23 / 60
その23(ヨシュア視点)
しおりを挟む
そもそもオリヴィアがこの国の聖女とされているから、婚約が破棄出来ないのであって。
もし真の聖女がアイリーンだった場合彼女と婚約を結び直せるのではないか。
そう思い続けると、アイリーンが聖女であって欲しいという願望から、もしかしたらアイリーンが聖女かもしれない。次第にそう思い込むようになっていった。
「きっとアイリーンが聖女に違いない」
そしてアイリーン本人にも何度も言うようになっていった。
そうして遂に、国の重鎮達の前で婚約破騒動を引き起こしてしまう事になる。
「治癒魔法で頻繁に怪我を治していたら、人間に元々備わっている自分自身の身体を修復する機能が衰えてしまう。オリヴィアだって昔からそう言ってたよね!?」
「そんなのあいつが適当に言った事かもしれないだろ!」
そう言えば昔、そんな事を言っていたような気がするが、ヨシュアは忘れていた。
婚約破棄をやらかし、謹慎という形で自室に連行されたヨシュアの元に、弟のエフラムがその日のうちに早速会いに行った。だがヨシュアに反省の色はなく、兄弟は初めて怒鳴り合いの喧嘩をしていた。
何故聖女がオリヴィアではなく、アイリーンの方だと言い出したのか尋ねると、そのまま言い合いに発展してしまったのだった。
エフラムが言うように、人間には元々自分の怪我や皮膚を修復する機能が備わっている。
命に関わるような大怪我の止血など、人命救助の名目で治癒魔法を使う事に至っては教会から許可されている。だが頻繁に小さな傷まで治してしまうとなると、人間に元々備わっている機能がサボる事を覚え、衰えてしまう。
ヨシュアのように婚約者であるオリヴィアの身近にいる事で、小さな傷を魔法で頻繁に治癒するのは危険だとオリヴィアは判断したのだった。
「オリヴィアは物心付いた時から、教会で直々に聖女としての力や、能力に付いての教えを受けてきた。そのオリヴィアの言葉を信じないという事は、教会の教えに背くという事だっ。兄上は教会の教えが張ったりで、聖女についての知識がない、彼女が言った事が本当だと言いたいのか!?」
「アイリーンを嘘つき呼ばわりするな!そもそも彼女が真の聖女だと言い出したのは私からだっ」
「兄上にとって真実なんてどうでもいいんだね。自分にとって信じたい、都合の良いもの、耳心地の良いものだけがを信じたくて真実なんて兄上には関係ないんだ…」
悲しげに視線を落とす弟に、ヨシュアは冷たく言い放つ。
「五月蝿い。お前昔からオリヴィアの事が好きだっただろう?良かったな、変わりにお前が婚約者になってやれよ」
エフラムはヨシュアを睨み付けるとすぐに部屋を出た。
「この痴れ者が!」
数日後、会いに来てくれた母親が激怒する様を見て、ヨシュアは流石に焦った。
「は、母上…?母上もアイリーンに会えば彼女の良さがきっと…!」
「会えばですって!?私の前にそのような卑しい平民を連れてくるというのか!そのような事をしたら即親子の縁を切ります。何処まで私と、我がヴェルディエ家の顔に泥を塗れば気が済むのですかお前は!」
立ち上がった側妃は「しばらく何もするな!」と言い残して足早に部屋を出て行ってしまった。
一人部屋に残されたヨシュアは唖然とするしかなかった。
もし真の聖女がアイリーンだった場合彼女と婚約を結び直せるのではないか。
そう思い続けると、アイリーンが聖女であって欲しいという願望から、もしかしたらアイリーンが聖女かもしれない。次第にそう思い込むようになっていった。
「きっとアイリーンが聖女に違いない」
そしてアイリーン本人にも何度も言うようになっていった。
そうして遂に、国の重鎮達の前で婚約破騒動を引き起こしてしまう事になる。
