降格処分寸前の人間嫌い淫魔ちゃん♂は頑張って働くことになりました

おさかな

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これから

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 日中ミリーは田加井が仕事に行っている最中、同じ人間界に付き添ってきてくれているラビに経過報告に行った。

「チューした? それだけ?」
 昨日の夜の話をすると、ラビはそう返した。
「それだけってなにさ! すごいことじゃん」
「まあ確かに、ミリーにしてはよくやったほうか」

 淫魔たちのなかでも稼ぎ頭のラビにとってはキスのひとつやふたつ挨拶のようなものだけれど、仲良しのラビはミリーの人間嫌いをよく知っている。そんなミリーが出会ってすぐにキスまでできたなら上々なのかもしれない。

「ちょっと顔色いいみたいだし、だいぶ相性いいんじゃない? 普通キスだけでそんなになるかな」
「それ僕も思ったの。相性がいいとエネルギーの吸収効率がよくなるのかな?」
「そのへんの説明あんまりなかったよね。おれもそういうの知らないまま仕事してるし、魔界ってほんと適当だよねぇ」
 魔族は気ままで自由だけれど、その代わりに細かいことは知ろうとしなければ何も教えてもらえることはない。
 生きるための技術も知恵も、自ら身につけていき、それができないものは淘汰されていく。そういう世界だった。

「でも、たかいさんとの相性がいいっていうのは、もしかしたら本当かも……って僕は思ってる」
「でもムキムキマッチョなんでしょ?」
「うっ……それは、そうなの」

 体が大きくて、声が低くて、顔が怖い。ミリーがこんな人が運命の人だったらいいなと思っていた理想像とは真逆の人だ。
 でも、田加井は冷静で優しくて、細かいことは気にしない大らかな人だ。劣等生のミリーにとってはこの上ない条件の人なのかもしれない。


「まあ、いいんじゃない? 前向きに頑張れてるならいい傾向じゃん。今晩あたりにはセックスできちゃう?」
「そっ、そんな急にできないよぉ……!」
「でもミリー、あんたには期限があるんだからね。そんな悠長なことは言ってらんないんだから」

 ラビも意地悪が言いたいのではない。ミリーにいなくなってほしくないから、発破をかけるようなことを言うのだ。ミリーもそれは理解している。

「ううっ……がんばります……」
「うん。がんばれ、ミリー。いざとなったらおれがエッチな空気にしてあげるよ」
「うう~~、それはそれでちょっと怖い~」
「なんでさ」

 ラビの助けは心強いようでいて、少し怖いミリーだった。



「ただいま」
 家にそう言いながら帰るのはいつぶりだろうか。田加井は考える。

「おかえりなさい、たかいさん」
 昨晩の出来事は本当に夢のようだったけれど、部屋にはちゃんとあの悪魔が待っていた。
 玄関にお出迎えまでしてくれて、まるで彼女でもできたみたいだが、この子は男だし淫魔だ。

「今日は何をしてたんだ?」
 田加井は夕食を食べながら、ミリーと話した。
「一緒に人間界まで来てくれてる友達に少し会ってきました。あとは町をちょっと見て回ったり、お部屋のどこになにがあるか確認したりしてました」
「友達がいるのか。友達も同じ淫魔なのか?」
「はい。ラビちゃんっていって、とってもかわいいんですよ」
 こうしてミリーを眺めていると、本当に綺麗な子だと田加井は思っていた。

 おっとりとした顔つきは女性のようだが、体つきは細身の少年だ。ふわふわと軽いハネ髪は背中まで伸びて、やわらかな金色が黒い衣装に合っている。
 この露出が多すぎる衣装も淫魔にとってはなんら恥ずかしいものではないらしく、ふにゃりとした笑顔と時折おどおどと怯える仕草とはミスマッチで、それが逆に煽情的だ。

(うーん……普通にめちゃくちゃエロいな。男に興味はなかったけど、全然抱けそう……)
 田加井はこっそりとそんなことを思っていた。
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