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9.連絡
(規則を破って怒られるのが俺だけなら良いけど、シマは大丈夫なのかな?)
嬉しさ半分戸惑い半分のまま、シマが慣れた手つきでQRコードを読み込み、智明の連絡先を登録している様をじっと眺める。
智明の視線に気付いたシマが、ふと顔を上げて「そんなに真剣に見つめてどうしたんですか?」と揶揄いながら笑う。
その表情は、やはりどこか和志と重なって、智明の顔はますます熱くなった。
「はい、できた。いつでも連絡してください」
ポンっという音と共に、待ち合わせの時に使っていたのとは違う、智明が普段使っている無料通話アプリから通知が表示される。
アプリを開くと、「よろしく!」と挨拶する可愛らしいクマのスタンプが表示されていた。
宛先が「シマ」になっていたので、プライベート用かと思っていたが、もしかしたら仕事用にアカウントを持っているのかもしれない。
(なるほど。こうやってリピートに繋げるのか……)
シマが「レンタル彼氏」の規則を大幅に破っているわけではなさそうで、怒られる心配はなさそうだと安心すると同時に、どこか寂しさを覚えてしまうのは欲張りだろうか。
「ありがとう」
「あの女性の気配を感じたら、いつでも遠慮せずにすぐ連絡してください。いつも恋人とやり取りしてるって思わせるの、大事です」
「な、なるほど。了解」
「次からはデートの約束も、サイトを通さないで直接下さいね」
「わかった」
何度も「連絡をよこせ」と念押しして、ようやくシマは智明から離れた。
帰る方角は逆だったけれど、もうストーカー女性は離れたというのに、シマは智明が電車に乗るまで見守ってくれる。
電車のドアが閉まる直前、シマが何かを言った気がしたけれど、人々の雑踏の中に溶けて声を聞くことは叶わなかった。
唇の形は愛を囁くものだったように思えたが、さすがにそこまでのサービスは過剰だろうから、智明の気のせいだろう。
一人で電車に揺られながら、交換したばかりの通話アプリに残された「よろしく!」というたった一つのスタンプから、目が離せなくなる。
(もう、寂しい)
いくら似ているといっても、シマは和志ではない。
智明の記憶にある和志とも、そんなに似ていなかった。
それなのに、今日初めて会っただけの、ストーカー対策でしかなかった「レンタル彼氏」に、こんなにもハマってしまうなんて思ってもいなかった。
まだ自分の嗜好が手探り状態で、何にでも手を出してみようとゲイバーなどに顔を出していた頃、夜の街にハマる女性達とも何度か会ったことがあるのだが、あの時は彼女たちの気持ちが全くわからなかった。
けれど今なら、少し理解出来る気がする。
傍に居る時間だけは、全てを肯定して受け入れてくれる、弱った心を守ってくれる、柔らかく微笑みかけてくれる、優しい人。
だがそんな理想の塊の様な相手は、自分だけのものではない。
繋ぎ止められるのなら、自分だけを見てくれる時間が増えるのなら、金銭で解決するのを躊躇わなくなるのも、頷けた。
じっと画面を見つめていた智明の前に、「今日は楽しかったです。良い夢を」というメッセージが現れる。
(プロの彼氏……恐ろしいな)
シマからの追い打ちに、まんまと嬉しくなってしまう。
ハマってしまう予感がしていたから、本当に今後も連絡を取って良いのかどうか躊躇っていた智明は、苦笑しながらも返事を打たざるを得なくなった。
嬉しさ半分戸惑い半分のまま、シマが慣れた手つきでQRコードを読み込み、智明の連絡先を登録している様をじっと眺める。
智明の視線に気付いたシマが、ふと顔を上げて「そんなに真剣に見つめてどうしたんですか?」と揶揄いながら笑う。
その表情は、やはりどこか和志と重なって、智明の顔はますます熱くなった。
「はい、できた。いつでも連絡してください」
ポンっという音と共に、待ち合わせの時に使っていたのとは違う、智明が普段使っている無料通話アプリから通知が表示される。
アプリを開くと、「よろしく!」と挨拶する可愛らしいクマのスタンプが表示されていた。
宛先が「シマ」になっていたので、プライベート用かと思っていたが、もしかしたら仕事用にアカウントを持っているのかもしれない。
(なるほど。こうやってリピートに繋げるのか……)
シマが「レンタル彼氏」の規則を大幅に破っているわけではなさそうで、怒られる心配はなさそうだと安心すると同時に、どこか寂しさを覚えてしまうのは欲張りだろうか。
「ありがとう」
「あの女性の気配を感じたら、いつでも遠慮せずにすぐ連絡してください。いつも恋人とやり取りしてるって思わせるの、大事です」
「な、なるほど。了解」
「次からはデートの約束も、サイトを通さないで直接下さいね」
「わかった」
何度も「連絡をよこせ」と念押しして、ようやくシマは智明から離れた。
帰る方角は逆だったけれど、もうストーカー女性は離れたというのに、シマは智明が電車に乗るまで見守ってくれる。
電車のドアが閉まる直前、シマが何かを言った気がしたけれど、人々の雑踏の中に溶けて声を聞くことは叶わなかった。
唇の形は愛を囁くものだったように思えたが、さすがにそこまでのサービスは過剰だろうから、智明の気のせいだろう。
一人で電車に揺られながら、交換したばかりの通話アプリに残された「よろしく!」というたった一つのスタンプから、目が離せなくなる。
(もう、寂しい)
いくら似ているといっても、シマは和志ではない。
智明の記憶にある和志とも、そんなに似ていなかった。
それなのに、今日初めて会っただけの、ストーカー対策でしかなかった「レンタル彼氏」に、こんなにもハマってしまうなんて思ってもいなかった。
まだ自分の嗜好が手探り状態で、何にでも手を出してみようとゲイバーなどに顔を出していた頃、夜の街にハマる女性達とも何度か会ったことがあるのだが、あの時は彼女たちの気持ちが全くわからなかった。
けれど今なら、少し理解出来る気がする。
傍に居る時間だけは、全てを肯定して受け入れてくれる、弱った心を守ってくれる、柔らかく微笑みかけてくれる、優しい人。
だがそんな理想の塊の様な相手は、自分だけのものではない。
繋ぎ止められるのなら、自分だけを見てくれる時間が増えるのなら、金銭で解決するのを躊躇わなくなるのも、頷けた。
じっと画面を見つめていた智明の前に、「今日は楽しかったです。良い夢を」というメッセージが現れる。
(プロの彼氏……恐ろしいな)
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