約束と追憶 promitto of memory

Natsuki

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promitto of memory Ⅱ

第28話 強欲の祟と蝶の魔女。

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──そして見送られるまま、
自分達は舟に乗り再度旅に出る。
手を大きく降るイテルと、自分達をじっと
見守る村長の影を自分とラミジュは舟の中から見ていた。

「ラミジュ、また機会があれば此処に来ましょうね。」
自分が優しくそう言うと、
隣にいる彼女は頷いた後にこう答えた。
「うん。イテルにも会えたから、」
「…」
「本当に…生きていてくれてよかった。」
そう言う彼女の優しく嬉しそうな、
けれどもどこか悲しい笑顔を見て、自分は
彼女自身が救われたならそれで良いと…そう思った。

…そして自分とラミジュは皆の居る所へと戻り、
先程にとある討伐依頼を受けた故、
旅団協会本部へ向かうと皆に伝える途中だ。
「──皆さんお待たせしました…次は旅団協会本部にて
依頼を受けた為、そちらに向かおうと思います。」

その事に兄さんとヴァルフは少しだけ
首を傾げて、ヴァルフが兄さんにこう言った。
「旅団協会の本部…確かオレ達は、初めて行くよね。」
その向かいにいる兄さんは、
納得するような目をしてこう返した。
「うーん、確かにそうかも…」

そして兄さんとヴァルフの間に
リウラが入り込むと同時に彼女はこう言った。
「どんな所かワクワクしますねっ!」
その後に咳払いをして、自分が皆へ
伝わるように少し大きめな声でこう述べた。
「…自分は自室に用がありますので、
何かあれば、二階までお越しください。」

…そしてその場へ足を運び、
二階にある自室の扉を開ける。
その際に扉を開ける音が少しだけ響いた。

後に自分の目の前にある部屋に入り、
机の前で傾いた椅子に自分は座った。
それから机に置かれた手紙を再度目を通す。
「…そういえばアルブと戦った後の時から、
連絡を一切取れてなかったけど、元気にしてるかな…」

そう言いつつ、自分がこの手紙の送り主の現状を
気にかけている間にも、時間は流れていった。
…その辺に関しては特に何も無いと見ている。

後に自分は窓越しに映る景色を見た。
あと一日で着くだろうと予測をしつつ自分は、
ごちゃごちゃになった机の上を片付けることにした。

やはり、この散らかり様はどうしようもないな…
と少しばかり自分に呆れながら考えていた。

その後に数分経ってしまったが、
やっとの思いで机の上を片付けた。
「…ふぅ、」
それから一息ついた後、再度椅子に座った。
すると空いていた窓から何かが飛ぶのを確認した。

「…」
「水の蝶…?」

何故こんな所で飛んでいるのかは不明だが、
その蝶々は自分が言った通り
水で錬成されていたようだった。
…そして何やら、その蝶は自分に
助けを求めるかのように飛んでいたのだ。
「…」
そしてその蝶が散り散りになると、飛んでいた
その下に水だけが残り、その周辺が濡れてしまった。
「…なんだったんだろう。」
この出来事が、何を意味するのか
自分は知ることも出来ない…ただし
その時になればわかる事が出来るのだろう。

それでこそ、一体この先に何が待ち望むのか…
少しばかり自分はそう思い気になって仕方がなかった。
後に少しばかり速めに首を横に振る。
「考えていても仕方がないや…取り敢えず目的地へ
着くまでに支度をしてみんなに伝えておかないと、」

そして自分の部屋に居たリンクルスは、何か
出来ることがあればと思ったのか自分にこう答えた。
「…主さま、私にお手伝い出来ることは何かありますか?」

折角の機会だと思い、自分は彼女に頼み事をした。
「うーん…じゃあ、あともう少しで
目的地に着くと皆に伝えてきてくれるかな。」
自分がそう言った後に、彼女は翼を
羽ばたかせながら承知の言葉をこちらに向けた。
「畏まりました、では行ってまいります。」
そしてリンクルスがみんなの元へ向かうと同時に
自分は必要なものを鞄に次々と入れて行く。

