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promitto of memory
第2話 旅路の先に。
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「見てくださいお師匠!大きな船です!」
リウラが目を輝かせてそう言うと
自分は何とも可愛らしいと思えて
少しばかり微笑んでこういった。
「あれは師匠の船です。今からあれに乗るのですよ。」
──【宙船】。
料金はそこそこ掛かるが、
旅団長なら誰しもが持っていて
生活や旅に必要となる物が揃っているため
旅の途中で野宿せずに済む。
「本当なのですか!はわわ~…!」
それを見ていた師匠が、
自分と同じく微笑をたたえながらこういう。
「では出発しよう、二人とも。」
—第二話 旅路の先に—
そうして、自分達は
舟に乗り旅路を決めることにした。
地図を広げて師匠はこう言った。
「今回は、此処の砂漠地帯に行く。
水筒は万が一のために持っておくといい。」
「わかりました。」
「はいっ!」
すると師匠は、
眠たげに欠伸をして背伸びをした。
「さて…私は目的地に
着く迄に少し仮眠をとる。」
「眠いのですか?師匠」
「あぁ、少しだけだがな…」
……確かに自分達が旅に出る前
師匠は何やら旅の支度や用事を、朝まで
続けていたのだから眠くなるのも納得できた。
「わかりました。」
師匠が寝ているその間に、自分は別室で
鞄の整理などをしておこうと思った。
──そしてその目的地に着いた。
「あ…そろそろ師匠を起こさないと」
そう言って自分は
師匠のいる部屋に向かっていった。
窓越しから見て砂嵐はそこまで酷くはないが、
舟の中まで暑くて仕方がなかった。
此処での油断は禁物だ。何故なら
サソリ型の魔物と言ったものが生息している。
サソリ型の魔物は通常
【ポルン】と呼ばれ、
毒を持っているため極めて危険だ。
「師匠、起きてください。目的地に着きましたよ。」
「……もう着いたのか…
すまない、少し待ってくれ。」
そして数秒たった後に
師匠は寝台から起き上がった。
「よし…そういえば、リウラは何処に?」
その言葉を聞いた後、
自分は周辺を見回してリウラの姿を見つけた。
「あちらに居ます。」
「分かった。」
「リウラ、もう直ぐ行くぞ。」
その言葉に彼女は、ハッと気がついて
すぐさまこう言っていた。
「あっ、分かりました!」
──舟の外に出ると、
少量の砂嵐はもう既に止んでいた。
その代わりに舟の中より気温が暑かった。
そして、しばらく歩いていると
リウラが疲れている様子を見せていた。
「おししょぉ…、
何だか喉が乾いてきました…」
その言葉に自分は水筒を取り出し、
蓋を開けてリウラに飲ませた。
それに師匠は立ち止まってその様子を見ていた。
師匠は台風がある方向を指さしこう言った。
「…あそこを抜ければ、
目的地まであともう少しだ。」
…なるほど。
師匠は自分の事を、弟子として試すつもりなのか。
──そう思って自分はこう問いかける。
「つまりは、そういう事ですね?」
「うむ、そういう事だ。やはり私の弟子ならば
彼処を通れる程の覚悟でなければと思ってな。」
自分はそれに承諾した。
リウラは師匠と一緒に嵐の先へと行った。
後に自分も師匠の足跡を辿った。その前に
自分は【口布】を装着し、その方へと向かっていった。
それと同時に誰かの気配があった気がした。
砂嵐で視界が悪く、その姿を認識出来なかった。
「…っ。」
万が一のため警戒を解かずに進んでいく。
砂道を踏みしめる音が風と共に鳴り響いていた。
そして、砂嵐を通り過ぎた先には
晴れた景色が舞っていた。
「……何とか、助かった…。」
そして師匠がこちらに
向かいながらこう言っていた。
「見事だったぞ。流石は私の弟子だ。」
自分は頬に汗を垂らしながら、
ため息をついていた。
「殆ど無茶ぶりでしたけどね…。」
「ははっ、それは済まない。」
師匠は冗談を交えながら、少しばかり
微笑んで腕を組んでこう言っていた。
「お師匠すごいです!僕、先ほどの嵐で
何回か吹き飛ばされそうになったのですよ!」
リウラが目を輝かせながらそう言っていた。
それに師匠は苦笑いをしていた。
「…まぁそれも、私が
リウラの足を掴んで止めたが…」
「な、なるほど…そんな事があったのですね。」
そして師匠が咳払いをすると、
彼女は向かいにある街を見てこういった。
「…よし、行こう。」
そうして自分達は
その目的地の街へとたどり着いた。
【砂漠地帯・ピリアス帝国】
「お師匠~!見てくださいこれぇ!」
リウラが、物欲しそうに何かを見つめていた。
綺麗な羽のアクセサリーだ。
「羽の首飾り…ですね。」
すると、リウラがこんな事を言い始めた。
「…買っちゃダメですか…?」
そんな輝かしい目をこちらに向けられたら、
買うしか選択がなくなってしまうと思い直視出来なかった
「…だっ、だめです…よ??」
すると、師匠がぬっ…と出てきて
追い打ちをかけるかのように
ニコニコと不敵な笑みをうかべてこう言った。
「良いでは無いか、アンル。」
綴ってリウラも今にも泣きそうな声でこう言う。
「…おししょぉ…」
うるうると、今でも涙がこぼれおちそうだった。
…そして数分後、
その罪悪感に負けてしまい結局それを買う羽目になった。
「やったやったー!えへへ~」
「お、オレとした事が…」
すると、いつの間にか転送の加護石が反応し…
「…えっ」
何処かに転移されてしまった。
「此処は…。」
自分はどうやら
人気の少ない場所に転移されてしまったらしい。
仕方ないと思い、暫く歩いていた。
すると誰かと肩がぶつかってしまった。
「ぅわっ…?!」
肩がぶつかった割には
相手の体幹が良かった気がした。
そして、上を見上げると…
「…ん…」
そこに居たのは、身長が高く強面で、
がっしりとした体躯の男性。
それより特徴的なのが、赤色の目をしていた事。
「…すまねぇ、大丈夫か。」
正しく全身が震え上がる様だった。
そんな中自分は少しばかり
勇気を振り絞ってこう言った。
「…い…いえ、こちらこそすみません…」
…何より、その恐い目に
怖気付く暇もないくらい威圧感が凄かった。
すると…
「アンルお師匠ー!どこに居るんですかー!」
リウラの呼ぶ声が救いになったと初めて思った。
「…っ!」
彼の隙を見て自分を呼ぶ声がする方へ逃げ込んだ。
「?!っおい待て!」
「…っアンル。」
息が切れるまで走った。
こんなに走ったのは久しぶりだった様な気がする。
……。
けれど先程の人は、誰だったのだろう。
砂嵐の所で感じた気配と一致していた気もしたが
今はそれどころではなかった…。
「あれ、お師匠…大丈夫ですか…?」
「…心配なさらないでください。オレは大丈夫ですよ。」
そういえば、師匠が見当たらない。
そこで自分はリウラに、師匠はどこに行ったか尋ねた。
「えぇと…ルカさんならあそこのお店で
足りなくなった物資を買いに行くと言っていましたよ!」
…あの人らしいな、と思った答えで一安心した。
師匠と合流したいと思っていたが、
あの赤い目の人とリウラが出くわしたら…
考えるだけでも悪寒がして仕方ない。
取り敢えず彼女と合流する為にも、
路地裏から外へ出るしかなかった。
「リウラ、…此処から一旦出ましょうか。」
「?は、はい…」
すると、また誰かこっちに向かってくる。
「あれ!アンルー!」
…懐かしい声がする。
もしかしてと思い振り向いてみれば
「やっぱりアンルだ!久しぶり!」
その声、口調、姿かたち。
「兄さん、久しぶり…!」
【ルーラゥ=ルーカル】
…自分の兄で間違いない。
「お、おおお…お師匠が…」
「敬語を…つ、使ってらっしゃらない…!」
リウラがそう言った後、綴って兄さんがこう言う。
「兄の特権ってやつだよ♪」
するとリウラがムスッとした顔で悔しそうにしていた。
「なんですかそれぇぇ…!ずるいですよー!」
そういえば、と思いとある事を聞いてみることにした。
「…そういえば兄さん、実はこんな事があって…」
数分後、全て話して兄さんがこう言った。
「完っ全にブラザーじゃん、それ…」
自分とリウラが口を揃えてこう言う。
「ぶらざー?」
その名前は呼び名だと教えて貰い、本当の名前は
【アギト=ガルバトス】…という名前らしい。
「いやぁ…想像はしてたけど、
