約束と追憶 promitto of memory

Natsuki

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promitto of memory

第1話 始まりの旅。

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もし、貴女がこの世界から消えゆくとしても
自分は、そこに有るべき道を辿るでしょう。

たどり着いた先にある物は希望か絶望か。
…それを知る者は未だ彼しか居らず。

これは"神々の記憶"と
とある青年たちが紡ぐ旅団と旅路の物語──。

約束と追憶
―第1話 始まりの旅―

──アンル、アンルと繰り返し
自分の名前を呼ぶ師匠の声がした。
どうやら自分は寝室で
寝落ちをしてしまっていたらしい。

その声が部屋まで近づくと、
ドアを開ける音が部屋に響く。
「アンル、起きているのか?」
【ルカ=アルバート】。
自分の師匠であり、恩師でもある人だ。

師匠はぺちぺちと自分の頬を
優しく叩いて起こそうとする。
「うぅ、ん…」
「おはようございます、ししょう…。」

ゴソゴソと布団の中に潜り込み自分はまた寝ようとするが、
師匠はその布団を自分から引き剥がすように起こした。

「……っそう言うのなら、早く起きろ!」

叱る様に言うその言葉に少し驚き、自分は飛び起きる。

「わッ…!?す、すみません師匠…。」
飛び起きた時の拍子で目が覚めてしまった。

全く…と言わんばかりの顔をしてベッドの横で
立っている師匠を自分は見ていた。

「私は朝食の準備をしてくる。
君は旅の身支度を済ましておいてくれ。」

自分は頬に汗を垂らして
キョトンとしながらもこう答えた。

「…あ、はい。」

数分後、自室で支度を終えリビングに向かう、
その間に師匠は朝食の準備をしていた。
それを終えたあと椅子に座った。
いただきます、と2人が
声を合わせて言って少し笑みがこぼれた。
「それでアンル、
今日は久しく旅に出ようと思う。」

自分は食事を進めた後、
少しだけ手を止めてこう述べた。
「分かりました。
では食べ終えた頃に支度を済ませておきます。」

自分達二人が旅に出るのは、
一年ぶりといっても過言ではなかった。

…この世界には謎が多く有る。
それを探究しようと
旅に出る者たちの事を【旅団】と言う。

旅団に復帰するのは久しいと、師匠が言っていた。
幼い頃の自分を拾った日も、偶然旅に出ていたらしい。

……この世界を脅かす、謎多き存在である
【祟】によって殺されてしまった仲間達の為にも、
旅をしなければならないのだ。

すると、その事を考えてぼーっとしてしまっていたのか、
師匠が心配そうに此方を見ていた。
「アンル?…大丈夫か?」

自分は少し、動揺を隠しつつこう言った。
「あ…はい、大丈夫です。」

数分経ち、支度を終えて玄関に向かった。
水筒、食料、そして
護身用の武器やその他…準備は万端だ。

舟に乗り、窓から景色をぼんやり眺めている
自分を見ながら、師匠はこう言った。
「危険な旅になると思うのだが…
私に着いてきて、本当によかったのか?」

事前にもそう伝えられてあった。
その言葉の通り危険な旅になりそうだ。
それに合わせて師匠は強い。
…けれど無茶をする事も多々ある。
だからこそ自分がいる様な物だった。

「…その覚悟の上で、ついて行くつもりです。」
「それに、そう長くはあの家に帰ってこないでしょう。」
そう言うと師匠は納得したかのように頷いた。
「…そうかもしれないな。」

そして数時間が経ち、自分らは目的地に着いた。

【ラグラの洞窟】

転送の加護石を付けておいた置物を入口に置いた。

「…さて、行くとするか」

洞窟の中に入っていくと、
自分達の影が見えなくなって行く。

歩いて数分後に魔物が出てきた。
それらを倒し、奥に進んで行った。

奥へと進むにつれて奴らも強くなっていく。
水を飲み休憩をして、少しの間座り込んだ。

師匠は汗を拭い、水を飲んだあとこう答える。
「ふぅ…先程の活躍は見事だった、アンル。」

「お互い様ですよ。」

すると、何処からか魔物の呻き声が聞こえた。

「ッ!?なんだ…!?」
驚いた後、急いでそこに向かうと
目の前に飛び込んだ光景は、
倒れているような謎の少女らしき人と、
その少女の前に立ちはだかる大きな魔物。

「…!っ危ないッ!」
その謎の人を庇い、
ギリギリで攻撃をかわした。
「アンル!!」

師匠が結界を貼ってくれていたのもあり、無傷だった。
攻撃方法、攻撃の速度からしてあの魔物は正しく強い。

すると武器を持ち自分の前に立って彼女がこう言った。
「…っアンルはその者の治療を頼む。
その内に私は、こいつの相手をする。」
「ええ、分かりました。」

そうしてその後、魔物は見事に討伐され、
謎の少女の治療も無事終わった。

その後に少女が目を覚ました。

「うぅ…あれ?さっきの魔物は…
貴方たちが助けてくださったのですか?」

彼女が不思議そう辺りを見回した後に問うと、
自分は頷きながらこう答えた。

「ええ、そうですね。」

少女はお礼を言った後に続き
自分らとその少女は自己紹介をした。

どうやら、彼女の名前は「リウラ」と言うらしい。

「このご恩は、一生忘れませんです…!
助けて頂きありがとうございました…!」

そうして、数分後…

「…それでは、私達はここで失礼する。」

そう言うと師匠と自分は
転送の加護石で出口まで瞬時移動した。
だが、それと同時に自身の
服の袖を握っていた為か、
リウラも転送されてしまったらしい。

「…?」

師匠は気づいてなかったらしいけれど、
自分は何となく気づいていた。
リウラは…着いてきて大丈夫なのだろうか

心配で仕方なかったが、それと同時に振り向いた師匠が
どんな反応をするか興味半分で見てみたかった。

そしてしばらくすると、
タイミング良く師匠が振り向いた。

「…リウラっ?!な、何故此処に…?!」

「へっ?!」

リウラがそう驚いたあと、自分は
少し微笑ましくなって、
含み笑いをしてしまった。
君の仕業か?と師匠が言って、
何故か叱られた気分だった。

その反面、少しだけ嬉しかった。

「…まぁいい、今日は近くの街の宿で休むとしよう。」

時が経った後
寝室で寝る時間、なのだが…
どうやらベッドが2つしか無かったようだ。
「ど、どうします?これ…」

リウラがそう言うと、
綴って自分がとある提案を出した。
「…ジャンケンで決めるのはどうでしょうか。」

何故か真剣な顔で言ってしまった
本人である自分が1番恥ずかしかった。

「ああ、分かった。但し、
相手がリウラであろうと手加減無用だぞ。」

ジャンケンポン、と3人が言って
リウラはパー、師匠もパー
そして自分は…

グーを出してしまった。
「なっ…?!」

すると師匠は、自身が負けた事にこう言う。
「…ふ、まだまだ甘いな。」

自分はその言葉に
少しばかり遺憾を覚えてしまった。
「……。」

その敗北を、自身は認めたくなかったが
仕方なくソファーで寝ることにした。

そして翌日。
「…ん、朝…?」
窓越しに、木の枝に
止まっていた鳥を見つめていた。
いつもは苦戦していた朝なのだが、
今日は珍しくすんなりと起きれた。

「…師匠とリウラ、
もう起きて身支度を済ませたのかな…。」

固くなった肩を回しほぐして、
身支度を整えた。
後に師匠とリウラのいる所へ向かった。
自分が追いついた後、師匠はこう言った。
「遅いぞ、アンル。」

「貴女が早すぎるだけですよ…」

綴ってリウラが楽しげに、
ニッコリとした笑顔でこういう。
「ではでは行きましょう!お師匠、ルカさん!」

何故、リウラが
自分の事をお師匠と呼んでいるかは
ちゃんと理由があった。

時は遡り昨日の事にて…。

「いいですかリウラ。呉々もまた
危険な魔物や危ない物に近づいては駄目ですよ。」

すると、リウラは
ピシッと手を挙げてこう言った。

「はい!お師匠!」

それに自分は不思議に思い、問った。

「……?えっと、お師匠とは…?」

「はっ、つい呼んでしまいました…!すみませんです…!」

少しした後に
「大丈夫ですよ。」と返してあげると、
リウラがそう呼ぶようになった。

『でも何故お師匠呼びなのかは、
今でも分からないや…』
そう思っていると、少し遠ざかった後、
リウラが振り返って、笑顔で手を振る。

「あっ、お師匠~!こっちですよ~!」

「…はーい、今行きますよ。」

返事をして其方に向かう。

そうして自分達の始まりの旅である
【約束と追憶】を探す物語が、今ここで
幕を開ける時を迎えたのであった───。
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