死の境界で16人が殺し合う神前決闘

がんた

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第5話 声の主

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気づけば、私は自分の部屋に立っていた。

さっきまで円壇の上にいたはずなのに。

制服のまま。

息は荒い。

胸の奥の重さも、そのまま。

窓の外は、やっぱり静かだ。

時計は動いていない。

ここは、本物じゃない。

でも。

円壇よりは、現実に近い。

私はベッドに腰を下ろした。

「……何が、起きてるの」

独り言のはずだった。

「神前決闘だ」

声が返ってくる。

背後でも、前でもない。

部屋そのものから響くような声。

「誰」

静かに問う。

恐怖は、不思議とない。

怒りもない。

ただ、知りたい。

しばらく沈黙があった。

それから。

部屋の空気が揺れた。

本棚の前。

壁と空間の境目が、歪む。

何かが滲み出る。

輪郭はある。

けれど、はっきりしない。

白い鹿のような獣。

目だけが、静かに光っている。

「君を呼んだ者だ」

落ち着いた声だった。

威圧はない。

でも、逃げられない存在感がある。

「……どうして?」

私は立ち上がる。

「どうして、私なの」

鹿は少し首を傾ける。

「境界に触れた者は、呼ばれる」

「境界?」

「生と死の間だ」

「私は……死ぬの?」

問いは自然に出た。

鹿は即答しない。

「それは、まだ決まっていない」

曖昧な答え。

「勝てば願いが叶う。負ければ消える」

頭に流れ込んだルールを口にする。

「本当に?」

「本当だ」

迷いのない声。

でも。

どこか、冷たい。

「ユメは?」

あの眠そうな人。

鹿は、わずかに笑った気がした。

「消えたよ」

言葉を選んでいる。

全部は言わない。

「あなたは、神なの?」

沈黙。

部屋の空気が重くなる。

「好きに呼べば良い」

肯定とも否定とも取れる答え。

私は一歩近づく。

「どうして戦わせるの」

声が少し強くなる。

「願いを選別するためだ」

「選別?」

「願いを叶える者は、一人でいい」

静かに告げられる。

あの円壇の向こう岸。

鳥居の影。

光。

「最後に残った者の願いが叶う」

言葉が落ちる。

重い。

「願いは何でも叶うの?」

人影は窓の方を見る。

青い空。

動かない雲。

「何でも叶う」

私は、黙る。

鹿はこちらをじっと見ている。

「私には叶えたい願いなんてない」

ぽつりと言う。

鹿はすぐ答える。

「知っている」

即答だった。

「なら、どうして」

「必要があるからだ」

胸が、少し痛む。

――誰も、これ以上傷つかないでほしい。

「君には心当たりがあるはずだ」

鹿の目が、わずかに揺れる。

「君は、止める存在だ」

その言葉に、心臓が跳ねる。

「止める……?」

「進みすぎたものを、止める」

「壊れそうなものを、留める」

私は、首を振る。

「そんな力、ない」

ユメを倒した感覚はない。

ただ、立っていただけ。

鹿は、静かに言う。

「自覚がないことが、最も厄介だ」

部屋の空気が、わずかに冷える。

「次の戦いが近い」

「もう?」

「時間は、神前では長く、現実では短い」

ピッ……ピッ……。

遠くで、また電子音が鳴る。

「あなたは、どこまで知ってるの」

最後に問う。

鹿は、少しだけ沈黙した。

そして。

「全てではない」

そう言った。

その瞬間。

視界が白くなる。

「待って――」
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