「治癒魔法で頻繁に怪我を治していたら、人間に元々備わっている自分自身の身体を修復する機能が衰えてしまう。オリヴィアだって昔からそう言ってたよね!?」
「そんなのあいつが適当に言った事かもしれないだろ!」
そう言えば昔、そんな事を言っていたような気がするが、ヨシュアは忘れていた。
婚約破棄をやらかし、謹慎という形で自室に連行されたヨシュアの元に、弟のエフラムがその日のうちに早速会いに行った。だがヨシュアに反省の色はなく、兄弟は初めて怒鳴り合いの喧嘩をしていた。
何故聖女がオリヴィアではなく、アイリーンの方だと言い出したのか尋ねると、そのまま言い合いに発展してしまったのだった。
エフラムが言うように、人間には元々自分の怪我や皮膚を修復する機能が備わっている。
命に関わるような大怪我の止血など、人命救助の名目で治癒魔法を使う事に至っては教会から許可されている。だが頻繁に小さな傷まで治してしまうとなると、人間に元々備わっている機能がサボる事を覚え、衰えてしまう。
ヨシュアのように婚約者であるオリヴィアの身近にいる事で、小さな傷を魔法で頻繁に治癒するのは危険だとオリヴィアは判断したのだった。
「オリヴィアは物心付いた時から、教会で直々に聖女としての力や、能力に付いての教えを受けてきた。そのオリヴィアの言葉を信じないという事は、教会の教えに背くという事だっ。兄上は教会の教えが張ったりで、聖女についての知識がない、彼女が言った事が本当だと言いたいのか!?」
「アイリーンを嘘つき呼ばわりするな!そもそも彼女が真の聖女だと言い出したのは私からだっ」
「兄上にとって真実なんてどうでもいいんだね。自分にとって信じたい、都合の良いもの、耳心地の良いものだけがを信じたくて真実なんて兄上には関係ないんだ…」
悲しげに視線を落とす弟に、ヨシュアは冷たく言い放つ。
「五月蝿い。お前昔からオリヴィアの事が好きだっただろう?良かったな、変わりにお前が婚約者になってやれよ」
エフラムはヨシュアを睨み付けるとすぐに部屋を出た。
「この痴れ者が!」
数日後、会いに来てくれた母親が激怒する様を見て、ヨシュアは流石に焦った。
「は、母上…?母上もアイリーンに会えば彼女の良さがきっと…!」
「会えばですって!?私の前にそのような卑しい平民を連れてくるというのか!そのような事をしたら即親子の縁を切ります。何処まで私と、我がヴェルディエ家の顔に泥を塗れば気が済むのですかお前は!」
立ち上がった側妃は「しばらく何もするな!」と言い残して足早に部屋を出て行ってしまった。
一人部屋に残されたヨシュアは唖然とするしかなかった。
38
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
二周目聖女は恋愛小説家! ~探されてますが、前世で断罪されたのでもう名乗り出ません~
今川幸乃
恋愛
下級貴族令嬢のイリスは聖女として国のために祈りを捧げていたが、陰謀により婚約者でもあった王子アレクセイに偽聖女であると断罪されて死んだ。
こんなことなら聖女に名乗り出なければ良かった、と思ったイリスは突如、聖女に名乗り出る直前に巻き戻ってしまう。
「絶対に名乗り出ない」と思うイリスは部屋に籠り、怪しまれないよう恋愛小説を書いているという嘘をついてしまう。
が、嘘をごまかすために仕方なく書き始めた恋愛小説はなぜかどんどん人気になっていく。
「恥ずかしいからむしろ誰にも読まれないで欲しいんだけど……」
一方そのころ、本物の聖女が現れないため王子アレクセイらは必死で聖女を探していた。
※序盤の断罪以外はギャグ寄り。だいぶ前に書いたもののリメイク版です
「僕より強い奴は気に入らない」と殿下に言われて力を抑えていたら婚約破棄されました。そろそろ本気出してもよろしいですよね?
