38 / 42
マデリーンについて
しおりを挟む
マデリーンが、父親であるブノワ子爵のお茶に、怪しげな粉を混入させようとした。その現場をブノワ家に潜入していた、サイラスの部下によって取り押さえられた。ブノワ子爵の長男も、姉の犯行を証言しており、言い逃れは出来ない状態となっている。
そして所持していた粉からは毒の成分が検出されるも、彼女は未だ容疑を否認しているらしい。
公爵邸の庭園が見渡せるテラスで、お茶をしながらミレーユはサイラスから、一通りの報告を受けていた。そしてその内容に表情を曇らせる。
「どうして自分の家族を……」
「容疑そのものを否定しているから、動機は分からない。夫である男爵を殺害した疑惑もあるから、考えられる事は結婚に不満があったとかかな」
「……」
「そもそも今起こっている毒薬事件が、ここまで大きくなっているのは、一人で何人も手に掛ける犯人達がいるからなんだよ。一度きりの犯行で、すぐに所持していた毒薬を処分していれば、怪しまれずに済んだ者も多いだろう」
どのような理由があれ、人を一人でも手に掛けてしまうと、その後の人生を一生悔やんで生きる者が大半だろう。
しかし中には、罪を犯しても何とも思わずに、人生を全うする者。そして、何度も罪に手を染めてしまう者まで、いるのだという。
ミレーユには、説明されたところで、理解する事ができない思考だった。
一度でも快楽を知ってしまった者は、幾度もその快楽を求めてしまう。
まるで、この毒の粉に魅せられたかのように。彼女達はこの毒薬での殺人に、快楽を見出し、取り憑かれてしまったのだろうか。
マデリーンは、若くして家のために年の離れた夫の元に嫁ぎ、その支援金によりブノワ家は救われる事となった。
自分だけが犠牲になり、弟は思い合った人と結婚して、ブノワ家を継ぐ事となる。マデリーン本人はその怨みから、ブノワ家を根絶やしにして、遺産を自分の物にしようと思っての犯行だった。
彼女も夫を殺害したきりならば、このまま捕まる事もなく、贅沢な暮らしが保証されていた。
全てを失うリスクを負ってまで、ブノワ家での犯行に及んだのは、本当に怨みや遺産が目的なのか。
夫を手に掛けた事により、罪に対する意識が低下してしまったのか。
それとも毒薬と殺人に、魅入られてしまったのかは、もはやマデリーンにすら分からないのかもしれない。
そして所持していた粉からは毒の成分が検出されるも、彼女は未だ容疑を否認しているらしい。
公爵邸の庭園が見渡せるテラスで、お茶をしながらミレーユはサイラスから、一通りの報告を受けていた。そしてその内容に表情を曇らせる。
「どうして自分の家族を……」
「容疑そのものを否定しているから、動機は分からない。夫である男爵を殺害した疑惑もあるから、考えられる事は結婚に不満があったとかかな」
「……」
「そもそも今起こっている毒薬事件が、ここまで大きくなっているのは、一人で何人も手に掛ける犯人達がいるからなんだよ。一度きりの犯行で、すぐに所持していた毒薬を処分していれば、怪しまれずに済んだ者も多いだろう」
どのような理由があれ、人を一人でも手に掛けてしまうと、その後の人生を一生悔やんで生きる者が大半だろう。
しかし中には、罪を犯しても何とも思わずに、人生を全うする者。そして、何度も罪に手を染めてしまう者まで、いるのだという。
ミレーユには、説明されたところで、理解する事ができない思考だった。
一度でも快楽を知ってしまった者は、幾度もその快楽を求めてしまう。
まるで、この毒の粉に魅せられたかのように。彼女達はこの毒薬での殺人に、快楽を見出し、取り憑かれてしまったのだろうか。
マデリーンは、若くして家のために年の離れた夫の元に嫁ぎ、その支援金によりブノワ家は救われる事となった。
自分だけが犠牲になり、弟は思い合った人と結婚して、ブノワ家を継ぐ事となる。マデリーン本人はその怨みから、ブノワ家を根絶やしにして、遺産を自分の物にしようと思っての犯行だった。
彼女も夫を殺害したきりならば、このまま捕まる事もなく、贅沢な暮らしが保証されていた。
全てを失うリスクを負ってまで、ブノワ家での犯行に及んだのは、本当に怨みや遺産が目的なのか。
夫を手に掛けた事により、罪に対する意識が低下してしまったのか。
それとも毒薬と殺人に、魅入られてしまったのかは、もはやマデリーンにすら分からないのかもしれない。
77
あなたにおすすめの小説
離婚した彼女は死ぬことにした
はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。
西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。
私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。
それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」
と宣言されるなんて・・・
氷の貴婦人
羊
恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。
呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。
感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。
毒の強めなお話で、大人向けテイストです。
あなただけが私を信じてくれたから
樹里
恋愛
王太子殿下の婚約者であるアリシア・トラヴィス侯爵令嬢は、茶会において王女殺害を企てたとして冤罪で投獄される。それは王太子殿下と恋仲であるアリシアの妹が彼女を排除するために計画した犯行だと思われた。
一方、自分を信じてくれるシメオン・バーナード卿の調査の甲斐もなく、アリシアは結局そのまま断罪されてしまう。
しかし彼女が次に目を覚ますと、茶会の日に戻っていた。その日を境に、冤罪をかけられ、断罪されるたびに茶会前に回帰するようになってしまった。
処刑を免れようとそのたびに違った行動を起こしてきたアリシアが、最後に下した決断は。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる