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73.継承式
控え室の扉を開けると、大広間に集まった人々の
温かい視線と期待に満ちた空気が俺たち二人を包み込んだ。
さっきまでの重苦しい空気はもうそこにはない。
いや、俺が無理やり心の奥底に押し込めただけかもしれないが、
今は前を向くしかなかった。
大広間は人で埋め尽くされている。
長年シェフィールド家に仕えてくれた執事や侍女たち、
厨房のスタッフ、護衛の兵士たち。
そして領地の代表者方、俺の友人らも駆けつけてくれた。
最前列の中央にはこの領地を統括する領主様ご夫妻が座っておられる。
俺は一人じゃない。母さんがいる。この館のみんながいる。
俺を信じてくれる人たちがいる。
母さんから継いでいくものは単なる家名だけじゃない。
今日、俺はシェフィールド家の未来を担う者としてここに立つ――。
厳かなファンファーレが鳴り響く。
領主様は威厳ある声で式典の開始を宣言された。
式は粛々と進んでいく。俺のこれまでの歩みや、
シェフィールド家の歴史などが老執事によって朗々と読み上げられた。
いくつかの挨拶や祝辞の後、いよいよ紋章授与の時が来た。
領主様が立ち上がり、侍従が恭しく捧げ持つ
ベルベットのクッションに乗せられたシェフィールド家の紋章を手に取った。
銀細工の獅子が勇ましく描かれた、歴史を感じさせる重厚な紋章だ。
「アレック・シェフィールド」
領主様の呼びかけに俺は一歩前に進み、深く膝をついた。
「そなたを本日、シェフィールド家の正式なる後継者として認める。
この紋章は代々受け継がれてきたシェフィールド家の
誇りと責任の象徴である。これを受け継ぎ、
領民の幸福のために尽力することを誓うか」
「……はい、謹んでお受けいたします。
この身命を賭して、シェフィールド家と領民のために尽くすことを誓います」
領主様は頷き、その紋章を俺の胸元に飾ってくださった。
立ち上がり、列席者に向き直る。
今度は俺が後継ぎとしての抱負を語る番だ。
壇上の中央に進み出て、広間を見渡す。
これだけ多くの人の前で話すのは初めてだ。
「皆さん、本日はお忙しい中、
アレック・シェフィールドの家督継承式に足をお運びいただき、
誠にありがとうございます」
「今日、二十歳の誕生日を迎えると共に、
シェフィールド家の次期当主として、
皆さんの前に立つことを大変光栄に思います」
「私の出自については皆さんの中にも
ご存知の方がいらっしゃるかもしれません。
私はエレノアが産んだ子ではありません。
しかし、母は血の繋がりなど関係なく、
本当の息子として愛し、育ててくれました。
心からの感謝と誇りを持っています」
あえてこの場で自分の出自に触れた。
隠す必要なんてない。堂々とありのままで。
皆、真剣に耳を傾けてくれている。その視線が逆に俺を奮い立たせてくれた。
「そしてこのシェフィールド家に仕え、
支えてくださっている皆さん。
幼い頃から温かく見守り、時には叱り、
励ましてくれた皆さんの存在も大きな支えでした。
本当にありがとうございます」
使用人たちが並ぶ一角に向かって頭を下げる。
彼らの忠誠心と支えがあったからこそ、
シェフィールド家は困難を乗り越え、今日があるのだ。
「私はまだ若く、未熟者です。
これから多くのことを学び、経験を積まなければなりません。
どうか皆さん、シェフィールド家を温かく見守り、
時には厳しくご指導ください。
当主としてこの領地と、ここに住む人々を守り、
発展させていく覚悟はできています。
皆さんと共に、この家の未来を築いていけることを願っています。
本日は誠にありがとうございました」
再び深く頭を下げると、割れんばかりの拍手が広間を包み込んだ。
顔を上げると、領主様が満足そうに頷き、
友人たちが笑顔で手を振ってくれているのが見えた。
