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Season 2 キャサリン・ランカスター
処刑まであと20日(前)
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■Side ???
彼女のことを単刀直入に言い表すなら、自己中心的につきる。
わたしは彼女を生涯理解出来ないでしょうし、理解するつもりもない。
そう、彼女、『主人公』で『ヒロイン』で『聖女』なシャーロットを。
わたしとシャーロットは同じ町で生まれ育った。
記憶の中にある一番古いシャーロットも元気いっぱいのわんぱく娘だったっけ。
同じぐらいの年頃の子供とも仲が良かったし、人気者と言ってよかった。
そんな彼女は、田舎の町の娘とは思えないぐらい知識に富んでた。
みんなには月に一回ぐらい町に来る渡りの貸本屋の本を読んだから、って言っていたけれど、実際は違った。その理由を彼女はわたしにだけ教えてくれた。
「あたしね、実は『転生者』なの!」
アルビオン王国で主に信仰される教えでは転生の概念は無い。人は人生が終わると神のもとに召されて、善人は天国に、悪人は地獄に行って、世界が終わったらみんな生き返る、みたいな感じだったっけ。
だから自分は転生したといきなり語った彼女は神の教えに背く異端者ってことになるんだけれど、普通の教えには無い、神に選ばれた人だけが全く違う人生を歩みだすこともある、って伝わっている。
この王国で今も人気な物語に『異世界』からの『転生者』が登場してくる。
執筆者は当時王妃様だったヴィクトリア様。彼女が何を思ってそんな設定の物語を書いたのかは分からない。彼女の画期的な閃きを転生という設定でごまかしたのかもしれないし、本当に神様の御業でやってきた『転生者』なのかもしれない。
まあ、正直子供が勇者とか聖女とか魔王って名乗りながらごっこ遊びするのは何もおかしくない。あるいは自分は実はどこかのお姫様で、もう少ししたら素敵な王子様が迎えに来てくれる、と想像するのは自由だもの。
ただ、シャーロットは違った。彼女は明らかにわたし達には及びもつかない豊富な知恵と知識があった。頭の構造から常識まで何もかもが違っていたから。今よりはるかに進んだ世界について一度詳しく説明されたけど、ちっとも理解出来なかった。
そして、シャーロットは自分は物語の『ヒロイン』なんだと語った。
『ヒロイン』、物語の中心になる女性の登場人物。
恋愛小説の場合、やんごとなき素敵な殿方とやらから愛される存在。
シャーロットは自分のことを『ヒロイン』なんだと信じて疑っていなかった。
これが単なる妄想だったら取り合わなければいいだけなんだけれど、彼女が語ってくれた物語の内容はとても具体的で鮮明だった。更には作中に設定だけ存在する、直近で起こる大規模災害を言い当てたことで、信憑性が増した。
『白き島の理想郷から2』。これは前作の『白き島』が人気だったら作られた続編。けれど『白き島』が外伝や『ファンディスク』などで幅を広げたのもあって、登場人物どころか時代設定まで一新された正統続編、とのこと。
シャーロットの話を信じるなら、その『白き島2』の主人公がシャーロットで、彼女が聖女の素質があると見込まれたことで王都の王立学園に通えることになって、そこで聖女として覚醒した彼女は王子様とか公爵様の息子さんとかと結婚する、みたいな内容らしい。
「夫は一人だけじゃないの? 偉い人が妻を何人も持つことはある、って聞いたことはあるけれど」
「違う違う。ヒロインには無限の可能性があるのよ。ヒロインが自由に選択することで相手の男性が変わるの。あるところで右に行くか左に行くかだけで未来は全然違ってきちゃう、って言えば良いのかな?」
だから、シャーロットはなるべく王立学園に通う前までその『白き島2』の記憶を覚えておかないといけない。わたしに語って聞かせるのもそのためなんですって。保険として字を書けるようになって物語とか設定も全部記録した、と自慢げに語ってくれた。
「じゃあなんでわたしなの?」
「は? どういう意味?」
「どうしてわたしにだけ聞かせてくれるの? おじさんもおばさんもいい人じゃん」
「あー、駄目駄目。お父さんとかお母さんに言ったところで真面目に聞いてくれないし、友達も馬鹿にするだけに決まってるわ。アナタが相手として都合がいいの」
その時は不思議に思ったっけ。どうしてシャーロットはわたしにしか打ち明けなかったのか、って。シャーロットの言い分は確かに納得するには充分だったけれど、今となってはそれは口先だけのでまかせだって分かる。
シャーロットは知っていたのだ。わたしもまた『白き島2』の登場人物だと。
そして、この告白もまた彼女にとっては『攻略』の一部に過ぎなかったのだ、と。
彼女のことを単刀直入に言い表すなら、自己中心的につきる。
わたしは彼女を生涯理解出来ないでしょうし、理解するつもりもない。
そう、彼女、『主人公』で『ヒロイン』で『聖女』なシャーロットを。
わたしとシャーロットは同じ町で生まれ育った。
記憶の中にある一番古いシャーロットも元気いっぱいのわんぱく娘だったっけ。
同じぐらいの年頃の子供とも仲が良かったし、人気者と言ってよかった。
そんな彼女は、田舎の町の娘とは思えないぐらい知識に富んでた。
みんなには月に一回ぐらい町に来る渡りの貸本屋の本を読んだから、って言っていたけれど、実際は違った。その理由を彼女はわたしにだけ教えてくれた。
「あたしね、実は『転生者』なの!」
アルビオン王国で主に信仰される教えでは転生の概念は無い。人は人生が終わると神のもとに召されて、善人は天国に、悪人は地獄に行って、世界が終わったらみんな生き返る、みたいな感じだったっけ。
だから自分は転生したといきなり語った彼女は神の教えに背く異端者ってことになるんだけれど、普通の教えには無い、神に選ばれた人だけが全く違う人生を歩みだすこともある、って伝わっている。
この王国で今も人気な物語に『異世界』からの『転生者』が登場してくる。
執筆者は当時王妃様だったヴィクトリア様。彼女が何を思ってそんな設定の物語を書いたのかは分からない。彼女の画期的な閃きを転生という設定でごまかしたのかもしれないし、本当に神様の御業でやってきた『転生者』なのかもしれない。
まあ、正直子供が勇者とか聖女とか魔王って名乗りながらごっこ遊びするのは何もおかしくない。あるいは自分は実はどこかのお姫様で、もう少ししたら素敵な王子様が迎えに来てくれる、と想像するのは自由だもの。
ただ、シャーロットは違った。彼女は明らかにわたし達には及びもつかない豊富な知恵と知識があった。頭の構造から常識まで何もかもが違っていたから。今よりはるかに進んだ世界について一度詳しく説明されたけど、ちっとも理解出来なかった。
そして、シャーロットは自分は物語の『ヒロイン』なんだと語った。
『ヒロイン』、物語の中心になる女性の登場人物。
恋愛小説の場合、やんごとなき素敵な殿方とやらから愛される存在。
シャーロットは自分のことを『ヒロイン』なんだと信じて疑っていなかった。
これが単なる妄想だったら取り合わなければいいだけなんだけれど、彼女が語ってくれた物語の内容はとても具体的で鮮明だった。更には作中に設定だけ存在する、直近で起こる大規模災害を言い当てたことで、信憑性が増した。
『白き島の理想郷から2』。これは前作の『白き島』が人気だったら作られた続編。けれど『白き島』が外伝や『ファンディスク』などで幅を広げたのもあって、登場人物どころか時代設定まで一新された正統続編、とのこと。
シャーロットの話を信じるなら、その『白き島2』の主人公がシャーロットで、彼女が聖女の素質があると見込まれたことで王都の王立学園に通えることになって、そこで聖女として覚醒した彼女は王子様とか公爵様の息子さんとかと結婚する、みたいな内容らしい。
「夫は一人だけじゃないの? 偉い人が妻を何人も持つことはある、って聞いたことはあるけれど」
「違う違う。ヒロインには無限の可能性があるのよ。ヒロインが自由に選択することで相手の男性が変わるの。あるところで右に行くか左に行くかだけで未来は全然違ってきちゃう、って言えば良いのかな?」
だから、シャーロットはなるべく王立学園に通う前までその『白き島2』の記憶を覚えておかないといけない。わたしに語って聞かせるのもそのためなんですって。保険として字を書けるようになって物語とか設定も全部記録した、と自慢げに語ってくれた。
「じゃあなんでわたしなの?」
「は? どういう意味?」
「どうしてわたしにだけ聞かせてくれるの? おじさんもおばさんもいい人じゃん」
「あー、駄目駄目。お父さんとかお母さんに言ったところで真面目に聞いてくれないし、友達も馬鹿にするだけに決まってるわ。アナタが相手として都合がいいの」
その時は不思議に思ったっけ。どうしてシャーロットはわたしにしか打ち明けなかったのか、って。シャーロットの言い分は確かに納得するには充分だったけれど、今となってはそれは口先だけのでまかせだって分かる。
シャーロットは知っていたのだ。わたしもまた『白き島2』の登場人物だと。
そして、この告白もまた彼女にとっては『攻略』の一部に過ぎなかったのだ、と。
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