呪われ眠り姫の受難

秋月乃衣

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眠っている間のオフィーリア

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※これまでのオフィーリア視点に変わります。



(ここは……何処?)

 目を開けると眼前には、見慣れない唐草模様が施された天井。煌びやかな室内。

 目覚めると知らない場所にいた。
 それに何だか視界が変だ。
 身体は真上を向いているはずなのに、真正面の壁まで見通せる。部屋はかなり広いはずなのに。

 オフィーリアは身体を起こそうにも何故か身動きが取れず、声を発する事すら出来ない。
 目覚めたばかりで頭が混乱しているが、身体が動かせないのだから、状況確認のしようもない。

 何かが変というより、全てがおかしい。

 まずここは、自分の部屋ではない。
 こんなにも広くて豪華な西洋風でもないはず。

 そこではたと気がつく。
 自分の部屋…?西洋風…?
 では自分の部屋とは一体どんな場所だったかしら?眠りにつく前の自分のいた場所が記憶にない。
 先程西洋という言葉がすんなりと出て来てしまったが、西洋とは何だったのか。

 そもそも自分とは、一体何だ。自分とはどんな人間だったのか。そして私…私の名前は…何だったかしら?

 何も思い出せないなんて…。

 更なる不安と混乱に陥る中、静寂の室内に扉の開く音と共に、穏やかな女性の声が軽やかに響いた。


「失礼致します。おはようございますオフィーリア様、とてもいい朝ですわね。カーテンを開けさせて頂きます」

(うぉっ、眩しっ…)

 カーテンを締め切っていた部屋に朝の光が差し込んだ。途端一気に視界が明るくなった事が分かった。だだっ広い部屋なので、流石にカーテンのある位置は視覚になっていて見えない。
 首すら動かせないなんて…。

 カーテンを開け終わると、寝台の小脇に二人の人間が並び立った。若い女性と、もう一人は小柄な少女。

「オフィーリア様、本日は新人の侍女を連れてまいりました。シスカ、オフィーリア様にご挨拶を」


 眠っているオフィーリアに見とれていたシルカは、一拍遅れたのちハッと我に返った。反動で、迸るように懸命に挨拶の言葉を溢れさす。

「は、はいレイチェルさん。お初にお目にかかりますオフィーリア様。本日付で、オフィーリア様のお世話をさせて頂ける事となりました。シスカと申します。オフィーリア様にお会いできて光栄でございますっ」

 初々しさが愛らしかった。

(メイドさん…?)
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