約束と追憶 promitto of memory

Natsuki

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promitto of memory

第5話 光と影の交戦。

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「君と僕は同じく『獣憑き』だけど、
その代わりに違う点が1つある。」
自分が『狼の獣憑き』だということに
最初から気がついていたのか。

…知られたからには今すぐ、奴を殺さなければならない。
「それはね…祟と人間という訳だよ。」
するとヴァルフは、グラルに
その鋭い眼差しと怖い顔を向けた。
「…あぁ、そっか。人殺しの狐はアンタだったのか。」

―第5話 光と影の交戦―

すると、彼がどこかに消えた。
いつの間にかグラルは背中を取られていた。
ガッ…と鈍い音がしながらもグラルが攻撃を防ぐ。
「………邪魔するな、狐野郎。」
「…っ酷いなぁ…僕ごときに
苦戦してる狼に言われたく無いね…」

「これは相当、面白い事になる予感がしてきたよ…」
グラルが気味の悪い笑顔でそう言うと、
ヴァルフの攻撃がより一層強くなった。
「…興味半分で見てられては反吐が出る。」

『っしかしこのままだと
尻尾が1本斬られる、その前に早く始末しないと…』
そう思ったグラルは
1歩下がり、攻撃を仕掛ようとしていた。

一方その頃、アギトとアンルがいる場所には…。
「…何故そうやって抵抗する。
俺にその青年を渡せば話は済むと言うのにか。」

綴ってアギトさんがこう言った。
「…生憎俺ァ大切な物なんざ、どんな手段を使ってでも
奪われたくない主義なもんでな…。」
師匠が、冷や汗をと共に武器を握りしめ
真剣な眼差しをしながらこういう。
「アンル、…今のうちに海辺に居る彼の支援を頼む
そのうちにやつを倒してから其方に行く。」

「…っ分かりました、アギトさんと
師匠の健闘けんとうを祈ります。」
そう自分が行った後に師匠と彼が
一斉にアルブへと攻撃こうげきを仕掛けると同時に自分は彼の元へ向かう。
「…流石は暴君の王、
1対2に成りおる癖して随分と強気だ。」

そして…
「…はっ、はぁっ…、」
息を切らし、必死に足を動かして走った。
そうして、ヴァルフの所へ付いた。
「ヴァル…っ!?」
すると、そこにあったのは
既に酷い有様で、黒い血を
流し死んでいた【暴食の祟】らしきものと、
何やら、怖い目をしてこちらを睨み付ける彼だった。

「っ…あ゙ぁあっ!!」
武器の鈴杖すずつえを横に構えてそれを防いだ。
「ッ!!…っヴァルフ!何があったの、返事して!!」
「うるさい、うるさいうるさい…黙れぇっ!!」

「…ぐ、っ…!!」
益々強くなっていくヴァルフの力に対し、
自分はそれを防ぐことしか出来なかった。
「オレは、…オレは誰も
殺してないッ!!っ何もしてないんだ!!」

「落ち着いて…!ヴァルフっ…!!」

すると…
「そうだね…君は誰も殺してない。」
チリン、鈴の音が聞こえたと同時に
…その少女は現れた。
「!」
そこに居たのは、
自分と同じく金色の睫毛まつげに深緑の瞳。
そして、何よりそれは…
「…ずっと君の事を見ていたよ、アンル。」
………
「…リー、エ…?」
その少女が、ヴァルフの頭を撫でると
彼は落ち着いた表情で眠りに落ちた。
「…」
「君は何もしてないよ。ゆっくりお休み。」

……少しして、自身の周りを陣取って
少し遠ざかっていくと、彼女は両腕を広げ
自分を優しく招き入れるかのようにこういった。
「アンル、おいで。」
「…っ、リーエ!」

「…嗚呼、アンル。
やっと、やっと記憶を取り戻したんだね。」
「ぼくが追憶の神になってからようやく
この時になって報われた…。」

すると、リーエの身体がパラパラと消えかかる。
「…リーエ、からだが消えて…」

「…この体もそう長くは持たないらしい…
だから君に、ぼくの力をあげよう。」
そう幼い声で優しく彼女が言うと、包み込むような
心地のいい何かが自分の頭を撫でる、
そんな感覚を感じた。
「…リーエ、」

「…ぼくが人としての器を
手に入れたその時に、また会おうね。」
そう言い、リーエの体は
優しく暖かい風と共に消えた。

ハッとして、自分の膝に頭を乗せて
眠る彼に手持ちの布切れを敷いた。
そして決心がついた後、
アギトさんと師匠の所へ向かった。
「…っ行かないと。」

────
「はっ…ぁ…ぅ、ぐっ…がはっ…」

「!…ルカ!!」

「暴君の王とて所詮その程度、
人すら守れぬとは無様で滑稽よの…。」
鋭く辛辣な言葉を向けられていたアギトさんは、
目の前にいる奴を睨みつけこう言った。
「っ…相変わらず、俺が
苛立つ様な事言いやがるぜ、テメェは…。」

