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本編
黒の魔法使い
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「お前はリドリスと一緒にいた魔法使い……ティアを崖へと誘き寄せた張本人だな。なぜ、ティアを狙う?」
「まずはティアリーゼ様を先に始末しようと思っていましたが、貴方までこちらに降りて来て下さったとは好都合です。二人仲良く葬って差し上げます」
魔法使いは言い終わるのと同時に、宙に魔法陣を描き始める。
(わたしだけではなく、ユリウス様にも害をなそうとしている……それにあの魔法陣……)
以前マリータがリドリスに手渡したハンカチに、刺繍されていた物と酷似している。そしてユーノが操る魔法陣にも。
「ティア、離れていて」
「は、はい」
ユリウスの足手纏いになりたくない一心で、走り始める。そんなティアリーゼの背中に向けて、魔法陣から魔法が放たれた。
ティアリーゼに迫り来る鎖の形状をした魔法を、ユリウスの放つ光弾が弾く。
次の瞬間には、ユリウスは自身の背後に忍び寄っていた鎖を、すんでの所で躱した。
ユリウスの行動は想定内と言った様子で、魔法使いはにやりと楽しげに、趣味の悪い笑みを浮かべている。
「守りながらの戦いは、慣れていないようですね?」
魔法陣からユリウスとティアリーゼに向けて、同時に何本もの鎖が放たれた──その時。
瞬時に光弾が鎖を弾き、魔法陣をも掻き消す。更に風の刃が魔法使いを襲った。
ティアリーゼが振り返るとミハエル、そして水色の髪に紅玉の瞳の少年の姿があった。
その少年は猫の姿でなければ小さな妖精の姿でもない、ユーノ本来の人間の姿をしている。
「ミハエル殿下、ユーノさん……」
「ティアリーゼ嬢は私が護衛しよう」
ミハエルが唱えると、淡い輝きを放つ半透明の魔法の壁が出現した。
「さ、今のうちに安全なところまで離れよう」
「ありがとうございます、ミハエル殿下」
ミハエルはイルと共に、ティアリーゼ達とは別の班で狩りに参加していた筈だ。
「非常事態を知らせる狼煙が上がったから、イルと共に急いで空から来てみれば、ティアリーゼ嬢とユリウスが崖から落ちてしまったと知らされた。そしてそのまま様子を伺うため、下まで降りると二人が怪しげな男と対峙していた、という訳だ。
しかしユリウスが着いていながら、ティアラリーゼ嬢をこのような危険に晒すとは不甲斐無い」
見上げれば、自身の杖に横座りで上空に浮かぶイルが、ヒラヒラとこちらに手を振っていた。
「イルが上にいる者達に退避を促しに行ったから、他の者達も無事に下山出来るだろう」
「ありがとうございます」
レジナルドとアルレットには心配を掛けてしまい、申し訳無く思っていたが、彼らが危険から遠ざけられると知って、一つ懸念は消えた。
ティアリーゼが離れたのを確認したユーノが「これで心置きなく俺らは戦えるな」と呟いた。
ユリウスとユーノに挟まれ、二人相手という武の悪さに魔術師は忌々し気に歯噛みする。
しかしユーノが詠唱と共に、空中へと魔法陣を描くと、魔法使いの瞳がこれでもかと見開かれた。
「その魔法陣……まさか……!?」
ユーノの使う魔法陣は、黒衣の魔法使いに良く似ているが、更に複雑な模様が幾つも描き込まれている。
ユーノが詠唱すると魔法陣から無数の風の刃が生み出され、魔法使いへと向かう。
繰り出された刃の連撃を塞ぎきれず、長衣は僅かに裂け、頬からは血が流れながら魔法使いは声を荒げた。
「エルニア王族にのみ伝わる魔法陣に、その紅玉の瞳!貴方は……間違いない!エルニア王族の末裔!!」
