良識のある異世界生活を

Hochschuler

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学園

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ショッピングモールに来たからには何かお洒落な服を買いたいと言うことで女子どもはファッションセンターの服どもに熱視線を向けるのだが、いかんせん我々道理をわきまえない男児どもには心に響く何かというものが感じられないのである。

故に女子どものファッションセンスに唯々諾々と首肯するのみなのだが、それが返って俺たちを、殊に俺を苦しめる結末になるであろうことは、少なくともその時の俺は予感していなかったのだから、これは運命の導きというほかなく、それに伴って俺は俺の未来の暗澹を嘆かざるを得なかったのだ。

つまり今回の運命のオチはこうだ。
2人は俺が作り出した優劣のない世界に燻り、その結果比較において雌雄を決しようとした。

故に、彼女等が試着室から出てきた途端にその戦いの火蓋が落とされるのであり、俺は頼むから、何かこの試着室の中が複雑怪奇な迷宮か何かで、一旦入ったら最後、一生出られないものであることを願う。

だが、よくよく考えてみれば彼女たちは鋭く頭が回るのだから、何か方策を見つけて快刀乱麻に迷宮を脱して見せるだろう。

では、とここで老獪なみなさんならこうお気付きだろうが、即ち、俺がこの場から逃げ去って仕舞えばいいのではないか。

しかし、それが最悪の手段であることは間違いがない。
なぜかって? 
そりゃあ、そんなことしたら、明日にはシャーロットの拳をくらい、リリーの、或いはあるかもしれない暗涙に心を痛め、マイケルの、足元を見るような意地の悪い笑みに精神を磨耗させるのだから。

そして俺は気息奄々と今後の人生を生きるだろう。

それだけは避けなくてはいけない。
では、どうすれば! 
俺はどうすればいいんだ! 

逼迫した思考を抱えているうちに試着室のカーテンは開かれた。――











2人の服は、どちらとも似合っていると言って差し支えなかった。
と言うよりむしろ、どこまでも均衡が取れていて、俺はそれを見た時阿呆みたいに口をあんぐりと開けることしかできなかった。

シャーロットは生来の赤髪に合わせた暖色系の服で統一し、下のロングスカートに年相応の落ち着きを見せて、また、上半身は、これまたフォーマルにまとめることで、容姿の素質の高さをまざまざと見せつけるようなファッションだ。

リリーは、シャーロットとは反対にルーズなファッションで統一している。さまざまな色で無邪気さを演出すると共に、全体としてのトーンは損なわず、統制の取れた無邪気を演出している。

「どうよ」
シャーロットは俺に問う。
う、うむ、どちらも素晴らしい。
俺は返答に困った教授然と答える。
「そうじゃなくって――」
シャーロットは更に追及しようとする。
「まぁまぁ、いいじゃないか、シャーロット。どちらもよくてどちらも魅力的。そう思えばどちらも傷つきはしないだろう? 」
ここでリリーから落ち着きのある意見が出される。
「ま、まぁそうだけれど……」
シャーロットは口籠る。
「それに――アルは本当にどちらもいいって思うんだろう? 」
リリーは俺に目配せする。
ああそうだ。
俺はもちろん、それに首肯する。
「そう言うことだよ。シャーロット」
シャーロットは不承不承ながらに頷いた。










帰路にて。
マイケルとリリーはパーティーで何をするかで盛り上がっている。

やれやれ、それは人様の家でやるんですから少しは遠慮したらどうですかね。

と、俺は肩をすくめてみせるが、あえてそれを言ったりはしない。
リリーが帰ってきたんだ。
ちょっとくらい羽目を外してもいいではないか。

そう思いつつ2人を眺めていると、隣にいたシャーロットが耳打ちしてきた。
「ねぇ、本当はどっちのファッションが良かったのよ」
ああ、さっきのリリーとお前の対決か。正直甲乙つけ難かったな。
「そう」

シャーロットは短い返事をする。そして踵をつづけてこう言った。
「ということは、私のも十分に良かったってことよね? 」
まあそうだな。

「じゃあ、また今度出かけましょう? もちろん今日の服で行ってあげるわ。私のことが可愛いって言うんなら、この誘いも断らないわよね? 」
彼女は意地の悪い笑みを浮かべる。
まあ、確かに可愛いとは思ったが――はぁ、せめて買うものは少なくしてくれよ? 俺の腕が疲れる。
「考えておくわ」
そう言って彼女は微笑んだ。
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