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三学期
プリュヴィオーズ⑦・次回作悪役令嬢
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「我が騎士よ! その女狐を手討ちにせよ!」
「御意」
幼さと甘ったるさが残る声で精一杯の威厳が込められた命令が下され、凛として芯が通った声が畏まる。直後、わたし達の前方にいた次回作ヒロイン集団の内、アンリ様が前方へと飛び出していく。腰に下げていた剣を一気に抜き放った直後、けたたましい金属の衝突音が鳴り響いた。
アンリ様が踏み出してから一歩遅れて他の攻略対象者達もアルテミシアを庇うように奥の何者かの前に立ち塞がる。怯えの色が見られるアルテミシアの肩にシャルルは手を置き、安心させるように笑って何かを語っていた。
「ごきげんよう、アルテミシア様」
「……っ!?」
そんな騒動の只中にいるアルテミシアの後ろ髪を掴むようにジャンヌはやや大きな、しかし透き通った声で挨拶を送った。不意を打たれたアルテミシアは驚き顔をさせながらジャンヌの方へと振り向いた。直後にはいつものいたずらっ子がさせる小悪魔的笑顔に戻ったものの、若干強がりが見られる。
「お、おはようございますジャンヌ様。こんな朝早くからわたしごときに声をかけていただき恐悦至極でございますね」
「そんな朝早くとやらから随分と賑やかなのですね」
アルテミシアは大げさなぐらい慇懃に頭を垂れた。ジャンヌは軽く会釈をした後にやや身体を横に傾けて奥の方を伺う。わたしも物騒な命令と共に何が始まったのか気になったので背伸びしつつアルテミシアを庇う攻略対象者達の身体の隙間から奥を覗きこんだ。
そこではアンリ様と一人の女性が剣を交えていた。
その方を一言で表すなら男装の麗人、かしら? 軽く化粧を施すだけでも多くの殿方の視線を惹きつける美貌、それから騎士団見習いの制服を身にしていても胸と尻が自己主張している。背は高めで肩幅も広く、女性が格好いいと思う出で立ちだ。
「ヴィクトワール。王太子殿下の御前ですよ。血迷ったのですか?」
「兄上、これは私が王女殿下より承った命令です。兄上は殿下の命を聞けぬと申すのですか?」
そして何よりその容姿はアンリ様に似ていた。
彼女はヴィクトワール・ド・ブルターニュ。アンリ様の妹君であらせられる。
ヴィクトワール様はアンリ様同様に聖堂騎士を目指していてその剣の腕前は学園でも屈指。『双子座』ではアンリ様ルートでメインヒロインの前に恋の障害として立ちはだかってくる。最終的にはメインヒロインの慈愛で己の抱く正義に凝り固まった考えを改めるんだったっけ。
まあ、例によって裏で糸を引いていたのは悪役令嬢ことジャンヌ。メインヒロインへ成す害に迷いが生じたヴィクトワール様にまで悪意が及んだりするのはまた別の話。
そんなヴィクトワール様はジャンヌの到来に気付くと大地を蹴ってアンリ様から間合いを離した。アンリ様も後退するヴィクトワール様へと踏み込もうとせず、そのまま互いに剣を収めた。ヴィクトワール様は背筋を正し、丁寧な物腰でジャンヌへと一礼した。
「ジャンヌ様、朝早くから見苦しい所をお見せして申し訳ない」
「いいのですよヴィクトワール様。貴女様は王女殿下のご命令に従っただけ。けれど以前も言ったように主人を嗜めるのも騎士の務めですよ」
「仰る通りではありますが、今回は私も兄上方の惨状を見かねて賛同しての……」
「お義姉様っ!」
ドレススカートのすそを両手で摘まみながらヴィクトワール様を横切る女の子は可憐だった。一輪の花の様な笑みを湛えて両腕を広げてそのままジャンヌへと飛び込む……ってジャンヌに!?