ブラザーが迷子になっちゃったね…」
「あっ、それとブラザーにはアンルの名前
教えてあるからねっ、序に顔写真も見せてあるよ~」
そう言うと同時に、
写真機で撮られたと思われる写真を見せた。
そういえば兄さんは昔からそうだった事を思い出した。
「…兄さん、行動が早いのは昔から変わらないや…」
すると、
「ルーラお前…なに勝手に迷子になってやがる。」
後ろから瞬く間に先程の人が兄さんの背後に居た。
兄さんが振り返った瞬間にこう言った。
「んぇっ?!ブラザー!」
「…あれ、ということは…ブラザーが
迷子じゃ無かったの?方向音痴なのに…?」
するとアギトさんが手刀で兄さんの頭を軽く叩く
「あでっ!?」
「んなわけねぇだろ…ったく、
人様のこと方向音痴なんざ言いやがって…。」
そこで自分は、師匠が居ないことを思い出した。
すると、タイミングよく真横から師匠の気配がする。
「…おぉ?久しいなアギト殿」
「あ、師匠…」
知り合いなのだろうか…
師匠が来ていたことにアギトさんと兄さんが
驚きを隠せずにいた。
「…ルカ、お前も居たのか」
「?嗚呼。そうだが…」
するといつの間にか兄さんが師匠に
ひっつき虫かのように抱きついていた。
「ルカさーーん!ひっさしぶりーー!」
それを師匠が嫌そうにしていて、
必死に引き剥がそうとする。
「ッッ…!!くっ…
こいつだけは中々、しぶといッ…!!」
「あーん!せっかくの再会なのに酷いよぉっ!」
それをワナワナしながら見ている自分は
もうどうしようも無くなっていた。
「師匠、落ち着いて…」
すると、アギトさんがこっちに向かってきた。
「あーそういやァ…ルカが世話になってんな。
…それと勝手に転送の加護石を使っちまって、すまん。」
自分は頭を下げる彼を見てこう言った。
「い、いえ…どうか頭をあげてください。」
必死で慎重に言葉を選んでくれた事にすぐ分かった。
…この人は、見かけによらず良い人なのかもしれない。
そう思った自分はこう言った。
「あの…自分も勝手に逃げてしまってすみません。」
「…いや、んなこたァ仕方ねぇよ。」
そしてアギトさんは、
リウラの方を見てこう言った。
「ん…嬢ちゃん、名前教えてくれねぇか?」
それにリウラは元気よく
清々しい笑顔でこう答えた。
「僕はリウラです!」
「そうか。よろしくな。」
そして自分は、兄さん達に気になったことがあり
そのとある事を聞いてみることにした。
「そう言えば兄さん、どうしてこんな所に居るの?」
「ん?えーとね、
放浪してたら此処に来れた感じかな~」
成程…
確かに此処は、放浪する者や旅人が多く来る場所だ。
ここに辿り着くのも納得できる。
──すると突然にして頭が痛くなる。
意識が朦朧とする中、こんな声が聞こえてきた。
「───。」
「己の意志を、導け。」
そしてその後に、兄さんの声と思われるものが
途切れ途切れで聞こえてきた。
「──ンル」
「───アンル」
「アンル!」
「…あれ、兄さん?」
「良かった…!急に倒れたんだから心配したんだよ…!」
…さっきの声は、誰だったのだろう。
兄さんでもなければ、師匠の声でもない。
余韻が残ってるのか今でもまだ頭が痛かった。
そして自分は倒れてしまっていたのか
寝台で横になっていた。
「兄さん、ここは…何処なの?」
「宿だよ、さっきの所に近かったから…ブラザーが
アンルをここまで運んでくれたんだってさ」
「…そっか。」
そして、頭が痛くなくなって少しした後、
アギトさんが居る所に向かった。
「…!アンル」
アギトさんが直ぐに出迎えてくれた。
…それがすごく嬉しかった。
「もう大丈夫か?」
「はい、お陰様で。それと…
自分を此処まで運んでくれてありがとうございます。」
「礼を言われる程の事なんざ
してねぇが…まぁ無事なら良かった。」
アギトさんがそう、安心しきった声色で言っていた。
そしてリウラが足音を響かせながら
駆けつけて自分に抱きついた。
「おししょ~っ!心配したんですよぉ…!」
今にもこぼれそうな
涙を浮かべながらそう言っていた。
「リウラ…心配かけてごめんなさい。
オレはこの通り平気ですから…」
とりあえず、大事にはならずに済んで良かったと…
そう思っていた自分がいた。