陰鬱そうな印象をもたらしていた表情を一変させ、目を大きく見開き、歯を剥き出しにして興奮する魔法使いにユーノは冷めた声音で呟く。
「その国はもうないんだ」
「まずはティアリーゼ様を先に始末しようと思っていましたが、貴方までこちらに降りて来て下さったとは好都合です。二人仲良く葬って差し上げます」
魔法使いは言い終わるのと同時に、宙に魔法陣を描き始める。
(わたしだけではなく、ユリウス様にも害をなそうとしている……それにあの魔法陣……)
以前マリータがリドリスに手渡したハンカチに、刺繍されていた物と酷似している。そしてユーノが操る魔法陣にも。
「ティア、離れていて」
「は、はい」
ユリウスの足手纏いになりたくない一心で、走り始める。そんなティアリーゼの背中に向けて、魔法陣から魔法が放たれた。
ティアリーゼに迫り来る鎖の形状をした魔法を、ユリウスの放つ光弾が弾く。
次の瞬間には、ユリウスは自身の背後に忍び寄っていた鎖を、すんでの所で躱した。
ユリウスの行動は想定内と言った様子で、魔法使いはにやりと楽しげに、趣味の悪い笑みを浮かべている。
「守りながらの戦いは、慣れていないようですね?」
魔法陣からユリウスとティアリーゼに向けて、同時に何本もの鎖が放たれた──その時。
瞬時に光弾が鎖を弾き、魔法陣をも掻き消す。更に風の刃が魔法使いを襲った。
ティアリーゼが振り返るとミハエル、そして水色の髪に紅玉の瞳の少年の姿があった。
その少年は猫の姿でなければ小さな妖精の姿でもない、ユーノ本来の人間の姿をしている。
「ミハエル殿下、ユーノさん……」
「ティアリーゼ嬢は私が護衛しよう」
ミハエルが唱えると、淡い輝きを放つ半透明の魔法の壁が出現した。
「さ、今のうちに安全なところまで離れよう」
「ありがとうございます、ミハエル殿下」
ミハエルはイルと共に、ティアリーゼ達とは別の班で狩りに参加していた筈だ。
「非常事態を知らせる狼煙が上がったから、イルと共に急いで空から来てみれば、ティアリーゼ嬢とユリウスが崖から落ちてしまったと知らされた。そしてそのまま様子を伺うため、下まで降りると二人が怪しげな男と対峙していた、という訳だ。
しかしユリウスが着いていながら、ティアラリーゼ嬢をこのような危険に晒すとは不甲斐無い」
見上げれば、自身の杖に横座りで上空に浮かぶイルが、ヒラヒラとこちらに手を振っていた。
「イルが上にいる者達に退避を促しに行ったから、他の者達も無事に下山出来るだろう」
「ありがとうございます」
レジナルドとアルレットには心配を掛けてしまい、申し訳無く思っていたが、彼らが危険から遠ざけられると知って、一つ懸念は消えた。
ティアリーゼが離れたのを確認したユーノが「これで心置きなく俺らは戦えるな」と呟いた。
ユリウスとユーノに挟まれ、二人相手という武の悪さに魔術師は忌々し気に歯噛みする。
しかしユーノが詠唱と共に、空中へと魔法陣を描くと、魔法使いの瞳がこれでもかと見開かれた。
「その魔法陣……まさか……!?」
ユーノの使う魔法陣は、黒衣の魔法使いに良く似ているが、更に複雑な模様が幾つも描き込まれている。
ユーノが詠唱すると魔法陣から無数の風の刃が生み出され、魔法使いへと向かう。
繰り出された刃の連撃を塞ぎきれず、長衣は僅かに裂け、頬からは血が流れながら魔法使いは声を荒げた。
「エルニア王族にのみ伝わる魔法陣に、その紅玉の瞳!貴方は……間違いない!エルニア王族の末裔!!」
陰鬱そうな印象をもたらしていた表情を一変させ、目を大きく見開き、歯を剥き出しにして興奮する魔法使いにユーノは冷めた声音で呟く。
「その国はもうないんだ」
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