消えた探偵と呪われた村

第一章 封じられた村

第19話 真実の扉

桐生は目の前に広がる景色に息を呑んだ。そこにあったのは、彼が一度だけ夢で見たことのある風景だった。山々に囲まれた静かな村、風に揺れる木々、そして遠くに見える古びた神社。しかし、その風景はどこか歪んでおり、空気が異様に重かった。村の中心に立つ神社の前には、黒い霧が漂い、すべての物が不自然に静まり返っていた。

桐生はその神社を見つめ、何かが引き寄せられるように足を踏み出した。その瞬間、背後から冷たい風が吹き抜け、まるで誰かが近づいているような気配を感じた。

「桐生さん、振り返らないで。」玲子の声が桐生の心に響いた。

桐生はその言葉を無意識に反映し、振り向かずに前に進んだ。霧の中に足を踏み入れた瞬間、耳に聞こえたのは、遠くから聞こえる鐘の音だった。その音がだんだんと大きくなり、周囲の空気が急にひんやりと冷たく感じられた。桐生の体を突き刺すような冷気が、神社に近づくたびに強くなっていく。

神社の境内に足を踏み入れた桐生は、目の前に立つ大きな扉を見つめた。扉は古びており、まるで何世代にもわたって守られてきたかのような印象を与える。しかし、桐生の目に映ったその扉には、どこか不気味な力が宿っていることを感じ取った。

「これが、最後の扉なのか。」桐生は低くつぶやいた。

その時、背後から声が聞こえた。「お前が開けた扉の先に、全ての真実が待っている。しかし、その先にはお前が予期しない恐怖が待ち受けている。」桐生はその声に振り返ったが、そこには誰もいなかった。代わりに、目の前の扉がひときわ強い輝きを放ち始めた。

桐生はその扉に手をかけると、何も言わずに一気に押し開けた。扉がきしむ音を立てると、瞬間的に目の前が真っ白な光で満たされ、桐生は目を閉じることを余儀なくされた。

その光が収まると、桐生は目の前に壮大な景色が広がっていることに気づいた。そこは、異世界のような場所だった。無数の古代の遺跡が広がり、何千年も前に栄えた文明の名残が今もなお生きているかのような場所だった。遠くには巨大な黒い塔が立ち、そこから伸びる無数の枝が空を覆い尽くしていた。その塔から放たれる力は、まるで何かの支配者がこの世界を支配しているかのように感じさせた。

桐生はその光景に圧倒されながらも、何かに引き寄せられるようにして塔へと向かって歩き始めた。その歩みの先に待っているのは、果たして真実なのか、それとも破滅なのか。

突然、空が暗くなり、地面が震え始めた。桐生は足を止め、振り返る。そこには、先ほどまで見えていた村の風景が完全に消え去り、代わりに深い闇が立ち込めていた。その闇の中から、巨大な影がゆっくりと浮かび上がるのを桐生は見た。

その影は、まるで人間の姿をした何かが蠢いているようだった。桐生は恐怖を感じながらも、その影に向かって足を踏み出した。

「逃げられない。」その声が再び響く。影の目が桐生を捉え、恐ろしい力を放っているのが感じられた。

「お前たちが呼び覚ましたもの、もう後戻りはできない。」影の声はさらに冷たく、桐生の心を締めつけた。

桐生は必死にその影に立ち向かおうとしたが、足元が崩れ、彼の体は再び引き寄せられていった。どんどん深い闇へと沈み込むその感覚が、桐生を完全に支配していく。

その時、再び玲子の声が聞こえた。「桐生さん、あきらめないで！もう少しだけ、私たちのために、真実を追い求めて！」

桐生はその声に励まされ、体を引き戻すように力を振り絞った。闇の中で彼が見たのは、過去の自分、失われた記憶の断片だった。失われた時間の中で、桐生は何かを取り戻したような気がした。それは、恐怖を乗り越えるための力だった。

「玲子…私たちは、きっとこの村を救える。」桐生は呟き、闇の中で再び立ち上がった。

その瞬間、黒い塔から放たれた光が桐生を包み込むとともに、彼の体は強く引き寄せられた。そして、桐生はその光の中で真実を知ることになる…。