母さんは誇らしげな表情で俺を見つめていた。
温かい視線と期待に満ちた空気が俺たち二人を包み込んだ。
さっきまでの重苦しい空気はもうそこにはない。
いや、俺が無理やり心の奥底に押し込めただけかもしれないが、
今は前を向くしかなかった。
大広間は人で埋め尽くされている。
長年シェフィールド家に仕えてくれた執事や侍女たち、
厨房のスタッフ、護衛の兵士たち。
そして領地の代表者方、俺の友人らも駆けつけてくれた。
最前列の中央にはこの領地を統括する領主様ご夫妻が座っておられる。
俺は一人じゃない。母さんがいる。この館のみんながいる。
俺を信じてくれる人たちがいる。
母さんから継いでいくものは単なる家名だけじゃない。
今日、俺はシェフィールド家の未来を担う者としてここに立つ――。
厳かなファンファーレが鳴り響く。
領主様は威厳ある声で式典の開始を宣言された。
式は粛々と進んでいく。俺のこれまでの歩みや、
シェフィールド家の歴史などが老執事によって朗々と読み上げられた。
いくつかの挨拶や祝辞の後、いよいよ紋章授与の時が来た。
領主様が立ち上がり、侍従が恭しく捧げ持つ
ベルベットのクッションに乗せられたシェフィールド家の紋章を手に取った。
銀細工の獅子が勇ましく描かれた、歴史を感じさせる重厚な紋章だ。
「アレック・シェフィールド」
領主様の呼びかけに俺は一歩前に進み、深く膝をついた。
「そなたを本日、シェフィールド家の正式なる後継者として認める。
この紋章は代々受け継がれてきたシェフィールド家の
誇りと責任の象徴である。これを受け継ぎ、
領民の幸福のために尽力することを誓うか」
「……はい、謹んでお受けいたします。
この身命を賭して、シェフィールド家と領民のために尽くすことを誓います」
領主様は頷き、その紋章を俺の胸元に飾ってくださった。
立ち上がり、列席者に向き直る。
今度は俺が後継ぎとしての抱負を語る番だ。
壇上の中央に進み出て、広間を見渡す。
これだけ多くの人の前で話すのは初めてだ。
「皆さん、本日はお忙しい中、
アレック・シェフィールドの家督継承式に足をお運びいただき、
誠にありがとうございます」
「今日、二十歳の誕生日を迎えると共に、
シェフィールド家の次期当主として、
皆さんの前に立つことを大変光栄に思います」
「私の出自については皆さんの中にも
ご存知の方がいらっしゃるかもしれません。
私はエレノアが産んだ子ではありません。
しかし、母は血の繋がりなど関係なく、
本当の息子として愛し、育ててくれました。
心からの感謝と誇りを持っています」
あえてこの場で自分の出自に触れた。
隠す必要なんてない。堂々とありのままで。
皆、真剣に耳を傾けてくれている。その視線が逆に俺を奮い立たせてくれた。
「そしてこのシェフィールド家に仕え、
支えてくださっている皆さん。
幼い頃から温かく見守り、時には叱り、
励ましてくれた皆さんの存在も大きな支えでした。
本当にありがとうございます」
使用人たちが並ぶ一角に向かって頭を下げる。
彼らの忠誠心と支えがあったからこそ、
シェフィールド家は困難を乗り越え、今日があるのだ。
「私はまだ若く、未熟者です。
これから多くのことを学び、経験を積まなければなりません。
どうか皆さん、シェフィールド家を温かく見守り、
時には厳しくご指導ください。
当主としてこの領地と、ここに住む人々を守り、
発展させていく覚悟はできています。
皆さんと共に、この家の未来を築いていけることを願っています。
本日は誠にありがとうございました」
再び深く頭を下げると、割れんばかりの拍手が広間を包み込んだ。
顔を上げると、領主様が満足そうに頷き、
友人たちが笑顔で手を振ってくれているのが見えた。
母さんは誇らしげな表情で俺を見つめていた。
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