父と向き合う。

さーちゃま

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 私には母が二人いる。産みの母、育ての母の二人である。

 産みの母は私達が三歳の時に父と離婚して以来会っていない。血の繋がった三つ下の妹は母に引き取られた。

 物心ついた時には育ての母がいた。私と姉は小さい頃の母親の記憶がなかった為、育ての母を「お母さんお母さん」と慕っていた。育ての(以下略)母の作る料理も美味しかった。板前である父と文句を言いながら二人で並び料理をする姿は今でも覚えている。母の作ってくれたけんちん汁、これは私と姉の大好物だ。

 そんな母は小学校四年生の冬、父と私達娘二人を残し
一人寂しく見知らぬ田で自殺した。

これは後に聞いた話だが、そんな事を知る由もない私達娘は母の死を受け入れられずただただ泣く事しか出来なかった。

 葬儀には同級生も来てくれた。同級生の男の子がお父さんお母さんと並んで歩く姿を見て幼きながらに心苦しい気持ちになりその場を逃げ出し隠れて姉と泣いた。

 仮装を終え、遺骨を拾う父の手は拾っては止まり拾っては止まり…終いには拾う事もままならなくなりとうとうその場に泣き崩れた。それにつられるかのように姉も泣き崩れた。私はそんな二人を見ているのが辛かった。私は必死に目から溢れんばかりの涙を流しながらも母の遺骨を拾った。

小さな頃から母の愛情を知らずに生きて来た私達にとって
母の存在は気づかぬうちにとても大きな物になっていたのだ。
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