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第四章 熾天魔王編
戦鎚聖騎士と聖女魔王、大勝利する
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ああ、言ってしまうのか。
言わなければこのままだったのに。
俺は別に目の前のミカエラと共に最後を迎えても悪くはなかったのに。
「それでいいのか?」
「嫌です。誰にだって余のニッコロさんを奪われたくないです。ずっと離れないでいてほしいですし気にかけてほしいです。でも、でも! それじゃあ駄目です。いけません。だって余は、余は……!」
「辛かったらそれ以上言うな。分かってる。分かってるから」
「全部余の我儘だったんです。それでもニッコロさんは今まで寄り添ってくれました。なら……余はニッコロさんを見送らなきゃ駄目です」
そうか、そこまで覚悟を決めているのか。
だったら俺も答えなきゃいけないな。
俺は布団を跳ね上げて起き上がり、体を動かしたり伸ばしたりする。ジジイになって節々が痛かったのが嘘みたいに快調だ。その調子で押入れの奥に入れていた聖騎士鎧、戦鎚、盾を取り出して装備した。
さあ、戻るか。
「さようならだ。俺には勿体ないぐらい幸せだった」
「さようなら、我が……いえ。余のではないミカエラの騎士。どうかミカエラをよろしくお願いします」
「任せろ。聖女だの魔王だの関係なく、俺はミカエラの騎士だからな」
「それでこそミカエラの騎士です! さあ、ニッコロさん。ずっとミカエラの傍にいて甘やかして守り抜いてきなさい!」
ミカエラが手を振って俺を見送った。俺も拳を上げて彼女に答えた。
いつもくぐっていた小さな家の玄関戸の先はいつもの田園風景じゃなく何も無い光だけの世界だった。
俺はためらわずに光の中に踏み出し、この世界を後にした。
□□□
「な……!?」
目が覚めたら俺が若い頃に死闘を演じた教会総本山の大聖堂祈りの場にいた。そして目の前にはその時相手にした堕天使であり初代魔王である熾天魔王アズラーイーラが驚愕の声を上げていた。
狼狽えながら後ろに下がろうとする彼女だったが自分の足に自分で引っかかり、その場に尻餅をついた。その面持ちは恐怖心に彩られており、まるで彼女が怯える俺が化け物みたいじゃないか。
「そんな……! 捨ててきたっていうんですか、楽園を!」
「楽園、か。夢の世界で幸福な人生を全うさせることで生を終わらせる即死攻撃とは随分性質が悪くないか?」
何のことはない。アズラーイーラに何かを食らってから先の出来事は全部彼女が見せた夢だったってことだ。あそこで死を迎えたらこっちの現実世界の死も確定する、そんな効果だったんだろう。
いや、恐ろしすぎだろ! あんな幸せに包まれた人生が嘘偽りだったなんて分かるものか。気づいたところで「ま、別にこのままでいっか」ってなるだろ。それぐらい魅力的で素晴らしい一生だった。悔いがないのはまさにあのような歩みだろう。
「ありえない……。どうやって分かったんですか? それに分かったところで背を向けて辛い現実に向き合おうだなんて……!」
「何でかって? 俺にはミカエラがいてくれたからな。答えはそれで充分だろ」
ああ。確かに向こうのミカエラもミカエラだった。だから俺は彼女から離れなかった。けれど聡明なミカエラだったこそ自分達が生活する世界が俺への攻撃だと悟ってしまったんだ。だから彼女は俺の背中を押して俺をこちらに送り届けたんだ。
ありがとうミカエラ。俺は決して忘れない。
そして彼女に報いるためにも俺はミカエラを守ってみせる。
「ええ、ええ! それでこそ我が騎士です!」
歓喜の声をあげたミカエラが俺の傍らに立った。
俺の方を見つめる彼女は歓喜を隠しきれていない。
しかしどこか寂しそうにも見える。多分だがお互い様なんだろうがな。
「あっちのニッコロさんも格好良かったですよ。戻って来る時激励してくれました」
「そうか。向こうのミカエラも素敵で可愛かったぞ。この上ない伴侶だった」
「でも余のニッコロさんは余がいなきゃ駄目駄目ですからね! 戻ってきてあげましたから泣いて喜びなさい!」
「おーおー。俺のミカエラも俺がいなきゃ寂しがるからな。嫌ってぐらい抱き締めて頭撫でてやんよ」
ま、どれも目の前の敵を片付けてからだがな。
ミカエラは光の剣シャイニングセイバーを形成。妙に長く柄を作ったなと感想を思い浮かべてたらミカエラは俺も持つよう促してきた。ミカエラの方が背丈が小さいから持ちにくいなぁ、と思いながらも一緒に振りかぶった。
アズラーイーラは深く息を吐き、その身をこちらへと差し出した。
俺とミカエラは容赦なく光の剣を彼女へと振り下ろす。
「ああ、パトラ。貴女と余が夢見た世界の夜明けがもうすぐそこに――」
斬り裂かれたアズラーイーラはその身を光の粒子に変えて散っていった。
その散り様はとても幻想的で美しかった。
これで今度こそ決戦は幕下ろしだ。
【後書き】
これにて第四章・熾天魔王編は終わりです。
最後のエンディング・聖女魔王編をよろしくお願いします。
