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茶番にうんざりする元悪役令嬢
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「そしてこの私はこの男爵令嬢イサベルとの婚姻を結ぶことをここに宣言しよう!」
青ざめるドゥルセ。勝ち誇るジョアン様。彼にしなだれるイサベル。
動揺が会場を包み込む前にジョアン様は続ける。
「お前は侯爵令嬢の身分でありながら――」
その後の台詞は概ね前回の再現だった。大して聞く価値も無いので右耳から入って左耳から抜けるように頭に入らなかったが、要約すればいかにドゥルセがイサベルをいじめたか、を大げさに言いふらしているに過ぎない。
一方的な糾弾に会場の一同は困惑気味だった。ドゥルセを悪だとする自分達を信じて疑わないフェリペ様とそのご一行方とは大違いだ。己の主張に酔う一同はこの空気を読み取れないまま断罪劇を続ける。
「挙句の果てに邪視を用いてイサベルに危害を加えようとしたこと、断じて許しがたい!」
しかし、邪視の関与を明らかにした途端に大人達の反応が明らかに変わった。
無理もない。邪視は神が創造した世界の摂理を冒涜する代物。行使どころか所持するだけで魔女と同一視されても仕方がないのだから。
「何か言うことはあるか?」
「……いえ、ありません。フェリペ様のお望みのままに」
ドゥルセは俯いたままで身体を震わせている。顔は青を通り越して白くなってきており、今にも気を失って倒れそうだった。それでも精一杯無様な真似は見せまいとする気丈さはさすが侯爵家の娘なだけはある。
騒動はこれに留まらなかった。フェリペ様と同じようにアントニオ様やサンチョも動揺に婚約破棄を宣言したのだ。理由は言うまでもなくイサベルへの虐げである。集まった証言や証拠を突き付けられた令嬢方は観念して婚約破棄を受け入れるのだった。
(まあ、半分はその場の勢いなんでしょうけれど)
実際のところ実家の権力が強いドゥルセはともかくサンチョの許婚は子爵令嬢。名誉を傷つける一方的な婚約破棄までされる謂れは無い。悪意をもみ消す権力も財力も無く割に合わないからだ。ドゥルセに同調したり陰で文句を言ったぐらいが関の山か。
しかし、まとめて婚約破棄を言い渡すことで自分達が愛するイサベルを害した一派と括り付けることは出来る。こうすることでいかにイサベルが素晴らしく、相方が婚約者として相応しくないかを知らしめたいわけだ。
そして、もう一つだけ狙いがある。反イサベル派とまとめてしまうことで生まれる最大の利点、それは……。
「本来なら私の婚約者として相応しくない真似をしたお前には慰謝料を払っても割らなければならないが、私は寛大だ。一つ真実を告白するなら許してやろう」
フェリペ様の語りかけが優しいものへと変わった。慈悲深さを出しているのだろうがあまりに露骨すぎる。この後の展開も容易に想像出来た私は会場内に出された料理を口に運びながら冷めた気持ちで観劇する。
「はい、何なりとお聞きください」
「ではドゥルセ。お前を扇動したのは誰だ? 私にはお前が自分の意思でイサベルを傷つけようとしたとは思えんのだが」
「そ、それは……」
「構わん。王太子殿下からも真実を明らかにするよう事前に許しを得ている。どうか告白してくれないか?」
ドゥルセは怯えたままで視線をさまよわせ、一瞬だけある人物に固定し、固唾を飲んで面を上げた。覚悟を決めた様子の彼女の顔は凛としたものになっている。それはイサベルが現れる前、優雅を絵に描いたようだと讃えられていた彼女に戻ったようだった。
「では、恐れながら申し上げます。私、ドゥルセは……」
ドゥルセは先ほど視線を向けた相手を指差す。会場にいた皆がその者に注目した。
「レオノール様に唆され、イサベル嬢を虐げました」
そして、諸悪の根源としてレオノールを皆の前に差し出したのだった。
青ざめるドゥルセ。勝ち誇るジョアン様。彼にしなだれるイサベル。
動揺が会場を包み込む前にジョアン様は続ける。
「お前は侯爵令嬢の身分でありながら――」
その後の台詞は概ね前回の再現だった。大して聞く価値も無いので右耳から入って左耳から抜けるように頭に入らなかったが、要約すればいかにドゥルセがイサベルをいじめたか、を大げさに言いふらしているに過ぎない。
一方的な糾弾に会場の一同は困惑気味だった。ドゥルセを悪だとする自分達を信じて疑わないフェリペ様とそのご一行方とは大違いだ。己の主張に酔う一同はこの空気を読み取れないまま断罪劇を続ける。
「挙句の果てに邪視を用いてイサベルに危害を加えようとしたこと、断じて許しがたい!」
しかし、邪視の関与を明らかにした途端に大人達の反応が明らかに変わった。
無理もない。邪視は神が創造した世界の摂理を冒涜する代物。行使どころか所持するだけで魔女と同一視されても仕方がないのだから。
「何か言うことはあるか?」
「……いえ、ありません。フェリペ様のお望みのままに」
ドゥルセは俯いたままで身体を震わせている。顔は青を通り越して白くなってきており、今にも気を失って倒れそうだった。それでも精一杯無様な真似は見せまいとする気丈さはさすが侯爵家の娘なだけはある。
騒動はこれに留まらなかった。フェリペ様と同じようにアントニオ様やサンチョも動揺に婚約破棄を宣言したのだ。理由は言うまでもなくイサベルへの虐げである。集まった証言や証拠を突き付けられた令嬢方は観念して婚約破棄を受け入れるのだった。
(まあ、半分はその場の勢いなんでしょうけれど)
実際のところ実家の権力が強いドゥルセはともかくサンチョの許婚は子爵令嬢。名誉を傷つける一方的な婚約破棄までされる謂れは無い。悪意をもみ消す権力も財力も無く割に合わないからだ。ドゥルセに同調したり陰で文句を言ったぐらいが関の山か。
しかし、まとめて婚約破棄を言い渡すことで自分達が愛するイサベルを害した一派と括り付けることは出来る。こうすることでいかにイサベルが素晴らしく、相方が婚約者として相応しくないかを知らしめたいわけだ。
そして、もう一つだけ狙いがある。反イサベル派とまとめてしまうことで生まれる最大の利点、それは……。
「本来なら私の婚約者として相応しくない真似をしたお前には慰謝料を払っても割らなければならないが、私は寛大だ。一つ真実を告白するなら許してやろう」
フェリペ様の語りかけが優しいものへと変わった。慈悲深さを出しているのだろうがあまりに露骨すぎる。この後の展開も容易に想像出来た私は会場内に出された料理を口に運びながら冷めた気持ちで観劇する。
「はい、何なりとお聞きください」
「ではドゥルセ。お前を扇動したのは誰だ? 私にはお前が自分の意思でイサベルを傷つけようとしたとは思えんのだが」
「そ、それは……」
「構わん。王太子殿下からも真実を明らかにするよう事前に許しを得ている。どうか告白してくれないか?」
ドゥルセは怯えたままで視線をさまよわせ、一瞬だけある人物に固定し、固唾を飲んで面を上げた。覚悟を決めた様子の彼女の顔は凛としたものになっている。それはイサベルが現れる前、優雅を絵に描いたようだと讃えられていた彼女に戻ったようだった。
「では、恐れながら申し上げます。私、ドゥルセは……」
ドゥルセは先ほど視線を向けた相手を指差す。会場にいた皆がその者に注目した。
「レオノール様に唆され、イサベル嬢を虐げました」
そして、諸悪の根源としてレオノールを皆の前に差し出したのだった。
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