女の子もまずいって直後に悟ったようだけれど時既に遅し。勢いは止まらずにそのままジャンヌに……ぶつかる直前にクレマンティーヌ様が女の子に抱き付いてジャンヌから引き離した。
「このお馬鹿っ! ジャンヌ様やそのお子様に何かあったらどうするつもりですの!?」
「ううっ。そ、そんなに怒らなくてもいいではないか!」
「お黙り! 反省なさっておられないようでしたら王妃様に言いつけますわよ?」
「ひぃっ、それは困る! お義姉様、本当にすまなかった」
「ごめんなさいねマリー。今はこうなってしまっていて貴女を受け止められないの」
「お、お義姉様が謝る必要なんてこれっぽっちも無いぞっ。その、妾が悪かったんだからな」
怒られた女の子は肩を小さくさせてジャンヌへと頭を下げた。一方危うく女の子共々地面に倒されそうだったジャンヌは微笑みながらも少し申し訳なさそうに声を落とした。女の子はその背の低さから自然とやや上目使いにジャンヌを見つめる。この一幕を見るだけでもジャンヌはこの女の子にだいぶ慕われているのが分かる。
マリーと呼ばれた彼女はジャンヌをお義姉様と呼んだ。ヴィクトワール様は王女殿下の命により凶行に及んだと語っていた。王太子殿下や宰相嫡男がいる中で騒動を巻き起こせるとしたら、それ相応の身分の者が企てた、となる。
マリー……いえ、マリー殿下はわたしへと顔を向けてきた。
「ふむ、そなたがお義姉様の双子の妹か。父王陛下より伺っているぞ」
「お初にお目にかかります。カトリーヌでございます」
「うむ、苦しゅうない。面を上げよ。お義姉様も双子であればそなたも妾の姉同然。よろしく頼むぞ!」
「光栄です、殿下」
「では名乗ろう。妾は――」
マリー・ド・ヴァロワ。
王国第二王女、シャルルの妹。
そして『双子座2』での悪役令嬢でもある。
いやいやいや、次回作ヒロインどころか次回作悪役令嬢まで前作の舞台に飛び込んできましたよ。『双子座』での王太子様ルートの敵役は悪役令嬢本人だからマリー殿下は一切出番無し。ヴィクトワール様を付き添いとして召し抱えていたのも初耳だし。
そんな胸を張ったマリー殿下の両方の頬をジャンヌは摘み、軽く潰すように力を込めた。
「それでマリー。まだ入学していない貴女がはるばる学園に何の用かしら? しかも生徒会の職務を引き継いでお忙しいヴィクトワール様まで巻き込んで」
「ちょっとそれは止めて欲しいぞ!」
「ジャンヌ様。マリー殿下をお諫めするお気持ちは分かりますが、このままでは話が進みません。どうかお慈悲のほどを」
「ヴィクトワール様に免じてこの程度で済ませてあげましょう」
ジャンヌの手から解放されたマリー殿下は自分の両頬を触って、次にはアンリ様方に庇われるアルテミシアを睨みつけた。その面持ちからはジャンヌに向けていた甘えが一切消えていて、可愛さが拭えないものの程よい厳しさと迫力が現れていた。
「この女狐は畏れ多くも未来の王となる兄様を誑かし堕落させた。しかも将来の伴侶となるお義姉様を蔑ろにさせて、だ。その不敬だけでも万死に値する!」
「証拠も何も無いのに出しゃばってくるなんて汚いですねさすが悪役令嬢きたない。第一『双子座』でマリー様の出る幕なんてありませんから」
次回作ヒロインの挑発に怒りで顔を真っ赤にさせた次回作悪役令嬢が何かを叫ぼうとした所で、「落ち着きください」とヴィクトワール様が手で口元を押さえた。マリー殿下も感情に身を任せるのはよろしくないと遅らせながらも気付いたようで、深呼吸を取って冷静に努める。
一方のジャンヌ、「悪役令嬢? マリーが?」と首を傾げていたので「次回作の」と教えておいた。さすがにジャンヌも衝撃だったようで愕然としていた。それは多分、自分と照らし合わせているからでしょう。もしかしたら彼女も自分と同じ道を歩むのか、と。
「何をわけのわからぬ事を言っておるのだ。お義姉様方から聞いておるぞ。貴様は学園内で隙あらばそこの五人と共にいるらしいではないか」
「友達と語り合うのは悪じゃあありません。話が盛り上がるんですから共にいたいって思いたくもなりますよ」
「お義姉様という婚約者がいる兄様に下心から擦り寄るなど汚らわしいと申しておるのだ!」
「わたしはシャルル様が苦しそうだと感じたから声をおかけしただけです!」
「何を戯言を……っ。その方が兄様の心を壊したのは明明白白であろう!」
「証拠がありませんねえ。悪意を捏造するのも大概にしてもらえません?」
確かに建前ではそうだしそんな見方も出来る。けれど学園中の誰もがシャルル殿下はアルテミシアの毒牙にかかり心を失った、と受け取っている筈だ。何せシャルルがジャンヌの気を惹こうと一生懸命になっている光景は何度も目にしていたから。
白々しく言い訳を並べるアルテミシアは王女殿下相手にも一切敬意を表さず、むしろ小馬鹿にしたような物言いを続ける。いや、『双子座2』の脚本上にすらいない中でよくメインヒロインと悪役令嬢って立場に自信を持っていられるものね。
「はっ、どのように言葉巧みにその者達を誘惑したかは知らぬが、そなたの様な者を人は魔性の女と呼ぶのだぞ」
「誘惑だなんて、そんな汚い言葉でくくらないでください。私はただアンリ様やピエール様方が同じ時間を過ごしたいと思われる女性であろうとしただけなのですから」
「物は言い様だなブルゴーニュ伯爵令嬢よ。まさかその熟れた身体を使って籠絡したわけではあるまいな?」
「――殿下。畏れながら申し上げますが、それ以上の侮辱は止めていただきたい」
マリー殿下の罵倒を打ち止めさせたのはアンリ様の重い一言だった。王族への忠義を表す丁寧な物腰こそそのままだったものの、その雰囲気からは明らかに怒りが見て取れた。彼はまだいい方でオリヴィエール様は憤りを隠せていないしピエール様はそもそも不快感を隠そうともしない。
だからこそ異常だった。アルテミシアが貶されても怒りも悲しみもせず平然とするシャルルが。
「へえ、成程ねぇ」
そしてその光景を目の当たりにして黒い笑いを浮かべるジャンヌも。
「御意」
幼さと甘ったるさが残る声で精一杯の威厳が込められた命令が下され、凛として芯が通った声が畏まる。直後、わたし達の前方にいた次回作ヒロイン集団の内、アンリ様が前方へと飛び出していく。腰に下げていた剣を一気に抜き放った直後、けたたましい金属の衝突音が鳴り響いた。
アンリ様が踏み出してから一歩遅れて他の攻略対象者達もアルテミシアを庇うように奥の何者かの前に立ち塞がる。怯えの色が見られるアルテミシアの肩にシャルルは手を置き、安心させるように笑って何かを語っていた。
「ごきげんよう、アルテミシア様」
「……っ!?」
そんな騒動の只中にいるアルテミシアの後ろ髪を掴むようにジャンヌはやや大きな、しかし透き通った声で挨拶を送った。不意を打たれたアルテミシアは驚き顔をさせながらジャンヌの方へと振り向いた。直後にはいつものいたずらっ子がさせる小悪魔的笑顔に戻ったものの、若干強がりが見られる。
「お、おはようございますジャンヌ様。こんな朝早くからわたしごときに声をかけていただき恐悦至極でございますね」
「そんな朝早くとやらから随分と賑やかなのですね」
アルテミシアは大げさなぐらい慇懃に頭を垂れた。ジャンヌは軽く会釈をした後にやや身体を横に傾けて奥の方を伺う。わたしも物騒な命令と共に何が始まったのか気になったので背伸びしつつアルテミシアを庇う攻略対象者達の身体の隙間から奥を覗きこんだ。
そこではアンリ様と一人の女性が剣を交えていた。
その方を一言で表すなら男装の麗人、かしら? 軽く化粧を施すだけでも多くの殿方の視線を惹きつける美貌、それから騎士団見習いの制服を身にしていても胸と尻が自己主張している。背は高めで肩幅も広く、女性が格好いいと思う出で立ちだ。
「ヴィクトワール。王太子殿下の御前ですよ。血迷ったのですか?」
「兄上、これは私が王女殿下より承った命令です。兄上は殿下の命を聞けぬと申すのですか?」
そして何よりその容姿はアンリ様に似ていた。
彼女はヴィクトワール・ド・ブルターニュ。アンリ様の妹君であらせられる。
ヴィクトワール様はアンリ様同様に聖堂騎士を目指していてその剣の腕前は学園でも屈指。『双子座』ではアンリ様ルートでメインヒロインの前に恋の障害として立ちはだかってくる。最終的にはメインヒロインの慈愛で己の抱く正義に凝り固まった考えを改めるんだったっけ。
まあ、例によって裏で糸を引いていたのは悪役令嬢ことジャンヌ。メインヒロインへ成す害に迷いが生じたヴィクトワール様にまで悪意が及んだりするのはまた別の話。
そんなヴィクトワール様はジャンヌの到来に気付くと大地を蹴ってアンリ様から間合いを離した。アンリ様も後退するヴィクトワール様へと踏み込もうとせず、そのまま互いに剣を収めた。ヴィクトワール様は背筋を正し、丁寧な物腰でジャンヌへと一礼した。
「ジャンヌ様、朝早くから見苦しい所をお見せして申し訳ない」
「いいのですよヴィクトワール様。貴女様は王女殿下のご命令に従っただけ。けれど以前も言ったように主人を嗜めるのも騎士の務めですよ」
「仰る通りではありますが、今回は私も兄上方の惨状を見かねて賛同しての……」
「お義姉様っ!」
ドレススカートのすそを両手で摘まみながらヴィクトワール様を横切る女の子は可憐だった。一輪の花の様な笑みを湛えて両腕を広げてそのままジャンヌへと飛び込む……ってジャンヌに!?
女の子もまずいって直後に悟ったようだけれど時既に遅し。勢いは止まらずにそのままジャンヌに……ぶつかる直前にクレマンティーヌ様が女の子に抱き付いてジャンヌから引き離した。
「このお馬鹿っ! ジャンヌ様やそのお子様に何かあったらどうするつもりですの!?」
「ううっ。そ、そんなに怒らなくてもいいではないか!」
「お黙り! 反省なさっておられないようでしたら王妃様に言いつけますわよ?」
「ひぃっ、それは困る! お義姉様、本当にすまなかった」
「ごめんなさいねマリー。今はこうなってしまっていて貴女を受け止められないの」
「お、お義姉様が謝る必要なんてこれっぽっちも無いぞっ。その、妾が悪かったんだからな」
怒られた女の子は肩を小さくさせてジャンヌへと頭を下げた。一方危うく女の子共々地面に倒されそうだったジャンヌは微笑みながらも少し申し訳なさそうに声を落とした。女の子はその背の低さから自然とやや上目使いにジャンヌを見つめる。この一幕を見るだけでもジャンヌはこの女の子にだいぶ慕われているのが分かる。
マリーと呼ばれた彼女はジャンヌをお義姉様と呼んだ。ヴィクトワール様は王女殿下の命により凶行に及んだと語っていた。王太子殿下や宰相嫡男がいる中で騒動を巻き起こせるとしたら、それ相応の身分の者が企てた、となる。
マリー……いえ、マリー殿下はわたしへと顔を向けてきた。
「ふむ、そなたがお義姉様の双子の妹か。父王陛下より伺っているぞ」
「お初にお目にかかります。カトリーヌでございます」
「うむ、苦しゅうない。面を上げよ。お義姉様も双子であればそなたも妾の姉同然。よろしく頼むぞ!」
「光栄です、殿下」
「では名乗ろう。妾は――」
マリー・ド・ヴァロワ。
王国第二王女、シャルルの妹。
そして『双子座2』での悪役令嬢でもある。
いやいやいや、次回作ヒロインどころか次回作悪役令嬢まで前作の舞台に飛び込んできましたよ。『双子座』での王太子様ルートの敵役は悪役令嬢本人だからマリー殿下は一切出番無し。ヴィクトワール様を付き添いとして召し抱えていたのも初耳だし。
そんな胸を張ったマリー殿下の両方の頬をジャンヌは摘み、軽く潰すように力を込めた。
「それでマリー。まだ入学していない貴女がはるばる学園に何の用かしら? しかも生徒会の職務を引き継いでお忙しいヴィクトワール様まで巻き込んで」
「ちょっとそれは止めて欲しいぞ!」
「ジャンヌ様。マリー殿下をお諫めするお気持ちは分かりますが、このままでは話が進みません。どうかお慈悲のほどを」
「ヴィクトワール様に免じてこの程度で済ませてあげましょう」
ジャンヌの手から解放されたマリー殿下は自分の両頬を触って、次にはアンリ様方に庇われるアルテミシアを睨みつけた。その面持ちからはジャンヌに向けていた甘えが一切消えていて、可愛さが拭えないものの程よい厳しさと迫力が現れていた。
「この女狐は畏れ多くも未来の王となる兄様を誑かし堕落させた。しかも将来の伴侶となるお義姉様を蔑ろにさせて、だ。その不敬だけでも万死に値する!」
「証拠も何も無いのに出しゃばってくるなんて汚いですねさすが悪役令嬢きたない。第一『双子座』でマリー様の出る幕なんてありませんから」
次回作ヒロインの挑発に怒りで顔を真っ赤にさせた次回作悪役令嬢が何かを叫ぼうとした所で、「落ち着きください」とヴィクトワール様が手で口元を押さえた。マリー殿下も感情に身を任せるのはよろしくないと遅らせながらも気付いたようで、深呼吸を取って冷静に努める。
一方のジャンヌ、「悪役令嬢? マリーが?」と首を傾げていたので「次回作の」と教えておいた。さすがにジャンヌも衝撃だったようで愕然としていた。それは多分、自分と照らし合わせているからでしょう。もしかしたら彼女も自分と同じ道を歩むのか、と。
「何をわけのわからぬ事を言っておるのだ。お義姉様方から聞いておるぞ。貴様は学園内で隙あらばそこの五人と共にいるらしいではないか」
「友達と語り合うのは悪じゃあありません。話が盛り上がるんですから共にいたいって思いたくもなりますよ」
「お義姉様という婚約者がいる兄様に下心から擦り寄るなど汚らわしいと申しておるのだ!」
「わたしはシャルル様が苦しそうだと感じたから声をおかけしただけです!」
「何を戯言を……っ。その方が兄様の心を壊したのは明明白白であろう!」
「証拠がありませんねえ。悪意を捏造するのも大概にしてもらえません?」
確かに建前ではそうだしそんな見方も出来る。けれど学園中の誰もがシャルル殿下はアルテミシアの毒牙にかかり心を失った、と受け取っている筈だ。何せシャルルがジャンヌの気を惹こうと一生懸命になっている光景は何度も目にしていたから。
白々しく言い訳を並べるアルテミシアは王女殿下相手にも一切敬意を表さず、むしろ小馬鹿にしたような物言いを続ける。いや、『双子座2』の脚本上にすらいない中でよくメインヒロインと悪役令嬢って立場に自信を持っていられるものね。
「はっ、どのように言葉巧みにその者達を誘惑したかは知らぬが、そなたの様な者を人は魔性の女と呼ぶのだぞ」
「誘惑だなんて、そんな汚い言葉でくくらないでください。私はただアンリ様やピエール様方が同じ時間を過ごしたいと思われる女性であろうとしただけなのですから」
「物は言い様だなブルゴーニュ伯爵令嬢よ。まさかその熟れた身体を使って籠絡したわけではあるまいな?」
「――殿下。畏れながら申し上げますが、それ以上の侮辱は止めていただきたい」
マリー殿下の罵倒を打ち止めさせたのはアンリ様の重い一言だった。王族への忠義を表す丁寧な物腰こそそのままだったものの、その雰囲気からは明らかに怒りが見て取れた。彼はまだいい方でオリヴィエール様は憤りを隠せていないしピエール様はそもそも不快感を隠そうともしない。
だからこそ異常だった。アルテミシアが貶されても怒りも悲しみもせず平然とするシャルルが。
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