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事件
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たくさん持ってきていた薬を売り切り、身軽になったノエルはおつかいを終えたジノが居るはずの待ち合わせ場所に向かいます。
医薬品店などが並ぶエリアは町の中でも比較的治安が良いので、ノエルもさほど警戒せずに歩いていました。もう何度も一人で通ったことのある場所ですから、それは珍しいことではなかったのです。
しかしその日はいつものように何事もなく終わることはできなかったのです。
少し狭い道を通り抜けようというとき、ノエルは後ろから不自然なほどの速足で近付いてくる気配に気付きます。しかし相手はとても素早く、気付いたときには既に撒くのは難しいほどに接近されてしまったのです。
「……っ、だれか、……っ!」
「騒ぐな!誰も居ねえよ」
逃げようとするノエルの腕を引っ張る力はとても強く、ノエルはもがきながらも何か薬品を含ませた布地で口を塞がれそうになります。
「離せ!この……っ」
「暴れるんじゃねえ!」
ノエルは掴まれた手の感触と微かに吸い込んでしまった薬品の香りで、嫌な記憶が蘇ります。
「おい! 何してんだお前!」
ノエルが必死に抵抗していたそのとき、急いで戻ってきていたジノが叫びました。すぐに事態を察知したジノは低く唸り、ぎらりとしたオオカミの瞳を光らせた。ノエルを傷つけようとする者相手に、その姿はケモノそのものでした。
ジノの姿を見た男は思わず怯み、僅かに力を緩めてしまいました。その隙を見逃さず、ノエルは男の腹を蹴り飛ばして逃げ出しました。すかさず男はノエルを捕まえようとしましたが、ノエルの素早い逃げ足とそれをさせないジノが飛び掛かり、鋭い爪で反撃します。
「クソっ、なんだてめえは」
「こっちの台詞だ。お前、次はないぞ。また俺の大切な人に手出ししてみろ、俺がお前を絶対に許さない」
切りつけられた男の腕の傷跡は、ジノの本気の証拠です。ジノはノエルを脅かす存在に対し容赦を知りません。
ジノに威嚇された男はすごすごと去っていきました。
「くそっ、逃げ足だけは速いな」
「いいです、追わなくて。ありがとうございます、ジノさん」
「ノエル、怪我はない?」
「ええ、怪我はないんですが……」
ジノに心配されたノエルはようやく緊張の糸が解けて、ふらりとよろめいてジノに身体を預けます。
「……何か、薬品を嗅がされました……少しだけですが。ふらつくので、どこか宿を……たしか、あちらの方にあったはず」
「……っ!わかった、あっちだね。行こう」
ジノはノエルの言う通りにします。小さくて軽いノエルの身体をひょいと抱き抱えて、指示された道を駆けていきます。
医薬品店などが並ぶエリアは町の中でも比較的治安が良いので、ノエルもさほど警戒せずに歩いていました。もう何度も一人で通ったことのある場所ですから、それは珍しいことではなかったのです。
しかしその日はいつものように何事もなく終わることはできなかったのです。
少し狭い道を通り抜けようというとき、ノエルは後ろから不自然なほどの速足で近付いてくる気配に気付きます。しかし相手はとても素早く、気付いたときには既に撒くのは難しいほどに接近されてしまったのです。
「……っ、だれか、……っ!」
「騒ぐな!誰も居ねえよ」
逃げようとするノエルの腕を引っ張る力はとても強く、ノエルはもがきながらも何か薬品を含ませた布地で口を塞がれそうになります。
「離せ!この……っ」
「暴れるんじゃねえ!」
ノエルは掴まれた手の感触と微かに吸い込んでしまった薬品の香りで、嫌な記憶が蘇ります。
「おい! 何してんだお前!」
ノエルが必死に抵抗していたそのとき、急いで戻ってきていたジノが叫びました。すぐに事態を察知したジノは低く唸り、ぎらりとしたオオカミの瞳を光らせた。ノエルを傷つけようとする者相手に、その姿はケモノそのものでした。
ジノの姿を見た男は思わず怯み、僅かに力を緩めてしまいました。その隙を見逃さず、ノエルは男の腹を蹴り飛ばして逃げ出しました。すかさず男はノエルを捕まえようとしましたが、ノエルの素早い逃げ足とそれをさせないジノが飛び掛かり、鋭い爪で反撃します。
「クソっ、なんだてめえは」
「こっちの台詞だ。お前、次はないぞ。また俺の大切な人に手出ししてみろ、俺がお前を絶対に許さない」
切りつけられた男の腕の傷跡は、ジノの本気の証拠です。ジノはノエルを脅かす存在に対し容赦を知りません。
ジノに威嚇された男はすごすごと去っていきました。
「くそっ、逃げ足だけは速いな」
「いいです、追わなくて。ありがとうございます、ジノさん」
「ノエル、怪我はない?」
「ええ、怪我はないんですが……」
ジノに心配されたノエルはようやく緊張の糸が解けて、ふらりとよろめいてジノに身体を預けます。
「……何か、薬品を嗅がされました……少しだけですが。ふらつくので、どこか宿を……たしか、あちらの方にあったはず」
「……っ!わかった、あっちだね。行こう」
ジノはノエルの言う通りにします。小さくて軽いノエルの身体をひょいと抱き抱えて、指示された道を駆けていきます。
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