諦めた初恋と新しい恋の辿り着く先~両片思いは交差する~【全年齢版】

カヅキハルカ

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2.相談

(知らない場所で新しい恋を見つけられれば、芽生えたばかりの恋心なんて、すぐに萎んでしまうに違いない)

 大学に進学してすぐの頃は、そう期待して積極的に出会いを求めて活動していた時期もあったが、半年も経たない内にそれも止めてしまっていた。
 場所が変わっても、見知らぬ人しか周りにいなくなっても、智明に興味を持つ女性は結局「見た目重視」なのが、あからさまだったからだ。

 むしろ高校の頃よりも更に、自分のステータスを上げるための狩りをする様な目をしている女性にばかり好かれて、辟易する。
 智明には、そういう女性を引きつける何かが放出でもされているのだろうかと、疑ってしまいたくなる程の出会い率だった。

 ちなみに、女性に恐怖を感じる事に加えて、男の幼馴染みを好きになってしまった事実から、「男性が好きなのかもしれない」と思い込み、そういう店に出会いを求めに出かけた事も少なからずある。
 都会に出てきた最初の頃は、すぐにでも幼馴染みへの恋心を消してしまいたい衝動に駆られていた為、柄にもなく積極的だったのだ。

 だが、好きになれそうな男性を探そうとすると、必然的に幼馴染みに似た容姿の男性ばかり目で追ってしまうし、実際に話してみると本人とは違う部分ばかりが気になって、興味を失ってしまう。
 似ているだけでは駄目だし、幼馴染みでなければ意味がないのだと思い知らされるばかりだった。

 唯一の収穫は、男が好きなのではなく「幼馴染みだけが好き」だと、理解した事くらいだろうか。
 叶わぬ恋だと諦めて逃げてきたはずの場所で、智明がドツボにハマってしまった瞬間でもあった。

 そうなってからは、新しい恋を探すという行為自体がむなしく思えて、今ではすっかり大人しい元通りの生活に落ち着いている。
 消化できずに胸に刺さった恋心という棘は抜けないままだったけれど、刺激の少ない穏やかな日々は案外智明に合っていて、このまま時間が解決してくれるのかもしれないと、僅かに期待もしていた。

 ただ、相談に乗って貰っている相手は、智明が無我夢中で新しい何かを求めていた時期に知り合った友人だ。
 今の智明の平坦な暮らしぶりにこそ、違和感があるらしい。

「もうこうなったら、本物の彼女を作って、諦めて貰うしかないんじゃね?」
「そんな事言ったって……」
「合コンしようぜ! 智明が来るってなると、女子の集まり良いんだから、頼むよ」
「嫌だ」

 合コンも、大学に入ってすぐの頃は誘われるがまま、積極的に参加していた。
 場所が変わっても、出会いの場が増えても、同じような女性にばかり好かれるのは相変わらずだったので上手く行った試しはなかったし、疲れるだけだと既に学んでいる。

 近頃あまり誘いに乗らなくなった今の智明を、友人はある意味心配してくれているのだろう。
 ただ、智明の中に渦巻く事情を知らず、他人事でしかない友人は、困っている智明の状況を聞いても「モテていいじゃん」と楽しそうだ。

 とはいえ、毎日のように女性からストーカーまがいの付き纏いを受けている今回のケースは、あまりにも度が過ぎていた。
 智明からすれば、日常を脅かされていて、死活問題なのである。

 その相手が知り合いならまだしも、バイト先の単なる客の一人であり、ほぼ接点のない女性からというところが、恐怖心を増大させていた。
 あまりプライベートの事を詮索されたくない智明が、耐えられず友人に何か打開案はないかと、相談する羽目になっているのがその証拠だ。

 疲れ果てた様子の智明に、友人も流石に「ただ事ではない」と感じたのかもしれない。
 少しだけ「うーん」と考える様な仕草を見せた後、閃いたようにスマホを取り出して何かを検索し、智明の目の前に差し出した。

「これなんか、どう?」
「レンタル……彼女?」

 友人が差し出した画面を覗くと、そこには可愛らしい女性の写真が並んだサイトが映し出されていた。
 怪しいサイトではないかと一瞬疑ったが、思いの外しっかりとしたコンセプトや利用方法が記載されている。
 だが、このレンタル彼女が、今の智明の状況をどう打開してくれるのか、イマイチ想像できなくて画面を見つめ続けていると、友人が解説し始めた。

「お前に本命がいるってわかれば、諦めてくれるんじゃね?」
「恋人の振りして貰うって事か? そんな簡単にいくかな……」
「じゃあ、このままで良いのかよ」
「それは良くない、けど」
「こういう商売してるんだから、相手も慣れてるって。親しげにデートでもしてるとこを見せつければ、そのヤバそうな女のストーキングもそのうちなくなるだろ。多分」
「他人事だと思って……」
「他人事のわりに、結構ちゃんとした提案してやってるだろー?」
「まぁ、それは有り難いとは思ってる」
「んで、上手くいったらレンタル彼女の感想よろしく! こういうのってさ、そのままお付き合いとかに発展したりすんのかなぁ?」
「お前、それが目的だろ。出会い系とは、違うんじゃないか?」
「ま、その辺含めて詳しく頼むよ。期待してる!」

 言いたいことだけ言って、友人は「じゃ、次の授業があるから」と、ひらひらと手を振りながら去って行った。
 まだ昼過ぎではあったけれど、友人と違って智明はもうこの日は授業を取っていなかったので、バイト前に一度一人暮らしをしているアパートに帰ることにする。

 普段なら、友人達と学食で時間を潰したり、図書館で静かに過ごしたりするのだが、近頃は本当にストーカーまがいの付き纏いが激しすぎて、流石に疲れ果ててしまっていた。
 一人で帰宅するのも避けたいところではあるのだが、大学生にもなって男一人で歩けないというのも情けない。
 キョロキョロと周囲を警戒しながら、智明は帰路についた。
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