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聖女が新聖女と対峙したらしく
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その日を境にドロテアの態度ががらっと変わった。
まず彼女は取り巻き連中にイオナを蔑むのを止めろと厳命した。表立って何度も言うことで周囲にそれを知らしめ、それでもなお嘲笑う令嬢がいたら彼女直々に厳重注意するぐらいの徹底ぶりだったわな。
その上でドロテアはイオナに過剰に接触しようとするラースローの奴に幾度となく苦言を申した。「婚約者をないがしろにするのは何事か」「彼女も皇子に付きまとわれて困っている」「そもそも学業と公務を疎かにして遊ぶ暇あるのか?」等の正論のみで。
「黙れドロテア! 私はお前の指図を受けぬ!」
それに対してラースローは公衆の面前でドロテアに反発したとさ。その前に叩きつけられたドロテアの意見に対しても我儘で感情的な主張を繰り返すばかりで、周りの白けた視線は一切感じてないようだった。
いやー、ラースローの馬鹿っぷりが想定通りすぎて笑えちまうわな。実はあの後すぐにドロテアはラースローとの婚約解消を願い出て、とっくの昔にラースローとの縁なんざ切れてるっつーのによ。
「それで、ギゼラ様。これまで皇子妃に相応しくあれと教育されてきたわたくしと釣り合う殿方なのですが、心当たりに打診したところ快諾してくださいましたわ」
「それはよろしゅうございました。好奇心でお尋ねしますが、どなたとご一緒になられるのですか?」
「まあ、とぼけるなんて。不束者ですがよろしくお願い致しますわ、お義姉様」
「……へ?」
ところがどっこい、ドロテアからまさかの反撃を食らった。なんとこの公爵令嬢、あろうことかあたしの弟を新たな伴侶として狙ってきやがった。バイエルン公爵家は弟が嫡男だから、このまま行けばドロテアは公爵夫人に収まるわけで。まあ及第点ってところか。
いやいやいや、だからってどうして彼女から義姉って扱われなきゃいけねえんだよ! あたしはとっくの昔に公爵家から離れて……いや、戻ったか。両親に対する誤解も解けたし、こりゃあたしのことは完全に公爵令嬢と見なして差し支え無い、か。
「どうしてこうなった……。あたしは手頃な駒が欲しかっただけで妹を求めてたわけじゃ無かったんだが……」
「身から出た錆でしょうよ。大人しく結果を受け入れてはどうですか?」
ぐうの音も出ねえど正論ありがとよ。けっ。
「で、マティルデの方はどうなんだよ? イオナから接触を受けたんじゃねえのか?」
「ええ、受けましたね。共に正義を成しませんか、って誘われました」
一方、単独行動したあたしにドロテアが接触してきたように、マティルデの方にもイオナが接触してきたらしい。それも休み時間中の教室内で、だ。普段イオナの方から人と関わろうとしていなかっただけに、周りの連中はとても驚いたらしい。
で、やりとりをかいつまむとこんな感じだったそうだ。
「聖女マティルデ。ご無沙汰しています」
「……聖女イオナ。わたしは聖女ではないんですけれど?」
「その点を言い争う気はわたしにはありません。単刀直入に申しますが、共にドロテア公爵令嬢の断罪をする気は?」
「不穏なことを口にしますね。あの人はラースロー殿下と懇意にしている聖女イオナをたしなめているだけでは?」
「現時点ではそう見せるでしょう。しかし彼女はいずれ必ず大罪を犯すことでしょう」
「それは神が仰ったからですか? それとも聖女イオナの勘ですか?」
マティルデは有無を言わさない神秘的な雰囲気を漂わせるイオナにも全く臆すること無くずけずけと言いたい放題だった。対するイオナは気分を害するどころか表情一つ変えずにマティルデを見据え続ける。
「そのように運命が定まっているからです」
まず彼女は取り巻き連中にイオナを蔑むのを止めろと厳命した。表立って何度も言うことで周囲にそれを知らしめ、それでもなお嘲笑う令嬢がいたら彼女直々に厳重注意するぐらいの徹底ぶりだったわな。
その上でドロテアはイオナに過剰に接触しようとするラースローの奴に幾度となく苦言を申した。「婚約者をないがしろにするのは何事か」「彼女も皇子に付きまとわれて困っている」「そもそも学業と公務を疎かにして遊ぶ暇あるのか?」等の正論のみで。
「黙れドロテア! 私はお前の指図を受けぬ!」
それに対してラースローは公衆の面前でドロテアに反発したとさ。その前に叩きつけられたドロテアの意見に対しても我儘で感情的な主張を繰り返すばかりで、周りの白けた視線は一切感じてないようだった。
いやー、ラースローの馬鹿っぷりが想定通りすぎて笑えちまうわな。実はあの後すぐにドロテアはラースローとの婚約解消を願い出て、とっくの昔にラースローとの縁なんざ切れてるっつーのによ。
「それで、ギゼラ様。これまで皇子妃に相応しくあれと教育されてきたわたくしと釣り合う殿方なのですが、心当たりに打診したところ快諾してくださいましたわ」
「それはよろしゅうございました。好奇心でお尋ねしますが、どなたとご一緒になられるのですか?」
「まあ、とぼけるなんて。不束者ですがよろしくお願い致しますわ、お義姉様」
「……へ?」
ところがどっこい、ドロテアからまさかの反撃を食らった。なんとこの公爵令嬢、あろうことかあたしの弟を新たな伴侶として狙ってきやがった。バイエルン公爵家は弟が嫡男だから、このまま行けばドロテアは公爵夫人に収まるわけで。まあ及第点ってところか。
いやいやいや、だからってどうして彼女から義姉って扱われなきゃいけねえんだよ! あたしはとっくの昔に公爵家から離れて……いや、戻ったか。両親に対する誤解も解けたし、こりゃあたしのことは完全に公爵令嬢と見なして差し支え無い、か。
「どうしてこうなった……。あたしは手頃な駒が欲しかっただけで妹を求めてたわけじゃ無かったんだが……」
「身から出た錆でしょうよ。大人しく結果を受け入れてはどうですか?」
ぐうの音も出ねえど正論ありがとよ。けっ。
「で、マティルデの方はどうなんだよ? イオナから接触を受けたんじゃねえのか?」
「ええ、受けましたね。共に正義を成しませんか、って誘われました」
一方、単独行動したあたしにドロテアが接触してきたように、マティルデの方にもイオナが接触してきたらしい。それも休み時間中の教室内で、だ。普段イオナの方から人と関わろうとしていなかっただけに、周りの連中はとても驚いたらしい。
で、やりとりをかいつまむとこんな感じだったそうだ。
「聖女マティルデ。ご無沙汰しています」
「……聖女イオナ。わたしは聖女ではないんですけれど?」
「その点を言い争う気はわたしにはありません。単刀直入に申しますが、共にドロテア公爵令嬢の断罪をする気は?」
「不穏なことを口にしますね。あの人はラースロー殿下と懇意にしている聖女イオナをたしなめているだけでは?」
「現時点ではそう見せるでしょう。しかし彼女はいずれ必ず大罪を犯すことでしょう」
「それは神が仰ったからですか? それとも聖女イオナの勘ですか?」
マティルデは有無を言わさない神秘的な雰囲気を漂わせるイオナにも全く臆すること無くずけずけと言いたい放題だった。対するイオナは気分を害するどころか表情一つ変えずにマティルデを見据え続ける。
「そのように運命が定まっているからです」
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