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こうしてバカ皇子は処刑されましたとさ
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「勇敢なる神聖帝国の兵士達よ、全貴族を代表してこのドロテアが命じます! 皇帝陛下の弑逆を目論んだ逆賊ラースローを直ちに捕らえなさい!」
「「「はっ!」」」
ドロテアの命令を受けて会場を警備していた兵士達が動く。屈強な兵士達に迫られても貧弱ひょろ皇子は抵抗するすべなく、あっけなくとっ捕まった。もがいても無駄、太腿に蹴り入れても鎧に守られた兵士は痛くも痒くもない。
「離せ無礼者が! 一族もろとも処刑台に送ってやるぞ!」
「処刑台に送られるのは貴方様の方ですわよ! 楽しみにしているのですね!」
「くっそぉぉぉっ!! この私が、この私がぁぁ!」
ラースローはわめき声を上げながら引きずられて強制退場となった。
もう二度と会うことはねーよ。ちょっとぐらいは名残惜しいとか思うかと危惧してたんだが、ざまぁみろとしか思わねえもんだな。朝一にカーテン開けたら雲ひとつ無い青空で、涼風に撫でられながら日光を浴びるぐらい清々しい気分でいっぱいだ。
ただそんな風にご機嫌なのはあたしとマティルデぐらいなもので、他は自分達の皇子のやらかしに複雑な様子だった。返り討ちにしたドロテアすら思い詰めた辛気くせえ表情してるんだけど。
「皆様、折角の宴ではありますが、本日は――」
「ドロテア様。それはあんまりではありませんか?」
「ギゼラ様……?」
おっと、中止だ中止、だなんて言わせねえよ。
「ラースロー皇子殿下の評判が悪かったのは周知の事実。それが今馬脚を現したに過ぎませんわ。むしろ神聖帝国が乱される前に害虫を排除できた、と喜びませんと」
「し、しかし……」
「あの名を呼ぶのも憚られる愚か者のせいで一生に一度しか無いこの機会を台無しにされるだなんてたまりません。むしろあの者など記録に残らないよう円滑に執り行うべきではありませんか?」
「……確かに」
あたしが好き放題言いまくると同調してくる奴も何人か出てきた。次第にラースローへの批判を隠さなくなり、あんな奴のことなんざ忘れて素敵な思い出にしよう、と皆口々に言い出す。
やっぱあの野郎には全員思うところがあったんだなーとかしみじみ思ってたら、ドロテアがこっちに向かって力強く頷いてきた。ありがとうと言っている、と勝手に解釈したあたしは頷き返してやった。
「皆様、ギゼラ様のおっしゃるとおりですわ! ここはわたくし共の更なる飛躍と申請帝国の栄華を願って祝おうではありませんか!」
で、バカ皇子がいなくなって身分が一番上になったドロテアの声とともにアイツが台無しにして微妙だった空気は一気にぶっ飛んで、元通りになりましたとさ。いやーめでたしめでたし、だわ。
見事クソ野郎を撃退したドロテアはそりゃまあ人気者になって、皆が周囲に集まった。ようやくさばききった彼女はあたしのもとへとやってくる。二人してお互いに向けて優雅にお辞儀をした。周囲からため息が漏れた、気がした。
「ごきげんよう、ギゼラ様」
「ごきげんよう、ドロテア様」
「この度は何もかもギゼラ様のおかげです。心より感謝致します」
「わたくしへの感謝は不要です。ここだけの話、わたくしはただ神に破滅の未来をやり直すよう命ぜられただけですので」
そうだ。これを全部あたしのおかげだよ感謝しな、とか言う気はサラサラ無い。何もかもかなぐり捨てたあたしが何の因果かこんな形で関わったのはイストバーンのおかげだし、遺憾ながらマティルデの力も借りたしな。
それに、あたしが焚き付けたとは言え、ラースローの奴をこてんぱんにしたのは他でもないドロテアだ。他人の手柄まで奪うつもりはねえよ。あたしはアイツのざまぁない顔さえ拝めりゃ充分だ。
「神が……? それにやり直すとは……いえ、成程。だからわたくしに的確な助言が出来た、というわけですか」
「他の方には秘密ですよ」
「勿論ですわ。ギゼラ様、何かありましたらこのわたくしが力になりましょう」
「ええ、その時はよろしくお願いますね」
あたしとドロテア。二人の悪女が笑い合う。
最大の危機を乗り越え、未来に思いを馳せて。
こうして盛大な喜劇はバカの自滅って形で幕を下ろした。
あのクソ皇子は案の定満場一致で処刑が決まったわけだが、ラインヒルデが
「あの者の処刑方法だが、ギゼラは何か希望があるか?」
と聞いてきたので、
「だったら火炙りなんてどうだ? 死体も残らねえぐらい綺麗に焼いちまおうぜ」
と言っておいた。
部外者のあたしに自国の皇子の最後を何で決めさせるのよ、って疑問だったので、「なんであたしの希望を聞くんだ?」と質問したんだが、「私を救ってくれた例だ」と答えてきた。
こうしてラースローは大衆の前で火刑に処されましたとさ。
