1 / 67
1
しおりを挟む
その少女、シルヴィア・レイノール伯爵令嬢は光に当てられ不思議な光彩を放つ、真っ直ぐな銀糸髪をサラサラと靡かせる。
本日シルヴィアはこの国グランヴェール国、第一王子である、王太子ギルバートに呼び出されていた。今は王宮内にある、王族専用の庭園へと向かう道中である。
銀の髪にサファイアの瞳という配色。
妖精の如き可憐な容姿にも関わらず、一般的な貴族女性とは違い、着飾った装いをしていない。
シンプルなドレスの上から羽織る、純白のローブマントには金糸や銀糸にて、細緻な刺繍が施されている。いかにも魔術師といった装いに違わず、彼女はれっきとした宮廷魔術師である。
それでも背筋を伸ばして堂々と歩く華奢な少女はの姿は、淑女としての教育を受けてきた事が一目に分かる。
良くも悪くも彼女の存在は王宮内で目立つ。
等間隔に配置された金の燭台やステンドグラスが並ぶ廊下を渡り、王族専用の庭園へと足を踏み入れる。庭園では本日も薔薇を中心とした、季節の花々が見事に咲き誇っていた。
奥にある白の四阿が視界に入ると、そこにはシルヴィアを呼び出した張本人が既に座って待っていた。彼はこの国の第一王子、ギルバート王太子である。
「お待たせ致しました。王太子殿下」
「シルヴィア。二人きりの時はそんな堅苦しい呼び方ではなく、気軽にお兄様と呼びなさいといつも言っているだろう」
「失礼致します」と言ってシルヴィアは向かいの席に腰を掛ける。シルヴィアが座るのを確認すると、ギルバートは慣れた手つきで用意された二人分の空のティーカップにお茶を注ぐ。
いくら機密の話があるため、侍女が周りにいないからといって、王太子自らお茶を注いでくれるとは。側から見たら信じられない光景だろう。
だが長い付き合いなので、シルヴィアは特段驚くことはない。それよりも注がれたお茶と共に用意された、バターたっぷりの焼菓子に釘付けになっていた。
「可愛いシルヴィア、今日はお兄様より提案があるのだが」
『この可愛いシルヴィア』というのは、特に甘い含みがある訳でもなく、むしろ煽りに近いかもしれないと判断している。
故にシルヴィアも聞き流す事にした。
そもそも幼少の頃より付き合いのある王太子は、何故か自分の兄を自称し、兄貴面をかましてくる。
端正な彼の顔立ちの上に乗る、常に余裕ある思慮深い笑みを讃えた彼の表情は、昔からイマイチ考えを読み解くのが難しい。
昔から突拍子も無い言動をする事も少なくない。
心中では目を眇めつつ、上部は出来るだけ平静を装い、平坦な声で質問する。
「どのような御用件でしょうか、殿下」
「お兄様だよ」
「取り敢えずご用件は?」
「つれないね」
不毛なやり取りを繰り返す中、彼は唐突にその言葉を言い放った。
「お前に縁談を持ってきた」
「はい?」
余りにもサラリとギルバートの口から紡がれたその言葉は、流石にシルヴィア予想の範疇を超えたものだった。
本日シルヴィアはこの国グランヴェール国、第一王子である、王太子ギルバートに呼び出されていた。今は王宮内にある、王族専用の庭園へと向かう道中である。
銀の髪にサファイアの瞳という配色。
妖精の如き可憐な容姿にも関わらず、一般的な貴族女性とは違い、着飾った装いをしていない。
シンプルなドレスの上から羽織る、純白のローブマントには金糸や銀糸にて、細緻な刺繍が施されている。いかにも魔術師といった装いに違わず、彼女はれっきとした宮廷魔術師である。
それでも背筋を伸ばして堂々と歩く華奢な少女はの姿は、淑女としての教育を受けてきた事が一目に分かる。
良くも悪くも彼女の存在は王宮内で目立つ。
等間隔に配置された金の燭台やステンドグラスが並ぶ廊下を渡り、王族専用の庭園へと足を踏み入れる。庭園では本日も薔薇を中心とした、季節の花々が見事に咲き誇っていた。
奥にある白の四阿が視界に入ると、そこにはシルヴィアを呼び出した張本人が既に座って待っていた。彼はこの国の第一王子、ギルバート王太子である。
「お待たせ致しました。王太子殿下」
「シルヴィア。二人きりの時はそんな堅苦しい呼び方ではなく、気軽にお兄様と呼びなさいといつも言っているだろう」
「失礼致します」と言ってシルヴィアは向かいの席に腰を掛ける。シルヴィアが座るのを確認すると、ギルバートは慣れた手つきで用意された二人分の空のティーカップにお茶を注ぐ。
いくら機密の話があるため、侍女が周りにいないからといって、王太子自らお茶を注いでくれるとは。側から見たら信じられない光景だろう。
だが長い付き合いなので、シルヴィアは特段驚くことはない。それよりも注がれたお茶と共に用意された、バターたっぷりの焼菓子に釘付けになっていた。
「可愛いシルヴィア、今日はお兄様より提案があるのだが」
『この可愛いシルヴィア』というのは、特に甘い含みがある訳でもなく、むしろ煽りに近いかもしれないと判断している。
故にシルヴィアも聞き流す事にした。
そもそも幼少の頃より付き合いのある王太子は、何故か自分の兄を自称し、兄貴面をかましてくる。
端正な彼の顔立ちの上に乗る、常に余裕ある思慮深い笑みを讃えた彼の表情は、昔からイマイチ考えを読み解くのが難しい。
昔から突拍子も無い言動をする事も少なくない。
心中では目を眇めつつ、上部は出来るだけ平静を装い、平坦な声で質問する。
「どのような御用件でしょうか、殿下」
「お兄様だよ」
「取り敢えずご用件は?」
「つれないね」
不毛なやり取りを繰り返す中、彼は唐突にその言葉を言い放った。
「お前に縁談を持ってきた」
「はい?」
余りにもサラリとギルバートの口から紡がれたその言葉は、流石にシルヴィア予想の範疇を超えたものだった。
51
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする
矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。
『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。
『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。
『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。
不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。
※設定はゆるいです。
※たくさん笑ってください♪
※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつもりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる