何してるの? 不法侵入よ、騎士様」
──このときの私は想像もしていなかった。
彼に声を掛けた瞬間から、彼の執着が始まっていたなんて。
雨が屋根を叩く音に混じって、草が揺れる音がしたような気がしたのだ。
家の裏では自家製のハーブを育てている。地面が見えないくらいに生い茂ってしまっているけれど、ハーブは薬にも料理にも使える万能素材だ。
さっきの音は、おそらくハーブが揺れたのだろう。
いつもだったらネズミなどの小動物が庭に忍び込んだのだと思って気にも留めなかった。
なのに私は、その音が気になって庭の様子を見ることにしたのだ。
裏口のドアを開けるとまず目に入ったのは、雨に混ざってハーブの爽やかな香りが鼻をついた。
私はもう慣れたけれど、うちの使い魔にはキツいらしい。
ハーブが生い茂った庭の奥に一本の木がある。
降りしきる雨の中、ハーブの隙間から銀色の輝きが見えたような気がした。
傘を差して庭に一歩踏み出す。
近づくとその銀色の正体が見えた。
それは人だった。
大きく葉を広げている木は雨宿りをするのにちょうどよかったのか、その根元に座って本を読んでいる。
見えた銀色はその人の髪色だったようだ。その髪は伸ばしっぱなしで手入れもしていないのか、少しボサボサと髪が跳ねている上に前髪が厚く目が見えない。
綺麗な髪色をしているというのにもったいないと不意に思ったものの、私は言葉には出さなかった。
なぜなら、彼は不法侵入者だからだ。人の家の敷地に勝手に入り込んだ上に座り込んでいる。
おまけに、騎士だ。世間ではエリート職だと言われる騎士様が不法侵入をしている。
髪のことを言う前に、違う言葉をかけるべきであった。
「そこで何してるの? 不法侵入よ、騎士様」
──このときの私は想像もしていなかった。
彼に声を掛けた瞬間から、彼の執着が始まっていたなんて。
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