呪われ眠り姫の受難

秋月乃衣

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仮の妃候補

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「レオンハルト様」

輝く金糸の髪に宝石のような瞳。整った鼻梁。
全てのパーツが完璧に配置されていると言っても過言ではない。長い手足と、スラリとした体躯。まるで芸術よのうな、奇跡の美しさを持って産まれたレオンハルト。

そんな王子様が今、自分だけを瞳に映していると思うとニナの心一気に夢心地となり、表情を花のように綻ばせた。


「ローズティーですね、とても良い香り…」

テーブルの上には二人分のカップとソーサー、ポット。軽くつまめる焼き菓子が並べられている。

最近は仮の妃候補として教育などを受けたり、お茶会をしたりと王宮に頻繁に足を運ぶようになったニナ。
このお茶会とは別に、週に一度仮の妃候補のご令嬢達全員と、レオンハルトとの茶会が開かれている。しかし候補者の中で一番の評価を会得するニナは、唯一レオンハルトと二人の時間を設けられていた。


初めてレオンハルトと二人きりでお茶をした時は、緊張し過ぎてお茶の味もお菓子の味も全く分からない程だった。
今日はジャムのクッキーも、スコーンもとても美味しく感じる。それでも目の前のレオンハルトを意識し過ぎないように、自分を言い聞かせてみても、緊張しないでいる事はニナにとって難しかった。
彼が瞳に映った瞬間、そして目の前の王子様が自分に微笑み掛ければ、波打つ心臓を止める事は出来なかった。


ニナがカップの中のお茶を飲み干したのを見計らっていたかのように、レオンハルトは口を開いた。

「じゃあそろそろ行こうか」

レオンハルトの言葉にニナは頷く。
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