デブでブサイクなブタを溺愛するのは……

くろいひつじ

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87 祝宴

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 クラスニーが立って、わたしを守るように、そっと背中に手を回してくれる。

「本日は僕のズトラツィムの祝いだ、無粋な真似は終わりにしてもらおう」
「し、失礼をいたしました」
「申し訳ございません」
「……ご無礼をお許しください」

 なんか、かわいそうになってきた。

 クラスニーを見上げて無言で訴えてみる。
 この人たちが悪いわけではないでしょう? という気持ちをしっかりと視線にこめて。

 ふ、と鼻から息をついたクラスニーが、淡々とした口調で続けた。

「僕のズトラツィムは寛大だ、話し合いを持ってから各国へ通達を行うこととしよう」

 ありがとうございます、とずるずるさんたちが同時に声を上げた。



 ホッとしたその時。
 きゅるる~と、わたしのお腹が鳴った。

 さ、最近はあまり鳴っていなかったのに、どうして今ここで鳴るのよ~。

 ふふ、と小さく笑うクラスニー。
 これは絶対に、しかたないなぁ、とか思ってんでしょ!

「ささやかだが、祝宴の場を設けてある」

 クラスニーが空いている方の手を伸ばした。
 そして、その手の中に、前腕ほどの長さの杖が握られているのを、わたしは見た。

 杖だ!!

 興奮してしまったわたしは悪くないと思う。
 これで格好がずるずる服だったら完璧なのに、と思いながら見上げていると、クラスニーが首を曲げてわたしにささやいた。

「卒業おめでとう、ネラ」
「ありがとう」

 さっきも言ってくれたけれど、あれは人前仕様だったから別なのね。
 そう思いながらクラスニーの首に腕を回す。

 片手で子供のように抱き上げられて、ほほにきすされた。
 人前できすされるのは初めてで、体が固まってしまう。

「『トゥ ユーフラサリ タハン パイカーン』」

 クラスニーの言葉とともに、講堂の外が銀の光に包まれた。



 目の前に、顔の下半分を布で隠した給仕さんたちと、たくさんの食事が乗ったすごく長いテーブルがあらわれた。

「若き者らの良き門出をここに願う」

 クラスニーの言葉を皮切りに、良き門出を、とそれまで遠巻きにしていた魔導師さんたちが声をあげた。
 その中には人の声とは思えないような、吠え声まで混ざっていた。

 さっさと動き出したクラスニーが、わたしが好きなものばかりお皿に取り分けて、それをいつもと同じように食べさせてこようとする。

 どうしよう。
 これ、人前だと恥ずかしくない?

 でもそう感じているのは、わたしだけらしい。

 顔が見えていないずるずるさんや、顔が見えていてもフードでほとんど隠れているようなずるずるさんにも、視線を向けられているのを感じる。

 やけに生暖かい視線を。

  
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