…数分たった後に、みんなの元に居ていた
リンクルスが意思疎通を伝ってこう言った。
「主さま、皆様方が支度を終えました。」
自分も彼女に意思疎通を使う。
その際に自分は息を揃えこう答えた。
「分かった、ありがとう。」
そして鞄を背負い、自分は皆の
居る場所へと足を運び向かっていった。
その後に自分は息を揃え、皆に
聞こえる様にこう言った。
「さて…では皆さん。目的地に
着いたので其方に向かいましょう。」

―第28話 強欲の祟と蝶の魔女―

自分達が舟から降りると、目の前に
広がるのは馴染みのある光景のみだった。
ニーニャさんや狼煙さんと言った人物の姿は無い。
先程の手紙の送り主から自分達が
来ることを知らせなかったのもあるからだろう。
そこまで重要な事ではないからという理由も当てはまる。

その後に門をくぐり抜けて、自分達は商業区の
すぐ近くの場所で足を止めた。
「皆さん、此処が【旅団協会本部】となります。」
「…一先ず中へ入りましょうか。」
目の前の扉をその手で押し当てて
少しゆっくりと開ける。

そして自分達の視界に入った光景は
他の旅団員の姿や、そこで取引をしている人たち。
そして中央の案内所が真っ先に目に入る。
「リーピアさん、お久しぶりです。」
自分はそのまま案内所まで歩み寄った。
…この【リーピア】という少女が、
自身に手紙を送った人でもあるのだ。
「アンル様!お久しぶりですね、
それとお元気そうで良かったです!」

後に自分は少しの微笑みを浮かべた後、こう答える。
「リーピアさんもお元気そうでなによりです。」
自分は送られた手紙のことで少しばかり
気になったことがあったため、
リーピアさんに聞くことにした。

「…それと、前に送ってくださった
手紙についてのことなんですが、」
「その手紙に書かれていた討伐研究依頼とは、
どう言った依頼内容になるのですか?」

自分がそう述べたあとにリーピアさんは、
うーん、と首を傾げた後こう答えた。
「依頼内容についてですね、少しお待ちください!」
…そう言った後、彼女は
依頼書を持ってきて自分に説明をした。
「どうぞ、此方になります!」

その依頼書にはこう書かれてあった。
『討伐対象 【強欲の祟・アズデラ】。』
『弱点不明、その上正体不明の
有害な黒いモヤを操る為、極めて要注意。』
『報酬金 10000ラピツ。指定場所 異領の森。』

【強欲の祟・アズデラ】…。
相当厄介で、強靭な相手だろうと自分は予測していた。
…けれどもこの依頼書に、討伐研究依頼を
申し込んだ人の名前が表記されていなかった。

「名前が記されてませんが、これは一体…?」
その件について自分は気になったため問うことにした。
向かいにいるリーピアさんはまたもや考えてこう答える。
「それに関しては任意としていますが、
名前の表記は書く人が殆どですね…。」

自分はその言葉の後に、
彼女と同じ表情をして考えつつ、自分の
向かいにいるリーピアさんにまたもや問いかける。
「…それともう一つ聞きたい事があるのですが…
依頼主とはどういった容姿の方でしたか?」
自分が放った言葉の後に、
彼女はその依頼主の事を明かす。
「確か…青と黒の編み結んだ
髪と、星空色の目をしていましたよ!」

…どうやら自身らの身内では無さそうだ。
微かに予測はしていたが、
その可能性は完全に薄れていた。
「…分かりました、
教えて頂きありがとうございます。」

自分がニコッと微笑みそう言った後に
リーピアさんは少しだけハッとしつつ自分にこう言った。
「あ…それと指定場所に向かう際には、此方で
リルエッタ旅団様方の舟を整備致しますね。」
「移動手段に関しては協会側が
所持している舟をお出しますので、ご安心を!」

「そうですか、そこまで
尽くして頂きありがとうございます。」
…確かに今日まで、
舟の整備をしていなかった気がする。
旅団という物は、常に舟が必要不可欠になる。
そういった面でもリーピアさんは、
旅団員たちの様子に目を通し、
意見を聞きつつ気を遣っているのだろう。
…旅団協会の案内人である
リーピアさんは、自分の中で尊敬に値する人だ。

…自分はそう思いつつ、出発時間までに
取引所で何か見ていこうと思った。

「!」
アギトさんが何やら…とある物に目を通した瞬間、
目の前にあるベーグルサンドを
欲しいと言うような表現で見ていた。
「買いますか?これ…」
自分が、ラピツの入った財布を鞄から取り出す。

──【ラピツ】。
千紡世界で共通の通貨。
その名前の由来は、星座語で
【丸い】を意味する【ツーティア】と
【輝く星】を意味する【ラーピィ】が由来。

「い、良いのか…?」
アギトさんがそう言った後、
一回頷いて自分はこう述べた。
「ええ、ラピツなら十分にありますので。」
自分の向かいにいる彼は、もう一度
ベーグルサンドの方を見て自分の方を見る。
「…なら三個買いてぇ。」

「分かりました。」
自分は、少しばかり
アギトさんの好物を知れて嬉しかった。
そう思って微笑んでいた。

そして買い終えたあと、アギトさんは
すぐさまに袋に入った
ベーグルサンドを、取り出して黙々と食べていた。
「…ふふっ」

──そして数分後、その場へ向かう時間になり
旅団協会側から用意された舟へ乗り込んだ。

やはり清掃や整備等をされているだけあって、
自分達の所持する空船とは内装が少し違っていた。
…自分が掃除といったものが苦手という理由も
なんとなく当てはまる気がしていた。

そして荷物は部屋の隅に置いておいた。
…改めて自分は、討伐依頼対象となる
【強欲の祟・アズデラ】について少しばかり考えていた。
「…」
「何かそれについて調べられる
書物とかがあればいいんだけど…」
そう言った後、自分は舟の中にある
書物保管庫に向かって行った。

「おぉ…」
流石は旅団協会側が所持する舟…
書物の多さも自分達の持つ舟とは桁違いだ。

早速この場にある書物を、端から端までという訳では
無いが…兎に角その討伐対象となる存在について
何か書いてありそうな書物を漁る。

──そして暫くして数分後。
「やっぱり、ここにある本に
目を通しても得られた情報は無いや…」
それ程強い相手ならば、知られている情報は数知れず。
例えその有益な手がかりや情報を知れたとしても、
生きて戻れる可能性は少ないだろう。

そして自分は手元にある本を閉じて棚に戻した。
「…リンクルス、一旦皆のいる所に戻ろう。」

「承知しました。」
皆の元へ戻る際に自分とその場にいたリンクルスは…
自分達の乗る舟が、その異様な
空気が漂う領域に入ったらしい。
特にリンクルスと自分は、その
異様な空気を感じていた。
…そこ迄酷くは無いが、少しばかり自分は
その空気に圧されてしまうような、
そんな感覚に見舞われていた。

「主さま、如何なさいましたか…?」
自分は…彼女のその言葉にハッとした。
なんでもないと言えば嘘になってしまう…
そう思った自分は、頬に汗を垂らしていた。

「実はこの場の雰囲気が異様で…ほんの少しだけど、
気分が悪くなった様な感覚になってしまったんだ。」
自分がそう言うと、リンクルスは心配して
くれているのか…あたふたする様子を見せていた。
「なっ、なら近くにいる誰かを
此処へお呼び致しましょうか…?」

その事に自分は、少し
微笑みながら小さく首を横に振る。
「ありがとう、でもこの通り
自分で歩けるから大丈夫だよ。」
リンクルスは…自分は大丈夫。
…というかの様な雰囲気を、自ら
感じたのかホッとした様子でこう答える。
「承知しました。もし体調が
優れなければ私に直ぐ仰って下さいね。」

やっぱり、こういった面でも気が利くと言うのは
自分と共に歩む武器としても…忠実なる者としても
…リンクルスはそれ等の
鏡にもなる存在と言っても良いだろう。
そう考えていた事も含めてリンクルスと同じく…
自分も旅団長としてしっかりしていなければ。
と…自分の心に深く刻むようにそう思っていた。
「うん、ありがとう。」

そして、足を運んだ先に辿り着いた。
…どうやら、皆それぞれ
何かをして暇を潰していたようだった。
そして皆に声を掛け、目的地に着いた事を知らせた。
やはりこの森には所々に黒い霧…
…【強欲の祟・アズデラ】。
これらの脅威は奴のものと、自分は看做していた。
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