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こうして処刑されましたとさ
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そんなマティルデなんだが、こんなに心が清い奴が実在するのかってぐらい純真無垢でな。相手を尊重するし他人への思いやりもあったし、精力的に奉仕活動に参加して汗水流して、おまけに笑顔が可愛い。
そりゃ男連中も惹かれるわな、って納得する魅力があって。皇太子ラースローを初めとして多くの男子がころっとやられるのにそう時間は要らなかった。挙げ句、連中は己の家族や婚約者なんかよりマティルデを最優先に考えるようになったわけだ。
別にそれが悪いとは言わんよ。一介の公爵令嬢なんぞより稀代の聖女の方を大切に扱うのは実に理にかなっているし、神聖帝国の安寧にも繋がるしな。
ただ、納得するかは話が別だった、ってだけの話さ。
「挙げ句、貴様はならず者をけしかけてマティルデを害そうとしたようだな。尋問したら依頼者は貴様だと白状したぞ」
「そんなのわたくしを貶めるデタラメですわ! 皇太子ともあろうお方がならず者とやらの証言を信じるのですか!?」
マティルデを守るラースロー、マティルデを害するギゼラ。二人が破局に向かうのは自然の流れだったわけで。元々愛なんざ無い契約上の間柄だったけど、マティルデの出現で憎み合う関係に変わっていったわけだ。
ギゼラはならず者連中を雇ってマティルデを汚しつくそうと目論んだんだが、既のところでラースロー達聖女親衛隊御一行様に阻まれた。その時ラースローがマティルデを庇って重傷を負うんだけどマティルデが覚醒、奇跡を施して治癒したんだ。
んで、夜会の場での断罪劇に至ったってことさ。
「未来の大聖女の命を脅かしたこと、そしてこの私に刃を向けたこと、万死に値する。よって皇太子ラースローの名においてギゼラからその身分を剥奪し、大罪の罰として火刑に処することをここに宣言する!」
「なんですって!?」
結果、ギゼラは夜会にてラースローに断罪されるに至った。正義は我にありと誇りと自信に満ちたラースローと彼にしなだれて頬を紅色に染めるマティルデ、対する憤怒と憎悪で顔を歪ませたギゼラ。そりゃもう一目瞭然な構図だった。
「衛兵、直ちにギゼラを捕らえろ!」
「ちょっと、何をするんですの、離しなさい! このわたくしを誰だと……!」
「公爵令嬢でなくなったただの傲慢な女だ。それが何だ?」
ラースローも馬鹿じゃなくて、夜会の場で突然断罪劇を披露したわけじゃない。皇帝や公爵を始めとする各方面への事前の根回しは済んでいた。ギゼラは本当に大聖女を虐げた罪人として扱われて投獄されることになる。
そこからのギゼラの境遇は悲惨の一言に尽きたな。日が当たらないカビ臭い地下牢にぶち込まれるわ、残飯にも劣る貧相な餌を与えられるわ、殴られ蹴られは序の口で、耳元で怒鳴られたり、欲望のはけ口にもされたっけ。
最初のうちはどうして自分がこんな目に、とか、貴方達を絶対に許さない、的にやかましかったギゼラはうるせえの一言で顔面と腹を殴られながら暴行されたわけで。さすがの高慢ちきだったギゼラも次第に心折られていったのさ。
まあ中には己の欲求に従う下衆野郎ばっかじゃなくてギゼラに恨みを晴らしに来た奴もいたっけな。そいつが言うには自分の家族と同じ目にあわせてやる、だったか。案の定全く覚えてなかったギゼラに怒り狂ったそいつは怒りを暴走させたけどな。
心身ともに徹底的に痛めつけられたギゼラは最終的に大衆の前に晒された。美しかった容姿も豊満だった身体も見る影もなくて。職人が丹精を込めて作ったドレスの変わりに所々破れて穴だらけの布一枚を身に纏ってたし。きらびやかな宝飾品の代わりにギゼラを飾るのは大衆から投げられた卵とか青果物だったのさ。
「これより大罪人ギゼラの処刑を執り行う!」
ギゼラの味方なんて誰一人いやしなかった。両親の公爵夫妻は早々にギゼラを勘当したし、弟や妹は侮蔑するばかり。友人とは縁を切られたし、慕っていた後輩は嘲笑してくる始末。何も知らない観衆は聖女を脅かした魔女と罵声を浴びせてくるし。
恨み辛みをぶちまけてやろうって気力すら失っていたギゼラは足元で火が燃え上がるのも他人事のように眺めるばかりだった。ざまあみろと口角を釣り上げるラースローもその傍らでほくそ笑むマティルデももはやどうでも良かった。
ただ、一体どうしていれば良かったんだ、と思うばかりだった。
何を間違えてしまったのか、と嘆くばかりだった。
こうしてギゼラは偽聖女だの魔女だのと罵られて死んだ。
誰も悲しみやしなかったし、ギゼラがくたばった程度で何も変わりやしない。
最低の屑が報いを受けた。ただそれだけの話さ。
ところが、だ。他の誰もが見捨てても唯一人ギゼラを見捨てなかった奴がいた。