言わなければこのままだったのに。
俺は別に目の前のミカエラと共に最後を迎えても悪くはなかったのに。
「それでいいのか?」
「嫌です。誰にだって余のニッコロさんを奪われたくないです。ずっと離れないでいてほしいですし気にかけてほしいです。でも、でも! それじゃあ駄目です。いけません。だって余は、余は……!」
「辛かったらそれ以上言うな。分かってる。分かってるから」
「全部余の我儘だったんです。それでもニッコロさんは今まで寄り添ってくれました。なら……余はニッコロさんを見送らなきゃ駄目です」
そうか、そこまで覚悟を決めているのか。
だったら俺も答えなきゃいけないな。
俺は布団を跳ね上げて起き上がり、体を動かしたり伸ばしたりする。ジジイになって節々が痛かったのが嘘みたいに快調だ。その調子で押入れの奥に入れていた聖騎士鎧、戦鎚、盾を取り出して装備した。
さあ、戻るか。
「さようならだ。俺には勿体ないぐらい幸せだった」
「さようなら、我が……いえ。余のではないミカエラの騎士。どうかミカエラをよろしくお願いします」
「任せろ。聖女だの魔王だの関係なく、俺はミカエラの騎士だからな」
「それでこそミカエラの騎士です! さあ、ニッコロさん。ずっとミカエラの傍にいて甘やかして守り抜いてきなさい!」
ミカエラが手を振って俺を見送った。俺も拳を上げて彼女に答えた。
いつもくぐっていた小さな家の玄関戸の先はいつもの田園風景じゃなく何も無い光だけの世界だった。
俺はためらわずに光の中に踏み出し、この世界を後にした。
□□□
「な……!?」
目が覚めたら俺が若い頃に死闘を演じた教会総本山の大聖堂祈りの場にいた。そして目の前にはその時相手にした堕天使であり初代魔王である熾天魔王アズラーイーラが驚愕の声を上げていた。
狼狽えながら後ろに下がろうとする彼女だったが自分の足に自分で引っかかり、その場に尻餅をついた。その面持ちは恐怖心に彩られており、まるで彼女が怯える俺が化け物みたいじゃないか。
「そんな……! 捨ててきたっていうんですか、楽園を!」
「楽園、か。夢の世界で幸福な人生を全うさせることで生を終わらせる即死攻撃とは随分性質が悪くないか?」
何のことはない。アズラーイーラに何かを食らってから先の出来事は全部彼女が見せた夢だったってことだ。あそこで死を迎えたらこっちの現実世界の死も確定する、そんな効果だったんだろう。
いや、恐ろしすぎだろ! あんな幸せに包まれた人生が嘘偽りだったなんて分かるものか。気づいたところで「ま、別にこのままでいっか」ってなるだろ。それぐらい魅力的で素晴らしい一生だった。悔いがないのはまさにあのような歩みだろう。
「ありえない……。どうやって分かったんですか? それに分かったところで背を向けて辛い現実に向き合おうだなんて……!」
「何でかって? 俺にはミカエラがいてくれたからな。答えはそれで充分だろ」
ああ。確かに向こうのミカエラもミカエラだった。だから俺は彼女から離れなかった。けれど聡明なミカエラだったこそ自分達が生活する世界が俺への攻撃だと悟ってしまったんだ。だから彼女は俺の背中を押して俺をこちらに送り届けたんだ。
ありがとうミカエラ。俺は決して忘れない。
そして彼女に報いるためにも俺はミカエラを守ってみせる。
「ええ、ええ! それでこそ我が騎士です!」
歓喜の声をあげたミカエラが俺の傍らに立った。
俺の方を見つめる彼女は歓喜を隠しきれていない。
しかしどこか寂しそうにも見える。多分だがお互い様なんだろうがな。
「あっちのニッコロさんも格好良かったですよ。戻って来る時激励してくれました」
「そうか。向こうのミカエラも素敵で可愛かったぞ。この上ない伴侶だった」
「でも余のニッコロさんは余がいなきゃ駄目駄目ですからね! 戻ってきてあげましたから泣いて喜びなさい!」
「おーおー。俺のミカエラも俺がいなきゃ寂しがるからな。嫌ってぐらい抱き締めて頭撫でてやんよ」
ま、どれも目の前の敵を片付けてからだがな。
ミカエラは光の剣シャイニングセイバーを形成。妙に長く柄を作ったなと感想を思い浮かべてたらミカエラは俺も持つよう促してきた。ミカエラの方が背丈が小さいから持ちにくいなぁ、と思いながらも一緒に振りかぶった。
アズラーイーラは深く息を吐き、その身をこちらへと差し出した。
俺とミカエラは容赦なく光の剣を彼女へと振り下ろす。
「ああ、パトラ。貴女と余が夢見た世界の夜明けがもうすぐそこに――」
斬り裂かれたアズラーイーラはその身を光の粒子に変えて散っていった。
その散り様はとても幻想的で美しかった。
これで今度こそ決戦は幕下ろしだ。
【後書き】
これにて第四章・熾天魔王編は終わりです。
最後のエンディング・聖女魔王編をよろしくお願いします。
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※小説家になろうにも掲載しています。
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