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16.語られる真実
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「――皇太子殿下……。そのような高貴な御方とは存じ上げず私は……! 数々の無礼、大変失礼いたしました!」
我に返った私は弾かれたようにソファから立ち上がった。
「フィーナ、やめてくれ」
ロイエルはそっと私の両肩に手を置いた。
「敬語を使われるためにここに呼んだんじゃない。俺にとって君はグランフェルドを救ってくれた恩人で大切な仲間だ。だから、これからも今まで通り『ロイエル』と呼んでくれ。な?」
ロイエルの真っ直ぐな眼差しが戸惑う私を射抜く。
「……ロイエル」
ためらいがちに彼の名前を呼ぶ。
「そうそう、それでいい」
「本当に……いいの? これまで通りで」
「ああ、もちろん」
彼は満面の笑みを浮かべ力強く頷いた。
「あなたがどうしてグランフェルドに……?皇太子様がすることではないでしょう?」
「皇太子なんて肩書じゃ自由に動けないんだよ。特にうちの国はな。フィーナ、君のいたエリオット王国とこのグリゼルダ皇国の関係を知っているか?」
「いえ……不勉強でごめんなさい。王都にいた頃は自分のことで精一杯で……」
「……そうだよな。無理もないか」
ロイエルは重い真実を語り始めた。
「今から50年ほど前だ。先々代の皇帝の時代にこのグリゼルダ皇国はエリオット王国との戦争に敗れ、敗戦国になった」
「敗戦国……!?」
「ああ。以来、うちはエリオットから多くのものを奪われ続けてきた。外交も軍事も王国の裁可が必要になる。資源も安価で提供し続けている。大地そのものもだ。あのグランフェルドも元はうちの国で最も自然が潤沢な地帯だったんだ」
彼の瞳の奥には静かな怒りが燃えていた。
「エリオットの連中は土地の生命力を無理やり魔力に変換する古代魔法を使った。効率よく魔力を搾り取るためにな。その結果、大地は完全に枯渇し、生命力を奪われた反動で瘴気が発生する不毛の地へと成り果てた。それがグランフェルドの正体だ」
彼の言葉に全身の血の気が引くのを感じた。
エリオット王国が他国に対してこれほどまでの非道を行っていたとは。
「親父はエリオットに奪われたあの土地を本来の姿に戻そうと研究を続けていたんだ」
彼の声には深い悔しさが滲んでいた。
農夫として畑を耕していた彼の姿が今ようやく意味を持って繋がってくる。彼は必死で自国の大切な土地を再生しようとしていたのだ。
「先代皇帝だった俺の父は異端と呼ばれた魔学者でもあった。たった一人でグランフェルドの瘴気の研究に没頭し……その研究の最中に命を落とした」
静かな告白だった。
彼の瞳の奥に宿っていた深い悲しみの理由がやっとわかった気がした。
「父が亡くなった後、母が女帝として即位しこの国を治めている。気丈な人だが女帝として、母として、一人で全てを背負っている。だから俺はこれ以上母上や家臣たちに心配をかけたくなかった。皇太子の身で危険なグランフェルドに籠るなど許されるはずもなかったからな」
国と家族を想う彼のひたむきな姿に私の胸は熱くなった。
「実は俺……王都で君を見かけたことがあったんだ」
我に返った私は弾かれたようにソファから立ち上がった。
「フィーナ、やめてくれ」
ロイエルはそっと私の両肩に手を置いた。
「敬語を使われるためにここに呼んだんじゃない。俺にとって君はグランフェルドを救ってくれた恩人で大切な仲間だ。だから、これからも今まで通り『ロイエル』と呼んでくれ。な?」
ロイエルの真っ直ぐな眼差しが戸惑う私を射抜く。
「……ロイエル」
ためらいがちに彼の名前を呼ぶ。
「そうそう、それでいい」
「本当に……いいの? これまで通りで」
「ああ、もちろん」
彼は満面の笑みを浮かべ力強く頷いた。
「あなたがどうしてグランフェルドに……?皇太子様がすることではないでしょう?」
「皇太子なんて肩書じゃ自由に動けないんだよ。特にうちの国はな。フィーナ、君のいたエリオット王国とこのグリゼルダ皇国の関係を知っているか?」
「いえ……不勉強でごめんなさい。王都にいた頃は自分のことで精一杯で……」
「……そうだよな。無理もないか」
ロイエルは重い真実を語り始めた。
「今から50年ほど前だ。先々代の皇帝の時代にこのグリゼルダ皇国はエリオット王国との戦争に敗れ、敗戦国になった」
「敗戦国……!?」
「ああ。以来、うちはエリオットから多くのものを奪われ続けてきた。外交も軍事も王国の裁可が必要になる。資源も安価で提供し続けている。大地そのものもだ。あのグランフェルドも元はうちの国で最も自然が潤沢な地帯だったんだ」
彼の瞳の奥には静かな怒りが燃えていた。
「エリオットの連中は土地の生命力を無理やり魔力に変換する古代魔法を使った。効率よく魔力を搾り取るためにな。その結果、大地は完全に枯渇し、生命力を奪われた反動で瘴気が発生する不毛の地へと成り果てた。それがグランフェルドの正体だ」
彼の言葉に全身の血の気が引くのを感じた。
エリオット王国が他国に対してこれほどまでの非道を行っていたとは。
「親父はエリオットに奪われたあの土地を本来の姿に戻そうと研究を続けていたんだ」
彼の声には深い悔しさが滲んでいた。
農夫として畑を耕していた彼の姿が今ようやく意味を持って繋がってくる。彼は必死で自国の大切な土地を再生しようとしていたのだ。
「先代皇帝だった俺の父は異端と呼ばれた魔学者でもあった。たった一人でグランフェルドの瘴気の研究に没頭し……その研究の最中に命を落とした」
静かな告白だった。
彼の瞳の奥に宿っていた深い悲しみの理由がやっとわかった気がした。
「父が亡くなった後、母が女帝として即位しこの国を治めている。気丈な人だが女帝として、母として、一人で全てを背負っている。だから俺はこれ以上母上や家臣たちに心配をかけたくなかった。皇太子の身で危険なグランフェルドに籠るなど許されるはずもなかったからな」
国と家族を想う彼のひたむきな姿に私の胸は熱くなった。
「実は俺……王都で君を見かけたことがあったんだ」
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