約束と追憶 promitto of memory

Natsuki

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promitto of memory

第7話 訪問者。

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「お師匠!おかえりなさいです!」
リウラが玄関前まで迎えに来てくれた。
それに答えるべく自分もこういう。
「はい、只今戻りました。」
そうして、明日に備えて眠りについた。

──そして自分は、とある夢を見ていた。
………
…師匠の夢だった。
自分はあの人に、一つでもなにか果たせたか…
少しばかり不安で仕方がなかった。

『…』
『師匠…?』
すると真っ暗だった視界は切り替わり、
花畑の中で立っている貴女を見て
自分は泣いていたのか…涙で前が見えなかった。

…彼女が自分から、どんどん遠ざかって行く。
自分は地面の草を足で踏みしめる音が響き渡る中
目を細め泣きながら、師匠の方へと手を伸ばした。
……。
…母さん、
どうか、どうかまだ彼女を、
『……連れて、行かないで。』

「っ!…」
そうして、次の瞬間に目が覚めた。
…あれは夢の中だったのだろう、
気づけばそこは寝室だった。
……。
…あの時の出来事が全て夢なら、
どんなに良かった事だろう。
…そう思っていた。

「──アンル~!早く来てー!」
すると、兄さんが自分の名前を
呼ぶ声がリビングからした。

「あ…はーい、今行く!」
そうして、訪問してきた人たちを出迎える為に
寝間着ねまきからいつもの服に着替えた。

眠たく瞼が如何にも落ちてしまいそうな目を
擦りながら階段を降りる。
玄関前にてアギトさんが真っ先に出迎えていた。
「よぉクロノス、元気してたか?」

「あぁ、お陰様で。」
どこかで見た気がすると、そう思って
自分は目が覚めた。そしてその後にアギトさんの
後ろの丁度横に立ってその人に声を掛けた。
「…あっ、あの!」
「昨日…市場に居た人、ですか…?」

―第7話 訪問者―

「ん?」
そう言って、
クロノスという男の人が此方を見ていた。

「…おぉ、あの金色まつ毛くんか。」

という事は、あの軍帽の人も来ているのだろうか。
すると綴ってアギトさんもこう言った。

「お、顔見知りか?お前ら…」

「…はい、そうですね。」
自分は頷きながらそう言って
自分はとある人に目を向けた。

軍帽の人は、クロノスさんの
横に立っている事に今気がついた。
「…」
そこで自分は、彼に声をかけてみる。
「えっと、こんにちは…?」
そう言って見たものの、
軍帽の人は何も受け答えも無い。
無視をされているようだった。
…難しい人だな、と少しばかり思ってしまった。

そしてかれこれ、リビングにて…。
「ちょっとオレお菓子と飲み物
持ってくるから、そこの2人で話してて~」
そう兄さんが言うと、自分とその人は
丁度隣の椅子に座っていた。
「…あの、お名前は何と言うのですか…?」
そう自分が軍帽の人に問うと、
彼は自分を見るなり目を逸らしてこう答えた。
「……ギラト。」
声を聞くのは昨日以来で、自分は
嬉しくなったあまりその感情がニコニコと顔に出ていた。
「…!オレはアンルと申します。」

すると、いきなりギラトさんがこんな事を言い始めた。
「……おい、コソコソしてねぇで
とっとと出て来いよ、オオカミ野郎が。」
すると、何処からかヴァルフが出てきてこう言っていた。
「…オオカミ野郎って
お前に言われるの、やっぱり腹立つ。」

ヴァルフとギラトさんは知り合い同士なのか、
…そう思っていたが何やら不仲のようだった。

「…テメェ…弱ェ出来損ないの分際で
この俺に向かって調子こいてんじゃねぇよ。」

その状況に自分はわなわなしていた。
何故ならその二人は自分を挟んで喧嘩をしていたからだ。
「ヴァルフ、落ち着いて…ギラトさんも…」
そう言うと次の瞬間に、ヴァルフが近づいて
自分の頬を少し優しく触り、そのまま
わしゃわしゃと撫でるようにした。

「わっ…な、何するのヴァルフ…!」
そう少し困った風で彼に言ってしまうと、
自分の頬に手を乗せたまま彼がこういう。
「…ううん、何もない。
あいつの事は気にしなくていいよ。」

ヴァルフがそう言うと、その向かいにいるギラトさんは
挑発をするかのようにこう彼に言葉を向けた。
「ハッ、じゃれ合い終わったか?オオカミ野郎…」

するとヴァルフがギラトさんの方へと振り返って
彼を嫌う目をするかのように舌打ちをしてこう言う。
「…うるさいな、もう少しその口を閉じて
いればいいのに、それすらも出来ないわけ?」

「あ゙ぁ…?」
またもやギラトさんが彼を睨みつけていた。
そして感情と共にバチバチと視線を送り合う2人だった。
「はぁ…お前と居ると本当疲れる、
それで、なんでお前がここに居るの?」
ヴァルフが嫌悪そうに彼に向かって言うと
ギラトさんがこう返していた。
「あ?…こっちの事情で
この家に暫く居ることになってんだよ。」

するとヴァルフが、ギラトさんの
事を鋭い眼差しで睨みつけていた。
「…は?」

すると兄さんが
ウキウキした表情を見せながら帰ってきた。
「お菓子持ってきたよ~♪って…
あ、ヴァルフ君!おかえり!」

「…うん、ただいま」
兄さんが来た途端にヴァルフはキョトンとしつつ、
いつもの彼の表情に戻っていた。
そうして自分は、ようやく安心できた気がする。
…その時自分はその時初めて兄さんが
この場の空気の救世主だと感じた気がした。

そうしてアギトさん達も帰ってきた。
これで安心しきって昼食を済ませれる。
…だが、どうしてもヴァルフとギラトさんは
ギスギスしたままだった。
「コンソメスープおかわりして来る。」

「ぼくもー!」
ヴァルフとリウラがそう言うと、
兄さんは困ったようにこう言った。
「えぇっ、またぁ?
リウラちゃん達もう四杯目だよ…?」
そうして、楽しげに食卓しょくたくにて昼食を済ませた。

そうして昼食を終えて、自分は洗濯物を干していた。
「…ふふ、石鹸のいい匂い。」
洗いたての衣類やシーツのいい香りが、
屋上にふわふわと漂っていた。
すると、ヴァルフが屋上に繋がる扉の前に立っている。
「アンル、そこに居たんだ。」
洗濯物で前が見えない中、
ヴァルフの足音が近づく事だけは分かった。

すると、彼が自分に近づいて抱きついた。
「見つけた。」
自分は少し驚いた。
「わっ…」
そして彼が、申し訳なさそうな顔をしてこう言った。
「アンル、さっきは彼奴の前で
ギスギスした感じにしちゃってごめんね。」

それを言いにわざわざ此処に来てくれたのか。
そう思いながら、自分はこう答えた。
「ううん、平気だよ。」
彼は良かった、と言うかのような安堵した顔になった。

するとヴァルフはこんな事を言い始めた。
「それともうひとつね、
…突然だけど言っておきたい事があったんだ。」

「あの時、ルカさん言ってたんだ。
あの人は…オレのお母さんなんだって。」
……
突然過ぎて、何が何だか分からなかった。
…でも何故か納得出来た。

「嘘みたいだけど、
…アンルだけには、信じて欲しい。」

彼の顔立ち、そして眼差し…その雰囲気や物言いが、
…それが何となく師匠に似ていたから。

「…うん、信じるよ。」
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