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トラブル
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午前の授業が終了し、お昼休みには数人の女子生徒と食堂へ向かった。
食堂では別の授業を受けていたエリカさんが既にランチを取っている。そしてエリカさんの目の前には、鮮やかなオレンジ色の髪の男子生徒。
彼はヴァシル・アントネスク子爵令息。乙女ゲーム『エリュシオンの翼』の攻略キャラクターの一人である。
ヴァシルと談笑しながらランチを取るエリカさんを見て、食堂内の女子生徒は面白くないといった雰囲気だった。
食事のマナーがかなり改善されたエリカさんに、以前向けていた奇異の視線とは違う、敵意を孕んでいるように感じる。
乙女ゲームの攻略キャラクターという事もあり、ヴァシルは整った顔立ちの持ち主。
明るく気さくなヴァシルは、プレイヤーからも人気のキャラだったと記憶している。
気にはなるけど、ヴァシルと共にいるなら気概を加えられる事はないだろうと、わたしも自分のランチを取りに行く事にした。
:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:
午後最初の授業を終えた直後の休み時間、今度はフレデリック殿下の側近である、セオラスとエリカさんが並んで廊下を歩いていた。
騎士科に所属している赤髪のセオラスは、代々騎士の家系であり、彼もまた『エリュシオンの翼』の攻略キャラクターである。
「セレスティア様っ」
何となく邪魔をしてはいけない気がして、目を逸らそうとしたものの、声を掛けてきたのはエリカさんだった。セオラスもわたしに頭を下げる。
リア充を見かけたら全力で避けようとするのは、前世から染み付いた癖である。
声を掛けられたとあって、そのまま無視をする訳にはいかず、同行していた令嬢達には先に次の教室に向かってもらう事にした。
そして改めて二人に向き合うと、揃って紙の束を抱えている事に気付く。
「それは何かしら?」
「先生から持ってくるようにと頼まれた資料なのですが、抱えて廊下を歩いていたら、セオラス様とぶつかってしまって落としてしまいまして……」
「不注意で、申し訳ございませんでした」
「いえ、わたしが急いで小走りになっていたせいです!走るのを止めるように言われているにも関わらず、人気がないと思ってつい……。すみませんでしたっ」
律儀に頭を下げるセオラスに、焦ったエリカさんもペコペコと謝罪をし返す。
「それで、ぶつかった際に落としてしまった資料をセオラス様が半分持って下さって、こうして一緒に運んで下さっているのです」
「そうだったの。でも、女の子にこのような資料の束を持って来させようとするなんて、先生も何を考えているのかしら……」
「いえっ、わたしは大丈夫ですっ」
まさか貴族令嬢に同じ事はさせないだろう。エリカさんが元平民だからと、雑用を押し付けているのだろうか?
正解にはエリカさんは元平民ではなく、異世界人なのだけど……。
それともゲームにおける、セオラスとのイベントが強制的に発生したのだろうか?
──セオラスルートは攻略してないから、どのようなイベントが用意されているのか知らないのよね。
『エリュシオンの翼』についての知識が少ないせいで、不安が多い反面彼だけは、攻略しなくて本当に良かったと思う。身近な存在というだけでなく、彼は婚約者の側近。ゲームとはいえ婚約者の側近の、恋愛時における一面を知っていたら、何だかむず痒くなりそうだ。
「この後セレスティア様が受けられる授業は、ここから離れた教室でしたよね?」
「そうだったわっ」
このように、フレデリック殿下の側近であるセオラスだが、何故かわたしの授業スケジュールもしっかり把握している。
「では、わたくしはこれで。何も手伝えなくてごめんなさいね」
「いいえそんなっ!こちらこそ、お引止めして申し訳ございませんでした」
「失礼致します」
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食堂では別の授業を受けていたエリカさんが既にランチを取っている。そしてエリカさんの目の前には、鮮やかなオレンジ色の髪の男子生徒。
彼はヴァシル・アントネスク子爵令息。乙女ゲーム『エリュシオンの翼』の攻略キャラクターの一人である。
ヴァシルと談笑しながらランチを取るエリカさんを見て、食堂内の女子生徒は面白くないといった雰囲気だった。
食事のマナーがかなり改善されたエリカさんに、以前向けていた奇異の視線とは違う、敵意を孕んでいるように感じる。
乙女ゲームの攻略キャラクターという事もあり、ヴァシルは整った顔立ちの持ち主。
明るく気さくなヴァシルは、プレイヤーからも人気のキャラだったと記憶している。
気にはなるけど、ヴァシルと共にいるなら気概を加えられる事はないだろうと、わたしも自分のランチを取りに行く事にした。
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午後最初の授業を終えた直後の休み時間、今度はフレデリック殿下の側近である、セオラスとエリカさんが並んで廊下を歩いていた。
騎士科に所属している赤髪のセオラスは、代々騎士の家系であり、彼もまた『エリュシオンの翼』の攻略キャラクターである。
「セレスティア様っ」
何となく邪魔をしてはいけない気がして、目を逸らそうとしたものの、声を掛けてきたのはエリカさんだった。セオラスもわたしに頭を下げる。
リア充を見かけたら全力で避けようとするのは、前世から染み付いた癖である。
声を掛けられたとあって、そのまま無視をする訳にはいかず、同行していた令嬢達には先に次の教室に向かってもらう事にした。
そして改めて二人に向き合うと、揃って紙の束を抱えている事に気付く。
「それは何かしら?」
「先生から持ってくるようにと頼まれた資料なのですが、抱えて廊下を歩いていたら、セオラス様とぶつかってしまって落としてしまいまして……」
「不注意で、申し訳ございませんでした」
「いえ、わたしが急いで小走りになっていたせいです!走るのを止めるように言われているにも関わらず、人気がないと思ってつい……。すみませんでしたっ」
律儀に頭を下げるセオラスに、焦ったエリカさんもペコペコと謝罪をし返す。
「それで、ぶつかった際に落としてしまった資料をセオラス様が半分持って下さって、こうして一緒に運んで下さっているのです」
「そうだったの。でも、女の子にこのような資料の束を持って来させようとするなんて、先生も何を考えているのかしら……」
「いえっ、わたしは大丈夫ですっ」
まさか貴族令嬢に同じ事はさせないだろう。エリカさんが元平民だからと、雑用を押し付けているのだろうか?
正解にはエリカさんは元平民ではなく、異世界人なのだけど……。
それともゲームにおける、セオラスとのイベントが強制的に発生したのだろうか?
──セオラスルートは攻略してないから、どのようなイベントが用意されているのか知らないのよね。
『エリュシオンの翼』についての知識が少ないせいで、不安が多い反面彼だけは、攻略しなくて本当に良かったと思う。身近な存在というだけでなく、彼は婚約者の側近。ゲームとはいえ婚約者の側近の、恋愛時における一面を知っていたら、何だかむず痒くなりそうだ。
「この後セレスティア様が受けられる授業は、ここから離れた教室でしたよね?」
「そうだったわっ」
このように、フレデリック殿下の側近であるセオラスだが、何故かわたしの授業スケジュールもしっかり把握している。
「では、わたくしはこれで。何も手伝えなくてごめんなさいね」
「いいえそんなっ!こちらこそ、お引止めして申し訳ございませんでした」
「失礼致します」
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