良識のある異世界生活を

Hochschuler

文字の大きさ
41 / 41
学園

41

しおりを挟む
海水浴から数日間、俺は家で伸びている体たらくだったのだが、それを見かねた執事から、王太子様、そろそろ周りをあっと言わせるような功績でも作ったらどうですかと言われたので俺は今までの力の誇示でも十分だと寝ぼけ眼で返すが、いえいえ、それだけではまだ疑念を持っている方々もおられますと言う言葉が存外に返ってきてそのあまりの言われように熱り立った俺はその勢いのまま魔窟へ来ていた。

そりゃあだって、俺だって今まで頑張ってきたのだからお頭の固い貴族の方々も少しは俺の労力を認めてくれていると思っていたのだから。

ところで、魔窟の前にいる俺の隣にはケインさんがいて、この人は護衛兼証人である。
何の証人かというと、それはもちろん俺の功績の。

そりゃあ、功績を自分で広げようものなら社交の場であざ笑われてしまうのだから。

そして目の前のゴブリンどもを蹴散らした俺は、おかしいな、ゴブリンはこんな浅層にはいないはずだと思いながらも先に進む。

少し気になってケインさんの方を向くと、意味ありげな笑みを浮かべていた。





そして深層に辿り着くわけだが、何故かそこには一体のモンスターもいなかった。
あるのは不気味な静寂のみである。

コツコツと靴音だけが響く、剥き出しの岩壁に囲まれた魔窟は黒滔々としており、俺が魔法で灯す炎が俺たち二人の影を揺らす。

その中を俺とケインさんは突き進むと、終にひらけた場所に出た。
そこには一つの人影のようなものがあった。

なぁ、あれは迷子か。
万が一にもそう思ってない俺は、一応確認のためケインさんに尋ねる。

「さぁ、わかりません」
ケインさんはあっけらかんと答える。

俺はため息を吐いてその人影に近づく。

「ん? 」

すると人影がこちらの気配に気づいた。

「おぉ? おお! 人間ではないか! しかも二匹とも高純度なマナを備えておる! ちょうどいい! 私の糧となれ! 」

「王太子様、あれは悪魔の上位互換、魔族でございましょう」
ケインさんがそういう。

確かに頭にはツノが生えている。
だが、一本であることからそこまで位は高くないのであろう。

するとその魔族は右手を大きく振りかぶり、そのまま勢いよく下の方に向けた。
その瞬間、俺たちの周りだけ重力が高まる。

俺は即座に同じ重力魔法で反作用を起こし、それを相殺する。

「むむむ? これは結構厄介な人間を引いてしまったか? なら仕方ない。あれを使おう」

そう言った魔族は同じように右手を振り上げると今度はぶつぶつと呪文を唱え始めた。

そして魔族の背後には圧倒されるほどの魔法陣が浮き上がった。

そして魔族があげた手を振り下げた瞬間――

――辺りが真っ暗になった。

なるほど、魔界現出魔法か。話には聞いたことがある。なんでもその魔族に有利な状況を持つ魔界を対象範囲に作ってしまう魔法だとか。

俺は初めて見るそれに圧巻を覚えたが、魔族の攻撃がしょぼいので一気に興味が失せた。

「な、なぜだ! 何故暗闇なのに私の攻撃を防げる! 」
そう言いつつも魔族は俺への攻撃をやめない。
だが、その攻撃は全部俺の剣で一刀両断されていた。

ああ、飽きた。……そういえばさっきの魔法は人間にも使えるのだろうか。
俺はさっき見た魔法陣を細部まで思い出し、魔術式のエッセンスを再構成してオリジナルの魔法陣を作り出す。

“生命の原初たる春よ、その生命の泉の甘露を私に注ぎたまえ、異界現出魔法、ビギニング・オブ・ビーイング”

その瞬間、辺りは青々とした丘陸に変わった。
奥には高く聳える山が見え、風があたりを吹き曝す。

魔族はそこで呆然と立っていた。

すると、何やら苦しみ、うめき始めた。

そしてぼこぼこと体が膨らむと、終には破裂してしまった。

この魔法の効果はこうである。
自分と同等以上の魔力を持たないものは、生命の誘いにより自分の存在が保てなくなり、消えて無くなる。

俺はその術の効果範囲や効能をわかっていたから何とも思わなかったが、ケインさんが隣で引いていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました

藤原遊
ファンタジー
魔力不足、財政難、人手不足。 逃げ場のない没落領地を託された転生令嬢は、 “立て直す”以外の選択肢を持たなかった。 領地経営、改革、そして予想外の縁。 没落から始まる再建の先で、彼女が選ぶ未来とは──。 ※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

処理中です...