リウラが目を輝かせてそう言うと
自分は何とも可愛らしいと思えて
少しばかり微笑んでこういった。
「あれは師匠の船です。今からあれに乗るのですよ。」
──【宙船】。
料金はそこそこ掛かるが、
旅団長なら誰しもが持っていて
生活や旅に必要となる物が揃っているため
旅の途中で野宿せずに済む。
「本当なのですか!はわわ~…!」
それを見ていた師匠が、
自分と同じく微笑をたたえながらこういう。
「では出発しよう、二人とも。」
—第二話 旅路の先に—
そうして、自分達は
舟に乗り旅路を決めることにした。
地図を広げて師匠はこう言った。
「今回は、此処の砂漠地帯に行く。
水筒は万が一のために持っておくといい。」
「わかりました。」
「はいっ!」
すると師匠は、
眠たげに欠伸をして背伸びをした。
「さて…私は目的地に
着く迄に少し仮眠をとる。」
「眠いのですか?師匠」
「あぁ、少しだけだがな…」
……確かに自分達が旅に出る前
師匠は何やら旅の支度や用事を、朝まで
続けていたのだから眠くなるのも納得できた。
「わかりました。」
師匠が寝ているその間に、自分は別室で
鞄の整理などをしておこうと思った。
──そしてその目的地に着いた。
「あ…そろそろ師匠を起こさないと」
そう言って自分は
師匠のいる部屋に向かっていった。
窓越しから見て砂嵐はそこまで酷くはないが、
舟の中まで暑くて仕方がなかった。
此処での油断は禁物だ。何故なら
サソリ型の魔物と言ったものが生息している。
サソリ型の魔物は通常
【ポルン】と呼ばれ、
毒を持っているため極めて危険だ。
「師匠、起きてください。目的地に着きましたよ。」
「……もう着いたのか…
すまない、少し待ってくれ。」
そして数秒たった後に
師匠は寝台から起き上がった。
「よし…そういえば、リウラは何処に?」
その言葉を聞いた後、
自分は周辺を見回してリウラの姿を見つけた。
「あちらに居ます。」
「分かった。」
「リウラ、もう直ぐ行くぞ。」
その言葉に彼女は、ハッと気がついて
すぐさまこう言っていた。
「あっ、分かりました!」
──舟の外に出ると、
少量の砂嵐はもう既に止んでいた。
その代わりに舟の中より気温が暑かった。
そして、しばらく歩いていると
リウラが疲れている様子を見せていた。
「おししょぉ…、
何だか喉が乾いてきました…」
その言葉に自分は水筒を取り出し、
蓋を開けてリウラに飲ませた。
それに師匠は立ち止まってその様子を見ていた。
師匠は台風がある方向を指さしこう言った。
「…あそこを抜ければ、
目的地まであともう少しだ。」
…なるほど。
師匠は自分の事を、弟子として試すつもりなのか。
──そう思って自分はこう問いかける。
「つまりは、そういう事ですね?」
「うむ、そういう事だ。やはり私の弟子ならば
彼処を通れる程の覚悟でなければと思ってな。」
自分はそれに承諾した。
リウラは師匠と一緒に嵐の先へと行った。
後に自分も師匠の足跡を辿った。その前に
自分は【口布】を装着し、その方へと向かっていった。
それと同時に誰かの気配があった気がした。
砂嵐で視界が悪く、その姿を認識出来なかった。
「…っ。」
万が一のため警戒を解かずに進んでいく。
砂道を踏みしめる音が風と共に鳴り響いていた。
そして、砂嵐を通り過ぎた先には
晴れた景色が舞っていた。
「……何とか、助かった…。」
そして師匠がこちらに
向かいながらこう言っていた。
「見事だったぞ。流石は私の弟子だ。」
自分は頬に汗を垂らしながら、
ため息をついていた。
「殆ど無茶ぶりでしたけどね…。」
「ははっ、それは済まない。」
師匠は冗談を交えながら、少しばかり
微笑んで腕を組んでこう言っていた。
「お師匠すごいです!僕、先ほどの嵐で
何回か吹き飛ばされそうになったのですよ!」
リウラが目を輝かせながらそう言っていた。
それに師匠は苦笑いをしていた。
「…まぁそれも、私が
リウラの足を掴んで止めたが…」
「な、なるほど…そんな事があったのですね。」
そして師匠が咳払いをすると、
彼女は向かいにある街を見てこういった。
「…よし、行こう。」
そうして自分達は
その目的地の街へとたどり着いた。
【砂漠地帯・ピリアス帝国】
「お師匠~!見てくださいこれぇ!」
リウラが、物欲しそうに何かを見つめていた。
綺麗な羽のアクセサリーだ。
「羽の首飾り…ですね。」
すると、リウラがこんな事を言い始めた。
「…買っちゃダメですか…?」
そんな輝かしい目をこちらに向けられたら、
買うしか選択がなくなってしまうと思い直視出来なかった
「…だっ、だめです…よ??」
すると、師匠がぬっ…と出てきて
追い打ちをかけるかのように
ニコニコと不敵な笑みをうかべてこう言った。
「良いでは無いか、アンル。」
綴ってリウラも今にも泣きそうな声でこう言う。
「…おししょぉ…」
うるうると、今でも涙がこぼれおちそうだった。
…そして数分後、
その罪悪感に負けてしまい結局それを買う羽目になった。
「やったやったー!えへへ~」
「お、オレとした事が…」
すると、いつの間にか転送の加護石が反応し…
「…えっ」
何処かに転移されてしまった。
「此処は…。」
自分はどうやら
人気の少ない場所に転移されてしまったらしい。
仕方ないと思い、暫く歩いていた。
すると誰かと肩がぶつかってしまった。
「ぅわっ…?!」
肩がぶつかった割には
相手の体幹が良かった気がした。
そして、上を見上げると…
「…ん…」
そこに居たのは、身長が高く強面で、
がっしりとした体躯の男性。
それより特徴的なのが、赤色の目をしていた事。
「…すまねぇ、大丈夫か。」
正しく全身が震え上がる様だった。
そんな中自分は少しばかり
勇気を振り絞ってこう言った。
「…い…いえ、こちらこそすみません…」
…何より、その恐い目に
怖気付く暇もないくらい威圧感が凄かった。
すると…
「アンルお師匠ー!どこに居るんですかー!」
リウラの呼ぶ声が救いになったと初めて思った。
「…っ!」
彼の隙を見て自分を呼ぶ声がする方へ逃げ込んだ。
「?!っおい待て!」
「…っアンル。」
息が切れるまで走った。
こんなに走ったのは久しぶりだった様な気がする。
……。
けれど先程の人は、誰だったのだろう。
砂嵐の所で感じた気配と一致していた気もしたが
今はそれどころではなかった…。
「あれ、お師匠…大丈夫ですか…?」
「…心配なさらないでください。オレは大丈夫ですよ。」
そういえば、師匠が見当たらない。
そこで自分はリウラに、師匠はどこに行ったか尋ねた。
「えぇと…ルカさんならあそこのお店で
足りなくなった物資を買いに行くと言っていましたよ!」
…あの人らしいな、と思った答えで一安心した。
師匠と合流したいと思っていたが、
あの赤い目の人とリウラが出くわしたら…
考えるだけでも悪寒がして仕方ない。
取り敢えず彼女と合流する為にも、
路地裏から外へ出るしかなかった。
「リウラ、…此処から一旦出ましょうか。」
「?は、はい…」
すると、また誰かこっちに向かってくる。
「あれ!アンルー!」
…懐かしい声がする。
もしかしてと思い振り向いてみれば
「やっぱりアンルだ!久しぶり!」
その声、口調、姿かたち。
「兄さん、久しぶり…!」
【ルーラゥ=ルーカル】
…自分の兄で間違いない。
「お、おおお…お師匠が…」
「敬語を…つ、使ってらっしゃらない…!」
リウラがそう言った後、綴って兄さんがこう言う。
「兄の特権ってやつだよ♪」
するとリウラがムスッとした顔で悔しそうにしていた。
「なんですかそれぇぇ…!ずるいですよー!」
そういえば、と思いとある事を聞いてみることにした。
「…そういえば兄さん、実はこんな事があって…」
数分後、全て話して兄さんがこう言った。
「完っ全にブラザーじゃん、それ…」
自分とリウラが口を揃えてこう言う。
「ぶらざー?」
その名前は呼び名だと教えて貰い、本当の名前は
【アギト=ガルバトス】…という名前らしい。
「いやぁ…想像はしてたけど、
ブラザーが迷子になっちゃったね…」
「あっ、それとブラザーにはアンルの名前
教えてあるからねっ、序に顔写真も見せてあるよ~」
そう言うと同時に、
写真機で撮られたと思われる写真を見せた。
そういえば兄さんは昔からそうだった事を思い出した。
「…兄さん、行動が早いのは昔から変わらないや…」
すると、
「ルーラお前…なに勝手に迷子になってやがる。」
後ろから瞬く間に先程の人が兄さんの背後に居た。
兄さんが振り返った瞬間にこう言った。
「んぇっ?!ブラザー!」
「…あれ、ということは…ブラザーが
迷子じゃ無かったの?方向音痴なのに…?」
するとアギトさんが手刀で兄さんの頭を軽く叩く
「あでっ!?」
「んなわけねぇだろ…ったく、
人様のこと方向音痴なんざ言いやがって…。」
そこで自分は、師匠が居ないことを思い出した。
すると、タイミングよく真横から師匠の気配がする。
「…おぉ?久しいなアギト殿」
「あ、師匠…」
知り合いなのだろうか…
師匠が来ていたことにアギトさんと兄さんが
驚きを隠せずにいた。
「…ルカ、お前も居たのか」
「?嗚呼。そうだが…」
するといつの間にか兄さんが師匠に
ひっつき虫かのように抱きついていた。
「ルカさーーん!ひっさしぶりーー!」
それを師匠が嫌そうにしていて、
必死に引き剥がそうとする。
「ッッ…!!くっ…
こいつだけは中々、しぶといッ…!!」
「あーん!せっかくの再会なのに酷いよぉっ!」
それをワナワナしながら見ている自分は
もうどうしようも無くなっていた。
「師匠、落ち着いて…」
すると、アギトさんがこっちに向かってきた。
「あーそういやァ…ルカが世話になってんな。
…それと勝手に転送の加護石を使っちまって、すまん。」
自分は頭を下げる彼を見てこう言った。
「い、いえ…どうか頭をあげてください。」
必死で慎重に言葉を選んでくれた事にすぐ分かった。
…この人は、見かけによらず良い人なのかもしれない。
そう思った自分はこう言った。
「あの…自分も勝手に逃げてしまってすみません。」
「…いや、んなこたァ仕方ねぇよ。」
そしてアギトさんは、
リウラの方を見てこう言った。
「ん…嬢ちゃん、名前教えてくれねぇか?」
それにリウラは元気よく
清々しい笑顔でこう答えた。
「僕はリウラです!」
「そうか。よろしくな。」
そして自分は、兄さん達に気になったことがあり
そのとある事を聞いてみることにした。
「そう言えば兄さん、どうしてこんな所に居るの?」
「ん?えーとね、
放浪してたら此処に来れた感じかな~」
成程…
確かに此処は、放浪する者や旅人が多く来る場所だ。
ここに辿り着くのも納得できる。
──すると突然にして頭が痛くなる。
意識が朦朧とする中、こんな声が聞こえてきた。
「───。」
「己の意志を、導け。」
そしてその後に、兄さんの声と思われるものが
途切れ途切れで聞こえてきた。
「──ンル」
「───アンル」
「アンル!」
「…あれ、兄さん?」
「良かった…!急に倒れたんだから心配したんだよ…!」
…さっきの声は、誰だったのだろう。
兄さんでもなければ、師匠の声でもない。
余韻が残ってるのか今でもまだ頭が痛かった。
そして自分は倒れてしまっていたのか
寝台で横になっていた。
「兄さん、ここは…何処なの?」
「宿だよ、さっきの所に近かったから…ブラザーが
アンルをここまで運んでくれたんだってさ」
「…そっか。」
そして、頭が痛くなくなって少しした後、
アギトさんが居る所に向かった。
「…!アンル」
アギトさんが直ぐに出迎えてくれた。
…それがすごく嬉しかった。
「もう大丈夫か?」
「はい、お陰様で。それと…
自分を此処まで運んでくれてありがとうございます。」
「礼を言われる程の事なんざ
してねぇが…まぁ無事なら良かった。」
アギトさんがそう、安心しきった声色で言っていた。
そしてリウラが足音を響かせながら
駆けつけて自分に抱きついた。
「おししょ~っ!心配したんですよぉ…!」
今にもこぼれそうな
涙を浮かべながらそう言っていた。
「リウラ…心配かけてごめんなさい。
オレはこの通り平気ですから…」
とりあえず、大事にはならずに済んで良かったと…
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泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
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