【完結】廃墟送りの悪役令嬢、大陸一の都市を爆誕させる~冷酷伯爵の溺愛も限界突破しています~

遠野エン

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10.活路はキノコ

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水路を修復する槌音は再生へのファンファーレのように街に鳴り響いた。瓦礫の中から生まれた石材が熟練の職人の手で組み上げられ、日に日に街の生命線がその姿を取り戻していく。

「水路の復旧と並行し、『食料』プロジェクトを始めます」

市庁舎の作戦室と化したホールで、私は山と積まれた廃墟撤去で出た大量の朽ちた木材を指し示した。

「この朽木を苗床とし、キノコを栽培します。繁殖力が強く、少ない手間で短期間に大量に収穫できる。これほど今の私たちに適した食料はありません」

彼らの反応は想像をはるかに超えて否定的なものだった。

「キ、キノコですと!? お嬢様、それだけはなりません!」

オドネルが血相を変えて叫ぶ。他の職員たちも青ざめた顔で首を横に振っていた。

「市長、キノコは呪われた不浄の植物。口にすれば体を内側から蝕む猛毒だと子供でも知っております!」

この世界ではキノコは食料ではなく、死と病をもたらす忌むべき存在として認識されている。私の常識は彼らにとっては狂気の沙汰らしい。

「皆さんの懸念は理解しました。ですが、全てのキノコが毒だとは限りません」

冷静に反論するが、長年この地に根付いてきたであろう強い偏見は簡単に覆せるものではない。これでは住民を説得するどころじゃない。必要なのは議論ではなく動かぬ証拠。

その日から市庁舎の書庫にこもった。何日もかけて膨大な古文書の山を調べていくうち、一冊のひどく古びた植物図鑑を見つけ出した。ただ、長い年月による風化は激しく、インクが色褪せて判読不能な状態。静かに目を閉じ、意識を集中させた。

「過ぎ去りし時よ、失われし彩りを再びこの紙片へ」

指先から放たれる微かな魔力の光が文字をなぞると、色褪せたインクが淡く輝き、脳裏に直接その意味を伝えてくる。これは貴族の教養として身につけた解読魔法。
魔法の光がページを走る。ついに私は求めていた記述を発見した。

『森の恵み、キノコの章』

そこには食用に適したキノコの種類、栽培法、毒キノコとの厳密な見分け方、さらには薬効や保存方法までが驚くほど詳細に記されていた。この世界の人間がキノコを毒だと信じ込むようになったのは、はるか昔に起きた大規模な食中毒事件がきっかけで、一部の毒キノコの知識だけが恐怖と共に誇張されて伝わった結果らしい。

「見つけたわ」

確かな証拠を手に静かに笑みを浮かべた。ただ、古文書を示しただけでは人々の嫌悪は拭えないだろう。書物を閉じ、固い決意を胸に立ち上がった。

「私が証明するしかないわね」

この街のリーダーとして、その安全性を自らの体で示す覚悟を決めた。プロジェクトは次のステージへと進む。
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