なお、最後まで罵声と悲鳴をあげまくりで、醜いったらありゃしなかった。
あいにくアイツには神は微笑んでくれなかったみたいで、そのまま死んだ。
ざまぁみろってんだ。
「「「はっ!」」」
ドロテアの命令を受けて会場を警備していた兵士達が動く。屈強な兵士達に迫られても貧弱ひょろ皇子は抵抗するすべなく、あっけなくとっ捕まった。もがいても無駄、太腿に蹴り入れても鎧に守られた兵士は痛くも痒くもない。
「離せ無礼者が! 一族もろとも処刑台に送ってやるぞ!」
「処刑台に送られるのは貴方様の方ですわよ! 楽しみにしているのですね!」
「くっそぉぉぉっ!! この私が、この私がぁぁ!」
ラースローはわめき声を上げながら引きずられて強制退場となった。
もう二度と会うことはねーよ。ちょっとぐらいは名残惜しいとか思うかと危惧してたんだが、ざまぁみろとしか思わねえもんだな。朝一にカーテン開けたら雲ひとつ無い青空で、涼風に撫でられながら日光を浴びるぐらい清々しい気分でいっぱいだ。
ただそんな風にご機嫌なのはあたしとマティルデぐらいなもので、他は自分達の皇子のやらかしに複雑な様子だった。返り討ちにしたドロテアすら思い詰めた辛気くせえ表情してるんだけど。
「皆様、折角の宴ではありますが、本日は――」
「ドロテア様。それはあんまりではありませんか?」
「ギゼラ様……?」
おっと、中止だ中止、だなんて言わせねえよ。
「ラースロー皇子殿下の評判が悪かったのは周知の事実。それが今馬脚を現したに過ぎませんわ。むしろ神聖帝国が乱される前に害虫を排除できた、と喜びませんと」
「し、しかし……」
「あの名を呼ぶのも憚られる愚か者のせいで一生に一度しか無いこの機会を台無しにされるだなんてたまりません。むしろあの者など記録に残らないよう円滑に執り行うべきではありませんか?」
「……確かに」
あたしが好き放題言いまくると同調してくる奴も何人か出てきた。次第にラースローへの批判を隠さなくなり、あんな奴のことなんざ忘れて素敵な思い出にしよう、と皆口々に言い出す。
やっぱあの野郎には全員思うところがあったんだなーとかしみじみ思ってたら、ドロテアがこっちに向かって力強く頷いてきた。ありがとうと言っている、と勝手に解釈したあたしは頷き返してやった。
「皆様、ギゼラ様のおっしゃるとおりですわ! ここはわたくし共の更なる飛躍と申請帝国の栄華を願って祝おうではありませんか!」
で、バカ皇子がいなくなって身分が一番上になったドロテアの声とともにアイツが台無しにして微妙だった空気は一気にぶっ飛んで、元通りになりましたとさ。いやーめでたしめでたし、だわ。
見事クソ野郎を撃退したドロテアはそりゃまあ人気者になって、皆が周囲に集まった。ようやくさばききった彼女はあたしのもとへとやってくる。二人してお互いに向けて優雅にお辞儀をした。周囲からため息が漏れた、気がした。
「ごきげんよう、ギゼラ様」
「ごきげんよう、ドロテア様」
「この度は何もかもギゼラ様のおかげです。心より感謝致します」
「わたくしへの感謝は不要です。ここだけの話、わたくしはただ神に破滅の未来をやり直すよう命ぜられただけですので」
そうだ。これを全部あたしのおかげだよ感謝しな、とか言う気はサラサラ無い。何もかもかなぐり捨てたあたしが何の因果かこんな形で関わったのはイストバーンのおかげだし、遺憾ながらマティルデの力も借りたしな。
それに、あたしが焚き付けたとは言え、ラースローの奴をこてんぱんにしたのは他でもないドロテアだ。他人の手柄まで奪うつもりはねえよ。あたしはアイツのざまぁない顔さえ拝めりゃ充分だ。
「神が……? それにやり直すとは……いえ、成程。だからわたくしに的確な助言が出来た、というわけですか」
「他の方には秘密ですよ」
「勿論ですわ。ギゼラ様、何かありましたらこのわたくしが力になりましょう」
「ええ、その時はよろしくお願いますね」
あたしとドロテア。二人の悪女が笑い合う。
最大の危機を乗り越え、未来に思いを馳せて。
こうして盛大な喜劇はバカの自滅って形で幕を下ろした。
あのクソ皇子は案の定満場一致で処刑が決まったわけだが、ラインヒルデが
「あの者の処刑方法だが、ギゼラは何か希望があるか?」
と聞いてきたので、
「だったら火炙りなんてどうだ? 死体も残らねえぐらい綺麗に焼いちまおうぜ」
と言っておいた。
部外者のあたしに自国の皇子の最後を何で決めさせるのよ、って疑問だったので、「なんであたしの希望を聞くんだ?」と質問したんだが、「私を救ってくれた例だ」と答えてきた。
こうしてラースローは大衆の前で火刑に処されましたとさ。
なお、最後まで罵声と悲鳴をあげまくりで、醜いったらありゃしなかった。
あいにくアイツには神は微笑んでくれなかったみたいで、そのまま死んだ。
ざまぁみろってんだ。
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