【完結】廃墟送りの悪役令嬢、大陸一の都市を爆誕させる~冷酷伯爵の溺愛も限界突破しています~

遠野エン

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―――あれから二か月。

かつてのすさんだ街にせせらぎの音が絶え間なく響いている。廃墟の瓦礫から再生された水路を、山からの清らかな水が満たし、人々の生活に潤いをもたらしていた。井戸の前にできていた行列は消え、子供たちが水路のほとりで歓声を上げて水しぶきを浴びている。その光景はこの街に命が戻ってきたことの何よりの証。

「市長、ご覧ください! 今朝採れたばかりの初物ですよ!」

職員の一人が弾んだ声で指し示す先には、廃墟の跡地に建てられた簡素な小屋が並んでいた。解体で出た木材を再利用した栽培所。試行錯誤の末に、朽木から顔を出した肉厚のキノコを人々が嬉々として摘み取っている。また、近くの森で野生のキノコを採る市民の姿が日常になった。

恐怖の対象だったキノコは、今や安定した食料源として人々のお腹を満たし活力を与えていた。痩せた野菜を並べていた老婦人も、今では収穫されたばかりのキノコを手に、常連客と楽しげに言葉を交わしている。

復興の歩みはそれだけではない。水路の恩恵は荒れた土壌をも蘇らせつつあった。開墾された畑には大根や芋の青々とした葉が力強く芽吹き始めている。さらにその傍らからは鶏の鳴き声や山羊の穏やかな嘶きも聞こえてくる。行商から譲り受けた家畜を増やそうと、若者たちが柵作りや世話に精を出していた。

街角に立てば、巡回する一団の姿が見える。かつてゴロツキと呼ばれた男たち。今や彼らは揃いの腕章をつけたアトランシア警備隊。リーダーのファーゴが私の姿を見ると、駆け寄ってきて敬礼をした。

「市長様! 昨夜も異常ありませんでした! 最近じゃ夜中に騒ぐ酔っ払いすらいなくなりやしたよ」
「ご苦労様、ファーゴ。あなたたちのおかげで、女性や子供も安心して道を歩けるようになりました。これからも頼りにしています」
「へへっ、お任せください!」

市民たちが警備隊に笑顔で挨拶を交わす。彼ら自身も人から頼られ、感謝されるという初めての経験に戸惑いながらも、守る者としての誇りをその胸に育てているようだった。


水、食料、そして安全。生きるための最低限の基盤が整った街に失われていた笑顔が少しずつ戻ってきていた。絶望に沈んでいた人々の瞳に、明日への希望という名の光が灯り始めている。

市庁舎に戻り、私は再び大きな地図の前に立った。満足感はある。けれど、これで終わりではない。あくまでフェーズ1の完了。いわば倒産寸前の企業の出血を止めたに過ぎない。

「さあ、次のプロジェクトを始めましょう。このアトランシアを再び大陸の中心地へと押し上げるわ」

窓から差し込む西日が私の横顔と、無限の可能性を秘めたアトランシアの地図を力強く照らし出していた。挑戦はまだ始まったばかり。
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