今川幸乃
恋愛
ライツ王国の聖女イレーネは「もっといい聖女を見つけた」と言われ、王太子のボルグに聖女を解任されて婚約も破棄されてしまう。
しかしイレーネの力が弱かったのは依然王子が「僕より強い奴は気に入らない」と言ったせいで力を抑えていたせいであった。
その後賊に襲われたイレーネは辺境伯の嫡子オーウェンに助けられ、辺境伯の館に迎えられて伯爵一族並みの厚遇を受ける。
一方ボルグは当初は新しく迎えた聖女レイシャとしばらくは楽しく過ごすが、イレーネの加護を失った王国には綻びが出始め、隣国オーランド帝国の影が忍び寄るのであった。
幸せじゃないのは聖女が祈りを怠けたせい? でしたら、本当に怠けてみますね
柚木ゆず
恋愛
『最近俺達に不幸が多いのは、お前が祈りを怠けているからだ』
王太子レオンとその家族によって理不尽に疑われ、沢山の暴言を吐かれた上で監視をつけられてしまった聖女エリーナ。そんなエリーナとレオン達の人生は、この出来事を切っ掛けに一変することになるのでした――
異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。
バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。
全123話
※小説家になろう様にも掲載しています。
聖女は記憶と共に姿を消した~婚約破棄を告げられた時、王国の運命が決まった~
キョウキョウ
恋愛
ある日、婚約相手のエリック王子から呼び出された聖女ノエラ。
パーティーが行われている会場の中央、貴族たちが注目する場所に立たされたノエラは、エリック王子から突然、婚約を破棄されてしまう。
最近、冷たい態度が続いていたとはいえ、公の場での宣言にノエラは言葉を失った。
さらにエリック王子は、ノエラが聖女には相応しくないと告げた後、一緒に居た美しい女神官エリーゼを真の聖女にすると宣言してしまう。彼女こそが本当の聖女であると言って、ノエラのことを偽物扱いする。
その瞬間、ノエラの心に浮かんだのは、万が一の時のために準備していた計画だった。
王国から、聖女ノエラに関する記憶を全て消し去るという計画を、今こそ実行に移す時だと決意した。
こうして聖女ノエラは人々の記憶から消え去り、ただのノエラとして新たな一歩を踏み出すのだった。
※過去に使用した設定や展開などを再利用しています。
※カクヨムにも掲載中です。
聖女になりたいのでしたら、どうぞどうぞ
しゃーりん
恋愛
聖女が代替わりするとき、魔力の多い年頃の令嬢十人の中から一人選ばれる。
選ばれる基準は定かではなく、伝聞もない。
ひと月の間、毎日のように聖堂に通い、祈りを捧げたり、奉仕活動をしたり。
十人の中の一人に選ばれたラヴェンナは聖女になりたくなかった。
不真面目に見えるラヴェンナに腹を立てる聖女候補がいたり、聖女にならなければ婚約解消だと言われる聖女候補がいたり。
「聖女になりたいならどうぞ?」と言いたいけれど聖女を決めるのは聖女様。
そしていよいよ次期聖女が決まったが、ラヴェンナは自分ではなくてホッとする。
ラヴェンナは聖堂を去る前に、聖女様からこの国に聖女が誕生した秘話を聞かされるというお話です。
聖女の証を義妹に奪われました。ただ証だけ持っていても意味はないのですけどね? など 恋愛作品集
にがりの少なかった豆腐
恋愛
こちらは過去に投稿し、完結している作品をまとめたものになります
章毎に一作品となります
これから投稿される『恋愛』カテゴリの作品は投稿完結後一定時間経過後、この短編集へ移動することになります
※こちらの作品へ移動する際、多少の修正を行うことがあります。
※タグに関してはおよそすべての作品に該当するものを選択しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる