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侍女と眠り姫
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レイチェルと呼ばれた女性はほんのりと垂れ目が特徴の、美人な二十歳前後の女性であり、亜麻色の髪をサイドに寄せた髪型をしている。
そしてシスカは黒髪にミディアムヘアのあどけなさが残る、小柄で愛らしい少女だった。
しかし折角挨拶をしてくれているのにも関わらず、やはり眠り姫ことオフィーリアは、声は発する事が出来きない。
レイチェルはテキパキと仕事をこなしながら、緊張気味のシスカに仕事を教えていく。シスカも仕事を覚えようと、真剣にレイチェルの説明を聞いている。
言葉を交わさず、見ているだけでも二人の人柄の良さが伝わってくる。起き上がって挨拶をしてから、二人と仲良くなりたい。そう思うのに、動くことも喋る事も叶わず、もどかしい思いに苛まれた。
(メイドさんが家に居て、お世話してくれるなんてかなりのお嬢様という事なのかしら?)
何者か分からない自分が、こんな風に思うのは不思議だが、ごく普通の一般家庭の世界しか知らなかった。物語のような、想像もつかない光景が目の前に映し出されている。
夢だとそれもあり得る話だが、夢にしては臭覚など、全ての感覚がはっきりとしすぎている。
せめて起き上がって、言葉を交わして自分の足で地面を踏みたい。そして全てを確かめたいのだが、何一つとして叶う事はなかった。
「見て下さいませ、オフィーリア様」
(オフィーリア…?)
先程から何度かそう呼ばれている。『オフィーリア』それが自分の名前なのだろうか?
違う気がする。全く聞き馴染みのない響きだった。自分はそんな名前ではなかったはずだと、眠り姫の届かない声が頭の中で呟かれた。
だがレイチェルは、明らかに自分に話しかけるように顔を覗き込んできたり、また微笑み掛けてくる。
顔が良く見えると、改めてレイチェルは綺麗な人だと思った。
「見て下さいって、オフィーリア様は見えていらっしゃるのですか?」
オフィーリアに対して話しかけるのが日課となっているレイチェルへと、自身の中に沸いた純粋な疑問を、見習い侍女のシスカは紡いだ。
「オフィーリア様はずっと眠っていらっしゃるけど、ほんの少しでも私達の声が届いていたらと思っているの。だから私は出来るだけ、オフィーリア様にこうして話し掛けているのよ」
「そうですね!きっとレイチェルさんの声、オフィーリア様に届いていると思いますっ」
レイチェルの言葉にシスカは瞳を輝かせた。
「私もオフィーリア様に、話掛けさせて頂いてもいいでしょうか?」
「ええ。オフィーリア様も喜ばれるわ。これから色んなことをオフィーリア様にご報告しましょう。目覚められた後も、心からお仕え致しましょうね」
シスカはオフィーリアに改めて向き合った。
例え眠っていたとしても、使える主に挨拶をするのは当然だと思っていたので、先程は何の疑問もなく挨拶を済ませていた。
レイチェルの言葉を聞き改めて、シスカもオフィーリアに色んな事を話し掛けたりして、接しようと心に誓う。
そして二人の侍女のやり取りは、オフィーリアにはしっかりと聞こえていたし、見えていた。
(本当に届いてるし…むしろ見えているんだけど、どうやったら伝わるかしら。向こうからしたら、私が瞼を閉じて寝ている様に見えるのね…)
「オフィーリア様、庭の薔薇が見事に咲いておりました。こちらに飾らせて頂きますね」
レイチェルが寝台の脇にあるサイドテールに据えられている、花瓶の中に生けてくれた。薔薇の芳しい香りが広がり、とても心地良かった。
そしてシスカは黒髪にミディアムヘアのあどけなさが残る、小柄で愛らしい少女だった。
しかし折角挨拶をしてくれているのにも関わらず、やはり眠り姫ことオフィーリアは、声は発する事が出来きない。
レイチェルはテキパキと仕事をこなしながら、緊張気味のシスカに仕事を教えていく。シスカも仕事を覚えようと、真剣にレイチェルの説明を聞いている。
言葉を交わさず、見ているだけでも二人の人柄の良さが伝わってくる。起き上がって挨拶をしてから、二人と仲良くなりたい。そう思うのに、動くことも喋る事も叶わず、もどかしい思いに苛まれた。
(メイドさんが家に居て、お世話してくれるなんてかなりのお嬢様という事なのかしら?)
何者か分からない自分が、こんな風に思うのは不思議だが、ごく普通の一般家庭の世界しか知らなかった。物語のような、想像もつかない光景が目の前に映し出されている。
夢だとそれもあり得る話だが、夢にしては臭覚など、全ての感覚がはっきりとしすぎている。
せめて起き上がって、言葉を交わして自分の足で地面を踏みたい。そして全てを確かめたいのだが、何一つとして叶う事はなかった。
「見て下さいませ、オフィーリア様」
(オフィーリア…?)
先程から何度かそう呼ばれている。『オフィーリア』それが自分の名前なのだろうか?
違う気がする。全く聞き馴染みのない響きだった。自分はそんな名前ではなかったはずだと、眠り姫の届かない声が頭の中で呟かれた。
だがレイチェルは、明らかに自分に話しかけるように顔を覗き込んできたり、また微笑み掛けてくる。
顔が良く見えると、改めてレイチェルは綺麗な人だと思った。
「見て下さいって、オフィーリア様は見えていらっしゃるのですか?」
オフィーリアに対して話しかけるのが日課となっているレイチェルへと、自身の中に沸いた純粋な疑問を、見習い侍女のシスカは紡いだ。
「オフィーリア様はずっと眠っていらっしゃるけど、ほんの少しでも私達の声が届いていたらと思っているの。だから私は出来るだけ、オフィーリア様にこうして話し掛けているのよ」
「そうですね!きっとレイチェルさんの声、オフィーリア様に届いていると思いますっ」
レイチェルの言葉にシスカは瞳を輝かせた。
「私もオフィーリア様に、話掛けさせて頂いてもいいでしょうか?」
「ええ。オフィーリア様も喜ばれるわ。これから色んなことをオフィーリア様にご報告しましょう。目覚められた後も、心からお仕え致しましょうね」
シスカはオフィーリアに改めて向き合った。
例え眠っていたとしても、使える主に挨拶をするのは当然だと思っていたので、先程は何の疑問もなく挨拶を済ませていた。
レイチェルの言葉を聞き改めて、シスカもオフィーリアに色んな事を話し掛けたりして、接しようと心に誓う。
そして二人の侍女のやり取りは、オフィーリアにはしっかりと聞こえていたし、見えていた。
(本当に届いてるし…むしろ見えているんだけど、どうやったら伝わるかしら。向こうからしたら、私が瞼を閉じて寝ている様に見えるのね…)
「オフィーリア様、庭の薔薇が見事に咲いておりました。こちらに飾らせて頂きますね」
レイチェルが寝台の脇にあるサイドテールに据えられている、花瓶の中に生けてくれた。薔薇の芳しい香りが広がり、とても心地良かった。
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