そしてアルブの周辺に、黒い水溜りが
溜まっていくと同時に奴が攻撃を仕掛ける。
「…トドメだ。」

──すると、
「アギトさんっ!」

「…アンル!」

その攻撃を、鈴杖すずつえで作った結界で防いだ。
「何…?あれを防いだだと…?」

「アギトさん…、あとはオレに任せてください。」

「…分かった。後で色々説明させてもらうからな、アンル」

「ええ、そのつもりです。」

目の前にたちはだかる奴の姿を
自分は睨みつけていた…その後に
アルブは、自分を見下すようにこう言い放つ。
「…」
「ふむ…散々逃げて気が済んだか、約束を果たす者…。」

「…何を言いますか、もう昔のオレとは違うのですよ。」

するとアルブは沈黙を捧げた後に、何やら
狂気じみた表情をしながら
大声で自分を煽るように笑った。
「…」
「っははははは…!!」
「その貴様の英雄気取った憎たらしい表情も…
此処らで終わりに等しいだろうなぁ…!!」
悪い顔で言ったと同時に黒い水に溶け込み、
人型の黒い化け物と化する。

「…どうか御加護を。」
すると短かった髪が、金色に変化し長くなった。
まるで、…前世ぜんせの自分のようだった。

…そして早くも、
奴が黒水で攻撃を仕掛けてきた。
すると自分の結界に触れたのか
ジュッと、焼け焦がれるような音がする。
それ程油断をしていたのだろう、
彼が見たことも無い表情をした。
「……っ中々に面白い…!!」

…この結界も長くは持たないと思い
そして自分も…ちりん、と鈴杖を鳴らした。

「──光の星達よ、我が声を聞きたまえ。」

すると、流れ星のような光が周辺に降り注いだ。

「ぐぁ…っ!?」

苦しみもがく彼の姿を見て自分は、
攻撃するに連れて彼の弱点がわかった。

「…光属性、それが貴方の弱点です。」

黒い水とアルブ、それらの正体は嘗ての戦争で
戦死した者、或いは怨みを持って亡くなった
死者達の魂が液状化されたものであることが判明した。

そして自分は、彼にこう問った。
「…貴方にふたつ選択肢をあげましょう。」
「オレにこのまま浄化されるか、降参するかのどちらか。」

少しの間沈黙を捧げて、少しした時に彼がこういった。
「……降参をして恥をかく…その
くらいなら浄化された方がまだマシだ…」
弱体化し彼は俯いてしゃがみこみ、
そのまま動かなくなった。
「…わかりました。」

…そうして浄化が終わった。
残ったのは、毒が浄化された水溜まりのみだった。
「…」
自分は、それをじっと見ていた。

そして、またハッとして師匠の所に駆けつけた。
「…!師匠っ!」

声が途切れつつも、
師匠は自分の名前を呼ぼうとする。
「…っ…あ、んる…」
そして師匠の体は傷だらけで、酷い状態になっていた。
「っ治療しないと…!!」

すると、師匠がこう言った。

「…しなくても…いい、」
「アギト…殿…2人きりにっ、させてくれ…」

それに応じて彼が、複雑な表情を
しながら顔を少し俯かせてこういう。

「…っああ、分かった。」

アギトさんは眉の間に
少しだけ皺を寄せてそう言い、この場を離れる。

「治療はしなくてもいいって、どういう事ですか…?」
自分が少しの涙をこらえるように
師匠の手を握ってそう言うと
向かいにいる彼女はまたもや
声を途切れさせながらもこう答えた。

「…わたしは…不治の病を患って…いるんだ。」

「!」

「だから…っ私の命は、もう長くは保てない…」
……

涙で師匠の顔が歪んで見えなくなってしまう。
悲しい事は今まで経験している気でいた…。
そして、とある事を思い出した。
仲間達が死んだ時にオレは大丈夫だと
自分にそうやって繰り返し言い聞かせていたこと。

「それと、君に……言いたいことがある…」

悴んでいる手で自分の頬を撫でる。

「…愛して、いたんだ。
弟子では無く…1人の、人間としてきみを…」

「…さいごに、…返事を、貰えないだろうか…」

「……っ。」

あぁ。

「オレも、貴女を愛していましたよ。……ルカ。」

悲しい事は、随分と前に知っていた筈なのに…

「……そして、どうかおやすみなさい。」

どうしてこんなにも、涙が出るのだろう。
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