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第1-3章 私は聖都に行きました
王子と侯爵子息は私を訪問しました
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「その様子ですと晴れて自由の身になったのですね。おめでとうございます」
「ああ、無事コンチェッタは無実だったって認められた。これも全部キアラのおかげさ」
「私は別に何も。全てはコンチェッタ様をお守りしていた貴方様の覚悟によるものです」
ジョアッキーノはコンチェッタの髪をかき上げて頬に軽く口付けしました。残念と言いますか惜しいと申しますか、コンチェッタにはまだ自分を愛おしそうにするジョアッキーノを理解出来るまで回復出来ていない点でしょうか。彼女は不思議そうな顔をさせて首を傾げるだけでした。
ジョアッキーノの話では主にルクレツィアとフォルトゥナがコンチェッタの名誉回復に全力を注いだそうです。教会の失態を認めたくない聖職者の連中もさすがに聖女を敵には回したくないらしく、渋々ながら過去の過失が認められて罪は取り消しとなりました。
……なお、不当な罰を聖女に与えた責任の所在は曖昧なままとなりました。事実通り女教皇を主犯にしたら最後、教会の権威や信用は間違いなく失墜するでしょう。不満ではありますが当時異端審問に関わった者達は悉く亡くなっています。彼らの罪を問うには遅すぎたのです。
「今回わざわざこっち来たのは礼を直接言いたかったのと……その、ごめん」
「正式に婚約の解消をお父様に申し出たいのでしょう? 念の為にお聞きしますが、ジョアッキーノはコンチェッタ様を何時如何なる時も愛すると誓いますか?」
「勿論誓うさ。神でもいいけど、やっぱりコンチェッタにね」
「では私に謝る必要はありません。お父様の説得に全力を注いでください」
そしてジョアッキーノは改めてコンチェッタを自分の伴侶にしたいと打ち明けたんだそうです。私が認めている点とコンチェッタが聖女に復権した点を挙げて認めてもらおうとしたところ、前者を語った途端にマッテオはあっさり許可したらしいです。私の時もそうでしたがマッテオの切り替えの早さは称賛に値します。
「ところで、コンチェッタ様による女教皇殺害の件は私の提案が通ったのですか?」
「女教皇はコンチェッタに責められた際に病状が悪化して急死した」
「えっ?」
「女教皇は病死した。いいね?」
「アッハイ」
で、なんと女教皇は諸々しでかしたにも関わらず何の罪にも問われなかったんですって。数十年にも渡って女教皇を務めてきた聖女が罪深き者だったと世間に知られたくないんだとか。相変わらず保身に走るのは呆れて物も言えません。
「では、女教皇の間での争いも無かった事になったのですか?」
「隠されたのはチェーザレの復活と女教皇の殺害だけさ。他はちゃんと公式に記録されたよ」
「しかしそれでは女教皇を無実とするのは無理ではありませんか?」
「おいおいキアラ。喋ったのはスペランツァだったろ? ソイツに全部なすり付けたんだよ」
「なんと……」
言われてみれば確かに女教皇が老いて意思疎通が困難になっていたのを良い事に彼女が好き勝手やっていた、とも解釈出来ます。女教皇の罪を問えるコンチェッタが証言出来なかったのも教会にとって都合が良かったんだとか。
「しかし神官である彼女がどうやって衛兵達を意のままに操った事にしたのですか?」
「それがな、スペランツァは過去に聖女候補者だったんだそうだ。惜しくも聖女にはなれなかったんだけど、女教皇直々の勧誘で女神官になったらしい」
「栄誉の抜擢だった筈なのにただの傀儡にされるなんてな」
「つまり……伝心の奇蹟もスペランツァのせいにしたのですね」
全てを上書きされて女教皇その者になってしまったスペランツァは女教皇死亡の間接的要因と見なされました。異端審問の結果魔女だと認定され、公開処刑されたんだそうです。それも死体の残らない最も重い刑である火刑によって。
