良識のある異世界生活を

Hochschuler

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学園

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俺とシャーロットはリリーとマイケルが来るまで雑談していた。

テストの結果がどうだったとか、実技の試験はどうだったとか。

ほとんどの教科、つまりこれはクラス横断で行われるテストのことだが、其れ等は往々にして満点だった。

実技に関しては、各クラスでの評価軸があるので俺たちのクラスでさえ平均点は6割前半だったのだが、多分、俺たち、つまり俺、シャーロット、マイケル、リリーの平均を取ったら9割前半だろう。

まあ、肝心の現代魔術についてだが、当然、毎日勉強をしていたシャーロットの方が点数は高かった。
そりゃそうだ。
もしこれで俺の点数の方が高いなんてことがあったら、この世界の不条理を、俺であっても嘆かざるを得ないのだから。

まあ、僅差だったが。

ところで、そんなことを話している間に、まず最初にマイケルが来て、その後にリリーが来た。

リリーは本人の願いでオシャレに詳しいメイドさんからおめかしやら何やら、兎に角人間の少女がやることを施してもらっていたため俺とは一緒に来なかったのだが、その結果も相まって相当に可愛らしい少女になっていた。

まあ、元々の素質もあるからな。
と、俺はどこぞのファッションマネージャーよろしく一知半解な知識で彼女に高い評価を与えると、シャーロットのドスの利いた視線に背筋を凍らせた。

な、なんだ。
「いいえ、あんたが阿呆な顔をしているのを眺めていただけよ」
俺はすかさず顔面を弄ると、表情筋の一切を知悉し、いつも通りの無表情であることを知る。

おい、どこが惚けてんだ。
俺はシャーロットに問う。
「さぁね。忘れちゃったわ」
俺は更に追求しようと言葉を発しようとするが――
「アル! どうだ! 私の化粧は! 」
眼前にずいっと寄り出たリリーによって阻まれる。

あ、ああ、似合っている。
「そ、そうか」
一気に塩らしくなったリリーだが、俺はそんなことよりも段々と増す隣からの殺気に気を揉んでいる。
「へぇ、そんな感じが好みなんだ」
暗澹たる重低音でそんな声が耳を掠めた時にはこの世の終末を確信したほどだ。

まぁ、ここで屯していてもいいのだが、今日はショッピングモールへ行くことを目的としているため、俺たちは徐に足を向け始めた。









「なぁ、アル」
なんだ? 
道中、俺に話しかけてきたのはマイケルだった。

女子どもは前でキャッキャとしていて、正直言って俺たち男組はそのキャッキャうふふの輪から逸れた負け組となっていたのだが、かと言ってマイケルとは何も話すことがないから、ひたすらに歩いていたのみだったのだが、ここにきてマイケルは俺に話しかけてきたのだ。

「お前がリリーを助けたんだろ? 」
マイケルはリリーの方を見ながらそう訊く。
いいや、違うな。人は勝手に救われる。そうだろう? 
マイケルは肩をすくめて見せた。

「何もお前がそこまで謙る性格なのは咎めたりしないが、ただ、お前が救ったのは事実だろう」
まあ、そう言うことにしておこう。
「で、お前はなんかやってあげたのか? 」
ああ、一応、抱擁するくらいはな。
今度もマイケルは肩をすくめる。

俺はそれに少し苛立ってこう出し抜けに訊く。
なんだ? それじゃ物足りないか? 
「ああ、物足りないね」
じゃあ、何をすればいいんだ。
「そりゃ簡単だろ」
マイケルは笑みを浮かべて俺の耳に口を近づける。

「パーティーだろ」

……パーティー、パーティーか。なるほど。
「ああ、丁度、リリーはお前のうちにいるだろう? あのだだっ広い屋敷に」
そうだな。

「だから、そうだな、あまりに大規模だと他の龍に気づかれてしまうかもしれない。だから、俺たちだけで遣るってのはどうだ? そしてお前のうちでやれば場所代だってタダ、掃除もお前さんとこのメイドがやってくれるって算段よ」

お前なぁ。……まぁいいが。
「よし! そうと決まれば日程からだ! 2人の空いている日時を聞くぞ! 」
そう言って2人の元に飛んでいったマイケル。
俺は一つため息はしたものの、どこでそれをするかを、少し思案するのだった。


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