異世界転生ワールド

第2章・「歪んだ未来――時の試練」

第70話「真実の扉、開かれし時――過去を超えて」

バーベル国王の登場

激しい戦いが始まろうとしていたその時、突如として空気が震え、深い闇の中から一人の男が現れた。彼はゆっくりと歩みを進め、その姿が徐々に明らかになった。背が高く、落ち着いた風格を持つその男は、かつてバブロニア王国の王であったバーベル国王だった。

「バーベル国王…！？」サラと紫苑は驚愕の表情を浮かべながら、目の前の人物に声を上げた。

「サラ、紫苑、久しぶりだな。」バーベル国王は静かに言った。その声には何とも言えぬ重みがあり、彼の存在が戦場に重くのしかかる。

「お前が、どうしてここに…！？」サラの目が鋭くなる。「あなたが裏切りを犯したとされている…それが本当だとしたら、どうして今更現れた！」

バーベル国王は深いため息をつき、ゆっくりと語り始めた。「お前たちには、あの時の真実を知らなければならないと思ってな。私が裏切ったとされていること、それは誤解だ。すべての真実は、私一人では語れなかった。」

その言葉に、サラも紫苑も固唾を呑んで聞き入った。

バーベル国王の弁明

「私が暗黒軍と手を組んだと言われているが、それは全くの誤解だ。」バーベル国王は静かに話し始めた。「実際には、暗黒軍と接触したのは私ではなく、裏で動いていたある勢力だった。それは…バブロニア王国の一部の者たちだ。」

サラは眉をひそめ、疑問の表情を浮かべた。「一部の者たち？ それは一体誰のことだ？」

バーベル国王は続けて言った。「私が王国の存続をかけて戦争を行った際、裏で手を引いていたのは王族の一部と、高位の貴族たちだった。私自身は、彼らが暗黒軍とつながりを持っていたことを知らなかった。むしろ、私はその事実を隠し通すために、必死に戦い続けていた。」

「それでも、あなたは最終的に王国を裏切った。」ビックドラムの冷徹な声が響く。「お前の目の前で、我々の命を犠牲にしてまで、その秘密を守ったのだ。」

バーベル国王はビックドラムに向かって静かに語りかけた。「ビックドラム、あの時、私が取らされた決断の重さを理解してほしい。私は王国のため、国民のため、あの戦争を終わらせるために尽力したが、裏で操っていた者たちに翻弄された。私が背負った十字架を、決して軽く見ないでくれ。」

ビックドラムの目が鋭く光ったが、何も言わなかった。ただ、その冷徹な表情の中にわずかな驚きと疑念が交じったことを、サラは感じ取った。

「お前が言うことが本当なら、どうして今になって現れたんだ？」紫苑が鋭く問い詰めた。「裏切り者として、この時代まで生き残った理由がわからない。」

バーベル国王は深く息を吸い込んでから言った。「私は、真実を明かすことを恐れていた。しかし、もう隠すことはできない。私が生きていたのは、王国の存続をかけた真実を、そしてその時の過ちを償うためだ。」

「過ち？」サラが声を震わせた。「それでも、あなたが選んだ道が、私たちやあの時の戦士たちを裏切ることだった。」

バーベル国王は少しだけ顔を歪め、苦しい表情を浮かべた。「本当に、私は多くの人々を裏切った。だが、私の一番の後悔は、暗黒軍と手を結んだことではなく、その裏で動いていた者たちの存在を見過ごしてしまったことだ。」

その言葉を聞いて、サラはようやく少しだけ冷静さを取り戻した。「だから、あなたが今ここに現れた理由は…？」

バーベル国王はサラを見つめ、真摯に言った。「今、この王国に迫る危機を乗り越えるためには、全ての力を合わせなければならない。そして、私の過ちを償うためにも、暗黒軍に立ち向かうために力を貸さなければならない。」

新たな連携

その言葉に、サラと紫苑は一瞬ためらったものの、次第にその覚悟を感じ取った。過去の誤解や裏切り、戦争の傷を乗り越えるためには、今一度、力を合わせる必要があると感じた。

「あなたが言うように、私たちは今、同じ敵に立ち向かうべきだ。」紫苑が冷静に言った。

「だが、信じるには時間がかかる。」サラは厳しく言った。「過去を背負ったままでは、誰も前に進むことはできない。」

バーベル国王は黙って頷き、深く頭を下げた。「その通りだ。だが、今は敵が迫っている。私たちの力を合わせて、王国を救うために戦おう。」

その時、ビックドラムが静かに言った。「俺の復讐は、まだ終わっていない。だが、俺は今、王国を滅ぼすつもりはない。お前たちの戦いを見届けさせてもらう。」