神は言っていた。ここで死ぬ定めではない、と。
こうしてあたし、つまり公爵令嬢ギゼラは普段どおりの朝を迎えた。
クソ女として最後を迎えた筈のあたしは過去からやり直す破目になったのさ。
そりゃ男連中も惹かれるわな、って納得する魅力があって。皇太子ラースローを初めとして多くの男子がころっとやられるのにそう時間は要らなかった。挙げ句、連中は己の家族や婚約者なんかよりマティルデを最優先に考えるようになったわけだ。
別にそれが悪いとは言わんよ。一介の公爵令嬢なんぞより稀代の聖女の方を大切に扱うのは実に理にかなっているし、神聖帝国の安寧にも繋がるしな。
ただ、納得するかは話が別だった、ってだけの話さ。
「挙げ句、貴様はならず者をけしかけてマティルデを害そうとしたようだな。尋問したら依頼者は貴様だと白状したぞ」
「そんなのわたくしを貶めるデタラメですわ! 皇太子ともあろうお方がならず者とやらの証言を信じるのですか!?」
マティルデを守るラースロー、マティルデを害するギゼラ。二人が破局に向かうのは自然の流れだったわけで。元々愛なんざ無い契約上の間柄だったけど、マティルデの出現で憎み合う関係に変わっていったわけだ。
ギゼラはならず者連中を雇ってマティルデを汚しつくそうと目論んだんだが、既のところでラースロー達聖女親衛隊御一行様に阻まれた。その時ラースローがマティルデを庇って重傷を負うんだけどマティルデが覚醒、奇跡を施して治癒したんだ。
んで、夜会の場での断罪劇に至ったってことさ。
「未来の大聖女の命を脅かしたこと、そしてこの私に刃を向けたこと、万死に値する。よって皇太子ラースローの名においてギゼラからその身分を剥奪し、大罪の罰として火刑に処することをここに宣言する!」
「なんですって!?」
結果、ギゼラは夜会にてラースローに断罪されるに至った。正義は我にありと誇りと自信に満ちたラースローと彼にしなだれて頬を紅色に染めるマティルデ、対する憤怒と憎悪で顔を歪ませたギゼラ。そりゃもう一目瞭然な構図だった。
「衛兵、直ちにギゼラを捕らえろ!」
「ちょっと、何をするんですの、離しなさい! このわたくしを誰だと……!」
「公爵令嬢でなくなったただの傲慢な女だ。それが何だ?」
ラースローも馬鹿じゃなくて、夜会の場で突然断罪劇を披露したわけじゃない。皇帝や公爵を始めとする各方面への事前の根回しは済んでいた。ギゼラは本当に大聖女を虐げた罪人として扱われて投獄されることになる。
そこからのギゼラの境遇は悲惨の一言に尽きたな。日が当たらないカビ臭い地下牢にぶち込まれるわ、残飯にも劣る貧相な餌を与えられるわ、殴られ蹴られは序の口で、耳元で怒鳴られたり、欲望のはけ口にもされたっけ。
最初のうちはどうして自分がこんな目に、とか、貴方達を絶対に許さない、的にやかましかったギゼラはうるせえの一言で顔面と腹を殴られながら暴行されたわけで。さすがの高慢ちきだったギゼラも次第に心折られていったのさ。
まあ中には己の欲求に従う下衆野郎ばっかじゃなくてギゼラに恨みを晴らしに来た奴もいたっけな。そいつが言うには自分の家族と同じ目にあわせてやる、だったか。案の定全く覚えてなかったギゼラに怒り狂ったそいつは怒りを暴走させたけどな。
心身ともに徹底的に痛めつけられたギゼラは最終的に大衆の前に晒された。美しかった容姿も豊満だった身体も見る影もなくて。職人が丹精を込めて作ったドレスの変わりに所々破れて穴だらけの布一枚を身に纏ってたし。きらびやかな宝飾品の代わりにギゼラを飾るのは大衆から投げられた卵とか青果物だったのさ。
「これより大罪人ギゼラの処刑を執り行う!」
ギゼラの味方なんて誰一人いやしなかった。両親の公爵夫妻は早々にギゼラを勘当したし、弟や妹は侮蔑するばかり。友人とは縁を切られたし、慕っていた後輩は嘲笑してくる始末。何も知らない観衆は聖女を脅かした魔女と罵声を浴びせてくるし。
恨み辛みをぶちまけてやろうって気力すら失っていたギゼラは足元で火が燃え上がるのも他人事のように眺めるばかりだった。ざまあみろと口角を釣り上げるラースローもその傍らでほくそ笑むマティルデももはやどうでも良かった。
ただ、一体どうしていれば良かったんだ、と思うばかりだった。
何を間違えてしまったのか、と嘆くばかりだった。
こうしてギゼラは偽聖女だの魔女だのと罵られて死んだ。
誰も悲しみやしなかったし、ギゼラがくたばった程度で何も変わりやしない。
最低の屑が報いを受けた。ただそれだけの話さ。
ところが、だ。他の誰もが見捨てても唯一人ギゼラを見捨てなかった奴がいた。
神は言っていた。ここで死ぬ定めではない、と。
こうしてあたし、つまり公爵令嬢ギゼラは普段どおりの朝を迎えた。
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