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義妹になった公爵令嬢と問答といこうじゃないか
「周りには誰もいないんだし、腹を割って話し合おうじゃないか」
「そうね。貴女となら気が合いそうだし、望むところよ」
「ミッシェルは馬鹿なのか? いきなり連れてきた愛人とその息子娘を歓迎する奴がどこにいるんだ? ここの使用人達だって貴族様の常識を疑ってたじゃないか。何に出迎えた時からずっとにこにこしやがって。あの貴族様にそうしろって言われたのか?」
「それを説明する前にまずはジュリーが関わる当家の事情を知ってほしいの。明日以降お父様からも色々言われるかもしれないけれど、正確には伝えてこないでしょうからね」
そこからされたミッシェルの説明によれば、なんとここは王国でも指を折る程度しかない公爵家なんだそうだ。つい先月に女公爵様がお亡くなりになって、一昨日まで喪に服していて、終わった途端にわたし達を連れてきたらしい。
「ちょっと待ってくれ。女公爵様?」
「ええ、そうよ。私のお母様ね」
「じゃああの貴族様は今の公爵様なのか?」
「いえ。公爵家はお母様の家系が継いできたから、お父様は公爵にはなれないわ。私が成人するまでの後見人ってところかしら」
頭が痛くなってきた。じゃあ何だ、貴族様は後見人の分際で母を後妻として連れてきたってこと? 母が貴族様の正式な妻になったとして、貴族様は公爵家の直系じゃないんだから、つまり母もわたし達も公爵家の一員にはなれないってことじゃないの。
とか呆れ果てていたら貴族様は公爵一族の分家筋の出だって補足された。だから何だって話なんだけどさ。爵位継承順から言うとミッシェルの後は先代の兄弟やその子供になるだろうし、あたし達なんざ下も下だろ。
「ミッシェルさ、よくわたし達を受け入れてくれたな。普通だったらわたし達どころか貴族様をこの屋敷から叩き出したって良かっただろ」
「私が「お父様の命令に沿ってあげて」ってお願いしたから」
「理解出来ないなー。何が目的さ? まさか姉妹が欲しかった、とか言わないでよ」
「そんなんじゃあないわよ。それに答える前に一つ、質問に答えてもらうわ」
なおも微笑をたたえるミッシェルだったけれど、その目は決して笑ってなかった。貧民街でたまに見かける覚悟の決まった奴が見せるものだ。それも、その晩には強盗だの殺人だのに踏み切る、ヤバい覚悟を持った輩のな。
「ねえジュリー。貴女、せっかく公爵家の娘になったんだもの。何をしたい?」
「はぁ? 貴族様が後見人でしかないって言っておいて、その質問意味ある?」
「問題無いわ。本来の後継者である私が一筆認めればいいだけだもの」
「そこまでされても見返りが怖いだけなんだけど」
「何でもやりたい放題よ。貧民街で過ごしてて腹が立った人に野盗をけしかけられるし、この部屋をより豪奢にだって出来るわ。この国の王子の婚約者になることも夢じゃないもの。さあ、何を望む?」
「別に。強いて言うなら、勉強したいってぐらいかな」
そうだ。わたしは勉強をしたい。文字を覚えて色々な本を読みたい。賢くなればあくどい奴に騙されないし金儲けだって思いのままだ。文官にまで上り詰めれば将来は安泰だろう。貧民のままじゃあ時間も金も足りやしない。せっかく与えられた環境なんだし、維持張って突っぱねるのはただの馬鹿よ。最大限有効活用しなくちゃね。
「そうね。貴女となら気が合いそうだし、望むところよ」
「ミッシェルは馬鹿なのか? いきなり連れてきた愛人とその息子娘を歓迎する奴がどこにいるんだ? ここの使用人達だって貴族様の常識を疑ってたじゃないか。何に出迎えた時からずっとにこにこしやがって。あの貴族様にそうしろって言われたのか?」
「それを説明する前にまずはジュリーが関わる当家の事情を知ってほしいの。明日以降お父様からも色々言われるかもしれないけれど、正確には伝えてこないでしょうからね」
そこからされたミッシェルの説明によれば、なんとここは王国でも指を折る程度しかない公爵家なんだそうだ。つい先月に女公爵様がお亡くなりになって、一昨日まで喪に服していて、終わった途端にわたし達を連れてきたらしい。
「ちょっと待ってくれ。女公爵様?」
「ええ、そうよ。私のお母様ね」
「じゃああの貴族様は今の公爵様なのか?」
「いえ。公爵家はお母様の家系が継いできたから、お父様は公爵にはなれないわ。私が成人するまでの後見人ってところかしら」
頭が痛くなってきた。じゃあ何だ、貴族様は後見人の分際で母を後妻として連れてきたってこと? 母が貴族様の正式な妻になったとして、貴族様は公爵家の直系じゃないんだから、つまり母もわたし達も公爵家の一員にはなれないってことじゃないの。
とか呆れ果てていたら貴族様は公爵一族の分家筋の出だって補足された。だから何だって話なんだけどさ。爵位継承順から言うとミッシェルの後は先代の兄弟やその子供になるだろうし、あたし達なんざ下も下だろ。
「ミッシェルさ、よくわたし達を受け入れてくれたな。普通だったらわたし達どころか貴族様をこの屋敷から叩き出したって良かっただろ」
「私が「お父様の命令に沿ってあげて」ってお願いしたから」
「理解出来ないなー。何が目的さ? まさか姉妹が欲しかった、とか言わないでよ」
「そんなんじゃあないわよ。それに答える前に一つ、質問に答えてもらうわ」
なおも微笑をたたえるミッシェルだったけれど、その目は決して笑ってなかった。貧民街でたまに見かける覚悟の決まった奴が見せるものだ。それも、その晩には強盗だの殺人だのに踏み切る、ヤバい覚悟を持った輩のな。
「ねえジュリー。貴女、せっかく公爵家の娘になったんだもの。何をしたい?」
「はぁ? 貴族様が後見人でしかないって言っておいて、その質問意味ある?」
「問題無いわ。本来の後継者である私が一筆認めればいいだけだもの」
「そこまでされても見返りが怖いだけなんだけど」
「何でもやりたい放題よ。貧民街で過ごしてて腹が立った人に野盗をけしかけられるし、この部屋をより豪奢にだって出来るわ。この国の王子の婚約者になることも夢じゃないもの。さあ、何を望む?」
「別に。強いて言うなら、勉強したいってぐらいかな」
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