本来のスペランツァが神の下に召される事を祈るしかありません。
地獄に落ちて罪を償うのは女教皇一人で十分です。
「ああ、無事コンチェッタは無実だったって認められた。これも全部キアラのおかげさ」
「私は別に何も。全てはコンチェッタ様をお守りしていた貴方様の覚悟によるものです」
ジョアッキーノはコンチェッタの髪をかき上げて頬に軽く口付けしました。残念と言いますか惜しいと申しますか、コンチェッタにはまだ自分を愛おしそうにするジョアッキーノを理解出来るまで回復出来ていない点でしょうか。彼女は不思議そうな顔をさせて首を傾げるだけでした。
ジョアッキーノの話では主にルクレツィアとフォルトゥナがコンチェッタの名誉回復に全力を注いだそうです。教会の失態を認めたくない聖職者の連中もさすがに聖女を敵には回したくないらしく、渋々ながら過去の過失が認められて罪は取り消しとなりました。
……なお、不当な罰を聖女に与えた責任の所在は曖昧なままとなりました。事実通り女教皇を主犯にしたら最後、教会の権威や信用は間違いなく失墜するでしょう。不満ではありますが当時異端審問に関わった者達は悉く亡くなっています。彼らの罪を問うには遅すぎたのです。
「今回わざわざこっち来たのは礼を直接言いたかったのと……その、ごめん」
「正式に婚約の解消をお父様に申し出たいのでしょう? 念の為にお聞きしますが、ジョアッキーノはコンチェッタ様を何時如何なる時も愛すると誓いますか?」
「勿論誓うさ。神でもいいけど、やっぱりコンチェッタにね」
「では私に謝る必要はありません。お父様の説得に全力を注いでください」
そしてジョアッキーノは改めてコンチェッタを自分の伴侶にしたいと打ち明けたんだそうです。私が認めている点とコンチェッタが聖女に復権した点を挙げて認めてもらおうとしたところ、前者を語った途端にマッテオはあっさり許可したらしいです。私の時もそうでしたがマッテオの切り替えの早さは称賛に値します。
「ところで、コンチェッタ様による女教皇殺害の件は私の提案が通ったのですか?」
「女教皇はコンチェッタに責められた際に病状が悪化して急死した」
「えっ?」
「女教皇は病死した。いいね?」
「アッハイ」
で、なんと女教皇は諸々しでかしたにも関わらず何の罪にも問われなかったんですって。数十年にも渡って女教皇を務めてきた聖女が罪深き者だったと世間に知られたくないんだとか。相変わらず保身に走るのは呆れて物も言えません。
「では、女教皇の間での争いも無かった事になったのですか?」
「隠されたのはチェーザレの復活と女教皇の殺害だけさ。他はちゃんと公式に記録されたよ」
「しかしそれでは女教皇を無実とするのは無理ではありませんか?」
「おいおいキアラ。喋ったのはスペランツァだったろ? ソイツに全部なすり付けたんだよ」
「なんと……」
言われてみれば確かに女教皇が老いて意思疎通が困難になっていたのを良い事に彼女が好き勝手やっていた、とも解釈出来ます。女教皇の罪を問えるコンチェッタが証言出来なかったのも教会にとって都合が良かったんだとか。
「しかし神官である彼女がどうやって衛兵達を意のままに操った事にしたのですか?」
「それがな、スペランツァは過去に聖女候補者だったんだそうだ。惜しくも聖女にはなれなかったんだけど、女教皇直々の勧誘で女神官になったらしい」
「栄誉の抜擢だった筈なのにただの傀儡にされるなんてな」
「つまり……伝心の奇蹟もスペランツァのせいにしたのですね」
全てを上書きされて女教皇その者になってしまったスペランツァは女教皇死亡の間接的要因と見なされました。異端審問の結果魔女だと認定され、公開処刑されたんだそうです。それも死体の残らない最も重い刑である火刑によって。
本来のスペランツァが神の下に召される事を祈るしかありません。
地獄に落ちて罪を償うのは女教皇一人で十分です。
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