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11 養い親と養い子
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しおりを挟むアレス団長は心配している。
悩んだ末に一旦、結論は出したけれど、今でも考えてしまう。
スレクツがおかしな格好を始めた時に、止めるべきだったかもしれない、と。
魔術兵だった頃のスレクツは、顔だけを隠していた。
けれど黒鉄魔術兵士団の副団長になってからは、黒い布で全身を覆いかくし、姿も声も何もかもを隠蔽してしまった。
成人過ぎた養い子の服装にまで口を出すのは、母親としてどうかと思う。
けれど、全身を布で包んでいては、まともに他人と会話ができないのではないだろうか。
元から他の兵士と交流がなかったこともあり、スレクツは孤立している。
夫からは「誰にも迷惑をかけていないなら、好きなようにやらせてやれば良い」と言われている。
副団長をしているスレクツの兄弟子も、気にかけてくれている。
女男爵であり団長、という肩書きにつきまとう忙しさゆえに、常に様子を見ていられなかった。
アレス団長は魔術兵士団の団長らしく、広範囲を攻撃魔術で丸ごと吹っ飛ばすことはできる。
むしろ得意分野だ。
しかし百以上の視点を同時に展開しながら、十以上の種類が違う小規模魔術を展開して、複数の兵士を援護するなんて器用な真似は、スレクツにしかできない。
そして、おそらくスレクツは本気ではない。
後方支援しかしない魔術兵に、普通の兵士の格好をさせる理由もないので、見て見ぬ振りをしているけれど、やはり違和感はある。
暗がりに立っている姿など、子供向け絵本のお化けにしか見えないのだから。
皇帝以下、下手な貴族や権力者に取り込まれて利用されないように、と愛娘を守ってきた団長は、小さく息を吐いて熱いお茶に口をつけた。
視線の端で、ご機嫌な様子でお茶菓子を用意しているスレクツを確認して。
兄弟子が言っていた通り、本当に赤銅兵士団の団長との間に、何らかの進展があったらしいね、と眉を上げた。
魔術以外の分野に関しては、慎重で奥手すぎるスレクツと、強面の上に無口で何を考えているか分からないが戦闘狂なのは間違いない、と有名なオンフェルシュロッケン団長。
二人が、どうやって歩み寄ったのかは気になるものの、すぐにどうこうということはないだろう、と結論づけた。
「アレス団長、お茶請けをどうぞ」
いくら後方支援とは言え、戦場の野営地に自分のお気に入りの茶と菓子まで用意している、呑気で規格外な養い子だ。
傷つく痛みを知る優しい子を、大切に育ててきたつもりだ。
黒鉄魔術兵士団、アクセプティール・アレス団長は柔らかく微笑んだ。
まだまだこの恋の先行きは長そうだ、としみじみ思いながら。
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