42 / 67
セインから旦那様へ報告②
「部下にウィッグを被せて、女に見えるようにしていただけだ。そもそも仕事だと分かっているなら、せめてそこだけは説明しておいてくれれればいいものを」
ウィッグを被せて女に見立てた部下というのは、紛れもなく産まれた時から女性であるクリスティーナだが、面倒なのでそこは敢えて省略しておいた。
「いえ。あくまで私の乏しい、想像の範疇でしたので」
「……」
「やはりアレク様の口から、直接奥様に納得いくご説明をなさってこそだと思います」
「そうだな……」
其の場凌ぎの、推察の域を出ないセインのフォローではなく、きちんと自分から全てをシルヴィアに話して誤解を解かないといけない。信頼しあえる夫婦になるには、向き合って話し合うべきだと、本当は言われなくとも分かっている。
「それと、奥様に何故愛人などという考えに至ったのか、お聞きしたのですが」
セインの言葉に再び嫌な汗が背中を伝う。
「なんでもギルバート王太子殿下に、アレク様には愛人がいらっしゃるという噂を教えられたのだとか」
「殿下だと!!?」
アレクセルは声を荒げた勢いのまま、座っていた椅子から立ち上がり、扉の方へ歩みを進めた。
「どちらに?」
「シルヴィアの元へと決まっているだろう!諸悪の根元である殿下の言葉を訂正し、今日見た事への説明をしなくてはならない」
言い放った瞬間、セインがアレクセルを制止する。しかもアレクセルの着ている上着を引っ張るという、中々ぞんざいな止め方だった。アレクセルは逸る気持ちの中振り返り、苛立ちを隠そうとせずセインを睨みつける。
「いけません。既に奥様はお休みになられておられます」
「起きているかもしれないだろう?寝ていたら、その時は諦める……」
次の瞬間、室内に扉を叩く音が響き渡る。叩扉の後、部屋に入って来たのは資料を持ったトレースだった。
トレースは二人の様子を見て瞠目する。
「如何なさいました?」
トレースの問いにセインが答える。
「アレク様のが奥様の部屋にご乱入なさろうと」
「ご乱入って何だ!?シルヴィアは私の妻だ」
二人のやり取りを聞き、トレースは眼鏡の奥の侮蔑を宿した瞳で、アレクセルを見やった。
「夜中にですか、関心致しませんね」
「何だその目は。シルヴィアが、私に愛人がいると思っているらしいんだ。早く誤解を解かないと」
主人の主張を聞いてもトレースは扉前から退かず、平静に言葉を重ねる。
「そのような理由がおありなら、お気持ちは分かりますが旦那様、かといって感情的になられてはいけません。ご就寝中にいきなり入っていかれては、奥様が驚かれてしまいます。日を改めてきちんとご説明致しましょう」
既に夫婦の契約を交わしたシルヴィアとアレクセルだが、彼女は未だ清い身体のまま。そんなシルヴィアが眠っている部屋に、断りもなくいきなり入っていくなど、止めない訳にはいかなかった。
「……分かった」
しぶしぶと言った感じで納得したアレクセル。
そして日を改める提案を了承した結果、次の日の早朝から、まだ熟睡中のシルヴィアのいる寝室へと向かった。部屋に入る時はもちろん侍女の監視下の元。
違う、そうじゃない。とセインとトレースは心中で突っ込むと同時に、アレクセルはどうしてもシルヴィアの寝顔が見たかったのだと、二人は察する事になった。
ウィッグを被せて女に見立てた部下というのは、紛れもなく産まれた時から女性であるクリスティーナだが、面倒なのでそこは敢えて省略しておいた。
「いえ。あくまで私の乏しい、想像の範疇でしたので」
「……」
「やはりアレク様の口から、直接奥様に納得いくご説明をなさってこそだと思います」
「そうだな……」
其の場凌ぎの、推察の域を出ないセインのフォローではなく、きちんと自分から全てをシルヴィアに話して誤解を解かないといけない。信頼しあえる夫婦になるには、向き合って話し合うべきだと、本当は言われなくとも分かっている。
「それと、奥様に何故愛人などという考えに至ったのか、お聞きしたのですが」
セインの言葉に再び嫌な汗が背中を伝う。
「なんでもギルバート王太子殿下に、アレク様には愛人がいらっしゃるという噂を教えられたのだとか」
「殿下だと!!?」
アレクセルは声を荒げた勢いのまま、座っていた椅子から立ち上がり、扉の方へ歩みを進めた。
「どちらに?」
「シルヴィアの元へと決まっているだろう!諸悪の根元である殿下の言葉を訂正し、今日見た事への説明をしなくてはならない」
言い放った瞬間、セインがアレクセルを制止する。しかもアレクセルの着ている上着を引っ張るという、中々ぞんざいな止め方だった。アレクセルは逸る気持ちの中振り返り、苛立ちを隠そうとせずセインを睨みつける。
「いけません。既に奥様はお休みになられておられます」
「起きているかもしれないだろう?寝ていたら、その時は諦める……」
次の瞬間、室内に扉を叩く音が響き渡る。叩扉の後、部屋に入って来たのは資料を持ったトレースだった。
トレースは二人の様子を見て瞠目する。
「如何なさいました?」
トレースの問いにセインが答える。
「アレク様のが奥様の部屋にご乱入なさろうと」
「ご乱入って何だ!?シルヴィアは私の妻だ」
二人のやり取りを聞き、トレースは眼鏡の奥の侮蔑を宿した瞳で、アレクセルを見やった。
「夜中にですか、関心致しませんね」
「何だその目は。シルヴィアが、私に愛人がいると思っているらしいんだ。早く誤解を解かないと」
主人の主張を聞いてもトレースは扉前から退かず、平静に言葉を重ねる。
「そのような理由がおありなら、お気持ちは分かりますが旦那様、かといって感情的になられてはいけません。ご就寝中にいきなり入っていかれては、奥様が驚かれてしまいます。日を改めてきちんとご説明致しましょう」
既に夫婦の契約を交わしたシルヴィアとアレクセルだが、彼女は未だ清い身体のまま。そんなシルヴィアが眠っている部屋に、断りもなくいきなり入っていくなど、止めない訳にはいかなかった。
「……分かった」
しぶしぶと言った感じで納得したアレクセル。
そして日を改める提案を了承した結果、次の日の早朝から、まだ熟睡中のシルヴィアのいる寝室へと向かった。部屋に入る時はもちろん侍女の監視下の元。
違う、そうじゃない。とセインとトレースは心中で突っ込むと同時に、アレクセルはどうしてもシルヴィアの寝顔が見たかったのだと、二人は察する事になった。
あなたにおすすめの小説
王女殿下のモラトリアム
あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」
突然、怒鳴られたの。
見知らぬ男子生徒から。
それが余りにも突然で反応できなかったの。
この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの?
わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。
先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。
お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって!
婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪
お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。
え? 違うの?
ライバルって縦ロールなの?
世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。
わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら?
この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。
※設定はゆるんゆるん
※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。
※明るいラブコメが書きたくて。
※シャティエル王国シリーズ3作目!
※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。
上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。
※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅!
※小説家になろうにも投稿しました。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~
キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。
両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。
ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。
全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。
エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。
ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。
こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
王子様への置き手紙
あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
小説家になろうにも掲載しています。
夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。
三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。
だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。
レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。
イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。
「子供の親権も放棄しろ!」と言われてイリスは戸惑うことばかりで、どうすればいいのか分からなくて混乱した。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています