消えた探偵と呪われた村

ユキワラシ

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第一章 封じられた村

第29話 闇の扉

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桐生が完全に呪いの光に包まれると、周囲の空間は一瞬にして静寂に包まれ、全てが停止したかのように感じられた。彼の意識が遠くへと引き寄せられ、目の前の光景が歪み、見えたはずのものが消えていく。その間、時が止まったように感じる一方で、異常な温度差が体に突き刺さり、冷たい感覚が体中に広がった。

桐生は意識を保とうと必死に自らを引き戻そうとしたが、あまりにも強大な力に押しつぶされそうだった。しかし、彼の心には消えない思いがあった。それは、村を救うという固い決意だった。

突如、目の前に現れたのは、先ほど感じた悪しき存在—呪いそのものだった。桐生の目の前に立つその存在は、もはや人間の形を成していなかった。目は黒く、口は歪んだ笑みに変わり、腕は長く細く、指先が鋭く尖っていた。体全体から発するのは、ただの暗黒の力ではない。それは、絶望そのものであり、命を削るような恐怖を呼び起こす存在だった。

「お前が……呪いの根源か。」桐生は声を絞り出すように言った。

その呪いの存在は、静かに桐生を見つめ、口元をゆっくりと歪ませた。その顔にはかすかな冷笑が浮かんでいた。

「君が挑戦してくるとは思わなかったが、やはり運命には逆らえない。村を救おうとするその無謀さ、愚かさ、そして、命を捧げようとする覚悟——それが結局、君を終わらせる。」呪いの存在は低い声で語りかけた。

桐生はその言葉に、ひどく重く心が押しつぶされそうになりながらも、何とか反応を返した。「俺が命を捧げても、この呪いを消すことができるのなら、俺はそれでいい。」彼の声は震えながらも強い意志を込めていた。

呪いの存在はその言葉を無視するかのように、ゆっくりとその手を桐生に向けた。その指先が触れると、桐生の体に激しい電流が流れ込み、痛みが全身を貫通した。彼は無意識に体をよじるが、その痛みは体に深く刻まれ、あまりの苦しさに意識が薄れていきそうになった。

だが、桐生は必死に目を見開き、意識を保とうとする。「まだ……まだ……諦めない。」

「無駄だ。」呪いの存在が冷ややかに言った。「君の苦しみも、この村の呪いも、全ては私のものだ。お前がいくら試みても、どんな犠牲を払っても、この村に平穏は訪れない。君が死んでも、この呪いは消えない。」

桐生の体が再び震えた。彼の頭の中で幾つもの考えが駆け巡る。その言葉が真実であれば、全てが無駄になってしまう。しかし、心の奥底にはまだ希望があった。彼は、自分の命が無駄になったとしても、村を救うために戦う覚悟を持っていた。その覚悟こそが、彼がこの呪いに立ち向かう唯一の力だった。

「お前の言葉には屈しない。」桐生は力を振り絞って言い放った。「たとえお前が無限に繰り返す呪いであったとしても、俺はそれを打破する。」

呪いの存在は一瞬、桐生の決意に驚いたような表情を見せたが、すぐに冷徹な笑みを浮かべた。「君の力では、私には勝てない。しかし、君のその力を使って、別の道を開くことはできるだろう。」呪いの存在はそう言うと、突然その姿が消え去り、桐生の目の前に、もう一つの扉が現れた。その扉は完全に異次元から来たように見え、その表面には無数の刻まれた文字がうねりながら浮かんでいる。

桐生はその扉に引き寄せられるように足を進めた。すると、扉が音を立てて開き、その先には巨大な空間が広がっていた。そこには何もかもが反転したような景色が広がっており、天井は地面に、地面は空に見え、空間が歪んでいた。

桐生はその場で一瞬立ち止まり、深く息を吸った。「これが、呪いを解き放つ鍵か。」彼の心には、村の未来を変えるための決意が漲っていた。この先に待っているものが何であれ、彼はもう後戻りできなかった。

その時、再び暗闇の中から低い声が響いてきた。「君が開いたその扉は、もはや元には戻せない。呪いの真実を知る時が来た。」その声は、桐生の背筋を冷やすほど重く、恐怖を呼び起こすものだった。

桐生は扉を越え、呪いの源に足を踏み入れる決意を固めた。この先に待つ真実、そして絶望に満ちた闇を、彼はどこまで耐えられるのか—その答えを出すために、桐生は闇の扉を抜けていった。
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